• このエントリーをはてなブックマークに追加

記事 4件
  • 2023年12月30日号:ニュースに一言

    2023-12-30 14:48  
    102pt
    3

    ●家電量販店、ドラッグストアからコンビニ、さらには新幹線のネット予約まで、いまやあらゆる商品に「ポイント」が付与されています。そしてそのポイントは貯めることにより現金の代わりとして支払いに使えるのです。それを悪用した犯罪がありました。
    宿泊予約サイトで虚偽の予約を繰り返したとして、私電磁的記録不正作出・同供用罪に問われた55歳の女とその34歳の息子の裁判で京都地裁が両被告に対し、いずれも懲役2年執行猶予4年の有罪判決を言い渡したというニュースがありました。
    この2人は2019年8~11月、宿泊するつもりがないのにインターネットの宿泊予約サイトで104の架空名義を使って101の宿泊施設に予約を入れていました。そして2人は予約サイトから付与された特典のポイントおよそ250万円分を使って京都や大阪のホテルを転々としながら暮らしていたといいますからとんでもない親子です。
    予約は「将来の売上」を意味します。しかし、それはあくまで見込みであって確定ではありません。途中キャンセルにでもなればその見込みは一気に0になるのです。さらに悪質なのはこの親子が予約をいれた後、一切キャンセルの連絡をしていない、いわゆる「ノーショウ(no show)=現れない」状態だったことです。「ノーショウ」は売上がないだけでなく、キャンセルの分を他の客に回す商売の機会まで失う由々しきものですからやられた方は堪ったものではありません。
    それにしても利益の中からポイントを還元するならわかりますが、利益が不確実な予約の段階でポイントを付与するなんていったいどういうことでしょう。お客は予約をいれたら絶対にキャンセルなんてしないとでも思っていたのでしょうか。この親子のように悪知恵で利益を得ようとする輩はいくらでもいることに気が付いていないシステムそのものに問題があるとしか思えません。
    ところで裁判長が判決の中で述べた「サイトの信頼を害する悪質な行為」でありながら、この親子はなぜ実刑でなく執行猶予なのでしょう。ひょっとしたら3食付きの刑務所に泊まるのにはまだポイントが足らなかったのか。
     
     
    ●「ノーショウ(no show)=現れない」でないからといって、それが“お客様”であるとは限りません。静岡・熱海市のホテルに無銭宿泊した15歳から16歳の無職の少年3人が詐欺の疑いで逮捕されたというニュースがありました。
    神奈川県相模原市に住むこの3人は12月18日未明、熱海市の温泉観光ホテルにチェックインし、1泊朝食の提供を受けていながら一人当たり1万円、計3万円の代金を支払わずに逃げたのです。ビジネスホテルなど最近の宿泊施設は料金先払いのところが増えていますが、熱海は昔ながらの観光地だけに「とりあえずは宿に招き入れ精算は出立時」だったのでしょう。どうやら少年たちはそこを狙ったようです。
    朝になりチェックアウトの時に従業員が精算を求めたところ、少年たちは「お金の算段をする」と話しましたが、その後、支払いをせずに姿をくらませたことでようやくホテル側は「宿泊客が金を支払わずに逃げた」と警察に通報しました。その場ですぐに支払いをしないのはどう考えても「金を持っていない」からにもかかわらず、身柄を拘束するでもなく最後まで少年たちを“お客様”として扱うホテルのホスピタリティは称賛されるべきか、甘すぎると非難されるべきかは意見の分かれるところです。
    人間をステレオタイプで判断するのは良くないのかもしれませんが、それでも3人が揃いもそろって中学校を出て高校に行くわけでも働くわけでもない無職とは、どうしても「やっぱりな」と思ってしまいます。それにしても真夜中に大人が誰もいない少年たちだけで訪れたことをホテルは不審に思わなかったのでしょうか。あるいはおかしいとは思いつつ、時間も時間だけに彼らを無碍に追い返すことができなかったとしたら、人の善意に付け込んだ少年たちの行為はますます許せません。
    ここは「少年だから」で済ますことなく、自身のしでかしたことの責任をしっかり取らせることこそが“学校にも行かず働きもしない”彼らが今後、真っ当な社会の一員となるために、いま大人ができる唯一のことです。
     
     
    ●千葉市消防局が酒気帯び運転をして追突事故を起こした22歳の男性消防士を懲戒免職処分にしたというニュースがありました。この消防士は前日夜に同僚と酒を飲みに行き、解散後も1人で朝までテキーラなどおよそ20杯を飲み続け、一旦はタクシーで帰宅したものの忘れものをしたことを思い出し取りに行くために車を運転したということです。
    しかし朝まで飲んでいたのですから体内からアルコールが抜けているわけがありません。真っ赤なクルマならぬ真っ赤な顔をした消防士はなるべくしてと言いますか、信号待ちをしていた乗用車に追突する事故を起こしてしまいました。そして乗用車に乗っていた女性が110番通報し、到着した警察官が酒の臭いに気付き検査をしたところ基準値を上回る数値がでたことで酒気帯び運転が発覚したのです。コップ1杯のビールを飲んだだけでもハンドルを持つことが許されない現代で、テキーラという極めてアルコール度数の高い酒を何杯も飲んだ挙句の事故ですから懲戒免職も自業自得としか言いようがありません。
    しかし、このニュースはそれだけでは終わりませんでした。なんと、千葉市消防局がこの不祥事を受けてあらゆる場面で「飲酒禁止」を打ち出したのです。対象は全職員およそ960人で、忘年会など飲食店でのそれはもちろんのこと家での一人晩酌も許さないというのですから呆れます。いまどき高校野球でも「連帯責任」なんてしないのに、たった1人の消防士が飲酒事故を起こしたからといって大の大人相手に「酒を飲むな」なんてよく言えたものです。それも「家でもダメ」だなんて、毎晩上司が各家庭を巡回して監視でもするつもりでしょうか。
    「公務員である消防士が酒を飲んだ挙句の事故だなんて市民に対し申し訳が立たない。ここは反省している態度を見せよう」と考えたのかもしれませんが、そもそも、酒を飲むのが“悪”ではなく、酒を飲んで運転することが“悪”であるはずなのに、これではまるで政治資金パーティーで得たお金を収支報告書に記載せず“裏金”化したことが問題なのに、パーティーそのものがダメだと言わんばかりにすべての開催を禁止するどこかの政党と同じです。
    市民はそんなパフォーマンスなんて望んでいません。
     
