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2024年6月7日号:ニュースに一言
2024-06-07 15:21102pt1
●大相撲5月場所は23歳の新小結・大の里関の初優勝で幕を閉じました。それも過去最短の初土俵から7場所での優勝というおまけ付きです。5月場所は1横綱、4大関のうち3力士が途中休場しましたが、大の里関は休場する前の照ノ富士、霧島を含めて1横綱2大関を倒しており、見方によっては彼が上位陣を休場に追い込んだともいえます。
スポーツの素晴らしさは、選手の活躍が不特定多数の人たちに勇気や希望を与えるところといわれていますが、テレビ画面に映し出される大の里関の出身地、正月の地震から復興途上にある石川県で地元民がこの快挙に大喜びする様子を見るとまさにその通りで、金銭など物質的な援助ももちろん必要だとして、打ちひしがれた人々を力づけるのはなによりも精神的援助だとつくづく感じました。
その意味では5月場所での大の里関の優勝は年6場所のうちの1つの優勝に過ぎないのかもしれませんが、この23歳の若者の活躍はそれにとどまらない付加価値の高いものだったと思います。さらに遡ること2ヶ月、3月の春場所では新入幕の24歳、尊富士関が初優勝しています。こちらも新入幕力士の優勝は110年ぶりといいますから近代相撲ではほぼ初めてといってもいいでしょう。
このところ大相撲では、その世界に入って間もない力士の活躍が、逆に言えばベテラン勢の体たらくが目立ちます。いままで相撲、将棋、ボクシングはプロとアマの力量差が極めて大きい競技だといわれていました。それもあって他の競技だと序列は1位から順に位付けされるだけですが、これらの最高位には横綱、名人、チャンピオンと特別な称号が与えられています。にもかかわらず横綱、大関が休場ばかりで、やっと出てきたと思ったらコロコロ負けるのはいただけません。いままで古くは大鵬、柏戸から北の富士、北の湖、千代の富士、貴乃花、朝青龍、白鵬と絶対的横綱が存在していました。彼らが特別に抜きん出ていたのか、あるいはその周りの勢力が弱すぎたのか定かではありませんが、憎らしいほどの強さに好角家はしびれたものです。
世間は常にヒーロを求めています。若い人たちの活躍は非常に気持ちのいいものですが、横綱相撲を安心して観るのもまた相撲の醍醐味と思うと少し物足りなさを感じる昨今です。
●パナソニックが6月発売のミラーレス一眼カメラを紹介するホームページで、このカメラで撮ったのではない外部からもってきた写真を使って性能のよさをアピールしていたというニュースがありました。
このホームページには草むらを遠くから走ってくる小犬の写真に「進化したリアルタイム認識AF(オートフォーカス)により、動きのある被写体の撮影で自動的にピントが合います」との説明文がつけられていました。写真を見ると確かに犬の表情までが寸分の狂いも無く捉えられており「素人の自分でも簡単にこんな写真が撮れるのなら是非欲しい」と誰もが思うことでしょう。しかし、実際にはこの写真はどこかのプロカメラマンが別のカメラで撮影したものだったのですから困ったものです。これでは我が社の製品こそがNo.1とアピールしなければならないメーカーが、自ら自社のカメラで撮った写真では性能の良さを伝えることができないと言っているのと同じです。
世界に示すべく日本の“ものづくり”に対する矜持はいったいどこにいったのでしょう。これがもし開発から販売までを1人、あるいはごく少数で担う会社でしたらこんなことにはならなかったことと思います。なぜなら、完成させた商品に対する確固たる自信が“自社製品より劣るほかの会社のカメラ”で撮影された写真を絶対に許さないからです。しかし、パナソニックほどの巨大企業になると開発部、営業部、宣伝部などが細分化され“ものづくり”以外の部署が専門分野にのみ従事することでメーカーとしての本来のありかたを忘れてしまいがちです。今回の件で一番落胆し、また憤っているのは騙された購入者ではなく、自分たちの作ったカメラを否定された形になった製品開発に携わった社員たちかもしれません。
