記事 19件
  • 日本の研究者が人を殺す日〜研究者は自衛せよ〜

    2015-01-16 11:00  
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     のどかな時代は終わりました。日本の全研究者は自分が人殺しになる可能性を念頭に置きながら、自分のキャリアを考えなくてはいけません。 東大、軍事研究を解禁 公開前提に一定の歯止め産経新聞 - Yahoo!ニュース 東京大学浜田純一総長が禁じてきた軍事研究を解禁したことが日、分かった。東大関係者が明らかにした。
     東大は解禁理由について「デュアルユース研究は各国の大学で行われている。研究成果の公開性を担保する国際的な動向に沿った形で、ガイドライン改訂を行った」
     他の国もそうだから、という凡庸な思考で合わせてしまいました。逆にうちはしないと世界に発信すれば、それを求めて世界中から優秀な研究者を集められたでしょうに。 これまで日本から離れて研究をするということは、自分の研究が兵器を作ることになる可能性を常に抱えていました。日本で受け止めてあげることができず、アメリカに行ってしまった東京大学のロボット技術。彼らは、そもそも軍事予算を獲得するためにアメリカを目指しました。アメリカで研究は続けられますが、殺人ロボットにその技術が使われるのは不可避です。彼らは重い運命を背負ったのです。 受け入れ先はグーグルだからとか、なんの気休めにもなりません。アメリカの軍事予算は兵器かとか防衛かとか垣根ありません。無人飛行機技術では、アマゾンが配達事業をまだ始められていないのに、そのずっと前に、外国に飛んでってばんばんミサイル撃つ飛行機が活躍しています。 自分はたとえばソフトウェアエンジニアだからとか分野で安心することはできません。機械学習の研究をしていたら、「もっとも人を効率良く殺していく」アルゴリズムに使われるかもしれません。 ですから海外、特にアメリカに行って研究するということは、自分の研究が将来人を殺す兵器に使われるという可能性を受け入れるということです。  日本でも軍事研究はありますが、これまでは軍事研究といっても、防衛に関わることだから、まだましでした。 しかし、これももう甘い考えになってしまいました。日本で潜水艦の研究に携わっている人は、今年冒頭のこのニュースに脳天を打ち砕かれたのではないでしょうか。 日豪潜水艦を共同生産…船体、分業で 防衛省が提案 日本の潜水艦技術は世界でもトップレベルでそれは誇らしいといえば誇らしいですが、このまま進むとオーストラリアとの共同開発が始まりそうです。 これが何を意味するか。いままで防衛のために日本で研究していた人は、自分の研究がオーストラリア潜水艦に使われ、ある日テロとの戦いとか言って西の方のどっかにいって、攻撃を始めるかもしれない不安をこれから先ずっと抱えなければならないのです。ある日突然兵器開発の片棒を担がされたのです。 もちろん日本だって集団的自衛権の問題が出てきていて、日本の潜水艦が西の方のどっかで外国を攻撃する可能性はありますが、少なくともそうなる前に日本の中でたくさんの議論がされるでしょう。一研究員の問題ではなく、全国民の問題として共有できます。一緒に苦しめます。 しかし、オーストラリアに渡ったら、そんなわけにはいきません。オーストラリアだって好き好んで攻撃したくないでしょうが、いずれにせよ日本とは無関係です。もしオースラリアの潜水艦が人を殺したら、日本の潜水艦研究者は、自分の研究が人を殺したという業を背負うことになります。 いままで日本で研究していれば、自分の研究が人を殺すリスクなどほとんど考える必要はありませんでした。実際考えた人なんてほとんどいないでしょう。東大のロボット「シャフト」がグーグルに行った時も、日本は大騒ぎになりましたが、それが将来兵器になる無念を表明した記事はほとんどないはずです。 そもそも若者はどんどんアメリカに行って研究すべきという人はたくさんいるけど、でもそれは兵器になる可能性があるからねと忠告する人もほぼ0です。 しかし、日本にいたって、自分の研究が兵器を作る可能性を考えなくてはいけない時代になってしまったのです。 これから先、日本の研究者、そしてこれから研究に進もうと思う人は、それぞれが自分の研究が兵器にならないよう慎重に自らの研究キャリアを決めなければなりません。 逆に日本中の大学は今大きなチャンスを持っています。国内外に高らかにうちは軍事研究はやらないと宣言すれば、世界中の優秀なでも兵器なんか作りたくない研究者を集められるのです。あるいは研究室単位で宣言してもいいでしょう。なんか共通のロゴ作って貼るようにすればいいのではないでしょうか。 これまでは日本の軍事予算は防衛のためだったから、ま、軍事研究も必要か〜とあやふやなところがありましたが、もう違います。先の潜水艦の方針が打ち出されたことで、日本の軍事予算も外国を攻撃するために使われるであろう見通しが立ってしまいました。集団的自衛権の行方によっては、自衛隊も海外で他国を攻撃することになるでしょう。 

