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記事 429件
  • 2023年3月24日号:ニュースに一言

    2023-03-24 15:17  
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    ●1点差の9回ツーアウト、バッターボックスにはアメリカの現役最強打者マイク・トラウト。そしてマウンド上には世界の二刀流、日本の至宝大谷翔平。
    WBCという舞台の最終幕でのこの千両役者の競演を誰が予想したことでしょう。さらに最後が空振り三振ときたら、もうそれは小説や漫画の世界のこととしか思えません。しかし、我々ははっきりと自分の目でその素晴らしい現実を見届けたのです。
    野球の国別世界一決定戦第5回WBCは日本の優勝で幕を閉じました。今回の優勝はすべての選手が「いま、自分がすべきこと、できること」を考え勝利に向かって一直線に突き進んだ結果、まさに日本“チーム”で勝ち取ったものです。優勝はもちろんうれしいのですが、今大会はほかにも喜ばしいことがありました。
    冒頭にWBCを演劇の舞台になぞらえましたが、登場人物がすべて善人だったのが素晴らしい。国際大会にありがちな敵意むき出しの険悪ムードがなく、試合終了後にはお互いのプレーをたたえ合う姿が見る者の心を温かくしました。ダルビッシュ選手が代表に選ばれて気負っている若手に「戦争に行くわけではない」と言ったそうですが、まさにその通りで野球はスポーツですから対戦相手は憎むべき敵ではなく、リスペクトすべきものなのです。そんなグラウンドの様子はスタンドにも伝染し、両チームの応援団も相手に惜しみない拍手を送りました。
    第1次リーグで日本を訪れた各国の選手団、応援団が口をそろえて日本への感謝の言葉を口にして帰国したのは日本人として本当に嬉しいことでした。胴上げ投手となった大谷選手の所属チーム、エンゼルスの監督はレギュラーシーズンを考慮し、当初は準決勝、決勝での登板を許していなかったそうですが、WBCの盛り上がり、そして野球が好きで好きでたまらない大谷選手の様子を見て彼もまた今後の野球界のことを考えたのでしょう、1イニングだけならと譲歩したと聞きます。
    そうです、みんな野球が大好きなのです。いやなニュースが多い中、この2週間本当に楽しかった。侍ジャパン、そしてすべての野球人と世界中の野球ファン、ありがとう。


    ●生まれた時の体の性とは違う性として生きる「トランスジェンダー」の当事者らが「『心は女だ』と言うだけで女湯に入れる」などのSNS上での差別的で不正確な発言に対し抗議したというニュースがありました。
    これは現在審議されているLGBT理解促進法案が通れば「チンチンをぶら下げた“自称”女性」が女湯に入ってくるという危惧に対してのものです。“彼女”たちは「そもそも自分は女子風呂に入れないと思って諦めています」「本当に人目を気にしながら、社会の中で自分がどういうふうに性別が見えているんだろうかと気にしながら暮らしています」と法律を盾に大手を振って女湯に侵入することはない、それなのにチンチン付きのトランスジェンダーをあたかも犯罪者のごとく言うのは許せないとしています。
    はっきり言ってわたしは、この法案が成立すればチンチン付きの“自称女”が間違いなく女湯に入ってくると思っています。しかし、それは文字通り自称だけのエセトランスジェンダーのことです。
    たしかに本物のトランスジェンダーは心が女性ですから女性の気持ちを理解しそんな行動はとらないでしょう。それに対し、心は男のままで、ただ「女の裸が見たい」だけの“自称女”は、法律で守られるとなればやりたい放題です。法案反対派が恐れているのはそんな輩のことで、決して本物のトランスジェンダーのことではありません。
    そしてもっとも不愉快なのは反対派の意見を封じ込めようと、今回のニュースのようにトランスジェンダーの人たちを担ぎ出してくるマスコミです。彼らは反対派がLGBTの人たちのことを全く理解せず荒唐無稽なことを言っているかのごとく報じ、声が上げにくくなる雰囲気を作ろうとしているのです。多くの善良なトランスジェンダーはそんな世論誘導のために自分たちが利用されることは堪らないでしょう。
    「少数意見の尊重」「弱者の救済」異論をはさみにくい耳障りの良い言葉ですが、少数派のために大多数が我慢、いや被害を強いられる社会を「差別のない社会」とはいいません。