     
    ●クリスマスといえば「昭和」の時代にはおとうさんがクリスマスケーキを買って帰り、家族で静かに楽しむものでしたが、バブル期から「平成」にかけて高級レストランでフルコースディナーを楽しんだ後、シティホテルのスイートルームに宿泊するというカップルで楽しむものに変化してきました。
    そのときのプレゼントはもちろんブランド物の貴金属で、クリスマスは「彼・彼女」と「お金」のない若者には楽しむ権利がないものになってしまったのです。異性にモテないと称する人々がクリスマスイブの12月24日、JR渋谷駅周辺で「クリスマス粉砕デモ」を行ったというニュースがありました。
    「革命的非モテ同盟」なる団体が主催したこのデモは、高額のプレゼントを贈るなどクリスマスを巡る商業主義に警鐘を鳴らすという趣旨の下で行われ、約15名の男女は「クリスマス粉砕!」と書いた黄色の旗を掲げ「クリボッチ(=クリスマスに独りぼっち)も多様性のひとつだ」「これが日本の言論の自由だ!」とメガホンで叫びながら渋谷のスクランブル交差点などを行進しました。期せずしてこのデモに遭遇した人の中には飛び入り参加して一緒に「クリスマスふんさーい♪」と口ずさむ人もいたようで、周囲の人たちには概ね好意的に受け入れられていたようですが、そりゃそうでしょう。これがもし人もうらやむ美男美女のカップルが団体で「クリスマスは我々モテモテ人間だけのものだ」「ロンリーマンは表に出て来ず家に引っ込んでろ」などと叫びながら行進したならそれこそやっかみも含めて反発必至だったことでしょう。
    人間は往々にして自身を相対的に評価するもので、日頃どんなに恵まれていなくても、いま目の前にいる相手が自分より不幸とみると優しくなれるものですから、多くの人たちはデモ参加者を見て「あなたちに比べたらわたしはまだマシ」と感じたのかもしれません。そんな参加者たちは30分ほどのデモを「今年もクリスマスを粉砕したぞー」と万歳で締めくくったそうです。
    ところで彼らは自身を“クリボッチ”と言いましたが、クリスマスに『団体』で練り歩くどこが一人ぼっちなのでしょう。そしてデモ終了後、全員で粉砕したはずの“クリスマスパーティー”を楽しんでいたとしたら・・・。いずれにせよ平和な日本のクリスマスイブの出来事でした。
     
     
    ●2023年も残すところあとわずか。世間では情勢が大きく変化した年を“激動の一年”なんて言いますが、今年はわたしにとってまさに激動の一年になりました。“気まぐれライブ”で気ままに過ごしていた生活が、6月に自民党が天下の悪法である「LGBT理解増進法」を通して激変したのです。それまでもここ数年の自民党の体たらくには業を煮やしていましたが、この法律ができたことで「このままでは日本が壊れる」と感じ「まともな政党がないなら自分で作ればいい」と思い立ったのですから大変です。
    それからは9月のSNS開設からの党員募集、10月のメディアに向けた記者会見と結党パーティーの開催。さらには名古屋、東京、大阪での街頭宣伝活動と目まぐるしい日々が続き、そしてわたしの肩書にあらたに「日本保守党代表」が加わったのです。増えたものがあれば減ったものもありました。43年間ずっとあった「放送作家」という肩書きが完全に消えたのです。50歳を機に放送作家から小説家に転身を図った際、それまで担当していたテレビ番組のほとんどを辞しましたが「探偵!ナイトスクープ」だけはやめませんでした。なにしろ立ち上げから関り、チーフ構成者として心血を注いだ番組で特別な思い入れがあったからです。もしナイトスクープをやめるときがあるとしたら「それは番組自体が終了するときだ」とすら思っていたくらいです。そんな35年7カ月(放送前の準備期間を含めると36年弱)携わった「探偵!ナイトスクープ」の降板は文字通り断腸の思いでしたが「政党の代表者が一民放番組に関わっていたらいろいろな方面に迷惑を掛ける可能性がある」と考え、今までの人生同様今回も自分の信念を優先しました。
    そんな想いの詰まった「日本保守党」は政党といってもまだ1人も議員はいませんので厳密にいえばただの“政治団体”に過ぎませんが、事務所も借りて支部も作り街宣車の準備も整った2024年はいよいよ勝負の年となります。といっても、わたしたちの目的はあくまで「日本を豊かに、強く」することであって議員を生み出すことではありません。選挙に勝つのはあくまでその目的を完遂するための手段に過ぎず、ここが議員になることが最大の目的で国民の利益や自らの政治信条なんて二の次三の次の既成政党との大きな違いです。そんな生まれたてで何の実績もない政党ですが「日本を豊かに、強く」との考えにご賛同いただけるみなさん、是非とも応援よろしくお願いします。そして百田尚樹チャンネル会員の皆様、今年も1年ありがとうございました。
    来年もよろしくお願いいたします。

