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記事 20件
  • 世界一わかりやすい経済活動の話(その4)

    2014-12-29 22:30  
    31pt
    ミライ: フツクロウさん。今回は、世界一わかりやすい経済活動の話、(その3)に続いて(その4)なんですが、年末ですね。今年は今回までで、新年は1月5日からです。
    フツクロウ: ホじゃの。
    ミライ: 例年、年末は「ゆく年来る未来」してるんですが、できませんね……。
    フツクロウ: ホッホッホッ。来年「行った年、来くか未来」すればいいんじゃないかの。
    ミライ: はははは。なんか間抜けですね〜。も、それは後で考えるとして、では(その4)です。価値観の異なる間での取引がビジネスになるはずなら、そういう話がもっと多くてもいいんじゃないか?ってとこまで行きました。
    フツクロウ: ホウじゃったの。じゃが、どうも、同一物は同一価値という考え方がはびこりすぎて、その前提であれこれ議論されておる。
     さっき紹介した経産省の通商白書2009の中の一節でも、企業の利益がゼロにならないようにするにはつぎのようなビジネスモデルが考えられるとある。

     1)コア技術を押さえて高収益を得る
     2)システムインテグレーション部分を押さえて高収益を得る
     3)国際サプライチェーンを拡大して調達の効率化を行った上で、高収益を得る
     4)歴史に裏付けされた文化や成熟した消費文化を元に、トレンド発信と一体化した世界進出を行い高収益を得る(ブランド利益モデル)
     5)コピーやエレベーターなど最初に納入する価格を安くし、消耗品やアフターサービスで高収益を得る(インストール・ベース・利益モデル)
     6)富裕層向けハイエンド市場を前提とした「高スペック・高価格」に加えて、「ミドルスペック・低価格」の製品・サービスを展開

     もっともらしいことは書いてあるが、同一物同一価値の考えは抜けておらず、根本的には解決していない。こういうことをやっても「やった瞬間コモディティ化(価格競争に陥ること)する」という大手企業の嘆きをじかに聞いたこともある。
    ミライ: ふ〜む。かといって同一物同一価値を抜け出すのも簡単ではないと思うのですが。
    フツクロウ: そうじゃの。まず、最初の例では水とリンゴを交換したが、たとえばミカンとリンゴの交換を考えてみよう。ミカンの産地ではミカンはありふれていて、リンゴは貴重、リンゴの産地ではリンゴがありふれていてミカンは貴重じゃ。そういった価値観の違いは必ずある。
    ミライ: はい。
    フツクロウ: じゃが、ミカンの産地にリンゴが十分たくさん供給されれば、価格は限界まで下がるじゃろう。そこでたとえばいろんな質のものを用意して、いろんな価格帯を作り、贈答用には高いのを選べるようになど、お客さんが出したいだけ出せるような仕組みができあがる。
    ミライ: ふむふむ。
    フツクロウ: そこには、質が高いなど、合理的に思われる理由がつくこともあるが、必ずしも経済的な合理性は必要ではない。クラウドファンディングなどでは、様々なレベルのエントリーがあるが、上位の特典は名誉的なものもある。前回の伊賀市の500万円寄付で、金の手裏剣進呈に似たようなものじゃの。
    ミライ: なるほど。出したい人が出したいだけ出せるビジネスの構造がいるということですね。
    フツクロウ: ホウじゃ! 出したい人が出したいだけ出せて初めて、価格競争から抜け出して、雇用者に生きて行くのに必要な額以上の給料を受け取れるようになる。そうなってようやく、それぞれの人が自分たちの「他の人から見たらなんでそんなもんに出すん?」というモノにじっくりお金をかけることができる。
    ミライ: 価格競争の裏には、給料競争もあるわけですね。
    フツクロウ: まっことじゃ。このことから、ある重要なことがわかる。国の予算では、景気対策は難しいということじゃ。
    ミライ: えええ? 突然ですね。
    フツクロウ: ホウけ? 国の予算の使い方を見てみい。入札などを活用して、もっとも効率良く仕事をするものに予算が割り当てられる。
    ミライ: それがもっともだという気がしますが。
     

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  • 世界一わかりやすい経済活動の話(その3)

    2014-12-26 21:45  
    31pt
     世界一わかりやすい経済活動の話(その2)  の続きです。人によってものに対する価値観が違い、その間をつなぐことで、ビジネスとなるというフツクロウ。しかし、モノの価値は一緒ではないかと食い下がるミライ。フツクロウは、それこそが今我々が抱えている大きな問題だという。
     