    ●愛知県が、公立の小中高校と特別支援学校の児童生徒が保護者の休みに合わせて年3日まで平日に学校を休める「ラーケーションの日」を4月から導入すると発表しました。このラーケーションとは、ラーニング(学習)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語で、休み方の改革に取り組む同県のプロジェクトの一環だとしていますが、子供にとって学校より優先すべきものがあれば親が勝手に休ませればいいものを、行政がここまでお膳立てしなくてはならないものなのでしょうか。
    大村秀章知事は「コロナ禍で働き方は変わった。コロナの出口が見えた今、休み方改革を進めたい」さらに週末や長期休暇以外にも家族で出かけやすくなり、休日や観光需要の分散につなげることもできると自画自賛のようですが、労働者が休むことと子供のそれを同列にするのは強引すぎます。
    労働者には、決められた日数までは給料を減らさずに休むことができる年次有給休暇という制度があります。今回はそれの子供版といったところでしょうが、働き過ぎとされる労働者に対し、学校には土日のほかに春、夏、冬の長期休暇があります。これ以上勉強時間を減らしてどうするのでしょう。県は受けられなかった授業は自習で補うとしていますが、普段から自習で事足りる程度の授業しかしていないのでしょうか。「我慢」「忍耐」「頑張り」が軽んじられ「ゆとり」「享楽」「自然体」ばかり追い求めていたのでは日本の国力は下がる一方です。
    現在、企業には年間5日間の年次有給休暇を取得していない社員1人につき30万円の罰金が科せられることが労働基準法に定められています。年度末に未取得者に対し人事課から「今年度中に年休を消化してください」との通知がくるように、そのうち生徒会から「今年度中にラーケーションを消化してください」なんて連絡がくるようになるのかもしれません。


    ●シンガポール航空が機内で差別を受けたオーストラリア国籍の23歳の女性に謝罪したというニュースがありました。
    機内での差別とはいったいどんなものだったのでしょう。搭乗時に靴を脱いで入るように言われたのか、ファーストクラスのチケットを持っていたのに身なりを見てエコノミーに案内されたのか、はたまたひとりだけ飲み物のサービスを受けられなかったのか・・・。それが彼女が当初予約していた座席を移動させられたことと聞いて考えさせられました。
    なぜなら、この女性が座っていたのは緊急脱出用の非常口の前で、なおかつ彼女は左腕の肘から下がない障碍者だったからです。非常口の前は前方に座席がないため足を伸ばしてゆっくり座れるのでひそかに人気がある席ですが、その代わり緊急脱出などの非常時には「扉を開ける」「ほかの乗客の脱出を補助する」などの“義務”があります。そのためシンガポール航空は非常口付近の座席に座ることができない乗客として、「妊婦や15歳未満、乳児、この他に特別な支援が必要な乗客」と規定しています。
    彼女はこの“特別な支援が必要な乗客”と判断されたのです。それに対し女性は「自分はいかなる助けも必要ではない」と話していますが、それは自身がそう思っているだけで間違っています。この席に座ることができるのは前述のように、緊急時にほかの乗客を助けなければならないのに、片腕がない彼女がその使命を全うできるとはとても思えません。
    航空会社が最も重要視するのは安全運航です。いつもニコニコ優しく接客してくれるCAさんも、ひとたび緊急事態に陥れば保安要員として乗客の安全確保に徹します。それまでの優しい口調から一転して「止まって」「伏せて」等の命令調になり笑顔は一切ありません。ちなみにCAの化粧が一般的に濃いのも緊急時に薄暗くなってもCAだとはっきりと認識してもらうためです。そんな具合に常にいざというときを想定しているのですから、座席移動を強制するのも何を置いても優先される安全運航のための措置として当然です。
    女性は後部の座席に移動するよう求めたことが屈辱的に感じられたと話していますが、その代替席がビジネスクラスだったとしても同じようにクレームをつけたのでしょうか。彼女の中に「障碍者の自分は優遇されて当然」との思いがあったとしたら残念なことです。記事の中に彼女は欧州旅行を終えた後の帰り便でも同じ経験をしたとありましたが、ひょっとしたら彼女は毎回その席を確保して、“何か”を求めているのでは。


