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2024年12月23日号:ニュースに一言
2024-12-23 16:08102pt -
2024年12月16日号:ニュースに一言
2024-12-16 14:00102pt -
2024年12月09日号:ニュースに一言
2024-12-09 13:30102pt●経済産業省が自らを女性だと主張する50代のトランスジェンダー“女性”職員に対する女性用トイレの使用制限を撤廃したというニュースがありました。この職員は幼少時から男性という自身の性別に違和感がありつつも男性として入省し、その後にホルモン投与を受けるなど性別移行を開始し2010年から“女性”として勤務していました。
しかし、いくら本人が「わたしは女よ」と言ったところで男性時代を知っている者としては「はい、そうですか」といきなり女性扱いするわけにはいきません。庁舎内には生来の女性職員も多数います。そんな彼女たちがトイレでこの“女性”職員に出くわしたらどう思うかと考えた経産省は当該職員が使えるトイレを1箇所に制限しました。
これに対し、トランスジェンダー職員は「毎回、勤務しているフロアから2階以上離れたトイレまで行くのはかなわん。女性の自分が庁舎内の女性トイレを自由に使えないのは差別だ」と裁判所に訴えたのですから大変です。その結果、2023年7月に最高裁が「トイレ制限は違法だ」という判決を下したのです。
それでも経産省はその他の女性職員の権利を守るべくトランス職員のトイレ制限を1年4ヶ月にわたり続行していました。それが今回「トイレ制限は不当だ、トランスであろうとなんだろうと“女性”には女性トイレを自由に使用させるべきだ」と人事院が進言したことにより撤廃されたのです。
そこで働くすべての職員が快適に過ごせる環境を作ることはたしかに重要です。しかし、たった一人の権利を守るために、その他の多くの人々の権利がないがしろにされて良いわけがありません。いままでは「そのトイレに行きさえしなければ元男性のトランス女性と遭遇することはない」とされていたものが、いつどこで鉢合わせするかわからなくなった生来の女性職員の権利はいったいどうするのでしょうか。
と、言ったところで決定が覆されることはなくもうあきらめるしかありません。なぜなら社会通念や慣習、常識より個人の主張を優先し、例えば“ちんちんが付いていようが「わたしは女性よ」と宣言”すればそれを認めなければならず、認めないのは逆に差別主義者として責められることになってしまったからです。2023年6月に可決されたLGBT理解増進法はそんな恐ろしい法律なのです。
●大阪府教育委員会が、府立高校2校の新入生募集を2026年度入試から停止することにしたというニュースがありました。
府立学校条例では志願者が3年連続で定員割れし、改善の見込みがない高校は再編整備の対象にすると規定していましたが、1校は21年度から4年連続、もう1校は19年度から6年連続で定員を下回っていました。大阪では去年から「2028年までに9校」をめどに統廃合の計画が進められていますが、その流れは今後ますます加速していきそうです。なぜなら今春の入試で、なんと府立高校のおよそ半数が定員割れとなってしまったからです。
その原因は今年始まった「私立高校の授業料完全無償化」にほかなりません。大阪は元々、府立に優秀な高校が多いこともあり公立高校希望者が多い土地柄でしたが、現在では多くの私立高校が進学実績を伸ばすなど特色ある学校づくりに尽力して私立を希望する中学生も増えています。
そうはいっても公立に比べて圧倒的に授業料が高い私立はやはり生徒集めに苦労していました。そこへきての「私立高校の授業料完全無償化」。設備面や最近の中学生が高校選びの重要ポイントとする制服の可愛さやカッコよさでアドバンテージのある私立高校に生徒が流れるのは当然です。その結果、北野高校や天王寺高校など一部の人気校を除いて軒並み定員割れしたのです。
“無償化”といっても私立高校が「タダでいいよ」というわけもなく、大阪府が親の代わりに授業料を支払っており、その原資は言うまでもなく税金です。大阪のやっている授業料無償化は税金を使って経営努力をせずに新入生が集まらず経営の怪しくなった私学を助けているだけです。中学卒業生のほぼ100%が高校進学する現代で、大阪府、いや維新は“公教育”をいったい何と心得ているのでしょう。