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  • さらにグローバル経済が遠くなったスイスフランの高騰

    2015-01-16 02:00  
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    フツクロウ: 恐ろしいの……。ミライ: 恐ろしいですね。 スイスフラン騒動で大儲けした人と大損した人の阿鼻叫喚の叫びまとめ #fx - NAVER まとめ  (1月15日18:30頃、スイスは自国通貨フランの上限を撤廃したため数分で数10%値上がりしたため、外貨トレード(Fx)していた人の中には・・・)ミライ: うわ、-4300万円とか、-9200万円とかありますよ……?フツクロウ: 恐ろしいの…。ミライ: 恐ろしいですね。フツクロウ: 自殺する人出るかもしれんのお。ミライ: これ、逆に何千万儲かった人もいるけど、自殺する人が出始めたら、どんな気持ちになるんでしょう。フツクロウ: ホじゃな。100年に一度の天災レベルとすら言われておるから、早々に基金でも作って、儲かった人は儲けを寄付できるようにするとかせんと、並みの神経じゃ持たんのじゃないかのう。ミライ: 宝くじどころじゃないですよね。誰かの命と引き換えに手にしたお金とか、いやすぎ。フツクロウ: ホンにのう。ミライ: Fx 怖すぎ。フツクロウ: これは、これだけじゃ終わりそうにないの。ミライ: と、いうと?フツクロウ: ギリシャのユーロ離脱に備えてではないかという噂もあるようじゃし、つまりこの件はこれで終わりというわけではなく、今後金融市場が不安定になるのではないかと誰でも考えるじゃろ。ミライ: こないだは円安が一気に進んだし、その後石油も大暴落しましたからね。フツクロウ: ホじゃ、ホじゃ。じゃから、一気に損失が膨らむ、いわゆる保証金での取引は、もう一般の人には怖すぎじゃろ。今後現物取引はわからんが、Fxなど保証金取引は一気にしぼむぞ。ミライ: 確かに。またやるにしても、とりあえずいったんひきあげようって思うでしょうね。フツクロウ: そういうことが世界規模で起こるわけじゃから、いったいどこまでどんな波及をするのか計り知れん。ミライ: 普通の株だって、ちょっと怖くなっちゃいますね。フツクロウ: ホの通りじゃ。これはますますグローバル経済が遠くなりそうじゃ。ミライ: グローバル経済? 遠く?フツクロウ: こないだまで、世界一わかりやすい経済活動の話をしとったじゃろ?ミライ: はい。フツクロウ: そんときこれからはグローバル経済ではなく、ローカル経済が主役になるという話もした。ミライ: はい。フツクロウ: 実はそう考えられる一つの理由は、このようなグローバル経済の不安定さじゃ。ミライ: グローバルなのに不安定なんですか?フツクロウ: ホウじゃ。世界中がつながった世界じゃからの。ちょっと難しい話じゃが、このスイスフランの急騰は、誰かが仕掛けたわけではない。スイスが上限を撤廃した瞬間に、世界中のFxトレーダー達がその少し上に設定しておった損失回避の注文が一斉に働いたからじゃ。世界中が自動的に「買う!」という設定しておったのじゃ。ミライ: ITの力……。フツクロウ: うむ。一斉に「買う!」といったが、一斉すぎてその値段で買えるわけがなく、はるかに高い値段で買ってしまい、膨大な借金ができるというわけじゃ。ミライ: うわあ。フツクロウ: 石油なんかもそうじゃ。どう考えても本当に石油を買う人と売る人との間のバランスの取れた値段がそんなに早く動くわけがない。横で相場を見ているものたちが、値段が下がりそうだと思った瞬間、自分は石油持ってるわけでもないのに売りまくるから、一気に動いてしまうんじゃ。ミライ: あっという間に半額ですもんねぇ。フツクロウ: 意味不明じゃ。じゃから、わしら日々暮らしておるもんは、こういうあまりにも急激に変化するものから距離を置くようになる。ミライ: はい。フツクロウ: 今円安で、国内生産が増えようとしておるが、求人は簡単にはいかんぞ。ミライ: また5年もすれば海外に行くかもしれませんもんね。復興とオリンピックで建設業の求人が増えているけど、人手不足が深刻っていいますもんね。フツクロウ: その通りじゃ。 