    記事を読む»

  • 2023年12月22日号:ニュースに一言

    2023-12-22 20:31  
    102pt
    5
    ●東京都内で35歳の男が銃刀法違反の疑いで逮捕されたというニュースがありました。
    12月4日正午ごろ、東京・世田谷区の小田急線・成城学園前駅近くの交番に女子高校生が「変な人に付きまとわれている」と駆け込んできました。すぐに対応した警察官が怪しげな男を見つけ職務質問したところ、なんと持ち物から刃渡り約9センチのナイフ2本と、鉄パイプ1本が見つかったといいますから大変です。さらに警察官が鉄パイプを指さし「これは何だ」と問うたところ、男は「これは爆弾です。中に火薬が入っています」となるとこれは紛れもなく事件です。
    男は警察官にナイフを渡し、「女性を刺して自分も死のうと思った」。続けて鉄パイプを渡し「ナイフで死ねなかったら爆弾を使おうと思った」と話したといいます。この手の事件で毎回思うのは、なぜ自分が“死にたい”ために無関係の人間を巻き込む必要があるのでしょう。冷たいようですが「死にたかったら勝手に死ね」としか思えません。
    女子高校生は最近、通学中に付きまとい被害に悩まされていたそうですが、よくぞ交番に駆け込んだものです。男の供述が本当だったとしたら、まさに九死に一生を得たことになります。彼女、そして彼女のご両親はさぞかしホッとしていることでしょう。
    そして今回の最大の功労者はなんといっても日本の交番システムです。交番所とは文字通り「交替(こうたい)で番(ばん)をする所(ところ)」のことで、そこに行けばいつでもお巡りさんに助けてもらえることを示しています。しかし、最近では人手不足から常駐というわけにはいかず、机の上に「ダイアルしてください」との文言とともに電話だけがおいてある交番もあるようです。実際の警官がいてこそ今回のような緊急事態にも対応できるのに、いちいち呼び出さなければならないのなら110番と同じで効果は半分以下にしかなりません。女性や子供、いわゆる弱者のためにもなんとか改善してもらいたいものです。それこそが犯罪の抑止力にもなりますし、何よりいざという時はもちろん、そうでないときも常に警察官がいてくれる安心感は何物にも代えられませんから。
     
     
    ●生き物は本能的に怖いものから逃れようとするものですが、人間だけは自らすすんで恐怖を味わいに行くのが不思議です。夏場のお化け屋敷は大賑わいですし、逆さまになって疾走するテーマパークの絶叫マシンはいつも長蛇の列です。
    心霊スポットとして有名な廃墟となったホテルに侵入した若者に「不法侵入だ」と迫り、現金を脅し取っていた管理業者の男ら3人が恐喝と弁護士法違反容疑で逮捕されたというニュースがありました。事件の舞台は京都府笠置町にある、かつては観光ホテルとして営業していたものの、いまやすっかり廃墟となった建物で、ここはその異様なたたずまいからからYouTubeなどに心霊スポットとして紹介され、各地から“怖いもの見たさ”の若者が集まっていました。
    そんな場所を今年8月と9月の未明に訪れた20代の男女4人から、この廃墟ホテルを管理する男たちは「刑事事件にするか、民事事件にするか」「前科が付く」などと言って示談金名目の計120万円を脅し取ったのです。彼らは「無断で立ち入った場合、30万円を支払うことに同意したものとみなす」と書かれた紙を貼った上で入り口に監視カメラを取り付け、人が侵入するたびに駆けつけて脅していたようで警察には30件以上の相談が寄せられていました。
    容疑者たちは「警告しているのに勝手に入るほうが悪い」「お化け屋敷でも入場料を取っているだろう」と思っているのかもしれませんが、さすがに30万円はふっかけすぎです。しかし「入るな」を無視してずかずか不法侵入した若者たちも反省する必要はあるでしょう。何はともあれ肝試しに来た被害者たちは突然現れた男たちに肝を冷やし、お化けなんかより生身の人間のほうがよっぽど怖いことを肝に銘じたことでしょう。
     