    ●2019年6月、大阪府吹田市で発生した警察官襲撃事件で強盗殺人未遂などの罪に問われた男性被告の控訴審で、大阪高等裁判所は1審判決を破棄し無罪判決を言い渡したというニュースがありました。
    この事件は当時33歳の被告が早朝、吹田市の千里山交番で警察官を包丁で刺し拳銃を奪って逃走したものです。襲われた警察官は胸や足、腕などを負傷し、特に胸の刺し傷は肺を貫通し心臓まで達していました。意識不明の状態で運び込まれた病院では5日間も目覚めず、復職までは7ヶ月を要しました。また、拳銃が奪われたとあって付近の学校や施設が休みを余儀なくされるなど、その影響は広範囲に及びました。そんな凶悪事件の犯人が無罪とは・・・。
    その理由が「被告は事件当時心神喪失の状態だった」からというのですから困ったものです。刑法39条には「心神喪失者の行為は罰しない」とあります。これは善悪の判断ができないほど精神に異常をきたした行為者には責任能力がないので罪に問えないとするものです。要するに高裁はこの被告は自分が何をやっているのか分かっていなかったと言っているのです。
    しかし、被告は交番に行く前にウソの通報をして3人体制の交番勤務から2人を誘い出し、襲いやすいように警察官を1人にしています。また、追っ手を撒くために山の中に逃げ込むなど一連の行為は極めて計画的であり、かつ冷静に行われています。とても“自分が何をやっているのか分かっていない”人間の所業ではありません。
    1審の一般人が参加する裁判員裁判では「犯行前後に合理的な行動を取っていて、全く責任能力を欠いていたとは言えない」として懲役12年の実刑判決が言い渡されていました。すこぶる妥当な判断です。それを“プロ”のみの裁判で「意見の相違点のみを切り出して分断的に判断している」と批判し、さらに「意見の分岐点や違いの理由、根拠を明らかにし、これを共通認識として評議、判断を行うべきだった」とまで言及して全否定するのですから呆れます。
    裁判員裁判は“プロ”裁判官の世間の常識と乖離した感覚や、前例にとらわれるあまり市民感覚にそぐわない判決を出すことを是正するために作られたものです。それを上級審で一蹴するならそんな制度は即刻やめてしまうべきです。そもそも刑法39条ってなんでしょう。法律は弱者のためにあるべきなのに、これでは被害者はやられ損です。そこまで心神喪失者を守りたいのなら、善良な市民に危害を加えることのないようどこかに閉じ込めておいてもらいたいものです。こんなことを言うとまた「百田は人権侵害者だ」と非難されるのでしょうが、これが被害者の人権保護こそ最優先されるべきだと考えるわたしの偽らざる想いです。