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  • [S]ぼっち飯に解決の糸口?

    2015-01-14 23:00  
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     この問題、社会の壮大な勘違いだった? いつもとちょっと違う水曜、今回は気楽に書き始める記事[S]です。前回も[S]でしたが、それは先週の分ということで。 こんな記事見ました。 「もう1人でも怖くない」 大学公認“ぼっち席”学食に広がる(産経新聞) - Y!ニュース 大テーブルに相席が基本だった大学の学生食堂で「ぼっち席」と呼ばれる1人用の席が広がっている。
     !!!  そっか、ぼっち飯が怖いんじゃなくて、ぼっちのときどこ座っていいかわかんないからぼっち飯が嫌なのか。 言われてみれば、そうです。私たち社会人だって、ぼっち席がない食堂よりぼっち席(カウンター)があるとこのか全然気が楽です。四人席でもぼっちたくさんとわかってる定食屋ならたいしてストレスないですけど、ちょっときどったとことかでテーブル席ばっかりだと「あり、ちょっと居場所なくね?」って落ち着かなくなりますしね。 学生の頃、普通に学食でぼっち飯食ってましたが、たしかに、どこに座るかというのは面倒臭い項目でした。 広い学食で、四人ずつのグループが並ぶ中、ぽつりぽつりと四人席に一人が点在してたら、お互い気まずくて当たり前です。今でもたまに仕事で一人で学食行くことありますが、慣れない学食で確かにどこに座るか途方にくれます。 この問題、もしかして、壮大な社会の勘違いだったんじゃないでしょうか。単に一人席の需要があるのに作っていなかった日本中の学食のとろさが問題だったと。 だってこれ、ぼっち席ができたからって、そこで食べればぼっちなのはばればれなんですから、「一人で食べてるとこを見られるのは恥ずかしい」みたいな問題があるとしたら、あんまり解決になってません。でも、そこがクリティカルではなく、単に、世間の食べるとこと同じように、一人で食べたい人が来るところには、一人で食べる場所が必要というだけだったんじゃないでしょうか。 だとしたら、この問題、社会という外野はぼっち飯に関して、的外れな分析をしていたことになります。まさにその記事のタイトルに「もう1人でも怖くない」と書いてありますけど、怖いとか怖くないとかでなく、単に、今の人は昔より空気読むのが上手になって、グループと一人のパッチワークができるのに敏感に居心地の悪さを感じるようになったからじゃないでしょうか。 もちろん大学で友達ができない人はいるし、それは問題なんですが、それに限って言うと、別に私が学生の頃だってそういうのって大きな問題でした。その頃の学生はみんなリア充でぼっち飯の心配する学生なんていなかった、なんてわけあるわけありません。  