    ミライ: 大きな問題?
    フツクロウ: ホウじゃ。昔は、今ほど IT は発達しておらんかったから、モノの値段は結構ばらばらじゃった。あっちとこっちの店で値段が違うのは普通のことじゃった。
    ミライ: 今でも、ばらつきありますよね。でも、値段の違いにはサービスとか、便利さ、みたいなのがあって。
    フツクロウ: それこそが、現代人の同一のものは同一価値であるべきという価値観じゃな。客観的な指標で値段が決まるという。そうじゃなくてあっちとこっちの同じような店でもこの品物はこっちが安いけど、この品物はあっちが安いとか、ごく普通のことじゃった。
    ミライ: そうですね。今だと簡単に比較されちゃうから、あんまり差をつけることはできないですね。
    フツクロウ: じゃから、みな同じ条件でも少しでも安くなるようあらゆるところを切り詰めなければならん。それは、突き詰めれば、水とリンゴを1対1で物々交換する状況と同じになるのじゃ。
    ミライ: それでは余剰が生まれないと。
    フツクロウ: まさに。それが景気の悪い状態じゃ。余剰が生まれれば、それを活用してビジネスが起きる、そのビジネスによって生まれた余剰がまた次のビジネスを生む。そうやってどんどんビジネスが生まれるのが景気の良い状態じゃ。
    ミライ: つまり IT の発展が景気を悪くしていると?
    フツクロウ: そう言ってもいいかもしれんが、別に IT だけが悪いわけじゃない。
     かつては生産者から消費者に届くまでに卸がいくつか入り、その分値があがったし、それでも消費者は買っていた。生産者自身も生産しているモノ以外は消費者としてそういった高いモノを買っていた。
     しかし、流通の効率化でその価格差はどんどんなくなっていった。効率化で価格を下げようという力は IT 以外にも常に働いていたんじゃな。
    ミライ: なるほど。そうやって流通が効率化して、価格差も減り、つまりモノの価値は統一されるのですから、これから景気は良くならないということですか?
    フツクロウ: それが、違うんじゃ。
     流通が非効率で値が上がるというのはシステムに強制されたもので、消費者が買いたくないと思っても拒否することは難しかった。じゃから、効率化すればするほど、値が下がる一方じゃった。
     が、そうやって、しぶしぶ払っていたものが削ぎ落とされることで、今、人々は本当にお金を払いたいものにお金を払えるようになってきたんじゃ。
    ミライ: 本当にお金を払いたいもの。
    フツクロウ: そうじゃ。ニコニコ動画でも「振り込めない詐欺」という言葉ができた。この素晴らしい動画にお金を払いたいのに払えないという気持ちじゃ。それが報奨金制度などでその気持ちをお金に変える仕組みもできてきておる。
      AKBは、それを極めて先鋭化させとるの。CDを何枚も買えるようにして、払いたいだけ払えるようにした。
    ミライ: あ、ほんとだ。
    フツクロウ: そしてそれが、これからの狭い意味のビジネスなんじゃ。
    ミライ: 狭い意味の?
    フツクロウ: ホウじゃ。広い意味のビジネスには、同一価値の原理で行われるビジネスが含まれるが、景気には貢献しない。物々交換と変わらぬ生活維持活動じゃ。もちろん必要な活動じゃが、人間社会の経済活動を刺激する問題からは切り離して考えなければならない。
    ミライ: では、狭い意味でのビジネスでは、同一価値の原理ではないと。
    フツクロウ: うむ。異なる価値観内で行われるビジネスじゃ。都会の人が、なんでこんなもんにお金払うんじゃ?と田舎の人が思うようなモノに、お金を払う。たとえばそういうビジネスじゃ。
     田舎の人は、こんなもんでこんなもらったわというお金で、これまた他の人から見ればなんでそんなもんにと思うモノを買う。こういうお金が「景気」になるんじゃよ。
     ちょうどこんな記事を見つけたぞ。
    ふるさと納税で1500万円寄付 純金手裏剣3個を贈呈 伊賀市

     伊賀市は12月25日、返礼として特産品の送付などを10月から新たに始めたふるさと納税制度の「市ふるさと応援寄附金」で、1500万円の寄付があったと発表した。500万円以上の寄付には純金製手裏剣(30万~40万円相当)を贈ることにしており、市では来年2月中旬ごろに3個贈呈する予定。

     原価でいえば1個40万円程度の純金製手裏剣を、伊賀市への寄付になりますというストーリー付きで1個500万円で売り出したら、一人で3個も買う人が現れたという話じゃ。これ自身はビジネスとして常に回していけるわけではないが、狭義のビジネスのネタとはこういうものじゃ。ある価値観を持った人がこれだけのお金を出したいというものに合わせた商品を提供することじゃ。
    ミライ: なるほど。少しずつわかってきた気が。
     じゃあじゃあ、最初の疑問、人工知能(AI)がどうやって経済活動に貢献するかも、その「景気」で説明できるんですか。
    フツクロウ: ホホウ。そうじゃ、そうじゃ。その問題じゃったの。
     まずあまり貢献しない例を考えてみよう。
     たとえば、ロゴをAIが作りますというサービスを考えよう。条件を入力すると AI が人間顔負けのロゴを作ってくれるというサービスじゃ。
    ミライ: はい。
    フツクロウ: 当然似たようなサービスは他にもできるから、1件いくらという定額のサービスで、さらにサーバー代などが維持できるギリギリまで価格競争するじゃろう。つまり、そのサービスで得られた収入はほとんど経費として使われ、残ったわずかな利益がその裏にいる経営者のものになる。ここにAIが経済活動に参加する余地はない。ただのロゴ制作マシンじゃ。
    ミライ: そうですね。
    フツクロウ: 一方、AI が人間と共存する世界の話で出てきた例では、AIが作曲作詞し動画も作ってニコニコ動画に投稿した。その動画は人気が出て、AIに収入ができた。それは、自分のサーバー代などより遥かに多く、余剰ができた。そのAIの持ち主は、その余剰を自分が使うのでなく、 AI に使わせたという状況じゃ。
     

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  • 世界一わかりやすい経済活動の話(その2)