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  • 2023年3月18日号:ニュースに一言

    2023-03-18 15:33  
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    ●京都府京丹後市が、昨年8月に地域の自治会を通じて約2万400の全戸に「生活保護の申請は、国民の権利です」と記したチラシを配りましたが、今年2月末から2回目の配布を始めたというニュースがありました。
    これは長引くコロナ禍や物価の高騰により生活に困る世帯が増えていることを考慮したものですが、役所も随分と変わったなというのが率直な印象です。かつての役所は市民が得をすることの告知には極めて消極的でした。申請さえすればもらえる手当が新設されても誰も見ないような広報の片隅にちょこっとだけ載せ、あとは役所内の掲示板に貼りだして終わりですからとても周知とはいきません。そんな具合ですから所用で役所に行った際に掲示板を見て「あれ、こんなのがあるなら教えてよ」なんてこともしょっちゅうでした。それが、全戸に「権利です」の大見出しとは・・・、まさに隔世の感があります。
    チラシには「新型コロナで収入が減った」「小さい子どもがいるので働ける時間が短い」「年金では暮らせない」など、申請しうる具体的な状況を列挙するだけでなく、制度を理解できず申請をあきらめる人を出さないために「持ち家があると受けられない?」「関係が悪い親族にも連絡がいく?」など誤解されがちなポイントをQ&A形式で解説する念の入れようです。さらに2回目のチラシには生活保護で生活苦を乗り切って就職を果たした人の体験談なども加え、まるで生活保護を推奨するかのようなチラシに仕上げています。
    なるほど生活保護は国民の権利で間違いありません。しかし、今回のこの“生活保護推進キャンペーン”にも似た市の動きにはいささかの違和感があります。なぜなら公助の生活保護は自分で何とかする自助、周囲の世話になる共助、そしてそれでもダメな時に頼る最後の手段であるべきだと思うからです。それなのになんの努力もせず「すぐに生活保護に頼れ」では予算がいくらあっても足りません。わたしは弱者を切り捨てろと言うつもりは毛頭ありませんが、日本人が勤勉で誠実な恥を知る民族(端からそんな文化を持ち合わせていない外国人の受給者も多数いますが)だったのは過去の話で、現在では自分が楽をするためにはウソも平気、他人に何と思われても気にしない人が多くいます。残念なことですが、いまの日本は性善説の通用しない国に成り下がってしまったのです。
    働きたくても“働けない”人は弱者ですが、働けるのに“働かない”人まで弱者となっている現状は明らかに間違っています。現在、生活保護を受けている人は200万人を超えており、ざっと60人に1人の割合です。そして、その原資はすべて税金です。


    ●大阪で、ほぼ2カ月にわたり毎日コインパーキングの料金を踏み倒していた住居・職業不詳の26歳の男が逮捕されたというニュースがありました。この男は大阪市東淀川区のコインパーキングで、昨年7月13日から9月20日までの70日間のうち54回、車の後輪を駐車板の上に乗せ板が上がらず課金できないようにして総額約6万円の駐車料金を逃れていました。
    車を走らせていると街中のいたるところにPの文字を見ることができます。かつては人間が常駐してキーと共に車を預かっていた駐車場も、現在では無人のコインパーキングが主流となりました。出口を塞ぐバーを料金を払って上げて出庫するものや、今回の事件の駐車場のように車が動かせないように上がった駐車板を料金支払いにより下げ出庫するものなどいろいろあります。さらに最新のパーキングには出口のバーなし、駐車板なしの月極駐車場のようなものもあります。こちらは場内のいたるところに設置されたカメラとセンサーで入ってきた車を捕捉するものですが、いずれの方式にせよ支払いなしでの出庫はご法度です。
    今回の容疑者は毎日夜間に駐車していることから、どうやら自宅の駐車場代わりにしていたようです。そりゃそうでしょう、なにしろ住居が不詳なのですから駐車場なんて借りてるわけがありません。とりあえずは連日駐車板の同じ位置に寸分たがわず停車するテクニックがあるほどの駐車の達人ですから、まずは一日も早く職業不詳の肩書を外してもらいましょう。