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  • [S]土鍋よりもっと便利な土鍋あるよ

    2015-01-13 23:45  
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     先週[S]なかったので、火曜ですが、気楽な[S]で。 イケダハヤトさんがご飯炊くのに「土鍋」が便利と紹介されてました。 まだ炊飯器使ってるの?「土鍋」の方が全然便利ですよ - まだ東京で消耗してるの?  しかし、世の中にはもっと便利な土鍋があります。かまどさんなどの土鍋です。使い始めてもうすぐちょうど5年になります。5合炊きです。
     普通の土鍋だと途中で火加減の調整が入りますが、これはいりません。火をつけて20分たったら消す。それだけ。うちのコンロはタイマーが付いてますから、火をつけて20分にセットするだけ。 大抵朝炊くので前日にセットして、朝少し早く起きて火をつければ、あとは他のことしてても30分から35分後にはかまど炊きご飯顔負けのご飯が炊けます。 義父母んちにかまどあって、かまどで炊いたことあるから本気で言えます。かまど炊きに負けません。手軽さを入れれば圧勝です。 なお、最近のコンロにはタイマーだけではなくて、炊飯モードなるものもありますので、炊飯の手間だけでいうとそれも一緒です。実際2合とか少量炊きたいときは鉄鍋で炊飯モードで炊いてます。炊く量違うので、うちでは5合のかまどさんのが美味しいのですが、炊飯モードで5合でも同じ手間で同じくらいおいしいかもしれないですね。どういう鍋が想定されてるんでしょう。 唯一の欠点は重いこと。分厚い上に中蓋まであるので、すごく重いです。なので5年前からご飯炊くのは私の担当です。 価格も5合炊きで18000円と土鍋にしては高いと言われますが、これと同じくらいおいしいご飯が炊ける炊飯器はもっとべらぼうに高いですから、目くじら立てる必要はありません。 もう一つ大変といえば、慣れるまで、20分で炊ける火加減に最初に決めるのが大変でしょうか。最近教えてもらったのですが、火は美味しそうな匂いになったら消せばいいそうです。その時間を計りながら、火加減覚えれば数回で慣れると思います。 炊く量もうちでは毎回5合にしてしまっていて、火加減で間違うことはありません。まあ、今となっては、4合でも3合でも炊けますが。 残った分は毎回タッパにうつして冷蔵してます。チンすれば普通においしいです。1日くらいはそのまま常温に置いとくこともあります。この場合はチンしてもしなくても普通においしいです。 さすがに炊きたてのおいしさはなくなりますが、その分炊きたてのときはみんなもりもりお代わりします。 たまに積極的に多めに炊いて、ラップに小分けして冷凍しておくと、ああご飯がない!って時に重宝します。これもチンすれば普通においしいです。 冬はストーブと組み合わせれば最強の煮物調理器です。こないだ1日かけておでんの大根とごぼうが煮られてましたが、次の日その他の練り物などをはねのけて、家族全員大根とごぼうから食い尽くしました。今でも味を反芻出来ます。おいしかった……。 ああ、もう一つ欠点といえば上蓋がよく割れるそうです。幸いにもうちは一度少し欠けただけで、接着してそのまま使ってます。でも、他の土鍋の蓋を流用すればいいそうで、それならお財布に深刻なダメージを与えることはなさそうです。 個人的にはこのかまどさん、エンジニアリング的に猛烈に感動していて、 

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  • 世界一わかりやすい経済活動の話(その9)〜まとめその2〜