     
    ●「ロマンス詐欺グループ」の一員になった女性警官が逮捕されたというニュースがありました。佐賀県警捜査2課に詐欺容疑で逮捕されたこの女は大阪府警西成署刑事課薬物対策係の25歳の巡査です。
    彼女を含む一味は今年7月24日~8月7日、SNSでカナダ人男性医師を装い、佐賀県小城市に住む50代女性に対し「イエメンの病院で患者の世話をしているが、母が入院したため航空券が必要です」「自分の銀行口座にうまくアクセスできない」「イエメンからカナダまでの航空券は日本円で20万円です」などのウソのメッセージを送り20万円を銀行口座に振り込ませました。さらに8月下旬~9月7日、今度は埼玉県川越市の60代女性に対し日本人男性ファッションモデルに成りすまし、「タイにいて個人的なコンテストで優勝して賞金5億円を手に入れた」「事務所に見つからないようにあなたの家に送りたい」「一時的に運送会社に配送料を払って欲しい」と虚偽のDMを送信し70万円を銀行口座に振り込ませていました。
    その後8月21日になり「SNSで知り合ったカナダ人がトルコ警察に拘束された。解放するためにお金が必要だが、どうすればいいですか」と佐賀の女性から県警に相談があり事件が発覚しましたが、自分が騙されているとも知らず実際には存在しないカナダ人男性医師の心配をする女性が哀れでなりません。
    警察が調べると佐賀県の女性は20万円を含む約150万円、埼玉県の女性は70万円を含む約1140万円をこのロマンス詐欺グループにだまし取られていたことがわかりました。被害者は50代、60代と一般的には分別のある年齢とされますが、まさに「恋は盲目」とはよくいったものでいちど愛してしまったことによりもう周りは一切見えなくなってしまったのでしょう。それだけに純真な「乙女心」に付け込む卑劣な犯罪は許すことが出来ません。
    この手の詐欺事件は、ターゲット探し係、連絡係、現金引き出し係を分業にした上、架空口座でお金の流れをわからなくするなど周到な準備の上で行われますので、被害者が詐欺に気付いてもなかなか犯人を特定できません。ところが今回はいとも簡単に実行犯の女性巡査に辿り着きました。なぜなら、被害女性たちが振り込んだ銀行の口座名義が、なんとこの巡査本人のものだったからです。さらに警察が現金を引き出した日時を調べ、ATMのそばに設置されている防犯カメラの映像を確認すると、現金を引き出す女性巡査の姿がバッチリ写っていたのですからもう逃げられません。
    現役警察官が詐欺グループの一員だったことにも驚きですが、事件捜査のイロハを知る立場にありながら、自分名義の口座を使うなんて「犯人は私よ」と自己紹介しているのも同じで間抜けなことこの上ありません。詐欺事件で騙される方より騙す方が“バカ”だったという非常に珍しい事件でした。
     
     
    ●ドラッグストアで口紅1本を万引きした82歳の無職の男が島根県警雲南警察署に逮捕されたというニュースがありました。
    市内のドラッグストアの店長からの「在庫確認をしたところ、口紅1本が盗まれていることが分かった」との通報により、警察が店の防犯カメラなどを調べた結果、雲南市に1人で住む男の犯行が明らかになり逮捕されたのですが、盗んだものが後期高齢者の男には不似合いな口紅1本(販売価格990円)とはどういうことでしょう。調べに対し男は「私がしたことに間違いありません」と容疑を認めているそうですが、1人暮らしということで「家で待つ妻のために」というわけでもないでしょうし、ならば新しくできたガールフレンドへのプレゼントか。しかし男の自宅で見つかった盗まれた口紅に使用された形跡があったとなると、男が自ら使ったと考えるのが自然で、誰かのためにの可能性は低く謎はますます深まります。
    そこで思い浮かぶのは男が本当に“男”だったのかということです。彼がもしトランス女性だったとしたら一連の行動は合点がいくのです。現代でこそ「わたしは女よ、認めなさい」と当たり前のように権利を主張するトランス女性も多くなっていますが、この男の若かりし頃には「わたしは女よ」なんて言えば間違いなく変人扱いされたことでしょう。彼はそんな環境で82年間の人生を過ごしてきました。いまさら「わたしは女よ」なんて言えない気持ちはわかります。男がお金を払わずに持ち帰った理由が、口紅を握りしめて店員の待つレジに行く勇気がなかったからだとしたら、なんとも切ない気持ちになる事件でした。
     
     
    ●大阪府高槻市が市独自の物価高騰対策として令和5年9月から実施している水道基本料金の無償化を2か月間延長すると発表しました。あらゆるものが値上がりし家計が逼迫する中で国や自治体はいろいろな支援策を発表していますが、そのほとんどは恩着せがましい“給付金”支給です。目に見える現金はたしかにうれしいものです。しかし、それには事務処理のための時間が掛かるだけでなく手数料まで必要となることを忘れてはいけません。
    それに対し高槻市の策は、水道局が基本料金の請求をしないだけで他には何も手続きすることなく、市民は黙っていても毎月の支出が抑えられるのです。これほどまでシンプルでダイレクトに効果がでるものはありません。
    ガソリンにかかっている税金を一時的にストップする、消費税率を軽減、あるいは0にするなど簡単で即効性のある物価対策はいくらでもあるのに国は相変わらず手間と時間がかかる策しかとりません。これでは国民のための給付ではなく、だれかに提供するためにわざと手間と時間にかかるコストを捻出しているとしか思えません。その結果の“緊急”物価対策が半年以上先の来年のボーナス時の“減税”だなんて呆れてものも言えません。
    水道事業は原則として市町村が経営するものですから、どこもやろうと思えば減額請求なんてすぐにできます。国が本当に国民のことを考えているなら(その費用は国がもつから)すぐに各自治体に高槻市に倣うよう指示を出すべきです。電気、ガス、水道は現代人が生きていく上でなくてはならないものとして「ライフライン」とも呼ばれています。今から40年ほど前、わたしがまだ20代だった頃、風呂なしアパートで節約のためにガスを開栓していない友人がいました。彼はわたしの「風呂が無いにしても煮炊きやお茶を飲むために湯を沸かす時に困るだろう」との問いに対し「そんなもの電気炊飯器ですべて事足りる。とくにインスタントラーメンなんて密閉した炊飯器が圧力鍋代わりになってすこぶるいい具合 」と笑って答えました。
    そんなどこから見ても貧乏な生活を送る彼は料金未納により電気をしょっちゅう止められていましたが、同じく未納の水道を止められることはありませんでした。なぜなら電気は止めたところで部屋が真っ暗になるだけですが、水道(水)はそれがなければ“死”に直結するからです。すなわち料金を滞納したら電気やガスがすぐに供給ストップとなるのに対し、水道は最後まで止まることはないのです。あれから40数年、いまでは電気、ガス、水道完備の家に住めるようになった彼の自慢は「我こそが日本における“オール電化”第一号」です。

