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記事 4件
  • 2023年9月29日号:ニュースに一言

    2023-09-29 10:30  
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    ●寿司の配達を依頼されたフードデリバリーサービスの配達員が、お届け物の寿司を依頼主に渡す前に素手で触っていたという出来事がありました。
    寿司を素手で触っていいのは寿司職人だけで、それ以外はいかに店員といえども触ることはあり得ません。それを店員でもない、どこの誰だかわからない配達員が触っていたのですから気持ちの悪いことこの上ありません。
    依頼主は表にバイクの止まる音を聞いて依頼品の到着を知りましたが、一向に玄関のベルが鳴りません。不審に思い2階から道路を見ると、そこには依頼品の寿司が入った容器のフタを開け、一心に寿司を並べ直す配達員の姿がありました。依頼主がその様子をスマホで撮影して待つこと数分、ようやくピンポーンという音が。玄関を開けると配達員は何食わぬ顔で「お待たせしました」と言うのですから呆れます。
    依頼者が「あんた、いままで外で何をしていたんだ。全部動画を撮っている」と詰め寄ると、配達員はようやくすべてを白状しましたが、もし、依頼者がずっと家の中で待っていて配達員の所業に気付かなければ何事もないまま“配達完了”となっていたと思うと、こんな恐ろしいことはありません。
    今回の件で最も悪いところは、回転ずしの「ペロペロ事件」もそうですが「まさかそんなことはしないだろう」という暗黙の信頼関係を壊してしまったことです。どれだけおいしい料理でも配達の度に「ひょっとしたら」と疑心暗鬼になるのではとてもフードデリバリーなんて使えません。寿司屋も蕎麦屋も出前はアルバイトとはいえ店の看板を背負っていますのでめったなことはできませんが、フードデリバリーサービスはどうでしょう。もちろんの配達員の中にもプライドを持っている人はいるのでしょうが、多くの場合は「運んだら終わり」のその場だけの付き合いですから責任感を持てという方が無理なのかもしれません。
    そもそも寿司屋や蕎麦屋の出前が自転車やバイクの荷台に「出前機」というカーブでも凸凹道でも常に岡持ちを水平に保てる装置を取り付け商品が揺れないようにしているのに対し、フードデリバリーサービスのそれは商品を詰め込んだ大きなバッグを配達員が背負い思い切り自転車を漕いで持ってくるのですから商品がバラバラにならない方がおかしいのです。
    食べ物で一番優先されるのは言うまでもなく安全・衛生面です。これからは「フタさえ開けていなければ見てくれは一切気にしない」という人しか注文しない方がよさそうです。
     
     
    ●地域住民の安全を守るため警察は事件や事故などの注意すべき情報をホームページ上で公開しています。さらに防犯アプリに登録すると、それらは自動的にメールで送られてきますので非常に助かります。その内容は「路上からガスが噴出しているから近寄らないように」「イノシシが出没中につき注意するように」などのほか「露出魔が現れた」「登校中の女児が追いかけられた」などの不審者情報も含まれます。
    愛媛県警のHPにこんな掲載がありました。(今治署管内)◆種別:凝視◆日時:令和5年9月13日(水)午前9時30分ころ◆場所:今治市高橋甲の店舗内◆状況:女子高校生が店舗内で買い物中、駐車場の車(黒色、普通自動車)に乗車していた男(中肉、170センチ位、黒色短髪、青色シャツ、黒色ズボン、メガネ着用)に凝視されたもの。
    これはいったい何を言わんとしているのでしょう。ずっと見られていると感じた女子高生が警察に届け出たことで注意喚起となったようですが、この“不審者”扱いされた男性はただ駐車場に止めた車に乗っていただけです。車から降りて買い物中の女子高生を付け回したわけではありませんし、車の中から声をかけたわけでもありません。
    ただじっと彼女を凝視していただけです。その理由は女性があまりにも美しくてただ見とれていただけかもしれませんし、あるいはその逆だったのかもしれません。そもそも男は本当に女子高生を見つめていたのでしょうか。ただぼんやりと車窓を眺めていただけかもしれません。
    ハラスメントという言葉が一般的になってから「受け手がどう思うか」に重点が置かれるようになりました。今回のケースも女子高生が不快に感じたことで“事件性”ありとされたのかもしれませんが、これくらいのことで不審者扱いされたのでは堪ったものではありません。愛媛県はこんなものでも掲載しなければならないほど事件のない平和な県なのか、それともこんなものも掲示しなければならないほど事件が多発しているのかはわかりませんが、いずれにせよ世知辛い世の中になったものです。
     