府の教育庁は府立高校の入試日程を例年の3月から2月に早めて新入生を囲い込もうとしていますが、そんなことで改善できるとはとても思えません。なにより私立も1月に入試を前倒ししたらそれで何も変わりません。そんな付け焼刃の策で振り回される15歳が不憫でなりません。
●ほとんどの空港の出発ロビーの前には、飛行機に乗る人が車で送ってもらったときに降りるだけの停車しか許されない場所があります。英語ではそこを「ドロップオフゾーン」と呼ぶらしいのですが、ニュージーランドのダニーデン国際空港のドロップオフゾーンで最近、ハグする2人のピクトグラムとともに「ハグは最長3分まで」「もっと親密なお別れをしたい場合は駐車場をご利用ください」と書かれた標識が登場し賛否を呼んでいるそうです。
前述のようにドロップオフゾーンは降車後すぐにクルマを動かさなければ次から次へと訪れるクルマが停まれません。そこでこんな標識が登場したのですが、“3分間のハグ”とは我々日本人からしたらとはずいぶん長いなと感じます。それだけの時間があればハグだけで収まらず“チュー”もしたくなるし、さらにその次も・・・、おっと失礼。いずれにせよ長時間停車を諫めるのにハグを持ち出してくるとはなんとも愉快なお国柄です。
ハグといえばわたしも10月の選挙活動中にはずいぶんたくさんの人としました。50か所以上で街頭演説をし、終了後にはほとんど握手会の時間があり「本日に限り(毎日言いましたが)希望者はハグもOK」と言えば老若男女問わず多くの人が笑顔で応じてくれたのです。その数は300名、あるいはそれ以上だったか定かではありませんが、それまでの人生の総ハグより多かったことだけは間違いありません。握手は利き手を差し出すことで「武器を持っていない」=「戦う意思がない」ことを示しますが、ハグはそれ以上の信頼関係がなければ出来ません。スタッフは保安面からあまりいい顔をしませんでしたが、きびしい選挙戦の中でおおきな活力源となりました。みなさん、本当にありがとうございました。また、機会があれば是非よろしく。
●今年7月、20年ぶりに紙幣が一新され1万円札の肖像が福澤諭吉から渋沢栄一に代わりました。「近代日本経済の父」とも称される埼玉県深谷市出身の渋沢栄一は、江戸時代末期に農民から武士に登用され徳川慶喜に仕えるようになります。そしてパリの万国博覧会など欧州諸国を訪問したことで日本も近代化が必要と感じ日本初の株式組織「商法会所」を設立します。その後、明治政府に招かれ大蔵省の官僚として新しい国作りに深く関与しました。そして、退官後は実業界に身を投じ、第一国立銀行、東京商法会議所、東京証券取引所などを立ち上げたほか、公共事業や教育機関、研究機関などの設立にも尽力し、関わった企業は生涯で約500、学校や公共事業は約600にも上るといわれています。
そんな実績から1万円札の顔となったわけですが、なんと「新1万円札での結婚式のご祝儀はマナー違反じゃないか」と物議を醸しているそうなのです。その理由が彼が数々の偉業をもつ一方で愛人を妻と同居させるなど女性関係に難があり、新しい生活をスタートする若い2人にはふさわしくないからというのですから呆れます。
渋沢栄一の生きた時代は富と名声のある男性には妾の一人や二人は当たり前でした。それを「不倫は絶対にダメ」の時代になったからといって悪者扱いするのはいかがなものでしょう。そんなことをしていたら紙幣の肖像には生身の人間は選ばれず、ドラえもんやウルトラマンなどの架空のヒーローしかなり手がいなくなります。訳知り顔の“マナー講師”の中には「結婚のご祝儀には福澤諭吉版のお札が無難です」なんて言う者まで現れていますが、それなら肖像交代の前に声をあげるべきで、発行されたあとにいくらもっともらしく語っても説得力はありません。
そもそも今は新旧お札の過渡期ですからまだ福澤諭吉も容易に手に入りますが、あと1年、2年もしたら渋沢版しかなくなります。そのときはどうするのでしょう。まさか「結婚のご祝儀にはPayPayが無難です」なんて言うのでしょうか。結婚のご祝儀に関しては「偶数は割り切れるからNG」とも言われます。しかし、もらう方としては福澤諭吉の3万円より渋沢栄一の4万円のほうがうれしいだろうとわたしは素直に思います。
