与党が5日の衆院厚生労働委員会で審議入り強行をねらう労働者派遣法改悪案。与党が審議前から修正案を示したかと思えば引っ込め、今度はまともな審議もせず押し通そうとするなど法案の中身もやり方もでたらめで、廃案しかないことが浮き彫りとなっています。
法案は10月31日に審議が始まる予定でしたが、与党の公明が委員会前の理事会で修正案を示すという異例の事態が起こり、審議入りできませんでした。
同党の修正案では、「派遣は臨時的かつ一時的なものであることが原則である」「施行後、雇用慣行に悪影響を及ぼしている恐れがある場合は、速やかに検討を行う」規定などを盛り込むとしています。
改悪案はもともと与党が了承して国会に提出されたものです。その審議も始まらないうちに修正案を出すことは、欠陥法案であることを与党が認めたことを意味しています。
日本共産党は「与党も欠陥を指摘する法案は撤回すべきだ」と主張しています。
“ウソ”が破たん
雇用は「直接雇用」が原則であり、これに対し派遣は、雇用主でもない人の下で働かされる「間接雇用」です。
労働基準法などで禁じる賃金のピンハネであり、解雇も簡単にできるのが特徴です。
そのため、「臨時的・一時的業務に限定する」というのが大原則でした。ところが改悪案はこの原則を覆し、恒常的に派遣労働を使えるようにします。
無期雇用の場合は期間制限をなくし、有期雇用の場合でも労働者を入れ替えるか、部署を変更するだけで事実上、制限なく働かせることができる仕組みになっています。
ところが安倍首相は「派遣先で正社員が派遣労働者に代替されることを防ぐことになっている」(10月28日、衆院本会議)と述べ、原則は変わらないとごまかしてきました。
しかし、修正案が、「臨時的・一時的」原則を考慮するよう加えたり、施行後の見直し条項を置くこと自体、この原則が守られないことを示しています。
実効性何もなし
法案の危険性は、予算委員会などでの議論を通じても浮き彫りとなっています。
首相は、「正社員への道が開かれる」といって正社員化が進むかのように主張してきました。しかし、法案に盛り込まれたのは、派遣労働者への「正社員の募集情報の提供」など何の実効性もないことが明らかになりました。
一方で、諸外国では当たり前となっている派遣先の正社員と派遣労働者の「均等待遇」について首相は、「導入するには乗り越えるべき課題がある」といって先送りしています。
企業は、派遣労働者をいくら使っても正社員にする必要もなく、正社員よりはるかに安い賃金で働かせ続けることができるのです。日本共産党が「正社員を減らして派遣への置き換えが進む」と指摘してきた通りです。
「生涯ハケン」「正社員ゼロ」の危険性がいよいよ明瞭になっています。