写真といえばいままでは目の前にある真実をそのものズバリ写し出すものでした。そのため撮影者は“決定的瞬間”を逃すまいと緊張の中でカメラを構えたものですが、最近では明るさを変えることはもちろん、影を写らなくしたり、さらには本来そこにあった物を跡形も無く消し去るなどシャッターを押した後にいくらでも好き勝手に加工できるようになっています。写真はウソをつかないなんて過去のものです。音声も人間の声を自由に作り出せる現代、技術の進歩が信じられるものをどんどん少なくしているのは残念なことです。
●今年の正月に羽田空港で日航機が衝突炎上した際、貨物室に預けられていた犬が乗客と一緒に脱出できず犠牲になったことで「ペットも家族の一員なのに」という批判がありましたが、アメリカでワンコが文字通り家族同然に飛行機で海外旅行できるサービスが始まったというニュースがありました。
この便は犬のおもちゃなどを販売する会社が用意するチャーター便で、搭乗したワンコはケージに入れられないことはもちろん、エリアを指定されることも無く飼い主と一緒に普通に客室のシートに座るといいますから驚くやらおかしいやら。しかも乗れるのは小型犬に限らずあらゆる犬種OKだそうで機内はいったいどうなることやら。
我々が飛行機に乗ると離陸前にCAさんから機内設備の説明を受けます。救命胴衣の空気が足りないときには息を吹き込めと指示されますが、彼らははたして吸入パイプを噛むことなくうまく吹き込めるのか。シートベルトは身体のどの部分に巻くのか。また、機内食は「ビーフORチキン」のほかに「ORドッグフード」となるのでしょうか、疑問はつきません。
このチャーター便はニューヨーク=ロサンゼルス、ニューヨーク=ロンドン、ニューヨーク=パリの3路線を定期的運航されるそうです、気になる料金は人間1人込みで国内線が片道6千ドル(約95万円)、国際線が8千ドル(約126万円)と結構なお値段です。まさにファーストクラス並みの価格でどれほどの需要があるのかわかりませんが、乗った犬たちが「“ワン”ダフル」と言うのだけは間違いないようです。
●最近では新婚夫婦の出会いのきっかけNo.1は「マッチングアプリ」だそうです。マッチングアプリとはネット上に自身のこと、望む条件を登録して希望に合った相手を探すものです。そんな現代版キューピッドともいうべきマッチングアプリを東京都が独自に開発しているというニュースがありました。
民間にいくつもの業者があるのにわざわざ自治体が参入する意味を都は「行政がやることの安心感」と答えています。たしかに多くのアプリでは登録者の情報に虚偽があり、後々になってトラブルに発展するケースがあるようです。それを防ぐために東京都版では申し込み時に顔写真付きの本人確認書のほかに独身証明書か戸籍謄本、収入を証明する源泉徴収票などの書類提出に加えて事前面談もするそうです。配偶者がいるにもかかわらず未婚だと偽るのはもってのほかですが、年収を少しくらいサバを読むのも許さないとなると低収入にあえぐ若者の多い中、果たしてどこまで登録者を集められるのか疑問です。
既存のアプリで本当は400万なのに500万と申告するのは出会いのチャンスを広げるためです。それをバカ正直に400万として予選落ちの連続でマッチングできなければなんの意味もありません。今は400万でも結婚して頑張れば500万、700万、1000万にもなるかもしれない若者の出会いのチャンスを厳格化により奪うのはいかがなものでしょう。
なにより結婚しない(できない)理由によく経済的な不安が上げられますが、1人より2人で暮らす方が物心共に豊かになることもあるのです。お金が第一でそのチャンスを逃すのは残念なことです。そもそも行政のやるべきことは結婚相手を探す手伝いではなく、真面目に働きながら結婚したいと考える若者が安心して暮らせるだけの“稼げる環境”をつくることだと思うのですが。都はアプリ開発を含む結婚促進事業に23年度は2億円、24年度は3億円を予算計上しています。これらはすべて未婚者を含めたすべての都民の税金です。もっと有意義に使ってもらいたいものです。
●2025年3月から半年の予定で開催される大阪・関西万博のボランティアが決まったというニュースがありました。1月26日から4月末にかけて行なわれたこの募集には当初目標の2万人を大きく上回る5万5634人の応募があり、急遽採用人数を3万人に増やしました。
今回の万博は日を追うごとに上方修正される予算や工事の遅れ、参加国の減少などネガテェブな話題ばかりで一向に盛り上がっていませんでしたが、この応募者増に協会幹部は「予想をはるかに超える数」と大喜びのようです。