そんな結婚ですが、現代ではなんと3組に1組の夫婦が離婚しているそうです。たくさんの人に祝福されながら嫌になったらさっさと離婚する。もちろんもらったご祝儀を返すことはありません。ご祝儀を出してばかりの身としては、そのほうがよほどマナー違反ではと思ってしまいます。
●10月31日、愛知県名古屋市に新たなビジネスモデルを開発するスタートアップ企業の支援や育成に取り組む日本最大級の拠点『STATION Ai』がオープンしました。この施設には見学に訪れた子供たちに将来は起業家になる夢を育んでもらおうと、愛知県にゆかりのある革新的な事業を興した創業者や経営者の業績を伝える施設「あいち創業館」がありますが、そこに展示されるメンバーを選ぶにあたってひと悶着あったというニュースです。
「あいち創業館」では当初、54人の偉人の展示を予定していました。その内容はトヨタグループの創始者「豊田佐吉」や自動車部門に進出した「豊田喜一郎」と世界のトヨタに成長させた歴代社長、地元の名古屋鉄道や中部電力の設立者など、誰でも知っている企業の関係者が並んでいます。しかし、オープン直前になり市民から偉人の中に女性が1人もいないことに対しクレームがつき、急遽6名の女性を追加展示することにしたといいますから困ったものです。
1986年に男女雇用機会均等法が施行され女性が男性並みに社会進出するようになってからまだ40年も経っていません。そんな状態において地域で偉大な功績を残した経済人を選ぼうとしたら男性だらけになるのは当然です。それを「男性だけなのは女性差別だ」とばかりに批判し、無理やり女性をねじ込んだのでは当初の意図と違った展示にならざるを得なくなります。
実際、元々の偉人たちが世界の企業と比べても遜色のない会社の関係者なのに対し、追加メンバーは地元の学校設立者や地域のお菓子製造創業者、宿泊施設創業者など小粒感は否めません。わたしは決して今回追加で選出された女性たちを馬鹿にしているのではありません。彼女たちがその時代を精一杯生き、事業を成功させた功労者なのは間違いなく十分に称えられるべき人物だとは思います。しかし、最初の選考で彼女らが上がらなかったのはその偉業が、その他のそれに比べて大きくなかったからです。それを「女性だから」と下駄をはかせて追加するのは逆に失礼なことではありませんか。
男女平等とは男と女が何もかも一緒になることではなく、色メガネなしで同じ土俵に上がり同じ物差しで評価されることです。それなのにまだ数にこだわっているなんて。こんなことでは真の男女平等はまだまだ先になりそうです。 -
2024年12月02日号:ニュースに一言
2024-12-02 07:00102pt●ちょっと前になりますが、10月1日、東海道新幹線が開業から60周年を迎えました。1964年、戦後20年を待たずして敗戦時に最貧国の1つだった日本が、戦勝国のアメリカやイギリス、ロシアさえ成しえなかった時速200キロ以上の高速鉄道を東京―大阪間で世界に先駆けて走らせたのです。
東海道新幹線は当時「夢の超特急」と呼ばれ、昭和の高度経済成長期を駆け抜け、平成、令和の3つの時代を走り続けて累計約70億人を運んできました。開業当時の新幹線「ひかり」はそれまで在来線特急「こだま」が6時間30分かけて走っていた東京大阪間を2時間30分も短縮する約4時間で結んだのですからまさに「夢の超特急」だったのです。ちなみに「こだま」はその運行開始前まで東京から大阪まで8時間かかっていたため出張する際には宿泊を余儀なくされていたものを、この列車を利用すれば日帰り、すなわち『行って戻ってくる』ことが可能になることから名付けられました。そして「ひかり」は「こだま」(音)より早いのは光だということで「ひかり」となったのです。
それから60年、新幹線はさらに進化を続け、いまや東京―大阪間が2時間30分を切るところまでスピードアップされただけでなく九州や東北、北海道、北陸など全国にその路線は拡大されています。わたしは週に1回以上関西の自宅から上京する生活を10年ちかく続けていますが、もし新幹線がなければとてもかなわなかったことでしょう。