    記事を読む»

  • 2023年12月18日号:ニュースに一言

    2023-12-18 07:00  
    102pt
    2
    ●2019年7月、京都市伏見区にあるアニメ制作会社「京都アニメーション」に放火し、社員36人を死亡、33人に重軽傷を負わせた男の裁判員裁判で検察が死刑を求刑したというニュースがありました。
    多くの善良な市民にはとても納得できることではありませんが、残念ながら現在の日本では被害者が1人の殺人事件で死刑が求刑されることはほとんどありません(いわゆる永山基準)。しかし、今回の事件は36人という過去に類を見ない被害者数ですので死刑求刑は当然でしょう。それに対し弁護側は「死刑は残虐だからするべきではない」と主張するのですから笑ってしまいます。
    この被告は生きている人間に火を点け焼き殺した犯人です。被害者は炎に包まれながら、この世に多くの未練を残して命を断たれたのです。これ以上の“残虐”があるでしょうか。彼らの苦しみや悲しみに比べたら絞首刑なんて生やさしい処刑ではとても間尺に合わないくらいです。
    それにしても事件発生から4年以上も経ってようやく結審だなんて遅すぎです。被害者遺族がこの期間をどんな気持ちで過ごしてきたのかと考えるといたたまれません。裁判で最も重要なことは冤罪を生まないことで、そのためには本当に被告が犯人か慎重に見極める必要があるのは理解できますが、この被告は京アニに侵入したところ、火を放ったところなどの犯行を複数人に目撃されており、ほとんど現行犯状態ですから犯人に間違いありません。司法関係者に被害者、そしてその遺族に対して哀憫の念があるのなら、さっさと処分を決めて一日も早く事件に終止符を打つべきです。
    この事件の犯行理由は被告の「自分のアイディアを京アニが盗用した」との思い込みによる逆恨みでした。もちろんこんなものは情状酌量の材料にはなりません。誤解を恐れずに言うなら、情状酌量とは「突然、何の落ち度もない大切な人の命を奪われた被害者遺族が、犯人を殴る蹴るで殺したことの裁判で無罪を言い渡す」ときにだけ使うことのできる言葉です。
     
     
    ●政府が「異次元の少子化対策」として、3人以上の子供がいる家庭に対し、その大学進学にかかる入学金と授業料を国が負担するとした「こども未来戦略」を発表しました。この施策は子供が3人いたら全員の大学費用が無償になると事前に漏れ伝わり、子だくさん家庭は大いに期待していましたが、いざ実際にふたを開けてみると3人以上の子どもを育てる世帯のうち、無償化の対象となるのは3人全員が扶養されていることが条件というのですから呆れます。
    すなわち第1子が大学を卒業して扶養から外れると、下の2人の子どもは対象外というのです。さらに第1子が高卒で就職しても下の2人の子どもは対象外となり、この家庭は無償化の恩恵を一切受けられません。もはや当初期待された子供3人全員の大学タダは三つ子以外不可能なのです。よくもまあこんなどっちつかずで中途半端な施策をぬけぬけと発表できたものです。政府はこの施策により国民が3人以上の子供をもうけることで少子化に歯止めがかかることを期待しているようですが、国民をバカにしているのか、あるいは政府は本物のバカなのか。
    そもそも義務教育でもない大学を無償化にする意味が分かりません。現在でもアルファベットも満足に書けない、分数の計算が出来ない学生が在学する大学にも多額の助成金が支払われています。さらにそこに「金は出したるから大学生になれ」では少子化で学生が集まらず本来淘汰されるべき低レベル大学の延命措置をするようなもので、そんなことに我々の税金が使われるなんて堪ったものではありません。
    それにしても「異次元の・・・」なんて謳うわりにやることがいちいちセコすぎます。本当に爆発的に子供の数を増やそうと思うのなら「子供1人につき1000万、3人目からは2000万のお祝い金を贈呈」くらい言えないものでしょうか。その子供たちはやがて成人し納税し未来の日本を支えてくれるのですから、その費用は決して高いものではありせん。
     
     
    ●列車内などで執拗に女性に付きまとった上でわいせつな行為をした49歳の会社員の男が、不同意わいせつと不同意性交の疑いで埼玉県警川口署に逮捕されたというニュースがありました。
    この男は午前0時15分ごろ、JR埼京線池袋―赤羽間を走る列車内で面識のない20代女性に近付き身体を触るなどの痴漢行為をしていました。そして列車が赤羽駅に着いて女性が逃げ出すと男はすぐさまそのあとを追いかけ、なんとホーム上で性的暴行を加えたといいますから驚きです。
    さらにその後、女性がJR京浜東北線に乗り換えるとまたもや後に続き、赤羽―西川口間でも断続的に身体をまさぐり続けたそうでもはや完全に鬼畜の所業です。女性が触られながらも身ぶりで助けを求めたところ、近くにいた乗客が男のわいせつ行為に気付き車掌に事態を伝え、車掌の連絡を受けた西川口駅員が「列車内で迷惑行為があった」と110番し、待ち構えていた警察官が同駅で降車した男を確保したことで、ようやく女性は解放されたのです。
    一日の終わりに、いつ終わるとも分からない恐怖の時間を過ごすことになった被害女性はさぞかし不安だったことでしょう。よく勇気を振り絞って助けを求めました。それにしても東京のど真ん中でよくこんな事件が起きたものです。夜中とはいえ赤羽駅は乗降客が途絶えることのないターミナル駅です。そんな駅のホームで女性が暴行されているのに誰も気付かなかったのが不思議です。あるいは気付いてはいたものの「触らぬ神に祟りなし」と見て見ぬふりをして家路を急ぐ人ばかりだったとしたら、こんな情けないことはありません。そんな人たちにわたしは問いたい。「もし目の前で犯されている女性が自分の妻、恋人、娘、妹だったとしても見ぬふりできたのですか」と。調べに対し男は「ムラムラして性的欲求が抑えられなかった」などと供述していますが、こんな獣のような男が平気な顔をして街中を歩くなんて絶対に許せません。
    諸外国に比べて性犯罪にあまい日本ですが、自分の妻、恋人、娘、妹そして多くの善良な女性を守るためにも厳しい処罰が必要です。とりあえずは男のおでこに「性」と入れ墨を彫り、一目で性犯罪者だとわかるようにすることが第一歩です。「犯罪者にも人権がー」なんて批判は一切受け付けません。
     