応募者の内訳は10~20代が38・7%、30~40代16・7%、それ以上が44・6%で、特に10代の23・6%は年代別ではトップと、中高年が主となる今までのボランティアとは違った年代構成となっています。前期高齢者のわたしの周りでは万博を話題にする人はほとんどいませんが、若者の間では大盛り上がりなのかと思いきや、どうも様子がおかしいことに気付きました。なんと大阪の大学の多くが学生に対し「ボランティアに行け」と動員をかけていたようなのです。
元々、大阪府内の42大学で構成するNPO法人と万博協会は協定を結んでいましたのである程度の協力があるのは予想していましたが、中にはボランティア実績を単位認定する大学まであったといいますから“やりすぎ感”は否めません。ボランティアとは本来、無償の奉仕活動のはずです。見返りをちらつかせて働かせるのならボランティアなんて聞こえの良い言葉を使うことはやめてもらいたいものです。さらに応募期間は3ヶ月あまりあったのにもかかわらず5万5634人中、3万人が最後の10日間の駆け込み応募ということで、大学側が「さっさと申し込まんかい!」と発破をかけたことがうかがえます。
そして協会が募った会場ボランティアの3万4190人、府市が募った駅や街中で活動するボランティアの2万1444人の応募者のうち、両方に応募した人が2万204人もいたというのは「仕事内容はなんでもいいから、とにかくボランティアをしたい」という表れでしょう。その理由が「大好きな万博に関わりたい」のか「単位が欲しい」のかはわかりませんが大学の動員活動が寄与したことは間違いありません。
重複応募を除くと協会幹部が大喜びした5万5634人も、実質3万5430人とさほど大きな数字ではなかったのですが、主催者側は盛り上がっている雰囲気作りに躍起になっています。しかし、前売り券の販売は一向に進んでいませんし、頼りにしていた学校単位の無料招待も会場でのガス爆発事故や交通手段の確保が難しいなどを不安視する先生方の反対がありどうなるのかわからず雲行きはますます怪しくなっています。それもこれも今度の万博が「何を置いても行きたい」と思わすほど魅力的でないからです。
1970年の大阪万博の「月の石」、2005年の愛知万博の「冷凍マンモス」など過去の万博には“目玉”といわれる展示物がありましたが、今回の大阪・関西万博にはマスコットキャラクターの「ミャクミャク」にたくさんの目玉が付いているだけで肝心の展示物には何もないのですからそれも仕方がないのかもしれません。
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2024年6月2日号:ニュースに一言
2024-06-02 16:27102pt1●6月から始まる定額減税で、政府は民間企業に対し給与明細に所得税の減税額を明記することを義務付けるというニュースがありました。すっかり忘れていましたが、昨年11月に国は1人あたり4万円(所得税3万、住民税1万)の定額減税を決めました。その理由を急激な物価高による家計負担を軽減するためだとしていましたが、物価高は今年6月から始まるわけではありません。すでに当時から国民は家計逼迫に喘いでいたのですから、すぐにでも実施すればいいものをなんだかんだと理由をつけ半年も先延ばしにしていたのです。
もちろんその間、国民が晩御飯のお肉を牛肉から豚肉に替えたり、ビールを発泡酒にするなど日々のやりくりに追われ続けたことは言うまでもありません。その“定額減税”の金額を今度は受け取り手に「はっきりわかるようにせよ」と言い出したのです。その理由を官房長官は会見で「国民のみなさまが政策の効果を実感できるようにすることが重要だ」と述べています。すなわち「ただ減税しただけでは国民はありがたがらないだろう、国が○○円、恵んでくれた。岸田内閣ありがとうと思うようにしろ」と言っているのです。
冗談じゃない、給料は元々労働者が働いて得たものです。それを返すだけなのに、さも与えるかのごとくなにを偉そうに言っているのか。「減税額を明記せよ」と言う方は簡単ですが、手間が増えるだけでなんのメリットもない実際に明細書を発行する企業は大迷惑です。