     
    ●福岡県大野城市のコンビニエンスストアの商品棚からカップ麺を万引きした住居不定、自称日雇い作業員の57歳の男が窃盗の疑いで逮捕されたというニュースがありました。
    9月13日午後8時すぎ、男の動きを不審に思った店員が防犯カメラを確認したところカップ麺1個が万引きされたことがわかり翌日になって警察に届け出ました。通報を受けて警察官が店に向かったところ、なんと男が前日に万引きしたカップ麺にお湯を注ごうと再び来店して来たといいますから笑ってしまいます。なにしろ住居不定ですから家がなく、カップ麺を盗んだものの肝心のお湯がなく困ったのでしょう。
    コンビニではカップ麺を購入した客がその場で食べられるようにサービスでお湯を提供しているところがありますが、それはあくまでその店でカップ麺を買った客が対象で、他店の商品持ち込みは禁止です。男が他の店にお湯だけもらいに行くことはルール違反と思い、この店に戻ってきたのかどうかは定かではありませんが、それにしてもよく盗んだ商品をぬけぬけと持ち込めたものです。いくらその店からといっても代金が支払われていないものは言うまでもなく対象外なだけでなく、そもそも支払っていないことがなによりも悪なのを分からないのが不思議です。
    逮捕当時、男は現金を持っておらず、警察の取り調べに対し盗んだことを認めているということですが、気になるのはカップ麺1個だけを大事に持って来店したこの男、お湯を入れて麺がうまく出来たとしていったい箸はどうするつもりだったのでしょう。
     
     
    ●東京から奈良までタクシーに乗ったのに、その料金20万6千円あまりを支払わなかった54歳の無職の男が詐欺容疑で逮捕されたというニュースがありました。
    この男は9月17日の午前3時ごろ東京都の新宿駅前でタクシーに乗り込み、運転手に「奈良の天理教教会本部まで行ってくれ」と伝えました。午前3時といえば真夜中です。そんな時間に超長距離の客とはどう考えても不自然です。男をいぶかった運転手が「代金を支払えるのか」と確認したところ「天理教側が支払ってくれる」と説明したそうです。天理教とは言わずと知れたその名が天理市と市の名称にもなる有名な宗教団体です。そこが支払ってくれるのなら安心と運転手は車を西に向けてスタートしました。そして男を乗せたタクシーは9時間後の同日昼頃、約370キロの旅を終えようやく天理教教会本部に到着しました。
    男はすぐにお金を調達するために教会の建物の中に入って行きましたが、男と運転手のその期待はすぐに教会関係者の「そんな話は聞いていない」という言葉で打ち砕かれました。支払いを拒否された運転手は慌てました。「話がちがうじゃないか、どうなってるんだ」と次に男と共に教会関係施設を訪れましたが、ここでも拒否されたことから、「こりゃダメだ」とあきらめ警察に通報したのです。男の所持金は35円で、調べに対し「一文無しで私自身に支払い能力がなかったことは確かです。ただ、天理教教会本部からお金を支払ってもらえるあてはありました」などと話しているそうですが、そのあてが「30年ほど前に修養科生として修業したことがある」というのですから呆れます。そんな大昔にちょっとだけ関わったことで“あて”にされた天理教も大迷惑です。
    そしてなにより可哀そうなのはタクシーの運転手です。奈良までの料金を踏み倒された上にたった1人で東京まで今来たばかりの道を戻らなければならなくなったのですから。金輪際前金以外の長距離は受け付けないと心に決めたことでしょう。さて、これだけあちこちに迷惑を掛けたこの男ですが、最後に「神も仏もない」と言ったとか言わなかったとか。
     
     
    ●「生まれ変わったら、道になりたい」これは2015年11月に、この『ニュースに一言』で取り上げた神戸市で道路の側溝に入り上を歩く女性のスカートの中を覗こうとした当時28歳の男性会社員が発した言葉です。
    この男は真夜中に格子状になった鉄製のふたをはずして幅約55センチ、深さ約60センチの側溝の中に入り込み、再びふたをして朝になるのを待ち、格子ごしに上を歩く女性のスカートの中を見ていたとんでもない変態です。こんな男は絶対に初犯ではないと思いネットを探すと、やはりその2年前にも同じ場所で同じ行為をして捕まっていました。そして「二度あることは三度ある」。神戸市で側溝にスマートフォンを仕掛け女子高生のスカートの中を撮影した36歳の男が逮捕されました。
    警察によりますと女子高生が側溝にスマホがあることに気付き交番に届けたそうです。警察がそのスマホを確認すると録画モードになっていたことから「これは盗撮にちがいない」と判断し現場付近を捜査したところ、側溝に四つん這いになっていた男を発見しました。
    そして「何をしている」と問い詰めたところ「スカートの中を覗いていた」と白状したため逮捕となりましたが、この男がかの有名な「側溝男」だったのですから、捕まえた警官もさぞかし驚いたことでしょう。8年ぶり3回目の出場の甲子園は周囲から祝福されますが、それとは正反対の8年ぶり3回目の逮捕となった男の前回との違いは、過去2回が側溝の中で長時間待ち伏せしていたのに対し、今回はスマホを仕掛けるという手口に変わっているところです。
    事を為すには気力と体力が不可欠です。さすがの「側溝男」も30代になり身動きの出来ない狭い側溝での長時間の待機がきつくなったのか。しかしスカートの中を見たいという気力はいまだ衰えず、生の臨場感はないにしろせめて録画ででもとスマホに頼ったのかもしれません。
    男の変化はもうひとつありました。前回と前々回は職業を会社員とされていましたが、2回の逮捕でクビになったのか今回は無職となっています。しかし、彼はもはや押しも押されもしないプロの側溝マンとして認知されています。次回の逮捕時の肩書にはしっかりと「側溝男」と記されることでしょう。