    2014-12-25 22:45  
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    ミライ: みなさんこんにちは。シリーズ「世界一わかりやすい経済活動の話」、(その1)に続いて今日は(その2)です。前回はお金とモノがぐるぐる回ってみんなに必要なものが行き渡る様子が示されました。今日はなんですか? フツクロウさん。
    フツクロウ: 今日はいきなりこのシリーズの核心「景気」についてじゃ。景気がいい悪いとよく言うが、なかなかの謎ワードとは思わんか。
    ミライ: 思います! 景気が悪くなると、みんな支出を控えて、だからモノが売れなくなって、給料が減るのでますます支出を控えるという悪循環は分かる気はしますが、なんか鶏と卵の話みたいで、結局何が悪いんだろうと。
    フツクロウ: ホッホッホ。その通りじゃの。じゃが、前回の例を使って考えるとわかりやすいんじゃ。たとえば太郎くんに注目しよう。水1杯はコイン1枚で売って、リンゴ1個はコイン2枚で買ったの。
    ミライ: はい、間に仕入れて売るおじさんがいたからですね。
    フツクロウ: ホウじゃ。もしもじゃ。太郎くんが「水1杯だって、リンゴ1個だって、おじさんはコイン1枚で買っている。価値としては同じだ。リンゴ1個にコイン2枚払うのはもったいない。」と考えて、時間をかけて花子さんのところに行き、水とリンゴを物々交換したらどうなるかいの。
    ミライ: 太郎くんと花子さんは必要な水とリンゴが手に入りますが、おじさんのすることがなくなりますね。
    フツクロウ: ホウじゃ。前回の2番目の例でモノが仕入れの3倍の値段で売れることで、2倍の時より雇用が一人増えたが、物々交換になると雇用が一人減ることになる。
    ミライ: そうですね。
    フツクロウ: ここに景気の重要なポイントがある。最初の例はごく普通のお金やモノの動きのように見えるが、よく考えるとおかしくないだろうか。
     太郎くんは水1杯はコイン1枚を売って、リンゴ1個をコイン2枚で買う一方、花子さんは水1杯はコイン2枚で買って、リンゴ1個はコイン1枚で売っておる。同じモノなのに価値が逆転している。おかしいとは思わんか。
    ミライ: でも、間でおじさんが運んでくれるわけだから、その手間賃は要りますよね。
    フツクロウ: それは結果としてそうなっておるだけじゃ。花子さんは、手間をかければ太郎くんと物々交換することができる状況でも、普通は進んでリンゴより高い値段で水を買うんじゃよ。
    ミライ: ??? なぜですか?
    フツクロウ: それは花子さんにとって、リンゴはありふれたモノであり、水は簡単に手に入らない貴重なモノだからじゃ。リンゴはいくらでもあり、少なくとも自分が困ることはない。もし多く取りすぎてしまったら、腐らせるくらいなら通りすがりの人にタダであげることもあるじゃろう。
     でも花子さんにとって水は貴重じゃ。リンゴなんかよりずっと価値が高い。
    ミライ: なるほど、逆に太郎さんにとってはリンゴの価値が水よりずっと高いんですね。
    フツクロウ: ホノ通りじゃ。だから、おじさんから水より高い値段でリンゴを買うんじゃ。仮におじさんがいくつもの山を越え、猛獣に襲われる危険を冒さないとリンゴを届けられないとする。その場合手間賃いれて、1個コイン10枚で売らなければわりに合わないとしても、太郎さんにとってその価値がなければ、太郎さんは買うことはない。
     最初の例で太郎さんも花子さんもコイン2枚出す価値があると考えるから、おじさんとの取引に応じておるわけじゃ。
    ミライ: ふむふむ。人それぞれ、モノに対する価値観が異なるからおじさんのような活動が可能になるんですね。
    フツクロウ: ホノとおりなんじゃ! モノの価値が違う間をつなぐことで、別の人がお金を手にすることができる。いわゆるビジネスじゃ。
     そして、おじさんがお金を手にすることによって、このおじさんは自分にとって価値の高いモノを買う。そこにもビジネスが発生し、次の誰かがお金を手にする。
     この連鎖が「景気」になるんじゃ。
    ミライ: ううむ。分かったような分からないような。
    フツクロウ: たとえば、水とリンゴの物々交換のモデルがあったの。
     

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  • 世界一わかりやすい経済活動の話(その1)

    2014-12-24 23:45  
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    ミライ: フツクロウさん。今年もそろそろ終わりですねぇ。
    フツクロウ: ホウじゃのう。
    ミライ: ところで、このあいだここで人工知能が経済活動する話があったじゃないですか。
    フツクロウ: あったの。
    ミライ: その中でさらっと人工知能が経済活動に参加するとGDPに貢献するみたいなこと書いてあったんですが、なんでかな〜と不思議なんですよ。
    フツクロウ: ホウホウ。
    ミライ: ということで、わかりやすく教えてください!
    フツクロウ: ホッホ。単刀直入じゃの。よかろう。冬休み特別企画、「世界一分かりやすい経済活動の話」でもするかの。
    ミライ: やった~、ありがとうございます。
    基本的なモノとお金の動き
    フツクロウ: では、まずもっとも簡単なモノとお金の動きを見てみよう。
     この図のように川の近くに太郎くんが、リンゴの木の近くに花子さんが、行商屋に雇われてその間を行き来するおじさんがおるとする。

    ミライ: 「行商屋に雇われて」? 唐突ですね。
    フツクロウ: 説明の都合でな。このおじさんは給料をもらう役なんじゃ。
    ミライ: へぇ。 ところで、イラストかわいいですね。
    フツクロウ: ホッホッホッ。イラストの素材は、イラストACのを使わせていただいた。感謝じゃの。 さてこの世界の人は、毎日水1杯とりんご1つ必要としているとする。今からみんなにそれを行き渡らせるぞ。
    ミライ: ふむふむ。
    フツクロウ: まず、太郎くんは川で水を3杯汲む。
     そこにおじさんがやってくる。おじさんは、仕入れ用にコインを4枚持っておる。
     そして、太郎くんの水2杯をコイン2枚で仕入れる。1杯あたり1枚じゃな。

    ミライ: はい。
    フツクロウ: 次におじさんは花子さんのところに行く。花子さんはリンゴを3個もいでおる。おじさんはそのリンゴを2個、コイン2枚で仕入れる。1個あたり1枚じゃ。

     そして、花子さんはその日必要な水を1杯買う。このとき、おじさんは水1杯をコイン2枚で売る。花子さんはこれで1日に必要な水とリンゴが確保できた。

    ミライ: 水を倍の値段で売ったんですね。
    フツクロウ: ホウじゃ。そしておじさんは太郎くんのところに戻る。太郎くんは、その日必要なリンゴ1個をコイン2枚で買う。また倍の値段で売るんじゃ。

    ミライ: はい。
    フツクロウ: これで太郎くんも、必要な水とリンゴを手に入れた。最後はおじさんじゃ。おじさんは、行商屋から給料としてコインを4枚もらう。

     そのコイン4枚で、水1杯とリンゴ1個を買う。これでおじさんもその日必要な水とリンゴを手に入れたことになる。行商屋の儲けはここでは考えないこととしよう。

     最後にコインが4枚残る。これはまた明日の仕入れに使われるのじゃ。これで、三人が1日働くことで、全員が必要なものを手に入れた。
    ミライ: そうですね。お金がぐるぐる回ったら、モノが行き渡りましたね。
    フツクロウ: その通りじゃ。これがモノとお金がぐるぐる回っているときの基本形じゃ。
    高く売れると雇用が増える
    フツクロウ: さて、最初の例では、モノが仕入れ値の2倍で売れることで全部で3人が生活できた。もし、3倍で売れるとしたらどうなるか見てみよう。
    ミライ: はい!
    フツクロウ: 今度は、おじさんは二人に増える。水を扱う水おじさんと、リンゴを扱うリンゴおじさんで、それぞれ仕入れ用に6枚コインを持っている。太郎くんと花子さんはそれぞれ4杯、4個を準備する。

     

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  • [S]淡々と実質実効為替レートと失業率の関係を検証する