岸田内閣は民間企業に従業員の賃金アップを要請したことを自画自賛しています。その結果、この4月から実際に上がった会社もあったでしょう。しかし、支給額が上がるとそれにつれ控除額もアップします。果たしてどれだけ“手取り”が増えたのやら。減税額を明記しろというのなら、税金や社会保険料の増額分も同じように明らかにしてもらいたいものです。
●千葉県浦安市にある東京ディズニーランドで自身の下半身を露出させ20代女性に押し当てた53歳の男が不同意わいせつの疑いで逮捕されたというニュースがありました。
ディズニーランドといえば、一歩そこに足を踏み入れたらミッキーやミニー、ドナルドダックなどの人気キャラクターが来場者をこれでもかというくらいに楽しませてくれる場所です。そんな誰もが知る夢の国で、かわいらしさのかけらもない自分の“ダンボ”を使ってうら若き女性に悪夢を見させる男がいたなんて呆れるばかりです。さらに、男の職業が甲府市にある小学校の現役教師で、ランドへの来園理由が修学旅行の引率だったと聞いて驚きました。
修学旅行は宿泊を伴いながら研修や見学により知見を広げる学校生活における一大イベントで、東京をその行き先とする学校の多くは研修先に東京ディズニーランドを組み入れます。なぜならランドは「子供たちが修学旅行で行きたい場所No.1」だからです。そして、生徒は建前上は研修ですので行きのバスの中では先生からの注意事項を神妙な顔で聞いていますが、いざ入園さえすればこっちのものとばかりに猛ダッシュでお目当てのアトラクションを目指します。ディズニーランドでの一番大切なことは何と言っても「楽しむこと」ですから大はしゃぎは大歓迎です。
そんな目いっぱい楽しむ生徒と違い、本来なら引率の教師は「子供たちにケガや具合の悪い者はいないか」と気配り目配りでとても楽しむ余裕などないことでしょう。にもかかわらず生徒を放ったらかしにして、ランドに最も相応しくない歪んだ“楽しみ”をしていたこの男の罪は重大です。
出発時間が迫り集合場所に戻ってきたメンバーの中に唯一この引率教師の姿はありませんでした。「先生がわいせつ行為で捕まった」――こんなとんでもない修学旅行のみやげ話を聞かされた保護者が不憫でなりません。かつての修学旅行では生徒が悪さをしないように教師が目を光らせることが当たり前でしたが、これからの修学旅行は教師が悪さをしないように生徒が見張らなければならないようです。
●全国の消費者生活センターに「害虫や害獣駆除の業者から高額請求を受けた」という若者からの相談が相次いでいるというニュースがありました。その内容はゴキブリが出没した部屋に住む20代の女性が駆除業者に電話し、「1万円くらいです」と聞いていた料金が、いざ契約となったとたんに「10万円です」と跳ね上がったりするものです。
そんなに高額なら断ればいいようなものですが、ゴキブリが大嫌いなこの女性は一刻も早く退治してもらいたくて泣く泣くクレジット支払いの契約を結んだそうです。それにしてもネズミの集団や蜂の巣など素人の手に負えないものならいざ知らず、昔は丸めた新聞紙で“パシッ!”で終わっていたゴキブリまで業者に依頼するとは現代の若者は随分とひ弱になったものです。
その背景には住宅環境の変化があります。以前はどこの家にもしょっちゅうゴキブリは出てきましたし、暖かくなると台所周辺には大小のハエが飛び交っていました。そのため夏場は料理を守る蝿帳や蝿取り紙は必需品でした。ところが、最近では衛生状態も良くなり、ゴキブリや蝿はすっかり影を潜めました。そんな生まれてこのかたほとんど害虫を見たことが無かった若者が一人暮らしになって初めてゴキブリに相対し、パニックになって業者に助けを求めるようです。
さらに悪いことには身近にあるスマホでネットを検索することにより、そこに待ち構える悪徳業者の“ホイホイ”にまんまと引っかかってしまうのです。一人暮らしの若者に言いたい。この世で最も恐ろしいのは獣でも虫でもなく、隙あらば騙してやろうと虎視眈々と狙っている悪徳な人間です、と。
●今年2月に行なわれた早稲田大学の一般入試で、カンニングをした18歳の少年が偽計業務妨害の疑いで書類送検されたというニュースがありました。