    2015-01-09 22:45  
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    ミライ: 世界一わかりやすい経済活動の話(その9)です。(その8)まとめその1の続きです。これでシリーズ完結です。
    価値観の違いを生む文化
    フツクロウ: そしてそのお金をぐるぐる回すために必要なビジネスのために大きな力となるのが、文化じゃ。
    ミライ: 文化。
    フツクロウ: あるいは多様性といってもよい。
    ミライ: 多様性があれば、価値観の違いが生まれますもんね。
    フツクロウ: ホウじゃ。もし、ある街の人はみんなお椀を頭にかぶるとしよう。
    ミライ: お椀??
    フツクロウ: ホじゃ。そしたらその街に遊びに来た人には、喜んでそのお椀を買ってかぶって楽しむ者も出てくる。そこにビジネスができる。
    ミライ: そ、そうですね。なんか唐突ですが。
    フツクロウ: ホッホッ、すまん、すまん。じゃが、日本に訪れる外国人観光客で日本の着物を着てみたい人はたくさんおるし、そういうサービスは当然ある。もし全世界がユニクロの服じゃったら、こんなビジネスは生まれなくなる。
    ミライ: 確かに。
    フツクロウ: 今日本食が広がっとるから、おそらく日本酒ももっと世界で飲まれるようになる。ワインを見習えば、様々なビジネスができるぞ。好きなお酒の蔵元のツアーで原料の水を飲めるなら、国内外問わず、来たい人はたくさんおるじゃろう。地元の人にはただの水にも関わらず。その近くでその酒を楽しみながら地元の料理を味わえたら、さらに楽しいじゃろう。
     そのためには、地元が地元の文化をしっかりと持っていなくてはいけない。いくらその蔵元が良くても、周りをイオン・マクド・セブンイレブン・スタバに囲まれとったら、興ざめじゃ。
    ミライ: わ、それは、やですね。
    フツクロウ: グローバル経済から生まれる均一で安価な普及品はわしらの暮らしを便利にするが、その分ビジネスの芽を摘んでしまう。グローバル化はほどほどにせんといかんのじゃ。
     大型モールが地域にいくつかできて、中小商店を淘汰するとする。しかし、モール同士は似たようなものしかなくて、価格競争になり、モール同士で潰し合う。そしてその地域の景気が悪くなっていくんじゃ。
    ミライ: なんかありそうな話ですね。
    フツクロウ: じゃからほどほどが必要じゃ。あるいはモールの中を多様にするとかの。滋賀県のピエリ守山が滋賀県初出店の店を集めて再開したようにの。
    ミライ: はいはい。最近再開しましたね。
    フツクロウ: 昔はトリクルダウンだったかもしれんが、これからはウェルアップ(well up, (井戸が)湧き上がる)の時代というわけじゃ。まずローカル経済が景気の牽引となる。グローバル経済はその上で、より我々の暮らしを便利にする、とかローカル経済の効率をあげる支援をするが、ローカル経済の景気を潰すような拡大は親殺しとして疎まれるようになるんじゃ。
    ミライ: グローバル経済ではなく、ローカル経済が景気の牽引役になるんですか。なんか想像を絶するんですが。
     

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  • 世界一わかりやすい経済活動の話(その8)〜まとめその1〜

    2015-01-08 22:30  
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    ミライ: 世界一わかりやすい経済活動の話(その7)に続いて、(その8)です。ここからまとめということですが、フツクロウさん。
    フツクロウ: ホイきた。
    ローカル経済に注目する
    フツクロウ: 今まで経済や景気の話というと、為替や大企業の動向など、いわゆるグローバル経済に関わるものがほとんどであった。
     しかし、私たちの身の周りの経済、ローカル経済はグローバル経済と仕組みや動きが違い、同じように捉えることはできない。今まではグローバル経済の景気が良くなるとローカル経済にも波及しておったが、サービス業が増えるにつれそういったつながりが弱くなっておる。もともとローカル経済の方が規模が大きく、従って、国民自身の景気を良くするためには、ローカル経済の景気をどう良くするかという点に真正面から取り組まなくてはならなくなってきたのじゃ。
    ミライ: 政府もやたら地方創世に力入れてますしね。
    フツクロウ: ホウじゃ。大企業の景気が良くなっても全国に波及するとは限らんと危機感を持っておるの。ただ従来のような支援ではうまくいかん。ちょうどこんな記事が出た。
     地域の商業振興とは~これからの産業政策のあり方
    (公開記事ですが閲覧には Facebook へのログインが必要なようです)

    では、それに対して、行政がする支援とは何なのか。補助金や助成金を出すことではないことは明白である。カネを出すということと、商売をやっている人が自ら考えるということは全く次元が違うからである。
    やるべきことは、自ら考えるいろいろなきっかけを提供することだ。特に、一商店主、一中小企業ではなかなかできない機会をつくりだすことだと思う。
    例えば、多くの人と交流する機会の提供である。新しい価値は異質なものの組み合わせからしか生まれない。同業種の交流というのはいろいろな団体や組合があるが、異なる業種、異なる地域の人たちと知り合い交流する機会は決して多くない。しかも、それは一商店主、一中小企業が自ら作り出すことは困難だ。しかし、行政の立場からすれば、それを行うのは容易である。役所には、広域で、いろいろな団体や企業に一度に声をかけることができる強みがあるからである。