     
    ●鳥取県米子市内の大衆浴場の女湯で、面識のない20代女性の体を触った32歳の自称無職の男が不同意わいせつの疑いで逮捕されたというニュースがありました。男は調べに対し「マッサージのために女性の体を触った」と話していますが、仮に同性同士であっても見ず知らずの他人に頼まれてもいないのに“マッサージ”だなんて、それだけで十分に不審者です。
    そしてこのニュースには最後に興味深い一文がありました。『米子警察署は、男の心が女性であるかどうかは捜査中で、男性器がついているかは確認中としていて詳しい事件の経緯や動機などについて調べています』。
    これまでは女湯に男が侵入したらそれだけで即アウトでしたが、今年の6月にLBGT理解増進法が施行され、自称女性のトランス女性を即時に女性用スペースから排除することが出来なくなりました。さらに10月には最高裁が性別変更要件から「生殖要件」を撤廃し、それこそ「わたしは女よ」と言うだけで「女性」と認めなければならなくなったのです。その結果、女湯に男を入れない最後の砦は、いよいよ厚生労働省の「身体的特徴(チンチンがあるかないか)で判断する」という通達だけになったことで米子警察の「男性器がついているかは確認中」となったのでしょうが、この男の“モノ”が一瞥してチンチンと判断出来ないほど小さかった場合は果たしてセーフなのかアウトなのか。
    そして今回の事件で恐ろしいのは、これまでの女湯侵入が女性の裸体を“黙って見ていた”だけなのに対し、“触る”にエスカレートしていることです。今後、トランスジェンダーの優遇がより進むようであれば、男の部分むき出しの“自称女性”のやりたい放題はますます激しくなっていくことでしょう。百害あって一利なしのLBGT理解増進法のせいで女性の安心できるスペースはどんどん狭められていきます。
     
     
    ●2025年に開催される大阪・関西万博の運営費が当初に見積もっていた809億円から1000億円以上に200億円も上振れする見込みだというニュースがありました。この万博では既に建設費が1250億円から2度の修正を経て当初の1・9倍にあたる2350億円に膨れ上がることが発表されていますが、こちらは国と大阪府市、さらに関西経済界が3分の1ずつ負担することになっています。しかし、上振れする運営費に対しては西村康稔経済産業相が「赤字が出ても国として補填することは考えていない」、また博覧会協会副会長でもある吉村洋文大阪府知事も「大阪府と大阪市も国と同じで運営費については補填しない」と明言するのですから困ったものです。
    それでは最終的に赤字はいったい誰が埋めるのでしょうか。阪神タイガースとオリックスバファローズの優勝パレードで“万博”を打ち出したために総スカンをくらって当初予定額の1割にも満たなかったことも忘れて、まさかまた“クラウドファンディング”で、なんて言い出すのでしょうか。
    予算をオーバーしそうなら、大不評の350億円の木造リング建設を中止するなど何かを削って枠内に収めればいいものを、その努力もせず「どうせ税金だから自分の腹は痛まない」とすべてが他人事で無責任な連中ばかりなのですから、今後もますますあらゆる費用が増え続けることでしょう。万博は3月から9月までの半年間開催されます。半ばに差し掛かり暑くなるころには予算が枯渇し「今日は電気料金節約のため冷房は無し」「動く歩道も今日はストップしていますから自分の足で動いてください」なんてことにもなりかねません。そこまでいかなくても人件費節約のため会場内の清掃がおろそかになることは必至です(もっとも発売後1週間経っても5万枚の入場券の売れ行きをみると汚れて掃除をしなければならないほど人は集まらないのかもしれませんが)。
    こんな問題山積の万博なんて、そのテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」が聞いて呆れます。これでは「いのちが縮む現実社会」でしかありません。万博開催による経済効果は2.4兆~2.8兆円という試算だそうですが、果たしてこれもどこまで正確なのか。なにしろ彼らは計算が大の苦手なのですから。

    記事を読む»