新幹線のすごいところはスピードだけではありません。なんといってもその安全・安心性です。最大で1時間当たり17本が出発するダイヤを組みながら開業以来大きな人身事故はほとんどなく、毎日定刻通りに運行されています。それもひとえに日本人の勤勉さ、真面目さ、誠実さによるもので、技術力だけでなくその国民性も相まって生み出された賜物です。世界中が日本の高速鉄道に注目し、お手本にした昭和40、50年代は今よりずっと日本が豊かで強い時代でした。そして、それをけん引していたのは大正から昭和10年までに生まれ、戦争を経験した先輩たちです。彼らに恥じないためにも今一度、かつての豊かで強い日本を取り戻したいものです。「のぞみ」は捨てません。
●雑誌4冊を盗んだ疑いで52歳の無職の男が再逮捕されたというニュースがありました。窃盗(万引き)の疑いで逮捕されたこの男は、8月22日に新潟市中央区のコンビニエンスストアでギャンブル関係の雑誌4冊(販売価格合計5909円)を盗んでいたのです。そして今回が再逮捕となった理由が今年4月30日にも新潟市中央区にある別のコンビニエンスストアで同様のギャンブル関係の雑誌3冊(販売価格合計4359円)を盗んだからというのですから呆れます。
どうやらこの男にとって雑誌は買うものではなく盗むものだったようで常習犯なのは明らかです。ギャンブル関係の雑誌といいますから、たぶん「パチンコ必勝法」や「パチスロ攻略本」の類だったのでしょう。ギャンブルは「金を持っている者」が圧倒的に有利です。極端に言えば「勝つまで賭け続ければ絶対に負けることはない」からです。それなのに雑誌を買う金もない無職の男がギャンブル必勝法など読んでどうやって勝つつもりだったのでしょうか。そもそもギャンブルは実力以外に多分に「ツキ」の要素が必要なのに、52歳にして無職の男に「ツキ」があるとは到底思えません。さらに50年間脇目も振らずに一所懸命働いた者に最後に宝くじが当たったのなら「神様の思し召し」ともいえるのでしょうが、いい年をして万引きに勤しむ輩にそれがあるとも思えません。
金のない男にとって万引きは「捕まるか捕まらないか」という最後に残された究極の賭けだったのかもしれませんが、彼はその賭けにもやはり負けるべくして負けたのです。
●福岡県古賀市が、来年1月6日から市役所の窓口業務を現行の午前8時半~午後5時から、午前9時~午後4時に短縮すると発表しました。その理由を市長は「ブラック職場にしない姿勢を明確にし、就職先として選ばれる自治体になりたい」など働き方改革の一環としています。さらに、余裕のできた職員には政策立案など創造性のある仕事を振り分け市民サービスの向上を図ることで「理解をいただきたい」とも話しています。
市民サービスの基本ともいえる窓口業務を減らさなければならないほど古賀市職員の労働環境は劣悪なのかと思いきや、約360人いる職員の平均残業時間は1か月当たり10・3時間と知り呆れてしまいました。なんと1日あたり30分ほどの残業さえ“ブラック”だなんて、民間企業の社員が聞いたら怒りで真っ赤になることでしょう。
わたしは「公僕たる市役所職員は死ぬまで働け」なんて言うつもりは毛頭ありませんが、市役所はあくまで市民優先であって欲しいとは思っています。一般的な会社が5時までなら7時まで、せめて6時まで開庁していたら随分便利になります。それを延ばすのではなく縮めるのですから困ったものです。
働き方改革・・・一見、耳当たりの良い言葉ですが、その実情はいろいろ問題があるようです。友人の会社でも働き方改革の一環で社内のIT関連を担う「システム課」が在宅勤務になったそうです。それまではパソコンに不具合が生じると内線電話で「直してー」で済んでいたものが、今は勤務中なのか勤務外なのかわからない担当者を見つけ出し、そこからメールで作業内容を依頼しなければならなくなり随分と手間が増えたそうです。年配の社員の中にはその手間に辟易し「もう、ええわ」と、あきらめてしまう者まで現れる始末で営業職の彼の職場では作業効率はガタ落ちだそうです。
一方で「システム課」の方の報告は「依然と比べ作業効率もアップし、課員の評判もすこぶる良い」ですから何をかいわんやです。要は「システム課」の仕事を営業課が肩代わりしただけで、全体の作業量は一向に減っていないだけでなく場合によっては増えてしまったのです。
古賀市ではコンビニでの証明書発行手数料を期間限定で10円に割り引くなど来庁者を減らす取り組みも進めているようですが、今回の決定で得をする人、損をする人の見極めは慎重にするべきです。友人の会社では楽になった部署の尻拭いをほかの部署がすることになりましたが、市役所の場合の尻拭いをするのはほかでもない市民なのですから。