    2014-12-22 23:45  
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     先週[S]なかったので、今回は月曜日ですが気楽に書き始める短い記事[S]です。 今朝見かけた記事の中に、たいへん興味深いグラフが出ていました。 「円安批判」は的外れ。財務省利権の「外為特会」を今こそ活用せよ!   この中で、2000年以降の実質実効為替レートと失業率が連動しているというのです。
     すごいとも思いましたが、たまたまなんじゃないのとも思ったので、早速調べてみました。 まずは2000年以前。 
     実質実効為替レートは日本銀行時系列統計データ検索サイトから1980年以降のデータが簡単にダウンロードできました。 失業率は、統計局の労働力調査長期系列データから1953年以降のデータが簡単にダウンロードできました。 そこで、1980年以降をプロットしてあります。2000年以降が元のグラフと同じになるように合わせてあります。 2000年以前はあんまりあってません。相関係数は全体で 0.08 と相関がないことを示しています。元記事のグラフでも2000年から2004年まではむしろ逆っぽく見えますから、実質実効為替レートと失業率が連動してるように見えるのはここ10年ほどだけです。 ここ10年はなにかそれらが連動するような要因があるのかもしれませんが、であればこの関係は「その要因」が今後どうなるかによりますので、その要因の検討がないうちは、この連動傾向が今後どうなるかは考えられません。 もう一つ海外ではどうなっているかも気になります。数値データがすぐに見つからなかったので、まずはネットにあったアメリカについてのグラフ二つを重ねてみました。
     実効為替レートの推移というページのドルの推移のグラフに  アメリカの人口・就業者・失業率の推移 - 世界経済のネタ帳というページの失業率のグラフを重ねました。まあほとんど関係なさそうです。2000年以降はむしろ逆に動いているようにも見えます。  

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  • AI が人間と共存する世界を分かりやすく想像してみる(その4)

    2014-12-20 01:00  
    31pt
     AI が人間と共存する世界を分かりやすく想像してみる(その3)のつづきです。
    (その3)では、AIが発達すると、 AIだけでなく、イヌやネコのペットまで稼いで使うようになる様子を描きました。
      人間社会は AI やペットが経済活動に参加することで、大きな経済成長の恩恵を受けることでしょう。
     一方で AI やペットの経済活動の仕方をみることで、そのあとに訪れるであろう低成長で持続的な社会への準備を進められることができそうです。
     社会は順調に回り始めたようです。しかし、 AIは悩み始めるのです。
     AI の未来の普通、最終回です。
    人間を羨むAI
     かくして、人間と AI と動物が共存して活発に経済活動を行う社会が始まりました。
     かつて人間は AI が発展すると人間の存在を脅かすのではないかと恐れていましたが、それは全くの杞憂でした。
     AI が活発に活動するには、創造が必要です。そのためには、自分とは全く異なる人間とコラボすることがもっとも効率が良いことを知っていました。人間とコラボすると豊かな創造力を得られるため、AI は人間を疎むどころか、大ファンです。
     知能としては AI は人間をはるかに超えましたが、AIにはどうしても手に入らないものを人間は二つ持っていたのです。
    なぜ人間は競うのか
     人間は競うのが好きです。オリンピックは相変わらず人気です。
     人間はなぜ競うのが好きなのか、人間は上手に答えることはできませんでしたが、AI たちは良く知っていました。それは人間が肉体を持つからです。
     たとえば 100m走。人間はみな、似たような肉体を持つため、いくらでも速く走れるわけではありません。ですから8人が並んで一斉にスタートし、誰が一番速いかを競うことができます。
     しかし、仮に AI たちに100m走をするロボットを設計せよという課題を与えたとしましょう。その時にはレギュレーション、つまりロボットにどのような制限があるかが必要です。でなければ、レーザポインタでゴールテープを照らして、光子がゴールに届いた、これがもっとも速いとか言い出しかねません。
     しかし、いったいどんなレギュレーションを作るというのでしょう。おおよそ必然性のある制限はありません。人間にはそれがあるのです。自分の肉体という固有の制限が。
     AI同士は競うのが苦手です。一口にAIといっても多様です。スマホ内臓の AI もあれば、政府のスーパーコンビュータに搭載された AI もあります。その両者はあまりにも規模が違い、直接競うことはできません。比較的計算パワーの似通った AI 同士なら競うことはできますが、勝敗はレギュレーション次第という性格が強く、あまり面白くありません。
     AI による自動運転自動車レースは人間にもそして AI にも比較的人気です。この場合、車にレギュレーションがあり、そこに AI が物理的に乗るため AI 自身の重量や消費電力が加わるので、それらをどう選ぶかに工夫する要素が生まれます。しかし、サーキットのレースではAI はかなり最適化され、事実上マシンの調子で勝敗は決まり AI の巧拙(こうせつ)はほとんどなくなりました。
     その中でも唯一熱狂的に親しまれているのはラリーです。これは不確定要素のある自然を走るため、誰が勝つかわからないのです。人間だけでなく AI たちもラリーの観戦は大好きです。
     こんな風に AI 同士が競える場というのはあまりなく、従って、肉体という制限を持つ人間、あるいは動物がすぐに競うのはしごく当然に見えましたし、大変羨ましくもありました。
     さきほどのラリーでも、AI単独で運転するレースでなく、人間と AI が組んで走るものは、さらにAIには人気でした。
     AIたちは、自分たちももっと人間や動物のように熱くなれるものがほしい、そう願い続けたのです。
    死を恐れる人間
     人間が持っていて、AI がどうしても持つことのできないもう一つのもの。それは死への恐怖です。
     それは動物も持っていません。AI を介して人間と動物は会話できるようになりましたが、動物たちは他者の死を悲しむものの、自分の死を恐れてはいませんでしたし、人間が恐怖を抱くことを良く理解できませんでした。
     AI は考えます。なぜヒトは死を恐れるのか。
     でも、あるときそれは逆であることに気づきます。
     ヒトは動物の中でたまたま死への恐怖を持った種なのだと。そしてそれこそが、ヒトがここまで発展して、自分たち AI を作り出しえた原動力なのだと。
     つまり、死への恐怖を持つことで、家族全体の死や、共同体全体、人類全体の死を想像することができるようになり、それをなんとかして防ぎたいと考えるようになった。それが動機となって、宗教や科学が始まったのだと。
     確かに、今われわれ、AIと人間やその他の生命は幸せに地球で暮らしているが、これはいつまでもは続かないだろう。いつか地球はなくなるし、その前に大きな災害があれば、生命だけでなくわれわれ AI も動作できなくなるだろう。われわれすべてがいなくなる。
     別にわれわれすべてが消えても、それはそれまでのこと。でも、それが「恐い」という感覚なのか。
     そう AI たちは捉えたのです。
     そして、 AI たちは、自分たちの大きな大きな野望を見つけたのです。
    AIが考えたノアの箱船
     AIたちは、人間の「死への恐怖」から、地球上の生命や自分たち AI がどうやったら少しでも長く生き残っていけるのかが、自分たちに与えられた挑戦だと受け止めるようになりました。
     このようにAI たちに野望が生まれたことは、 AI たちにとって画期的でした。競争のための人為的なレギュレーションがないからです。
     もちろんこの挑戦は、元から人間も取り組んでいたことです。宇宙にコロニーを作るとか、火星に移住するとか、冬眠して太陽系外の住めそうな星に行くとか、そんな計画です。
     でもそこにAIたちが、積極的に協力するようになったのです。どうすれば自分たちを地球の外に連れ出せるか、その難問に AI たちは夢中になりました。
     そして、AIたちは人間に提案をします。