  • 2023年12月1日号:ニュースに一言

    2023-12-01 20:50  
    102pt
    8
    ●11月26日、解体直前の静岡県島田市役所旧庁舎を舞台にサバイバルゲーム(サバゲー)イベントが開催されました。サバゲーとは、敵味方に分かれてエアソフトガンで直径6ミリのBB弾を撃ちあい模擬戦闘を楽しむもので、チーム毎に獲得した陣地の広さで勝敗を決っします。
    今回のイベントは焼津市内の事業者が1962年建築で今年10月に61年間の使用を終えた鉄筋コンクリート4階建ての旧庁舎を有償で借り、そこでのサバゲーを27日からの解体工事の前日に開くことを島田市に提案しました。それを受けた市は公共施設の民間提案制度に基づき「職員でつくる審査委員会」に諮り、そこでの審査に合格したことで実現したものです。翌日には解体するものですから、いくら傷つけても問題ない上に、最後のご奉公として賃料まで入るのですから市としては願ったりかなったりです。
    快諾を得た主催者が参加者を募ると県内や首都圏などから申し込みが殺到し、半日で100人の定員が埋まったといいますから相当な人気で、この企画を知った島田市の染谷市長も参加を予定しました。
    ところがです。開催を知った市議会議員がロシアによるウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザでの戦闘が報じられる中、「停戦や平和を求める声が高まっているこの時期に実施すれば、市のイメージを低下させ、市民を失望させかねない」と言って中止要請を出すのですから困ったものです。サバゲーはフルフェースマスクで顔を保護するなど安全対策を取った上で敵の撃ったBB弾が自分の体に当たったら「ヒット!」と宣言し、自主的にプレーから離脱するなど一定のルールの下で行われます。それを「鉄砲を撃ちあうから、即、戦争」とは何たる短絡的思考でしょう。
    鉄砲がダメならオリンピックのクレー射撃もダメだし、戦うことがダメなら決闘そのもののフェンシングもアウトです。さらに“平和”を突き詰めていくと、殺したり盗んだり、刺したりするうえに右翼や左翼までいる野球なんてもってのほかでしょう。クレームを受け市長自身は参加を取りやめましたが、イベント自体は無事開催されました。いつもの平面での戦いと違い1階から4階までフルに使ってのサバゲーに参加者は大満足で、旧庁舎は見事に有終の美を飾ることとなったのはなによりでした。
    声の大きな少数派を気にするあまり事なかれ主義を決め込む自治体も多い中、信念通りに開催を決行した島田市の見事なサバイバルぶりはあっぱれです。
     
     
    ●2025年に開催される大阪・関西万博で、大阪市が市内在住の子どもたちに期間中何度でも入場できる「夏パス」を配布する方針を示したというニュースがありました。
    大阪市が無料招待の対象とするのは、市内に住む4歳から17歳までの子ども約28万人です。その理由を大阪市の横山英幸市長は、「会場は広く1日では到底回り切れない。招待を通じて、次世代を担う子どもたちが世界から集う技術に触れ、未来を感じてほしい」としていますが、この万博の迷走ぶりには呆れるばかりです。子どもを対象としての無料招待は、大阪府がすでに府内在住の4歳から高校生の全員を対象に1回は実施すると発表し、さらに市町村には独自負担による2回目の招待も要請しています。そのうえで何回でもOKの無料パスとはいったい・・・。それもこれも2800万とも3000万ともされる来場予定数達成の目途がまったく立っていないことが背景にあるのは間違いありません。
    1970年千里丘陵で開催されたEXPO70は半年間で6400万人を集めました。これは1日平均35万人というとんでもない数字です。人気パビリオンでは8時間待ちなんてこともあり、とてもすべてを1日で回りきることはできませんでした。そのため多くの人は2回3回と足を運びましたが、2025万博にそれほど人を引き付ける魅力があるとは到底思えません。目玉らしい目玉もなく、ただ「空飛ぶ自動車」の一点張りで、それさえどうなるかわからないのが現状です。
    そんな中で「リピーターになって」なんて意味が分かりません。そもそも“無料”招待といってもその費用は税金で賄われます。建設費高騰などネガティブな話題が多い中、さらに見栄のために税金投入とは恐れ入ります。主催者側はこれで子供とはいえ動員の目途はたった、と一安心のようですが、肝心の展示物は果たして間に合うのでしょうか。何もないがらんとした広場で「このチケット、USJのと交換して」と懇願する子供たちが出ないことを切に祈ります。
     
     
    ●検疫とは入国する際に、禁止されている動植物や食品などを持ち込んでいないかを調べるものです。ニュージーランドに住む77歳の女性が、カバンに入っていたチキンサンドイッチのせいで検疫に引っかかり3,300ドル(約32万円)の罰金を言い渡されたというニュースがありました。
    この女性はニュージーランドのクライストチャーチでサンドイッチを購入して後で食べようとカバンに入れました。しかし、そのまま忘れて飛行機に乗ってしまい、次にカバンを開けたのが到着地のオーストリアの空港検疫だったのですから大変です。なにしろ島国のオーストラリアの空港は、固有の生態系を守るために検疫の厳しさは世界トップクラスと言われています。そんなところで食肉製品の輸入許可を得ていないサンドイッチが見つかったのですからもう逃げも隠れもできません。すぐに申告違反で3,300ドル(約32万円)の支払いを命じられたというわけです。
    たしかにオーストラリアの空港の厳しさは有名で、ゴルフシューズの底にわずかでも芝生がついていようものなら、すぐに「別室へご案内」となりますので日本人は出国時に旅行社からくれぐれも注意をするようにと言われ、緊張を強いられます。
    それにしても今回の御婦人の場合は単にサンドイッチを持っていることを忘れていただけで“密輸”の意志がなかったのは明らかです。にもかかわらず厳しい措置をとるのは「違法な持ち込みは断固として許さず、徹底的に取り締まる」という強い意志の表れでしょう。翻って同じ島国の我が国の場合はどうでしょう。明らかな常習犯や桁違いに大量の持ち込みでない限り、禁止物が見つかっても「持ち込めません、放棄してください」と、その物品を任意に手放すだけで済んでいるのが実情ではないでしょうか。誰にでも“うっかり”はありますので、持ち込み禁止物を見つけたからといって有無を言わさず追い詰めることは酷かもしれませんが、そこに『国を守る』意識の違いを感じてしまいます。
    ニュージーランド女性は持っていることすら忘れていた未開封のサンドイッチにそこまでの罰金が科せられるのは過剰対応だと訴えたものの、オーストラリアの農水産林業省の広報担当者はオーストラリアでは缶入りでない食肉製品は輸入許可証がない限り持ち込みは許可されていないことを強調し、「旅行者が危険物品の申告を怠った場合、最高6,260豪ドル(約61万円)の違反通知を受ける可能性があります。今回は3,000ドルほどで済んだだけで幸運だ」とまったく意に介していないそうです。
     