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  • 2023年9月16日号:ニュースに一言

    2023-09-16 07:00  
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    ●夏の甲子園は都道府県予選を勝ち抜いた代表校が出場します。多くの人は母校や知り合いのいる高校を応援しますが、もしその学校が途中で姿を消しても甲子園では同郷のよしみでふるさとの代表校を応援することが多いでしょう。
    7月の全国高校野球選手権長野大会決勝で、松本市にある百貨店が地元の松商学園高校の甲子園出場に備えて用意していた紅白まんじゅうの無料配布と懸垂幕の掲示に、大会主催者が「待った」をかけていたというニュースがありました。この百貨店は決勝戦前日に報道機関に向け「祝甲子園出場、紅白まんじゅう配布 懸垂幕掲示のお知らせ」として翌日の決勝で松商学園高が勝った場合、紅白1個ずつ入ったまんじゅう150箱を試合終了後、本店1階で配ることを知らせるファックスを送りました。しかし、その6時間後に突然今度は「中止のお知らせ」としてまんじゅう配布と懸垂幕の掲示の取り止めを伝えてきたのです。
    その理由がファックスを受け取った大会主催者の朝日新聞社長野総局から「商業施設での物品の無償提供や垂れ幕の掲示は高校野球を利用した、企業や商品の宣伝につながりかねず学生野球の商業利用を禁じる日本学生野球憲章に抵触する恐れがある」との指摘があったからというのですから呆れます。選手がまんじゅうを配りながら客の呼び込みをするのならたしかに“商業利用”かもしれませんが、冒頭に言ったように地元企業が地元の高校の甲子園出場を祝うことにそこまで目くじらを立てなければならないものでしょうか。そもそもこの地元高校が甲子園出場を決めた際のまんじゅう配布は30年ほど続く恒例行事で、さらに朝日新聞は少なくとも過去3回、紅白まんじゅう配布の様子を嬉々として記事にしていたのですから見事なまでのダブルスタンダードです。
    “無料”のまんじゅう配布はダメで、その記事を載せた新聞を“有料”で売るのはOKだなんておかしな話です。要は“商業利用”とかなんとか言ってもそこに明確な基準はなく、その時の気分次第で運用しているだけなのです。
    朝日新聞は地方予選が始まる6月下旬から甲子園決勝の8月中旬まで1カ月半にわたって高校野球に大きく紙面を割きます。彼らは「それは報道だ」と言うのでしょうが、それなら粛々と試合結果だけを伝えたらいいのに有名人を甲子園に連れてきて観戦記を書かせたり、試合と関係のない選手やチアリーダー個人の人となりを紹介するなど売らんがために必死です。さらに極めつけは、その新聞には多くの広告が掲載されていることです。これを“商業利用”と言わずしてなんと言うのでしょう。
     
     
    ●メキシコの首都メキシコシティで開催された国際マラソン大会で大規模な不正が行われ、大量の失格者がでたというニュースがありました。この大会はメキシコシティマラソンという北米で最も人気があるマラソン大会の一つで、その参加者は約3万人にも上ります。今回はその3分の1を超える約1万1000人が一部のコースをまともに走らず完走したかのように装っていたといいますから驚きです。
    その方法は自動車または公共交通、自転車を利用するなど様々ですが、全員が42・195キロのコースで5キロごとに設けられているチェックポイントのすべてを通過していませんでした。人里離れた山奥でのマラソン大会ならいざ知らず、街中でのそれは多くの観衆に見守られます。そんな中でコースを離れれば必ず誰かに目撃されます。さらに現代はSNS全盛の時代ですからその様子はすぐさまネット上にアップされることでしょう。果たして今回も現地のSNSには大会が開催されている時間帯にゼッケンを付けたまま飲食店に入ったり、自転車に乗っている選手の姿が多数投稿されていました。
    それにしても1万1000人とは恐れ入ります。満員電車の中に1人だけ大会ゼッケンを付けたランナーがいたら「あっ、インチキしている」とわかりますが、車両の中がほとんどその格好ならもはや選手団の通常移動としか思えません。
    この大会は世界陸上競技連盟が最も厳格な基準を遵守する大会と位置付ける「ゴールドラベル」等級とされていますが、よくこんなデタラメな大会が認められたものです。このメキシコシティマラソンでは毎回不正が発覚しており、2017年には約6000人、18年には約3000人が記録を抹消されています。主催者側は「大会中の非スポーツマンシップ事例を引き続き把握し、記録を無効にする」としていますが、これからはインチキにならないよう事前に「自力の部」「自転車の部」「自動車の部」「公共交通機関の部」とカテゴリーを細分化し、反則を反則でないようにした方がいいのでは。さもなければ選手の記録だけでなく「ゴールドラベル」まで剥奪されかねません。
     