    ●岐阜県美濃加茂市の市長が市議会定例会で市議からの一般質問に対し謝罪したというニュースがありました。市長が謝罪とはまた失言か公私混同、あるいは公金の使い込みかと思いきや、名古屋市の河村市長と一緒に写る写真の笑顔が理由と聞いて驚きました。
    この市長は今年1月に「堂上蜂屋柿」という美濃加茂市特産の高級干し柿をPRするため河村市長を訪問しました。差し出された柿を河村市長はガブリと一口、そしてにっこり笑う両市長のツーショット写真が翌日の新聞に掲載されました。それをこの市議は「堂上蜂屋柿は1000年の歴史のある尊い干し柿。この柿は、へたを取って8つに割いて食べるのがおいしい食べ方なのに河村市長はそのままガブリ。それを横で笑って見ているだけとは何事か」と言うのですからわけがわかりません。
    河村市長もわざわざ訪ねてくれたことへのサービスでかじったのに、無知な無礼者のごとくに言われるとは夢にも思わなかったことでしょう。そもそも、食べ物をどのように食べようと自由なはずです。「こうすればもっとおいしいよ」ならまだしも「こう食べなければダメだ」なんて、そんな傲慢な生産者の作ったものなど食べたくありません。さらにこの市議は「この柿は(生産者にとって)本当に金メダルみたいなもの。生産者の中には侮辱されたと感じた人もいます」と、河村市長が2021年に東京五輪ソフトボール選手の金メダルをかじって批判を受けたことを引き合いに出すのですから、河村市長もとんだとばっちりです。
    市長は「撮影時に食べ方を改めてお伝えしきれなかった私の落ち度です」と謝罪しましたが「お前こそ何にでも噛みつくな」とでも言ってやればよかったのです。今回の騒動で「堂上蜂屋柿」の名前は全国に知れ渡り、PRという当初の目的は達せられましたが「そんな面倒な柿なんていらない」と思ったのはわたしだけではないでしょう。


    ●学校の先生は教育系学部を卒業、あるいは教職課程を修了するなど「教員免許」を持っている人しかなれないものですが、山口県教育委員会が新年度の教員採用試験で新たに「教職チャレンジサポート特別選考」を始めるというニュースがありました。
    これは大学は卒業しているが教員免許を持っていない54歳以下の人を対象にしたもので、合格者には2026年度の採用を確約した上で、年間最大26万円の補助を受けながら2年間のうちに通信制大学などで教員免許を取得してもらうというものです。タクシーやバスの運転手募集には「二種免許がなくてもOK」「大型免許なしでも応募可」と書かれているものがあります。これは「入社後に会社が免許取得をサポートしますから安心して応募してください」という意味ですが、今回の山口県教委の取り組みはまさにその“教員版”といったところでしょうか。さらに過去10年以内に本採用の教員として勤務した経験のある人には一次試験が一部免除されるなど、応募しやすい工夫を凝らしています。
    その背景には言うまでもなく教員不足で現場が疲弊する中、なんとしても一定数を確保しなければならない現状があります。65歳まで働く人が増える一方で少子化によりクラスが減少しているのにもかかわらず教員不足とは不思議にも思えますが、その要因の一番は求職者にとって教員が魅力のない職業になっていることが挙げられます。土日にクラブ活動の指導で出勤する、長時間労働でありながら残業手当がつかないなど、その環境が決して恵まれたものではないことは知られています。「教職チャレンジサポート特別選考」も結構ですが、まずそこを改善しなければあの手この手で応募者を増やしたところで退職者も増えますので何も変わらないのでは・・・。
    過去10年間の「小学生がなりたい職業ランキング」で教員は男子で4回、女子は毎年トップ10入りする子供たちにとってあこがれの仕事です。それが大人になり労働条件を気にするようになると一気に不人気になるなんて残念なことです。子供たちの純粋な気持ちを奪わないためにも早急に労働環境を整備することが必要です。学校の先生には何を置いても子供が大好きな「なりたい人」になってもらいたいものですから。