     今まで何度地方活性化を国が手がけてもうまくいった試しがないと言われておる。単に予算をつけてもうまくいなかいことは、(その4)でも話した。でもこんな風に異分野が交流するきっかけを作るなど、間接的な支援でできそうなことはいろいろありそうじゃ。必要なのは知恵と工夫じゃ。
    自分たちのお金と仲良くなる
    フツクロウ: 次に大事なことは、もっとお金と仲良くなることじゃ。前回紹介した記事『なぜ地方は補助金をもらっても衰退するのか』でも、

    地方に必要なのは、一回しで終わらない、一度資金を入れたらそれをもとに、地域内経済を取り込んで回り続けるエンジン

    こう書かれておる。どこか遠いグローバル経済が景気良くなっても、身近なローカル経済が良くならないとなれば、自分たちのローカル経済そのものを良くしなければならない。そのためには、物々交換的な経済活動ではなく、ここでとりあげてきたような、お金がぐるぐる回ると余剰が生まれるようなビジネスが必要じゃ。
    ミライ: 出てきた例でもお金がぐるぐる回って水やリンゴがみんなに行き渡りましたね。
    フツクロウ: ホウじゃ。お金は我々の経済活動を媒介しているにすぎない。しかし、我々はややもするとお金に非常に汚いイメージを持っておる。金儲けは卑しいというような。
    ミライ: はい。
    フツクロウ: なぜそんなイメージがあるのか。それは長年我々は無理やりモノを買わされていたからじゃ。莫大な広告で無理やり需要を喚起され買わされる。そうやって大量生産大量消費で景気を刺激する時代じゃったんじゃ。しかし、我々はお金を使う側ではなく、お金に使われる側じゃった。暮らしは便利にはなったが、その分心は疲れて行ったんじゃな。自然ではない需要を維持するために、広告以外にもいろんな不自然なお金の使われ方がしたし、わしらをそれを見て、金は汚いと考える。
    ミライ: 私たちは、お金に使われていた。
     

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  • 世界一わかりやすい経済活動の話(その7)

    2015-01-08 00:45  
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    世界一わかりやすい経済活動の話(その6)の続きです。
    ミライ:(その6)では、今景気を良くするために「狭い意味でのビジネス」を広げていかなければならないが、社会がそれに集中できてないという話でした。
    フツクロウ: ホウじゃ。その問題については、冨山 和彦さんの『なぜローカル経済から日本は甦るのか』などで取り上げられているような、グローバル経済とローカル経済の違いを理解すると捗るかもしれん。ローカル経済ではたとえば駅の北口と南口にスーパーがあるとして、片方のサービスや価格が劣っているとしても、駅を乗り越えてまでいい方に行く手間を考えれば悪い方で我慢するということが容易に起こる。
     まず、ローカル経済はグローバル経済とは違った仕組みで動いていることを認識しなければならない。しかし、メディアや政府や学問で対象になるのはグローバル経済ばかり。ここに最初の大きな問題がある。
    ミライ: そうですね。ローカル経済の仕組みなんて聞いたことないような。
    フツクロウ: 今回のシリーズは全てローカル経済を意識しとるぞ!
    ミライ: なるほど〜、そういうことだったんですね。
    フツクロウ: ホッホッホッ。しかも、「上場企業の経済活動が日本のGDPに占める割合は30%程度」である上、そういったグローバル経済とローカル経済の関わりがゆるくなっておる。つまり、ローカル経済は、グローバル経済が良くなるのを待っていても仕方ないんじゃ。なってもローカル経済は大して良くならんのじゃ。これがもう一つの問題。
    ミライ: グローバル経済ばかり気にしていても仕方ないのですね。
    フツクロウ: そう。そして、もう一つは、政府の支援もあてにできないということ。政府もローカル経済が大事だということはわかっておるから、「地方創世」に大々的に取り組もうとしておるが、(その4)でも話したように、税金というのは景気を良くする効果は非常に低い。
     あるいは、ちょうど見つけたこの記事もわかりやすいの。
     なぜ地方は補助金をもらっても衰退するのか
    タダでおカネをもらえれば活性化しそうなものですが、ズバリ、地方創生に必要なのは「おカネそのもの」ではなく、「おカネを継続的に生み出すエンジン」なのです。
    ミライ: お! なんか似たようなこと書いてありますね〜。
    フツクロウ: ホッホッ。問題はわかっておるんじゃよ。でも政府としても効果がないからといってなにもしませんとはなかなか言えんからのう。ぶっちゃけ、大してできないので小さくなりますって小さくなるのがええと思うんじゃがの(苦笑
    ミライ: うむむむむむ。みんなグローバル経済に目がいってローカル経済に集中できてない、グローバル経済が良くなってもローカル経済が良くなるわけでもない、政府の支援も上手くいかない。八方塞がり!!
    フツクロウ: ホッ! じゃから、価値観の違う間での取引、狭い意味でのビジネスじゃよ、お嬢ちゃん。
    ミライ: ハッ。確かにずっとそれやってたんでしたっけ。
    フツクロウ: ホウじゃ。ここからはまず(その3)の復習じゃ。
    ミライ: ハハー。
    フツクロウ: 価値観の異なる間での取引がビジネスを生むという話をしてきたわけじゃが、昔はたとえば流通でその仕組みを作っていた。ミカンの産地ではリンゴを高く売り、リンゴの産地ではミカンを高く売る。間に卸しなどが入ることでそうなっておったし、人々もそれは仕方ないことだろうと受け入れて買っていた。
    ミライ: はい。
    フツクロウ: じゃが、流通が効率化し、 IT の発展で物の値段が全国でだんだん均一になることで、そのような仕組みは取れなくなってきた。同一物は同一価値という価値観が広く広く行きわたるようになってきている。これでは経済活動をしていても物々交換しているのと同じような効果しかない。良い景気が良い景気を生む連鎖は起こりにくい。
     