     
    ●電動キックボードでひき逃げ事故を起こした23歳の女が逮捕されたというニュースがありました。この女は電動キックボードに乗り歩道を走行中、60代女性にぶつかって転倒させ肋骨骨折などの重傷を負わせたのにもかかわらず救護をせずに逃げていました。
    この女が逮捕され連行される様子は全国に放送され、その顔と名前は多くの人に知られることとなりましたので彼女の人生は半分終わったも同然でしょうが、この女は本来走行してはいけない歩道を走った上に被害者にケガをさせ、さらに駆けつけた警察官に暴力を振るうなど悪行の限りを尽くしたのですからそれも自業自得と言うしかありません。
    電動キックボードといえば、今年7月から条件付きながら「免許はいらない」「歩道を走れる」「ヘルメット不要」と、そのハードルが大幅に下げられた乗り物です。女はその条件である「ルールを完全に理解していなかった」と言っているそうですが、そもそもそんな奴が公道に出てきては困るのです。他人に危害を加えるおそれのあるものを操作するにはそれなりの知識と技量が必須なはずです。ですから運転免許取得には学科と実技の試験両方をパスしなければならないのです。それを“免許不要”としたのですから今回の事故は必然と言ってもいいでしょう。
    今回の事故では被害者はもちろん、加害者もずいぶんと痛い思いをしました。7月の規制緩和には業界団体からの強い要請があり、またそれを推進することで見返りを得た議員たちがいたことでしょう。そんな人たちは予想通り起きた今回の事故をいったいどう思っているのでしょうか。私利私欲に夢中な一部の人間のせいで泣くのはいつも国民です。
     
     
    ●扶養手当を同性カップルに支給しない北海道の制度は法の下の平等を定めた憲法に反するとして、54歳の元北海道道職員女性が道と地方職員共済組合を相手に約483万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、札幌地裁が原告側の請求を棄却したというニュースがありました。
    扶養手当とは従業員に“扶養する家族”がいる場合に給料とは別に支給されるものです。今回の訴訟は同性のパートナーが、その“扶養する家族”に当たるのかどうかが焦点でしたが、司法は「当たらない」との判断を示したのです。そりゃそうでしょう。それが許されるのなら“扶養する家族”の範疇は限りなく広がり、極端な話ルームシェアするただの同居人さえも認めなければならなくなります。
    しかし性的少数者のカップルを公的に認定する札幌市のパートナーシップ制度に基づいて「パートナーシップ宣誓」をしている原告は、扶養手当の支給対象に「事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」と法的には家族ではない事実婚(内縁)カップルが含まれていることを盾に、相手が同性だというだけで認めないのは性的指向に基づいた合理的理由のない差別に当たり、憲法14条に反すると訴えていました。それに対し道側は、内縁関係にあれば扶養手当を支給するというのは男女間のカップルを想定しており、同性パートナーは被扶養者に当たらないとしています。すなわちパートナーが死亡したときの遺族年金も支給対象となっている一般的にも認められた(男女の)事実婚と、同性カップルを同じにはできないと言っているのです。
    誰が誰を好きになろうと、また誰と住もうとそれは自由です。その自由が侵害されているからと訴えるのならまだしも、そうではなくルールを拡大解釈してまでさらに利益を得ようとする姿勢にはまったく共感できません。この手の訴訟では何かにつけて「憲法違反だ」と言いますが、その最も尊重すべき憲法にははっきりと「婚姻は、『両性』の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と男性と女性の『両性』によってなされるものと記されています。
     
     
    ●子供たちが平日に学校を休んで、家族旅行などに行ける新たな制度を導入する自治体が相次いでいるというニュースがありました。この制度は学習を意味する「ラーニング」と休暇という意味の「バケーション」を合わせた「ラーケーション制度」と呼ぶそうで、背景には土日に休みがとれない親の家庭でも子供といっしょに旅行やレジャーを楽しんでもらおうということがあります。この制度では、いままで土日が休みの子供とのスケジュール調整ができなかった保護者が平日に「子どもを休ませたい」と申請すればその日は欠席扱いになりません。いわばサラリーマンの有給休暇のようなもので心置きなく休むことができるというのですが、こんなものいちいち行政に決めてもらわなくても親が勝手に休ませれば済むものではないでしょうか。
    ある調査によれば家族旅行などで幼稚園や学校を休ませたことのある保護者は全体の半数以上、旅行などに行くために学校を休ませてもいいと答えた人は約7割に上ることが判明しているように、既に多くの親たちは自身の考えで動いているのです。そもそも出席扱いにするといったところで、休んでいる間も授業はストップすることなく進みます。ですからその分の遅れは自分で取り戻さなくてはなりません。それでもなお、今は子供にとって思い出を作ることのほうが大切だと考えるのならなにも遠慮することなく休めばいいのです。
    唯一この制度のいいところは皆勤賞を狙う子供が風邪をひいたときに使えることくらいでしょうか。しかしその皆勤賞さえも子供が無理をして登校しないよう廃止する学校が増えているといいますから、それは優しさなのか、はたまた責任逃れなのか何をかいわんやです。なにもかも誰かに決めてもらわなければ動けない、そして言われれば自分で考えずにすぐ言いなりになる。こんな姿は子供にとって悪影響でしかありません。 