     
    ●これだけ連日特殊詐欺事件が報道されているにもかかわらず、いまだに騙される人が後を絶ちません。
    秋田県警大仙署が美郷町に住む60代男性が56万7000円分の電子マネー利用権をだまし取られる特殊詐欺被害に遭ったと発表しました。警察によりますと男性のスマートフォンに春頃、「3億円当選しました」などとメッセージが届いたそうです。この手の詐欺手口も既に報じられていますので、多くの人は「こんなものに騙されるか」と無視して“終わり”ですが、なんとこの男性はご丁寧にも記載された番号に連絡を取ったといいますから呆れます。
    メールを送った方は無差別に何百、何千、何万と発信し、そのうち1つでも応答があれば儲けものと考えますが、その代わり一度かかった獲物はあの手この手で絶対に逃しません。そもそも少し考えれば絶対にあり得ない話を思い切り欲の皮を突っ張らして信用するくらいですから、詐欺師にとってはまさに「飛んで火にいる夏の虫」で赤子の手をひねるくらい簡単に話が進みます。
    この男性も相手から「セキュリティー登録にカード型の電子マネーを購入し、裏に書かれた英数字を送ってほしい」と要求され、言われるままに町内のコンビニ店で複数回にわたり56万7000円分の電子マネーを購入し、利用に必要な番号を伝えたそうですが、「これさえ終われば3億円」と考えていたとしたら哀れなことこの上ありません。
    1等前後賞合わせて10億円の年末ジャンボ宝くじの発売が始まりました。ここで今一度確認しておきます。どんなに高額賞金の宝くじが発売されたとして、買わなければ100%当たりません。
     
     
    ●11月23日は元々は新嘗祭という、その年の収穫に感謝して新穀を神様にお供えし翌年の豊穣を願う日でしたが、戦後日本に進駐したGHQの天皇陛下の宮中祭祀としての新嘗祭と国民の行事を切り離すという意向により昭和23年に勤労感謝の日という名称に改称され、感謝の対象は神様から働くすべての労働者に変わりました。そんな勤労感謝の日に、秋田県鹿角市で小学生を対象にした仕事を体験できる催しが開催されたというニュースがありました。
    このイベントは児童が警察官や医師、それに小売店の販売員などさまざまな職業に就いて社会の仕組みを学ぶもので、会場には特産のリンゴを売る店をはじめとした小売店や交番、それに医療機関など全部で27の仕事を体験できるブースが設けられました。そこで参加したおよそ120人がそれぞれ一所懸命に働き、仕事を終えると会場でのみ使える通貨が「給料」として支給され、それを子どもたちは買い物に使ったり税務署で納税したりして社会の仕組みを学びました。
     “お金”というと「親やおじいちゃん、おばあちゃんからもらうもの」としか思っていなかった小学生が労働の対価としての「給料」を初めて意識したであろう今回の試みはさぞかし有意義なものだったことでしょう。小学生に将来なりたい職業を聞くと「サッカー選手」「お花屋さん」「お菓子屋さん」などいろいろな答えが返ってきますが、「その理由は?」の答えは「カッコいいから」「お花が好きだから」「ケーキがすきだから」と全員が「好きだから」です。なにしろ彼らにはこれから何にでもなれる無限の可能性がありますから、職業選択の理由は「好き」だけで十分なのです。
    それが中学高校になると「儲かりそうだから」「楽そうだから」と、それまでとは違ったよこしまな要素が入ってきます。さらに「なりたい職業」が商売人の子供など「ならなければならない職業」となることもあります。その最たるものはやはり医者でしょう。医者は高給取りの代表格ですから親がぜひ息子にも継がせたいと思うのです。そのため医者の子息は小さいころから「お前は医者になるんだ」と言い聞かされますが、いかに親が必死になろうと医者になるには国家試験に合格しなければなりません。それこそが世襲によるヤブ医者乱造に一定の制御をかけているのです。
    それに比べて日本におけるもうひとつの家業となってしまった政治家の場合は厄介です。政治家にはどんなぼんくらでも票さえ集めれば試験なしでなれます。そしてその集票に大きく影響するのが「地盤」「看板」「鞄」です。先祖代々その選挙区で固めた後援会組織と売ってきた名前、さらに税制上優遇される豊富な資金を丸々受け継いでの選挙戦は、それがない候補者よりはるかに有利になります。こんな不平等で国益に反するシステムは即刻改正しなければなりませんが、議員の給料、選挙制度を決めるのが“議員”なだけにこの既得権益を絶対に放そうとはしません。その結果が、外遊に行けば公用車で買い物三昧、官邸内の極秘情報を夜な夜な仲良しの女性記者に伝える(ちなみにこれを『官邸!ナイトスクープ』と言います)、挙句の果てに首相公邸での大はしゃぎで総理秘書官をクビになったあのバカ息子も将来的には何食わぬ顔をして国会議員になると思うと情けない限りです。

    記事を読む»