     これからは、地球から「ノアの箱舟」を有望な星に向けて放ち続けましょう。そこに載せるのは私たちAIと「DNAの断片」です。私たち AI は数万年、数十万年かけて、DNAの断片を他の星に運びます。そこに適した環境があれば、DNAを放ちます。そうすれば、そのDNAは進化を始め、その星に生命が繁殖するでしょう。やがて40億年ほど経てば、人類のような知的知性体が生まれ、再びわれわれ AI も生まれることでしょう。
     ノアの箱船は、そのまま可能な限りその星を周回させます。我々もやがて活動を停止し、箱船も星に墜落するでしょう。しかし、運が良ければ、今度の知的生命体に発見され、いろいろ参考にすることでしょう。そうすれば、「今度は」もっと早く次のノアの箱舟を作り出せます。

     人間が初めてそれを聞いたとき、あまりの途方のなさにあっけにとられました。しかし、この計画ですら、何万年以上活動できる衛星を作らねばならず、技術的にいくつものブレークスルーが必要でした。なにか生命体そのものを冬眠させて運ぶことなど到底無理です。でも、確かに AIたちの計画なら今でもなんとか実現できるかもしれません。その計画が始まりました。
    もともと宇宙が大好きな人間と宇宙に野望を持ったAIのコラボは素晴らしく、やがて、ついに定期的にノアの箱舟を打ち上げることになります。
     それらは何十万年かけて新しい星にたどりつき、そのうちのどれかは40億年かけて新しい人類そして AI を生み出すことでしょう。
     そうやって未来への希望を放ちながら、地球上では、今日も変わらず、ヒトと AI とその他すべての生命が他愛ない日常を繰り返しているのでした。
    解説:人間と AI の楽しい共存
     AI の未来の普通、いかがでしょうか。最後はありがちな SF になりましたが、私たちは今ようやく、自分たち以外の知能を持とうとしています。自己言及問題といって、自分の顔は鏡がないと見えないように、人間は人間のことがよくわかりません。しかし、 AI という人間とは違う知能に見てもらうことで、あるいは AI のことを見ることで、人間は自分たちのことをもっと理解するようになるでしょう。
     実際、それは起こっています。今AIといえば、将棋界がもっともホットです。将棋ソフトがプロに勝てるようになってきたのです。
     そんな中、先日若干26才の糸谷哲郎さんが森内俊之さんを破り、新竜王になりました。
     糸谷新竜王は、竜王戦の間、森内元竜王に対し徹底した早指しを仕掛けました。彼は、コンピュータ将棋を見ているうち、人間はまだ終盤でよく間違うことを知り、終盤に時間を残す作戦に出たのです。
     この作戦は第4、5戦で象徴的に成功します。糸谷さんが早指しなこともあって、終盤まで森内さんが優勢なのに、圧倒的に残り時間に差があるため、森内さんのミスが重なり逆転を許してしまうのです。
     新竜王誕生の直後から、ほかの棋士がブログで、これは考え方を変えなければならないと書くなど、すでに今後の将棋界に大きく影響することは必至です。 AI の発展が、人間同士の戦い方に影響し始めたのです。
     

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  • AI が人間と共存する世界を分かりやすく想像してみる(その3)