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  • 2023年9月8日号:ニュースに一言

    2023-09-08 14:32  
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    ●名古屋刑務所が8月から受刑者を「さん付け」で呼ぶ取り組みを始めたというニュースがありました。
    名古屋刑務所では2021年11月~22年9月の11か月に渡って若手刑務官22人が40~60代の男性受刑者3人に対し計419件の暴行や不適切な処遇を繰り返していました。その際、刑務官らが受刑者を「懲役」「やつら」などと呼んでいたことを、再発防止のために召集された有識者でつくる第三者委員会が「人権意識が希薄だ」と問題視し、上下関係が固定しやすくなる受刑者を呼び捨てにする慣行の見直しを求めていました。その提言を基に法務省がまとめた再発防止策では、規律・秩序を過度に重視する組織風土を改めるため、受刑者を蔑視する呼称は直ちに禁止し呼び捨てについても見直しを検討するとしており今回の措置はそれに応えたものです。
    意味もなく受刑者を殴ったり蹴ったりすることがあってはならないのは当然だとしても「規律・秩序を過度に重視する組織風土を改める」とは呆れます。受刑者はいうまでもなく社会の「規律・秩序」を守れないから刑務所に入れられているのです。刑務所が矯正施設だというのなら、徹底的に規律と秩序を順守する精神を叩きこむことこそその責務ではないのでしょうか。第三者委員会は呼び捨てでは上下関係が固定しやすくなるとしていますが、そもそも受刑者と刑務官の間には“上下関係”があるのが当たり前です。刑務官が出す指示に受刑者が「いや、それはやめとくわ」なんてなればそれこそ秩序が保てません。
    刑務官が規則を守らず問題が起きるのなら、その刑務官個人をしっかり教育すればいいのであって、そのために受刑者の待遇を良くするなんて言語道断です。最近では“人権”を錦の御旗に犯罪者を甘やかす風潮が強まっています。本来、刑務所は過ごしやすい場所ではなく「こんなところ二度と来たくない」場所でなければならないのに、いまでさえ完全週休2日の残業一切なしという「休日出勤も当たり前、毎日がサービス残業」のサラリーマンが羨む待遇をこれ以上居心地よくしてどうするのですか。
    “人権”も結構ですが、刑務所の中の受刑者の裏には彼らに人権なんてお構いなしでひどい目に合わされた被害者がいることを忘れてはいけません。それにしても受刑者だけでなく刑務官まで矯正しなければならないなんて、日本の刑務所も困ったものです。
     
     
    ●9月だというのに暑い日が続きます。それは北国、北海道も例外ではなく連日30度を超す夏日となっています。
    8月23日太陽が西に傾き始めた午後4時ごろ、札幌市中央区に住む49歳の無職の男が札幌市中央区の公園で下半身を露出したとして、公然わいせつの現行犯で逮捕されました。この男は公園の芝生の上を仰向けに寝転がっていましたが、なんとその下半身は丸出しだったといいますから驚きです。その様子を周辺の建物から見ていた人の通報により警察官が駆けつけ逮捕に至りましたが、男は調べに対し「暑いから脱いだ」と話しています。たしかにこの猛暑ですから脱ぎたくなる気持ちはわかります。しかし、それがなぜ下半身だけなのかは理解できません。
    百歩譲って上着もシャツも靴下も脱いだうえでのパンツならまだしも、いきなりズボンとパンツだけ脱いで「暑かったから」だなんてわけがわかりません。それともその瞬間、彼はチンチンだけが熱中症になりかかって急速に冷やす必要があったとでもいうのでしょうか。
    日中は暑さが残っていても日が暮れての北海道はすっかり過ごしやすくなりますから、暑さを理由にした変質者は現れないと思いきや、25日午前0時まえ、北海道室蘭市の建物の敷地内で居合わせた女性に対し下半身を露出したとして、公然わいせつの疑いで51歳の男が逮捕されました。
    この付近では同様の露出事件が発生しており警察が捜査していました。男が「見て見て」と股間を晒した相手はなんと警戒中の婦人警官だったといいますから、これ以上の“飛んで火にいる夏の虫”はありません。取り調べに対し男は「間違いありません。女性を驚かせたかった」などと話しているそうですが、驚かそうと思った相手が警官で、自分の方が驚いたというなんともお粗末な話でした。
    暑さのせいだという男に片や露出に夢中の男、いずれにせよ“熱中症”には気をつけましょう。
     
