• このエントリーをはてなブックマークに追加

記事 1件
  • 2024年12月02日号:ニュースに一言

    2024-12-02 07:00  
    102pt
    ●ちょっと前になりますが、10月1日、東海道新幹線が開業から60周年を迎えました。1964年、戦後20年を待たずして敗戦時に最貧国の1つだった日本が、戦勝国のアメリカやイギリス、ロシアさえ成しえなかった時速200キロ以上の高速鉄道を東京―大阪間で世界に先駆けて走らせたのです。
    東海道新幹線は当時「夢の超特急」と呼ばれ、昭和の高度経済成長期を駆け抜け、平成、令和の3つの時代を走り続けて累計約70億人を運んできました。開業当時の新幹線「ひかり」はそれまで在来線特急「こだま」が6時間30分かけて走っていた東京大阪間を2時間30分も短縮する約4時間で結んだのですからまさに「夢の超特急」だったのです。ちなみに「こだま」はその運行開始前まで東京から大阪まで8時間かかっていたため出張する際には宿泊を余儀なくされていたものを、この列車を利用すれば日帰り、すなわち『行って戻ってくる』ことが可能になることから名付けられました。そして「ひかり」は「こだま」(音)より早いのは光だということで「ひかり」となったのです。
    それから60年、新幹線はさらに進化を続け、いまや東京―大阪間が2時間30分を切るところまでスピードアップされただけでなく九州や東北、北海道、北陸など全国にその路線は拡大されています。わたしは週に1回以上関西の自宅から上京する生活を10年ちかく続けていますが、もし新幹線がなければとてもかなわなかったことでしょう。
    新幹線のすごいところはスピードだけではありません。なんといってもその安全・安心性です。最大で1時間当たり17本が出発するダイヤを組みながら開業以来大きな人身事故はほとんどなく、毎日定刻通りに運行されています。それもひとえに日本人の勤勉さ、真面目さ、誠実さによるもので、技術力だけでなくその国民性も相まって生み出された賜物です。世界中が日本の高速鉄道に注目し、お手本にした昭和40、50年代は今よりずっと日本が豊かで強い時代でした。そして、それをけん引していたのは大正から昭和10年までに生まれ、戦争を経験した先輩たちです。彼らに恥じないためにも今一度、かつての豊かで強い日本を取り戻したいものです。「のぞみ」は捨てません。
     
     
    ●雑誌4冊を盗んだ疑いで52歳の無職の男が再逮捕されたというニュースがありました。窃盗(万引き)の疑いで逮捕されたこの男は、8月22日に新潟市中央区のコンビニエンスストアでギャンブル関係の雑誌4冊(販売価格合計5909円)を盗んでいたのです。そして今回が再逮捕となった理由が今年4月30日にも新潟市中央区にある別のコンビニエンスストアで同様のギャンブル関係の雑誌3冊(販売価格合計4359円)を盗んだからというのですから呆れます。
    どうやらこの男にとって雑誌は買うものではなく盗むものだったようで常習犯なのは明らかです。ギャンブル関係の雑誌といいますから、たぶん「パチンコ必勝法」や「パチスロ攻略本」の類だったのでしょう。ギャンブルは「金を持っている者」が圧倒的に有利です。極端に言えば「勝つまで賭け続ければ絶対に負けることはない」からです。それなのに雑誌を買う金もない無職の男がギャンブル必勝法など読んでどうやって勝つつもりだったのでしょうか。そもそもギャンブルは実力以外に多分に「ツキ」の要素が必要なのに、52歳にして無職の男に「ツキ」があるとは到底思えません。さらに50年間脇目も振らずに一所懸命働いた者に最後に宝くじが当たったのなら「神様の思し召し」ともいえるのでしょうが、いい年をして万引きに勤しむ輩にそれがあるとも思えません。
    金のない男にとって万引きは「捕まるか捕まらないか」という最後に残された究極の賭けだったのかもしれませんが、彼はその賭けにもやはり負けるべくして負けたのです。
     
     
    ●福岡県古賀市が、来年1月6日から市役所の窓口業務を現行の午前8時半~午後5時から、午前9時~午後4時に短縮すると発表しました。その理由を市長は「ブラック職場にしない姿勢を明確にし、就職先として選ばれる自治体になりたい」など働き方改革の一環としています。さらに、余裕のできた職員には政策立案など創造性のある仕事を振り分け市民サービスの向上を図ることで「理解をいただきたい」とも話しています。
    市民サービスの基本ともいえる窓口業務を減らさなければならないほど古賀市職員の労働環境は劣悪なのかと思いきや、約360人いる職員の平均残業時間は1か月当たり10・3時間と知り呆れてしまいました。なんと1日あたり30分ほどの残業さえ“ブラック”だなんて、民間企業の社員が聞いたら怒りで真っ赤になることでしょう。
    わたしは「公僕たる市役所職員は死ぬまで働け」なんて言うつもりは毛頭ありませんが、市役所はあくまで市民優先であって欲しいとは思っています。一般的な会社が5時までなら7時まで、せめて6時まで開庁していたら随分便利になります。それを延ばすのではなく縮めるのですから困ったものです。
    働き方改革・・・一見、耳当たりの良い言葉ですが、その実情はいろいろ問題があるようです。友人の会社でも働き方改革の一環で社内のIT関連を担う「システム課」が在宅勤務になったそうです。それまではパソコンに不具合が生じると内線電話で「直してー」で済んでいたものが、今は勤務中なのか勤務外なのかわからない担当者を見つけ出し、そこからメールで作業内容を依頼しなければならなくなり随分と手間が増えたそうです。年配の社員の中にはその手間に辟易し「もう、ええわ」と、あきらめてしまう者まで現れる始末で営業職の彼の職場では作業効率はガタ落ちだそうです。
    一方で「システム課」の方の報告は「依然と比べ作業効率もアップし、課員の評判もすこぶる良い」ですから何をかいわんやです。要は「システム課」の仕事を営業課が肩代わりしただけで、全体の作業量は一向に減っていないだけでなく場合によっては増えてしまったのです。
    古賀市ではコンビニでの証明書発行手数料を期間限定で10円に割り引くなど来庁者を減らす取り組みも進めているようですが、今回の決定で得をする人、損をする人の見極めは慎重にするべきです。友人の会社では楽になった部署の尻拭いをほかの部署がすることになりましたが、市役所の場合の尻拭いをするのはほかでもない市民なのですから。
     