わたしが学生時代のカンニングといえば筆箱の中に単語や公式を記した紙片を忍ばすなどの単純なものでしたが、ここ数年は試験会場に携帯電話を持ち込み外部と連絡を取り合って答えを聞き出すなど随分と“ハイテク”化しています。そのため各試験会場ではまず最初に「携帯電話の電源を切ってカバンにしまって下さい!」と強い指示がなされます。監督者も試験中は携帯電話を触っていないかを注意深く見張りますが、今回の受験生はまんまとその監視の目を逃れていました。なぜなら彼が使っていたのは「スマートグラス」と呼ばれる画像撮影と通信機能を併せ持つスパイ映画さながらのメガネ型端末だったのですから。
高校生の視力1・0以下、いわゆる近視割合は7割ほどだそうです。ということは受験生の半分以上がメガネをかけているのですから「スマートグラス」を装着して試験会場に入ったところで何の違和感もありません。少年はそれで問題用紙を撮影し、事前にSNSで「家庭教師をしてくれませんか」と言って目星をつけていた複数の人たちとその画像を共有して解答を求めていました。
今回は画像を受け取った人の中の1人が「これは不正ではないか」と気付き、早稲田大学に連絡したことで発覚しましたが、もし協力者が少年の親しい人間だったらこの不正は成功していたでしょう。いや、実際にこのやり方で誰にもバレずに合格を勝ち取ったほかの受験生がいたかもしれません。今後はスマホだけでなく受験生のメガネまでチェックしなければならない学校側は大変です。さらに最近では外見からはまったくそれとわからないコンタクトレンズ型端末まであるそうで、こうなるともはやお手上げです。
『生き馬の目を抜く』は誰にも気付かれないほどの素早い動き、また油断がならないずるいことの例えですが、これからは生き馬の目を抜く不正受験生を排除するため、各会場には眼科医が常駐して文字通り受験生の“目ん玉”まで取り出して確認する必要があるようです。
●仕事を失い収入の道が途絶えた人が頼りにするのが失業保険(雇用保険)です。その失業保険は「就職しようとする意思と、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行なっている人」に給付されるもので、申請者は受給期間中は4週間に1度、失業状態が続いているのか、また求職活動を行なっているのかという「働く意思」の確認のためにハローワーク(職業安定所)に出向いて面談を受けなければなりません。その面談が来年から“子育てや介護中の人”、“障害がある人”などハローワークに出向くのが難しい人はオンラインで受けられるようになるというニュースがありました。
コロナ騒動以来、いろいろなものがオンラインで処理できるようになっています。わざわざ交通費と時間を使わなくてもパソコンやスマホで自宅に居ながら手続きできるのならこれほど便利なものはありません。しかし、なぜ対象者が「出向くのが難しい人」に限定されているのでしょう。無駄を省くというならすべての人を対象にするべきです。そもそもハローワークに出向くことすらできない人がまともに働くことなんてできるのでしょうか。前述のように失業保険は「働く意思があり、すぐにでも働ける人」が対象ですから、その時点で資格がないといってもいいのでは。
世の中が高度成長期で景気が良く、また終身雇用の時代では生涯失業保険と無縁のサラリーマンがほとんどでしたが、倒産や事業縮小する会社が増え、さらに転職が当たり前の現代では失業保険のお世話になる人が身近にも多くなっています。しかし、中には“保険”という公平な相互扶助の精神から大きくはずれているケースもあるようです。会社経営をする友人によりますと、就職面接に来る応募者の中に、1年ほど勤めては転職を繰り返している者が一定数いるそうです。彼らはさすがに転職慣れしていますから面接もそつなくこなし採用すると、1年ほど経ったころ決まって「そろそろ辞めますわ」と去っていくそうです。不思議に思った友人が調べてみると、どうやら彼らは「失業保険の受給資格を得るまで働き、目的が達せられるとしばらく給付を受け、その期間が終わるとまた資格を得るまで働く」を繰り返しているというのです。
本来、いざと言うときのための保険が、一部の人たちの間では定期収入として見込まれているのです。彼らのしていることは制度上なんら問題はありません。しかし、一方では人手不足で困っている企業が多数あることも事実です。国や自治体からの給付(公助)を受けることは権利であり、なんら恥じることはありませんが「教育・勤労・納税」という三大義務があることも忘れてはなりません。
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