     
    ●大阪維新が推進するIR(統合型リゾート)のPR動画の中に、美術家や芸術家の作品が無断で使用されていたというニュースがありました。これは利用許諾を依頼したものの断られたものや、中には作家に許諾依頼すらしていないものまで勝手に使っていたものです。さらに許諾期限が切れていた可能性があるものや著作権者が不明なものなど、計20点で著作権の権利処理が適切に行われていなかったことがわかっており、とんでもない“権利”意識の希薄さです。
    大阪では先日、府の特別顧問が美術作品について「デジタルで見られる状況にしておけば、(立体作品の)物理的な部品は処分してもいいというのはありえると思う」なんてとんでもない発言もありました。元々、維新は創始者の意向もあってか大阪の伝統芸能である文楽や、関西音楽界の宝ともいうべき交響楽団への補助を打ち切るなど文化・芸術をないがしろにする傾向がありました。財政改革のための経費削減も大事でしょうが、そのために全国民の財産ともいうべきものまで、一個人の想いだけで削減することは許されません。
    財産は目に見えるものだけではないのです。ここにきて勢力拡大中の維新ですが、その原動力はなんといっても“大胆な”改革力です。しかし、その陰で絶対に無くしてはならないものまで“大胆に”切り捨てられている現実を忘れてはなりません。そのこともふまえて今回の権利侵害はクリエーターの末席に名を連ねる者としてとても看過できません。
     
     
    ●愛知県警が指定暴力団山口組弘道会系組幹部の53歳の男を暴行の疑いで逮捕したというニュースがありました。暴力団員が暴力を振るうことは平常業務でなんら珍しいことではありません。しかし今回の事件は相手がすごかった。なんと自身が所属する暴力団の組長だったといいますから驚きです。
    この幹部は7月14日午後7時20分ごろ、同県常滑市の名古屋鉄道常滑駅のロータリーで、73歳の組長に対し「ばかやろう」「お前また下手うちしやがって」などと怒鳴りながら頭を平手で殴ったり足を蹴ったりしたのです。その様子を目撃した人からの110番通報で捜査員が駆けつけたときには男は立ち去っていましたが、付近の防犯カメラなどから男は特定されました。
    警察は地域の暴力団の動静をほとんど把握しているといいます。ましてやそれが幹部のものならなおさらです。防犯カメラに映る親分を殴る蹴る子分の姿を見た警察官はさぞかし自分の目を疑ったことでしょう。なにしろヤクザ社会での親分子分といえば血のつながった親子以上に固い絆で結ばれ親の言うことは絶対。決して逆転することのない上下関係が確立しているものなのですから。サラリーマンが気に入らない上司を殴っても会社を辞めれば済みますが、ヤクザ社会ではその社会で生きていけないだけでなく、本当に生きていられなくなるかもしれません。
    1978年、京都の高級クラブで当時、日本最大勢力の暴力団組長を狙撃した「鳴海清」を追う警察は焦っていました。なぜなら彼を追っていたのは警察だけでなく「親分の仇」を取ろうとする暴力団も必死になって鳴海を探していたのですから。世間は警察と暴力団のどちらが先に鳴海の身柄を押さえるのか注目しました。果たして2カ月後、鳴海清は六甲山中で前歯四本が折られ、手指の爪は右手の三本を残して抜かれ、右足の爪もはがされたうえで全身をガムテープでぐるぐる巻きにした姿で遺体となって発見され、この勝負は暴力団に軍配が上がりました。
    今回の男も組長を殴ったのですから、シャバにいたままだったら若い衆が放っておくことはなかったでしょう。かつて任侠の世界では「堅気の衆に手を出すんじゃねぇ!」と一般人とのかかわりを避けたものですが、男はその一般人の通報により逮捕されたおかげで命拾いできたのかもしれません。
     
     
    ●川崎市立小学校でプールの水を張る際、不手際で大量の水を無駄にしたことに対し、市が担当の男性教諭に賠償請求したことを巡り、市に100件を超える苦情が寄せられているというニュースがありました。
    これは今年5月のプール開きに際し、プールへの注水を開始したのはいいが止めることを忘れて6日間も出しっぱなしになり、25メートルプール約6杯分にあたる217万リットルの水をあふれさせたものです。源泉かけ流しの温泉じゃあるまいし、上水かけ流しのプールなんてなんの値打ちもありません。
    約190万円に上った損害額に対し、市は同校の校長と担当の男性教諭に過失があったと判断して2人に損害額の半分の約95万円を請求していました。それに「賠償請求は酷だ」「先生がかわいそう」「教員不足に拍車をかける」といった抗議が殺到するのですからなんと“優しい”人の多いことでしょう。
    市長は批判に対し「市民に対する責任でもある。全て税金で(補填する)となれば、関係の無い市民が負担するのか、ということになる。公務員は過失に対する責任を常に負う。襟を正し、ミスを起こさないようにしなければならない」と失敗を水に流すことはありませんでした。
    たしかに一公務員に50万円近くの金額を負担させることは酷のようでもあり市の対応はやり過ぎかもしれませんが、もしこれが全額市の負担となっていたら今度は「貴重な税金を無駄遣いしやがって」「ミスの責任を取るのは当たり前」なんて批判が出て来たことでしょう。いずれにしても現代は「一言いいたい人」であふれています。それも匿名で。そしてなにより違和感を覚えるその一言が自身の満足のためにのみ発せられているところです。本当に教諭を気の毒に思うのなら「わたしのお金も使って」と寄付を申し出てもいいものですが、そんな人はいません。
    みんな批判するばかりで自分の腹は一切痛めず「かわいそうな先生を守るわたしはなんて優しいの」と悦に入っているのです。ああ、気持ち悪い。