●環境省と日本自然保護協会が国内各地で動植物の状況を定点観測したうえで公表した報告書によると、スズメが年3・6%のペースで減っているそうです。この減少ペースが長期間続けば環境省レッドリストの絶滅危惧種の判定基準を満たす可能性があるといいます。
そういえば以前は最も身近な鳥だったスズメを最近ではすっかり見なくなりました。わたしが子供のころは庭先に米粒をまいておけば、すぐに近づいて来てチュンチュン賑やかだったのですが、いまや都心ではカラスは見てもスズメの姿はありません。その理由は都市部ではアスファルト舗装がほぼ100%となり、エサとなる虫がいないためと容易に想像できますが、畑や田んぼが広がる地域でも減少しているとなると一気に深刻になります。
その理由を環境省は「地球温暖化で生存に適した気温ではなくなったことや、管理されなくなった里山が増えて生息環境が変わった」としていますが、近年の猛暑がスズメを生きながら“焼き鳥”にしていたなんて・・・。
今の減少率が続けば20年足らずでスズメの数は半分になります。しかし、現代では商業的にスズメを捕獲する人はいませんので、まさかスズメのお宿にエアコンを付けるわけにもいかず規制のしようがありません。そもそも自然に逆らってまで人間がスズメを守るべきなのか。難しい問題です。
●2025年春の入社予定者の内定式が10月1日に全国各地で行われたというニュースがありました。慢性的な人手不足により学生に優位な「売り手市場」が続く中、企業は内定式を行うことで内定者同士や社員との交流を促し、学生のつなぎ留めを図っているようです。
わたしが学生のころ(といってもわたしは1社たりとも受験していませんが)も内定日は10月か11月でしたので40年以上経ってもあまり変わっていないと思いきや、今回の内定式の出席者に実質的な内定日が半年以上前の学生がいると聞いて驚きました。なんと現代では大学3年生の6月位から就職活動を始め、早ければ4年に進級する前の翌年3月に内定を得る学生もいるというのです。これでは勉学に専念する期間が2年しかありません。
いかに日本の大学が入るのは難しい(希望者全入の現在ではちょっと違うのでしょうが)が出るのは簡単だといっても、あまりにも大学での勉強をおろそかにしています。もっとも企業はほとんどの就活生には大学での専門知識なんて求めておらず、そのための社員は大学院卒の中から採ればいいと考えているのかもしれませんが。また最近では学生の身分のまま実際に企業で働くインターシップ制度もあるそうです。これは学生にとってはその会社が自分に合っているかを知ることができ、企業側は“使える人物”か試すことができる双方にとって有意義な制度です。そういえば学生時代の1970年代後半からテレビ局に出入りしてそのまま放送作家になったわたしはその先駆けかもしれません。
この内定式の記事を読んで学生時代の友人を思い出しました。彼もほかの学生同様就職活動に励み1つの会社で最終面接までこぎつけました。その会社の社長は地方の高等小学校を卒業したのち大阪に出てきて一代で上場企業にまでした立志伝中の人物で、友人は面接のたびに「ウチの会社は学歴なんて関係ない、あくまでも人物本位や」と言われていました。私の友人は口は達者でしたが、勉強はいたってダメで成績表も「優」は皆無でほとんどが最低の「可」ばかりでしたからどうなることかと思いましたが、さすがこの会社は学歴なんて関係なく人物で判断する会社だけになんとか内定を取り付けました。
そして迎えた3月の卒業。なんと彼は1単位足らずで留年してしまったのです。彼は焦りました。いまさら入社辞退なんて会社に迷惑をかけてしまう。苦慮の末、会社に電話してこう言いました。「卒業はできませんでしたが予定通り入社いたします。高卒扱いで結構ですのでよろしくお願いします」それを聞いた人事部長は一言。「あー、残念、ウチは大卒しかあかんねん」入社する前に社会の厳しさ、建前と本音を知らされた友人が不憫でなりませんでした。内定式に出席した学生の皆さん、卒業まで油断は禁物です。
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