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  • 世界一わかりやすい経済活動の話(その6)

    2015-01-07 00:15  
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    世界一わかりやすい経済活動の話(その6)です。(その5)で、狭い意味でのビジネスがもっともっと生まれるといいですねとまとめようとするミライに、それを阻むものがあると話始めるフツクロウ。
    ミライ:  前回最後の言葉、「狭い意味でのビジネスを拒むもの」とはどういうことでしょう。
    フツクロウ: たとえば、正月早々に報道されたこの記事を見てみよう。
     パナソニック、国内生産回帰…円安・人件費高で : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 

     パナソニックは、海外で生産し日本に逆輸入している洗濯機やエアコンなどの家電製品の大半を、今春から順次、国内生産に切り替える方針を明らかにした。
     円安の進行や海外の人件費の上昇で海外生産の利点が小さくなったためだ。

    ミライ: 円安で工場が日本に戻ってきた!って話ですね。
    フツクロウ: ホウじゃ。どう思うかの。
    ミライ: 工場戻ってきて、雇用も増えるから良かったですね?
    フツクロウ: ホウかの。今ドルは 120円くらいなんじゃが、実は8年前の2007年ごろも120円くらい。そのあと5年後の2012年ごろ80円を切り、その3年後2015年の今はまた120円じゃ。
    ミライ: め、めまぐるしいですね。
    フツクロウ: まさに。では、今から3年後は何円じゃろう。
    ミライ: さ、さあ。
    フツクロウ: 今から3年後にパナソニックの国内生産はどうなっているじゃろう。
    ミライ: さ、さあ……。
    フツクロウ: そんなところで働きたいかの?
    ミライ: ……。びみょうですね。
    フツクロウ: ホウじゃ。仮に働くとしても、3年後にはまた解雇される可能性に備えておかねばならない。とすると、消費するかの?
    ミライ: いや、なるべく貯金しないと怖いですね。
    フツクロウ: ホの通りじゃ。グローバル企業の製品は激しい価格競争で給料も切り詰められておる上に、為替などの都合で雇用ができたり消えたりする。そこで働く人は工場の一部品であって、自分たちの「他の人から見たらなんでそんなもんに出すん?」というモノにじっくりお金をかける余裕はない。つまり景気には関係のない、物々交換の世界と変わらない消費になるじゃろう。
    ミライ: モダンタイムスの呪い……。
    フツクロウ: ホ?
    ミライ: いや、なんかそういう話聞くたび、1936年の映画、モダンタイムスを思い出して、もう80年になろうかというのに、いまだにそれに近い話があるんだなあと思うと、あの映画の呪いなんじゃないかと思えるんです……。
    フツクロウ: なるホどのう。「狭い意味でのビジネスを拒むもの」を説明するために持ち出した例じゃが、「狭い意味でのビジネスを拒むもの」とはまさにその「モダンタイムスの呪い」かもしれんの。
    ミライ: え、そうなんですか? あ、モダンタイムス、ニコニコ動画にある。