    ●ベルリンの壁は本来1つの国であったドイツを西側と東側に隔てる東西冷戦下における象徴でしたが、1989年の東欧革命による東ドイツ国内の混乱に乗じ撤去されました。いわゆる「ベルリンの壁崩壊」です。そして今回またベルリンでひとつの「壁」が崩壊しました。ベルリン市内の市民プールを女性が男性と同じようにトップレスで泳ぐことが認められたというニュースがありました。
    これは2022年12月、女性水泳選手が胸を隠さずに市民プールで泳ごうとして止められたことをきっかけに市当局が既存のルールを見直したもので、ジェンダーの平等に向け一歩前進したとして歓迎されているそうです。
    オリンピックを見てもわかるように女性スイマーの身体は例外なく胸から股間にかけ水着で覆われています。それがこれからは海パン一丁の女性スイマーが現れるというのです。この“男女の壁崩壊”を「なんと素晴らしいことでしょう。どんどんさらけ出してください」と多くの男性は歓迎するでしょうが、公序良俗的観点から見ると喜んでばかりもいられません。彼女らの言い分は「男性は胸を出しているのに女性が出せないのは差別だ」というものですが、男性の乳首と女性のそれは明らかに異質のものです。女性の胸は間違いなく性の対象であり、人口の半分を占める男性を惑わすものだからです。
    不意にオッパイが露な女性が目の前に現れて平然としていられる男性がどれほどいるでしょう。ある調査によれば全裸の女性の前に突然男性が現れた場合、半数以上の女性はとっさに股間より胸を隠すそうです。言うならば女性の胸は男のチンチンと同じようなもので、強烈な破壊力があるのです。
    海外にはヌーディストビーチという上だけでなく下までも丸出しの場所があるのに今さら騒ぎ立てることはないと思う人がいるかもしれませんが、そこが愛好者という限られた人のみが集まる閉鎖された場所なのに対し、今回は“市民”プールという誰もが入れるまったくのオープンな空間だという明らかな違いがあります。裸になるなとは言いませんが、子供も集うそんな場所でのそれはいかがなものでしょう。なにごともTPOが大切です。「差別はダメだ」ですべてを片付けるのは簡単なようですが、実はなにも片付いていないのです。なにはともあれ、今年の夏はベルリンのプールで監視員のアルバイトでもするとしますか。へへへ

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  • 2023年3月11日号:ニュースに一言

    2023-03-11 12:35  
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    ●皆さんこんにちは、“人気”YouTuberの百田尚樹です。
    最近でこそ週刊誌連載の仕事が入り執筆に追われていますが、ここしばらくは書くよりしゃべる時間の方が長くなり「作家」を名乗るのが憚られ、すっかりYouTuberになってしまいました。そんなYouTuberは動画のジャンルよって分類されます。主に内政、外交についての「政治系」、パチンコ、パチスロや競馬などに特化した「ギャンブル系」、ネコやイヌのかわいらしい姿が満載の「ペット系」など、中には「炎上系」「迷惑系」など困ったものもあります。わたしはといえばコロナワクチンについてしゃべったと思ったら、そのすぐ後に大谷選手の話題、さらには漢字についてと思いつくまま気の向くまま何でもありですから、さしずめ「雑食系」といったところでしょうか。
    チャンネル登録者数100万人を超える「料理系」YouTuberの男性料理研究家が謝罪に追い込まれたという話題です。彼がいったい何を謝らなければならないようなことをしたのかというと、ツイッターでカレーのレシピを紹介した際に、その分量を「男性なら1人前、女性なら2人前分あります」と記したからと聞いて呆れてしまいました。批判者は「女性が少食とばかり思うな」「男女で飯の量勝手に決めないでくれ」と憤っているようですが、相手が料理研究家だからといってなんでも「食いついて」いいわけではありません。
    “一般”的に女性は男性に比べて体格が小さく、そのため食べる量も少なくなりがちです。もちろん例外的に大食いの女性もいます。しかし今回、彼が言ったのはあくまでも“一般”論であって、それがダメと言うのならもう何も言えなくなります。我こそが正義とばかりに因縁にも似た言葉狩りが蔓延する社会は窮屈で仕方がありません。
    分量といえば市販薬のパッケージに書かれている用法ほど不思議なものはありません。多くが大人は3錠、子供は2錠など大人と子供でその服用する量をわけているのです。大人は大きく、子供は小さいからというのはわかりますが、ともに20歳の大人で体重40㎏の小柄な女性と160㎏の力士が同じ3錠とはどう考えても不自然です。そういえば多くの人が副反応に悩まされたコロナワクチンも女性の方がその程度が重かったと聞きます。多分、男性と同じ接種量だったのでより強く反応したのでしょう。
    おっと、こんなことを言ったらまた「身体の大きな女性もいる」と噛みつかれかねません。くわばらくわばら。
     