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  • 2023年9月2日号:ニュースに一言

    2023-09-02 17:27  
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    ●名古屋刑務所が8月から受刑者を「さん付け」で呼ぶ取り組みを始めたというニュースがありました。
    名古屋刑務所では2021年11月~22年9月の11か月に渡って若手刑務官22人が40~60代の男性受刑者3人に対し計419件の暴行や不適切な処遇を繰り返していました。その際、刑務官らが受刑者を「懲役」「やつら」などと呼んでいたことを、再発防止のために召集された有識者でつくる第三者委員会が「人権意識が希薄だ」と問題視し、上下関係が固定しやすくなる受刑者を呼び捨てにする慣行の見直しを求めていました。その提言を基に法務省がまとめた再発防止策では、規律・秩序を過度に重視する組織風土を改めるため、受刑者を蔑視する呼称は直ちに禁止し呼び捨てについても見直しを検討するとしており今回の措置はそれに応えたものです。
    意味もなく受刑者を殴ったり蹴ったりすることがあってはならないのは当然だとしても「規律・秩序を過度に重視する組織風土を改める」とは呆れます。受刑者はいうまでもなく社会の「規律・秩序」を守れないから刑務所に入れられているのです。刑務所が矯正施設だというのなら、徹底的に規律と秩序を順守する精神を叩きこむことこそその責務ではないのでしょうか。第三者委員会は呼び捨てでは上下関係が固定しやすくなるとしていますが、そもそも受刑者と刑務官の間には“上下関係”があるのが当たり前です。刑務官が出す指示に受刑者が「いや、それはやめとくわ」なんてなればそれこそ秩序が保てません。
    刑務官が規則を守らず問題が起きるのなら、その刑務官個人をしっかり教育すればいいのであって、そのために受刑者の待遇を良くするなんて言語道断です。最近では“人権”を錦の御旗に犯罪者を甘やかす風潮が強まっています。本来、刑務所は過ごしやすい場所ではなく「こんなところ二度と来たくない」場所でなければならないのに、いまでさえ完全週休2日の残業一切なしという「休日出勤も当たり前、毎日がサービス残業」のサラリーマンが羨む待遇をこれ以上居心地よくしてどうするのですか。
    “人権”も結構ですが、刑務所の中の受刑者の裏には彼らに人権なんてお構いなしでひどい目に合わされた被害者がいることを忘れてはいけません。それにしても受刑者だけでなく刑務官まで矯正しなければならないなんて、日本の刑務所も困ったものです。
     
     
    ●9月だというのに暑い日が続きます。それは北国、北海道も例外ではなく連日30度を超す夏日となっています。
    8月23日太陽が西に傾き始めた午後4時ごろ、札幌市中央区に住む49歳の無職の男が札幌市中央区の公園で下半身を露出したとして、公然わいせつの現行犯で逮捕されました。この男は公園の芝生の上を仰向けに寝転がっていましたが、なんとその下半身は丸出しだったといいますから驚きです。その様子を周辺の建物から見ていた人の通報により警察官が駆けつけ逮捕に至りましたが、男は調べに対し「暑いから脱いだ」と話しています。たしかにこの猛暑ですから脱ぎたくなる気持ちはわかります。しかし、それがなぜ下半身だけなのかは理解できません。
    百歩譲って上着もシャツも靴下も脱いだうえでのパンツならまだしも、いきなりズボンとパンツだけ脱いで「暑かったから」だなんてわけがわかりません。それともその瞬間、彼はチンチンだけが熱中症になりかかって急速に冷やす必要があったとでもいうのでしょうか。
    日中は暑さが残っていても日が暮れての北海道はすっかり過ごしやすくなりますから、暑さを理由にした変質者は現れないと思いきや、25日午前0時まえ、北海道室蘭市の建物の敷地内で居合わせた女性に対し下半身を露出したとして、公然わいせつの疑いで51歳の男が逮捕されました。
    この付近では同様の露出事件が発生しており警察が捜査していました。男が「見て見て」と股間を晒した相手はなんと警戒中の婦人警官だったといいますから、これ以上の“飛んで火にいる夏の虫”はありません。取り調べに対し男は「間違いありません。女性を驚かせたかった」などと話しているそうですが、驚かそうと思った相手が警官で、自分の方が驚いたというなんともお粗末な話でした。
    暑さのせいだという男に片や露出に夢中の男、いずれにせよ“熱中症”には気をつけましょう。
     