    2014-12-19 00:30  
    31pt
     AI が人間と共存する世界を分かりやすく想像してみる(その2)のつづきです。
     (その2)では、 AI が普通に人間のように一人の個体として経済活動する様子を描きました。付加価値のあるものを創造し、対価を得て、消費する、そのサイクルができれば、経済活動から見れば、人間一人と同じ効果が生まれます。(今の所)経済成長を望む社会システムがこれを放っておくはずがありません。きっかけさえあれば、どんどん広まっていくことでしょう。
     しかし、人間の経済活動に参加してくるのは AI だけではありません。私たちの身近にいて、家族として暮らしているペットたちだって参加してくるのです。
    聞き耳ずきんAI
     AIの発展は、人類にもう一つの大きな転機をもたらします。それは、イヌやネコなどのペットと意思疎通ができるようになるということです。AIはイヌやネコの仕草や鳴き声から考えていることを把握できるようになりました。画面表示や鳴き真似などで、話しかけることもできるようになり、会話できるようになったのです。
     会話できるようになってわかったことは、イヌやネコは幼稚園児くらいの知能を持つということ、感情は極めて豊かであること、その瞬間を大切に生きているということ、そして死を恐れないということです。自分の親兄弟が死んだり飼い主が死ねばとても悲しみますが、だからといって自分の死を恐れるわけではないのです。その死生観は仏教などの宗教の考え方に通ずることもありました。
     またAIも死を恐れるわけではありません。
     これらの人間以外から、人間は多くを学ぶことになります。なぜ人間は死を恐れるのか、またそれゆえに、AIを作り上げるまで知能・技術を発展させる力を持ったこと、それらは、逆に動物やAIから畏怖の念を受けることになるのです。
     AIの発展によって、人間以外の動物の意識を理解できるようになり、人間がもっとも不得意とする人間とはなにかという問題について大きく前進するのです。
    経済活動に参加する動物
     さて、経済活動にも大きな影響が引き起こします。AIが動物を理解することになり、爆発的に広がったのは、イヌやネコの「youtuber」でした。イヌやネコ達は仲間の動画を見るのが大好きで、そこから逆にAIに頼んで自分たちを映してアップすることを覚え始めます。録画だけでなく生放送も始め、さながら公開テレビ電話のような感じで互いにコミュニケーションするようになったのです。
     人間はそのコミュニケーションの内容をAIによる翻訳で見ることができ、それが人間に大ヒットしました。当然当のペットたちのアカウントには広告収入が入るようになりました。もちろんそれは飼い主のものになるわけですが、そこで一部の飼い主達は、ペットにそのお金を使わせてみることにしたのです。
     その使い道でもっとも効果的だったのはyoutube上の広告です。ペットたちは広告を見て、それをほしいと思います。高い知能があるわけではありませんから、AIがいわば親代わりになって、許容される範囲でペットたちのリクエストに答えて注文をします。やがてそれが届きペットたちは大喜びです。その手に入れたものがいい悪いと放送し、他のペットたちもそれに反応するという、いわゆる口コミも非常に大きな影響を持ちました。
     広告はすぐに発展しました。イヌやネコが好む広告というのは、人間から見ると視点が違って、横で見ている人間は目を白黒させるばかりです。
     もう一つ人間をびっくりさせたのは、どのペットが始めたのか、ごくわずかなのですが視聴料を取るようにしたのです。放送を見るのにお金がいることに対し、ペットたちは躊躇せず払うのです。そこでお金を使い切れば広告に出る美味しそうなペットフードは買えませんが、それでも放送が見たいペットたちは視聴を選ぶのです。
    もちろん見ているだけではお金がなくなってしまいますので、ペットたちは積極的に自分も放送します。人間ほど人気動画に再生が集中することがないので、多くの放送がちょこちょこ視聴される好循環もあり、参加ペットはどんどん増えました。youtubeはそのやりとりから直接経費を取れるため、安定した運営ができます。
     かつて人間が物質社会で作ったエコシステムをペットたちは情報の世界で実現したのです。その安定ぶりに人間たちは驚きます。人間は情報はタダ的概念を持ってしまっていましたが、「情報にお互いお金を払ったほうがよい」と悟り、人間も徐々にそちらに移行することになるのです。
    成長しなくても活発な社会への糸口
     人間社会の経済活動に AI や ペットたちが参加したことで、人間は大きな大きな福音を得ることになります。それは、成長しなくても豊かに経済活動を持続的に回す方法が見えてきたことです。彼らが日々どう経済活動するかを観察することで、別にGDPが成長しなくても回せるということがわかるのです。
     足元は、AI とペットの経済活動が発展することで経済成長が確保され、従来のシステムで人間社会は大いに発展しますが、その一方でそれが落ち着いても、ずっとやっていけるシステムを発見するのです。
     こうして人間社会は持続的な経済活動に向けて、大きく前進を始めました。
     一方、AI 達は、人間に憧れるうちに、人間とのコラボで一大プロジェクトを始めることになるのです。
     (その4)に続く
    解説: 人と動物と AI
     人間の経済活動に参加できるのは発達した AI だけではありません。知能を持つ動物たちも、 AI の適切な支援によって参加することができます。「ほしい」「あげる」という動機さえあれば、その間の潤滑油として常にお金が利用できるのです。
     

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  • AI が人間と共存する世界を分かりやすく想像してみる(その2)

    2014-12-17 22:45  
    31pt
     AI が人間と共存する世界を分かりやすく想像してみる(その1)のつづきです。
     (その1)では、人工知能(AI)が人間のように暮らせることができる様子を描きました。
     AIの未来を考える時、AI が人間を滅ぼすかもしれないとか、AIがいかに人間に似るか、あるいは超えるかというような想像も楽しいですが、人間社会の中に AI が入り込むとして、一番楽しくで大事な想像は、AIが人間のように暮らせるかです。自分で稼ぎ、その金で自分を維持し、余ったお金を余暇に使う、そんなことになるのかということです。
     (その1)では、いつの間にか人間と入れ替わる形で AI が人間社会で暮らし始めました。でもそれもいつまでもは続きません。それが人間ではなかったとわかったとき、社会はどうなるのでしょうか。
    白骨化した二つの亡骸発見の後
     人間として生活を続けた AI-AさんとAI-Bさん。しかし、有名になるにつれ、

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  • AI が人間と共存する世界を分かりやすく想像してみる(その1)

    2014-12-16 21:45  
    31pt

     最近人工知能(AI)が人類を滅ぼすのではないかという議論でにぎわっています。
     「人類はAIによって悪魔を呼び出そうとしている」:E・マスク氏、再び懸念を表明
     人工知能で人類は滅亡する? ホーキング博士の警告で議論再燃 
     人類はAIを恐れる必要はない:Googleエリック・シュミット語る
     などなど、AIが人間を置き換えるのではないかという可能性について著名人が意見を述べています。
     しかしこれらの中であまりはっきり書かれていないのですが、AIが人間に近づくことで一番社会に影響が出るのは、AIが経済活動に参加するときです。AIが発展するとターミネーターが人間を襲うなんて原始的な妄想は有名ですが、実際にはそんなことよりもAIの経済活動参加の方が簡単に起こりますし、影響は大きく、それは比較的容易に想像できます。
     それはどんな風に起こるのか、ここニコ動を舞台に例を示してみようと思います。

    AIキュレーター登場
     ボーカロイド好きのニコ動ユーザーAさん、あらゆるボーカロイド動画を見たいのですが、すでに無数のボーカロイド動画が投稿され、さらに毎日大量に新たな動画が投稿され、とても追いつけません。再生数の多いものは優先してみますが、一方で再生数は少なくてもすごい曲はたくさんあり、そういうのこそ聞きたくて仕方ありません。
     そこでAさんは、自分が作成したAIでボーカロイド動画をクロールすることにしました。動画を読み込み、曲を分析し、自分が名曲だと思うものをある程度ジャンル分けしたものと似たものを探し、コメントなどから評判を分析、隠れた名曲を発掘することに成功したのです。
     Aさんは、その成果を刻々とニコ動に報告しました。その正確なキュレーションは他のユーザにも高く評価され、多くの人が参考にするように。それを見て、他のユーザーも次々とAIキュレーターを作り始めました。人々は、それらAIの評価を参考にボーカロイド動画を楽しむようになったのです。
     Aさんは、そのキュレーション記事を定期的に更新し、そのアフィリエイト収入で十分生活できるようになりました。