     

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  • 世界一わかりやすい経済活動の話(その5)

    2015-01-05 22:30  
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    ミライ: あけましておめでとうございます!
    フツクロウ: おめでとうじゃの。
    ミライ: 今年もよろしくお願いします。年またいでますが、引き続き世界一わかりやすい経済活動の話、(その4)に続き、今回は(その5)です!
     とはいえ……。えと、どんな話でしたっけ?
    フツクロウ: ホッホッホッ。すっかり正月ボケじゃのゥ。
    ミライ: うっっくぅ~、なんもいえねぇ~…
    フツクロウ: 北島康介?
    ミライ: いえ、漣です。いえ、スルーでお願いします。えと、どんな話でしたっけ?
    フツクロウ: ……。ホーじゃの。(その1)でこんな絵から始めたんじゃの。

    ミライ: はい。これでお金とモノがぐるぐる回って、三人のところに水とリンゴが行き渡りました。
    フツクロウ: ホの通りじゃ。そうやって回るために必要な条件はなんじゃったかの。
    ミライ: えーと、水が豊富な太郎さんは貴重なリンゴを水より高く買っていいと思い、リンゴな豊富な花子さんは水を高く買っていいと思うことでしたっけ。
    フツクロウ: ホじゃ。その価値観の違いの間でビジネスを作ることができるということじゃった。
    ミライ: はい。思い出してきました。
    フツクロウ: では、今日はもう少しお金の仕組みについて考えよう。さっきの図で最初におじさんのところにコインが4枚あったの。
    ミライ: はい。
    フツクロウ: これは次の日にまた水やリンゴを仕入れるのに使われるから、おじさんのお金というよりは、水やリンゴを行き渡らせるためにぐるぐるめぐる目印みたいな役目じゃ。
    ミライ: そうですね。
    フツクロウ: もしこれがなかったらどうなる?
    ミライ: モノの行き来が滞りますね。
    フツクロウ: まっことその通り。じゃから、十分な貨幣がないと経済活動が滞ってしまう。政府が十分な貨幣を供給できないときは、地域で代用貨幣を用いるなんてこともよくある。活発な経済活動にはそれに見合う十分なお金が世の中に供給されてなくてはいけないんじゃな。
    ミライ: あ〜、それで金融緩和で資金を供給とか言うんですね。
    フツクロウ: ホッホ。それじゃそれじゃ。
     では、次に、もしも、たとえば太郎くんが手元にちょっとお金をお金を残しておきたいと、ある日リンゴを買わずにいたらどうなるじゃろ。
    ミライ: やっぱりモノが行き渡らなくなりますね。
    フツクロウ: じゃな。実際にはビジネスで生まれる余剰はもっとあるから、その範囲で貯金をするのは問題ないが、あまりみんなが貯金してしまうと経済活動が滞ってしまう、つまり景気が悪くなるんじゃの。
    ミライ: なるほど。「宵越しの金は持たねぇ!」てのは景気にはいいことなんですね。
    フツクロウ: ホウじゃ、ホウじゃ。じゃが、一方でその貯金にも大切な役目がある。
    ミライ: なんですか?
    フツクロウ: さっき、最初におじさんがコインを4枚持っておったろ。あれには貯金が使われるんじゃ。
    ミライ: ん、ん、え〜と?
    フツクロウ: 太郎さんがコインを4枚貯金したとする。それを銀行に預ける。その4枚をおじさんに貸す。その借りた4枚をきっかけに水やリンゴの取引を始められるんじゃ。
    ミライ: おぉぉ〜。最初のコインはそうやって生まれて来るんですか。なるほど〜。
     

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