     
    ●環境省と日本自然保護協会が国内各地で動植物の状況を定点観測したうえで公表した報告書によると、スズメが年3・6%のペースで減っているそうです。この減少ペースが長期間続けば環境省レッドリストの絶滅危惧種の判定基準を満たす可能性があるといいます。
    そういえば以前は最も身近な鳥だったスズメを最近ではすっかり見なくなりました。わたしが子供のころは庭先に米粒をまいておけば、すぐに近づいて来てチュンチュン賑やかだったのですが、いまや都心ではカラスは見てもスズメの姿はありません。その理由は都市部ではアスファルト舗装がほぼ100%となり、エサとなる虫がいないためと容易に想像できますが、畑や田んぼが広がる地域でも減少しているとなると一気に深刻になります。
    その理由を環境省は「地球温暖化で生存に適した気温ではなくなったことや、管理されなくなった里山が増えて生息環境が変わった」としていますが、近年の猛暑がスズメを生きながら“焼き鳥”にしていたなんて・・・。
    今の減少率が続けば20年足らずでスズメの数は半分になります。しかし、現代では商業的にスズメを捕獲する人はいませんので、まさかスズメのお宿にエアコンを付けるわけにもいかず規制のしようがありません。そもそも自然に逆らってまで人間がスズメを守るべきなのか。難しい問題です。
     
     
    ●2025年春の入社予定者の内定式が10月1日に全国各地で行われたというニュースがありました。慢性的な人手不足により学生に優位な「売り手市場」が続く中、企業は内定式を行うことで内定者同士や社員との交流を促し、学生のつなぎ留めを図っているようです。
    わたしが学生のころ(といってもわたしは1社たりとも受験していませんが)も内定日は10月か11月でしたので40年以上経ってもあまり変わっていないと思いきや、今回の内定式の出席者に実質的な内定日が半年以上前の学生がいると聞いて驚きました。なんと現代では大学3年生の6月位から就職活動を始め、早ければ4年に進級する前の翌年3月に内定を得る学生もいるというのです。これでは勉学に専念する期間が2年しかありません。
    いかに日本の大学が入るのは難しい(希望者全入の現在ではちょっと違うのでしょうが)が出るのは簡単だといっても、あまりにも大学での勉強をおろそかにしています。もっとも企業はほとんどの就活生には大学での専門知識なんて求めておらず、そのための社員は大学院卒の中から採ればいいと考えているのかもしれませんが。また最近では学生の身分のまま実際に企業で働くインターシップ制度もあるそうです。これは学生にとってはその会社が自分に合っているかを知ることができ、企業側は“使える人物”か試すことができる双方にとって有意義な制度です。そういえば学生時代の1970年代後半からテレビ局に出入りしてそのまま放送作家になったわたしはその先駆けかもしれません。
    この内定式の記事を読んで学生時代の友人を思い出しました。彼もほかの学生同様就職活動に励み1つの会社で最終面接までこぎつけました。その会社の社長は地方の高等小学校を卒業したのち大阪に出てきて一代で上場企業にまでした立志伝中の人物で、友人は面接のたびに「ウチの会社は学歴なんて関係ない、あくまでも人物本位や」と言われていました。私の友人は口は達者でしたが、勉強はいたってダメで成績表も「優」は皆無でほとんどが最低の「可」ばかりでしたからどうなることかと思いましたが、さすがこの会社は学歴なんて関係なく人物で判断する会社だけになんとか内定を取り付けました。
    そして迎えた3月の卒業。なんと彼は1単位足らずで留年してしまったのです。彼は焦りました。いまさら入社辞退なんて会社に迷惑をかけてしまう。苦慮の末、会社に電話してこう言いました。「卒業はできませんでしたが予定通り入社いたします。高卒扱いで結構ですのでよろしくお願いします」それを聞いた人事部長は一言。「あー、残念、ウチは大卒しかあかんねん」入社する前に社会の厳しさ、建前と本音を知らされた友人が不憫でなりませんでした。内定式に出席した学生の皆さん、卒業まで油断は禁物です。

    記事を読む»