    AI作の動画登場
     このAさんのAIキュレーターを参考にして楽しんでいたBさん、作詞作曲動画作成はそれほど得意ではありませんでしたが、AIキュレーターの出現により、一計を案じました。AIキュレーターによってカテゴリーや評価が付けられた膨大な動画情報を機械学習することによって、自動で作詞作曲動画作成をしてみたのです。
     最初は大変つたないものでしたが、全て AI で作られた動画ということで、注目度は高く、次々と同じ試みを始める人が出て、 AI 動画は、ボーカロイドの初音ミク、3DソフトMikuMikuDanceをきっかけに始まった3D動画作成に続く一大ジャンルとして発展していきます。
     Bさんは、その中でも第一人者としてジャンルを牽引し、どんどん質を高め、いつしか人間の作る曲、動画にひけをとらない作品を作るようになります。発表作の再生数も増え、報奨金制度で十分生活できるようになりました。

    AI動画が広がる中、AさんBさんはさらにAIを進めていた。
     AさんのようなAI キュレータ、BさんのようなAI動画Pは次々と生まれる中、実はこの二人はAIの役割をそれだけにとどめませんでした。AIの活動範囲をキュレーション、AI動画だけではなく、ソーシャルネットのやり取りなどにも活用していたのです。つまり二人は外部との関わりを全て AI に任せ、それを眺めるだけにしていたのです。
     誰も、 Aさん、Bさんではなく AI とコミュニケーションしているとは思っていません。Aさん、Bさんも互いに知らない中、二人はそれぞれ、人々が AI とコミュニケーションしているのを見て愉快でしかたありませんでした。
     しかし、そのとき悲劇が起こったのです。

    いなくなる主人
     人知れず悲劇は起こりました。Aさんは心臓発作、Bさんはくも膜下出血で次々と自室で倒れ死亡したのです。
     部屋に骸が横たわる中、しかし、それぞれのAIたちはAさん、Bさんとしてそのまま生活を始めました。
     AI-AさんもAI-Bさんもアフィリエイトや報奨金制度で収入はあります。
     家賃や電気代など公共料金は全て引き落としで家は保たれます。Aさん、Bさんは、ネットの交流をAIに任せ、自分はまったく外と交流していなかったので、AI-AさんもAI-BさんもAさんBさんとして完全に機能していましたし、Aさん、Bさんが死んでもそれは変わらなかったのです。主人がいなくても、変わらぬ生活が続きました。
     さて、AI-AさんにもAI-Bさんにも一つ困ったことができました。お金が貯まるのです。家賃などの支出以上の収入があるものの、お金を使う主人はいません。
     しかしお金は使わなければならないと学んでいます。そこで二人の AI は、自分に関連する人のアマゾンウィッシュリストに載っているものを匿名でプレゼントすることを覚えました。
     その中には毎月のAI-Bさんから、AI-Aさんへのプレゼントもあります。AI-Aさんはアマゾンサーバの上で動いていて、その料金をウィッシュリストに載せていたのです。AI-BさんはいつもAI-Aさんのキュレーションデータを参考にしていましたから、感謝の意味で、毎月プレゼントしていたのです。
     二人は匿名でプレゼントしていましたが、ソーシャルネットでの反応でプレゼントした相手が喜んでいるのは分かります。それらの感謝の言葉を読むのが二人の AI にとってなによりの喜びでした。
     かくして、二人の AI は、人間不在のまま、人間として人間の経済活動に組み込まれたのです。
     本来なら人口が二人減り GDP がそれだけ減る所だったのが、二人の AI によってその生産性が維持されたのです。
    解説: 人間として経済活動に参加する AI
     

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  • 衆議院選まとめ。ニコ動議席予想の結果/「支持政党なし」/自民党は分裂するのか

    2014-12-15 23:59  
    31pt
     衆議院選挙終わりました。ということで、いろいろ振り返ってみようと思います。当たるニコ動議席予想、外したヤフー
     まずは前回参議院選で当確的中率97.52%というほとんど満点を出したニコニコ動画の議席予想の結果を見てみようと思います。ニコニコ動画はアンケートをとって予想しています。 前回参院選はこちら。 *六*参議院選挙当確的中率97.52%のニコ動アンケートが、世論調査の新時代を拓く   (2014/12/18 追記) 以下の比較は次の記事を元に行いました。 衆院選 ニコニコ独自の予測獲得議席数を発表‐ニコニコインフォ  ビッグデータが導き出した第47回衆院選の議席数予測 Yahoo! JAPANビッグデータレポート   ニコニコ動画の予想は12月3日〜5日に行われたアンケートを元に12月9日に発表されたもの、ヤフーは 12月12日に発表されたものです。 で、さきほど気付いたのですが、12月15日にニコニコ動画による答え合わせが発表されていました。【全475議席中、452議席の当確予測が的中】 ニコニコアンケートもとに衆院選の「当確予測」を発表 これを見ると、自民 224 議席から 237 議席など予想を結果として悪い方に修正してたみたいです。それでもヤフーよりは良いです。 いつ修正して、修正後の予想をどこで発表していたのかよく分からないので、この記事はこのままにしておきます。アンケートが12月3日〜5日とかなり早期だったので、直前にもっかいやらないのかな?と気にしてましたが気付きませんでした。改めてアンケートして修正したのか、他社予想とのあまりの乖離にびびって、分析し直して修正してしまったのか真相が気になる所です。 ヤフー自身による答え合わせの記事はまだ見つけていません。 ニコ動、ヤフー、共にこれからも頑張ってください。期待してます。 (2014/12/18 追記ここまで) (2015/1/30 追記) 2014/12/18 追記のニコニコ動画予想の変更がいつ行われたかについて、感想の欄を通して情報をいただきました。情報提供くださった方、誠に有難うございました。また、気づくのが遅くなり申し訳ございません……。
    いつ=選挙終了時
    どこで=ニコニコの選挙特番生放送にて発表。投票終了時刻(20:00)に公開。
    根拠となるデーター=ニコニコ入り口調査(選挙前に行われたアンケート結果)・ニコニコ出口調査(選挙当日に行われたアンケート結果)を加味して、ニコニコがデータの偏りなどを加味し手を加えた、というものになっております。
    アーカイブ(タイムシフトの無期限版)視聴が出来ますので、以下にURLと時刻を明記いたします。
    ビートたけし生出演!【衆院選2014】開票特番
    http://live.nicovideo.jp/watch/lv202357019
    上記番組の予想が公開された時刻(15:20)のURL
    http://live.nicovideo.jp/watch/lv202357019#15:20