     
    ●大阪維新が推進するIR(統合型リゾート)のPR動画の中に、美術家や芸術家の作品が無断で使用されていたというニュースがありました。これは利用許諾を依頼したものの断られたものや、中には作家に許諾依頼すらしていないものまで勝手に使っていたものです。さらに許諾期限が切れていた可能性があるものや著作権者が不明なものなど、計20点で著作権の権利処理が適切に行われていなかったことがわかっており、とんでもない“権利”意識の希薄さです。
    大阪では先日、府の特別顧問が美術作品について「デジタルで見られる状況にしておけば、(立体作品の)物理的な部品は処分してもいいというのはありえると思う」なんてとんでもない発言もありました。元々、維新は創始者の意向もあってか大阪の伝統芸能である文楽や、関西音楽界の宝ともいうべき交響楽団への補助を打ち切るなど文化・芸術をないがしろにする傾向がありました。財政改革のための経費削減も大事でしょうが、そのために全国民の財産ともいうべきものまで、一個人の想いだけで削減することは許されません。
    財産は目に見えるものだけではないのです。ここにきて勢力拡大中の維新ですが、その原動力はなんといっても“大胆な”改革力です。しかし、その陰で絶対に無くしてはならないものまで“大胆に”切り捨てられている現実を忘れてはなりません。そのこともふまえて今回の権利侵害はクリエーターの末席に名を連ねる者としてとても看過できません。
     
     
    ●愛知県警が指定暴力団山口組弘道会系組幹部の53歳の男を暴行の疑いで逮捕したというニュースがありました。暴力団員が暴力を振るうことは平常業務でなんら珍しいことではありません。しかし今回の事件は相手がすごかった。なんと自身が所属する暴力団の組長だったといいますから驚きです。
    この幹部は7月14日午後7時20分ごろ、同県常滑市の名古屋鉄道常滑駅のロータリーで、73歳の組長に対し「ばかやろう」「お前また下手うちしやがって」などと怒鳴りながら頭を平手で殴ったり足を蹴ったりしたのです。その様子を目撃した人からの110番通報で捜査員が駆けつけたときには男は立ち去っていましたが、付近の防犯カメラなどから男は特定されました。
    警察は地域の暴力団の動静をほとんど把握しているといいます。ましてやそれが幹部のものならなおさらです。防犯カメラに映る親分を殴る蹴る子分の姿を見た警察官はさぞかし自分の目を疑ったことでしょう。なにしろヤクザ社会での親分子分といえば血のつながった親子以上に固い絆で結ばれ親の言うことは絶対。決して逆転することのない上下関係が確立しているものなのですから。サラリーマンが気に入らない上司を殴っても会社を辞めれば済みますが、ヤクザ社会ではその社会で生きていけないだけでなく、本当に生きていられなくなるかもしれません。
    1978年、京都の高級クラブで当時、日本最大勢力の暴力団組長を狙撃した「鳴海清」を追う警察は焦っていました。なぜなら彼を追っていたのは警察だけでなく「親分の仇」を取ろうとする暴力団も必死になって鳴海を探していたのですから。世間は警察と暴力団のどちらが先に鳴海の身柄を押さえるのか注目しました。果たして2カ月後、鳴海清は六甲山中で前歯四本が折られ、手指の爪は右手の三本を残して抜かれ、右足の爪もはがされたうえで全身をガムテープでぐるぐる巻きにした姿で遺体となって発見され、この勝負は暴力団に軍配が上がりました。
    今回の男も組長を殴ったのですから、シャバにいたままだったら若い衆が放っておくことはなかったでしょう。かつて任侠の世界では「堅気の衆に手を出すんじゃねぇ!」と一般人とのかかわりを避けたものですが、男はその一般人の通報により逮捕されたおかげで命拾いできたのかもしれません。
     
     
    ●川崎市立小学校でプールの水を張る際、不手際で大量の水を無駄にしたことに対し、市が担当の男性教諭に賠償請求したことを巡り、市に100件を超える苦情が寄せられているというニュースがありました。
    これは今年5月のプール開きに際し、プールへの注水を開始したのはいいが止めることを忘れて6日間も出しっぱなしになり、25メートルプール約6杯分にあたる217万リットルの水をあふれさせたものです。源泉かけ流しの温泉じゃあるまいし、上水かけ流しのプールなんてなんの値打ちもありません。
    約190万円に上った損害額に対し、市は同校の校長と担当の男性教諭に過失があったと判断して2人に損害額の半分の約95万円を請求していました。それに「賠償請求は酷だ」「先生がかわいそう」「教員不足に拍車をかける」といった抗議が殺到するのですからなんと“優しい”人の多いことでしょう。
    市長は批判に対し「市民に対する責任でもある。全て税金で(補填する)となれば、関係の無い市民が負担するのか、ということになる。公務員は過失に対する責任を常に負う。襟を正し、ミスを起こさないようにしなければならない」と失敗を水に流すことはありませんでした。
    たしかに一公務員に50万円近くの金額を負担させることは酷のようでもあり市の対応はやり過ぎかもしれませんが、もしこれが全額市の負担となっていたら今度は「貴重な税金を無駄遣いしやがって」「ミスの責任を取るのは当たり前」なんて批判が出て来たことでしょう。いずれにしても現代は「一言いいたい人」であふれています。それも匿名で。そしてなにより違和感を覚えるその一言が自身の満足のためにのみ発せられているところです。本当に教諭を気の毒に思うのなら「わたしのお金も使って」と寄付を申し出てもいいものですが、そんな人はいません。
    みんな批判するばかりで自分の腹は一切痛めず「かわいそうな先生を守るわたしはなんて優しいの」と悦に入っているのです。ああ、気持ち悪い。

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