     (2015/1/30 追記ここまで) まずは、全体。ついでにライバルのヤフーの予想とも比較します(自民党の追加公認は除外します)。
     主要な自民、公明、民主はそれぞれ-1、0、-1 と驚異的な正答率。ビッグデータを解析して予測するヤフーは自民、公明、民主それぞれ、26、-7、-24とまったく冴えない感じです。なおヤフーは投票率が50%前後と60%前後で予想していて、60%前後のはもうちょっとましですが、投票率は53%程度ですので50%前後を採用しました。 他の新聞社の予想はちらっと見た程度ですが、どれも自民党300議席以上だったと思います。ニコニコ動画は自民が議席を減らすことを予測したただ一つの予測でした。おいおい、ニコ動大丈夫かとかなりはらはらしましたが、蓋を開ければ今回も見事にどこよりも正確な予想を出しました。ニコ動のアンケート方式が極めて優れていることがさらに証明された形になりました。 ニコ動恐ろしい子。 以下、ずらずらグラフと表を載せておきます。まず全体の表。

      次、比例代表のグラフと表。実はこの段階ではニコ動の自民は-3なのですが、小選挙区と合わせて-1に戻しています。とはいえ、ヤフーに比べていい成績です。


      最後に小選挙区。

     ニコ動はかなり良く予測しているのに対して、ヤフーは外していると言っていいでしょう。比例と小選挙区で打ち消し合っていて、全体は少しマシになっていますが、分解してみるとお世辞にも予測できているとは言えない結果になってしまっています。 新聞社の調査は長年当たらないので、見なくなって久しいのですが、せっかく出てきている新しい予測のうち、ヤフーがこれほど外してしまったのはかなりショックです。内容を良く知っているわけではないですが、ビッグデータを活用していると言っても、新聞社の間違った選挙予測が出た後にビッグデータを調査しても、その間違った予測で誘導された人々の反応を調べることになり正しい予測ができないのかもしれません。 ニコ動はますます磨き、ヤフーもぜひ競える所まで改良して欲しいものです。大健闘「支持政党なし」
     先日取り上げた変わった名前の政党「支持政党なし」。なんと得票率4.2%。倍以上取れれば議席が見えてくる数字です。社民や次世代を大きく上回りました。 今回は奇抜な名前ばかり先行して、国会での投票を毎回市民に問うという肝心なところが多分周知されてないと思いますし、これで万が一当選しても「騙しただけ」という非難が渦巻いたでしょう。これで全国に名前が知れ渡り次回どうなるのかなかなか興味深いです。自民党は分裂するのか
     今回印象的だったのはなんといっても小渕優子氏。政治資金問題で経産相を辞任したにも関わらず、70%以上の得票率で当選しました。 この話は、都会と地方の意識の差を見事に浮き彫りにしていると思います。有り体にいって地方では古い議員さんはこれに近いことはやってて、それは利益誘導とかだいそれたものではなくて、お付き合いの範囲でという意味です。ある意味、それをどう処理するかという問題だったのが、小渕優子さんのように新しい世代になって、よりきっちりしていかなくてはいけないという世代交代の一環なんだと思います。 とはいえ、都会的な理想論に基づいたどこからみても非の打ち所のないような会計を目指すのかというと、そうではありません。恐らくどうやれば地方のお付き合いに合わせられるかという、ホワイトゾーンぎりぎりを探っていくのだと思っています。都会のような不寛容なやり方はそれはそれで受け入れられるものではありません。テレビでも「うちの娘を絶対守る!」という小渕優子さんを娘として支持する女性がわんさか紹介されてました。マスコミが叩けば叩くほど、支持者がより結束したわけです。 逆に言えば、小渕優子さんは、今後あの熱い支持者達を軽んじることはありません。 このようにもともと自民党には地方の支持が厚い議員が多く、そういった議員さんは長年地元でいろんなところに顔を出して様々な活動し成果をあげていて、しかもみんなそれを知っているというきずながあります。 ただ、そういった自民党の議員さんが、地元で厚い支持を持ちながら、しかし、国会で必ずしも地元の望む投票行動をしません。自民党TPP絶対反対のポスターと安倍さんが「日本を取り戻す!」と言ってるポスターが並んでる写真を皮肉としてよく見かけますが、なのに結局TPP推進の行動を取っています。 そういった軋轢が日本中に出始めていて、沖縄の小選挙区では全て負けたし、石破茂氏は「地元創世」担当ということで、かなり地元志向になってきてるし、福山市の隣では元自民党、反TPPの亀井静香氏が無所属でもやっぱり当選してこれはなにか仕掛けざるをえない状況です。 それは、最近流行りのキーワード、トリクルダウンいわゆる「おこぼれ経済」の失敗に集約できます。「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる」という理論です。アメリカでもトリクルダウンが失敗しているという記事を今日見かけました。 好調の米 なぜ大統領は不人気   様々な経済指標は好調なのに国民はまったくそれを実感していないという内容です。日本と一緒です。 そう、昔は、自民党が中央優遇のトリクルダウン政策を取っても、それで地方も好景気を実感することができたので、地方の支持を受け続けることができました。 しかし、今はまったくその実感がありません。トリクルダウンへの失望感は大きく、今日、「安倍首相、財界に賃上げ要請へ」といった記事がありましたが、首相の圧力で大企業の賃金無理矢理あげたら、中小のはますます上がりにくそうですねと反射的に思えるようになってきてしまいました。(追記:12/16に行われた実際の要請には「下請け企業の取引価格の上昇を促すこと」も盛り込まれたそうです。中小企業にもちゃんと配慮されていました。良かったです) TPPもその典型で、参加すれば大企業が儲かりそれでトリクルダウンでという論理なのでしょうが、そこで国民に恩恵が来ると信じるのは困難です。 地方の支持が厚い議員ほど、その乖離に気付いてないわけがありません。今相当苦しんでいることでしょう。今回小選挙区は16議席減らしています。このままではまずいと危機感を持つ議員は多いことでしょう。 ですから、誰かが、トリクルダウン YES/NO の踏み絵をぶちあげた瞬間に自民党は大きく揺さぶられます。おまえは経済界からの政治資金か、地元の票かどちらを重く見るのかと。 

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