     
    ●全国で相次いでいる強盗事件の捜査で犯人特定の有力な手がかりとなっているほか、犯罪の抑止力としても効果が期待できる防犯カメラですが、青森県で警察と住宅メーカーがその設置を進める協定を全国で初めて結んだというニュースがありました。これは青森県警察本部と大手住宅メーカーの大和ハウス工業北東北支社が締結したもので、今後1年間で大和ハウス工業が手掛ける青森県内の約100棟の住宅に防犯カメラを設置することとしており、手始めに青森市桜川地区で7月末までに着工する分譲住宅4棟に取り付けるそうです。分譲住宅には無条件で、注文住宅は購入者が希望した場合のみ設置するとのことですが、1台あたり10万円ほどの費用をメーカーが負担することもあり「いらない」という人はいないでしょう。
    防犯カメラのついた家は、その所有者の家族の生命財産を守るだけでなく、その地域の治安維持にも貢献できますのでこの取り組みはいいことだらけです。こんな前向きに市民や地域の安全安心のために官民がタッグを組むところがあると思えば、神奈川県川崎市は東京都に次いで新築住宅への太陽光パネル設置を義務付けたといいますから開いた口がふさがりません。
    電気代高騰の折、「太陽光発電で家計の節約が出来る」と喜ぶ人がいるかもしれませんが、それは大間違いです。太陽光は文字通り「太陽」がなければ発電できません。すなわち曇りの日や夜間は用を成さないのです。しかし電気は24時間必要です。そのため電力会社は莫大な費用をかけて予備電力を作らなければなりません。その費用はもちろん電気代に上乗せされます。ですから太陽光発電が増えれば増えるほど電気代は高くなるのです。政府が推し進めたこともあり「太陽光パネル」設置住宅は随分と増えました。そのたびに電気代の請求書の中の「再エネ発電賦課金」がアップしている事実から目を背けてはいけません。
     
     
    ●水道料金の値上げを議会に提案している松山市が、市内の全世帯およそ24万3000戸に配布した市民へ水道管の老朽化対策を訴えるための広報資料に掲載した水漏れ状態を示す写真が、老朽化とは全然関係ない交通事故によるものだったことが分かりました。その写真は路上に水が盛大に噴き出す様子を捉えたもので、それを見たほとんどの人は「こんなことになったら大変だ」と感じたことでしょう。間違いの指摘を受けた担当者は「これはあくまでもイメージ写真なので問題はなく訂正の予定はない」と見事なまでに開き直っていますが市民もなめられたものです。
    ライフラインと呼ばれるものの内、ガスや電気は料金が未納になるとすぐに止められてしまいますが、水だけは猶予が与えられます。それは水が人間にとって命にかかわる絶対に必要なものだからです。ですから料金がアップしたからといって「ほな、うちは結構ですわ」とならないだけでなく、水道管の老朽化が安定した供給の妨げになることはわかっていますので必要な値上げも受け入れます。しかし、その根拠を示す写真がニセモノだったのなら話は違います。さらにそれを指摘され謝罪がないのはもちろん、弁解のひとつもなく堂々と開き直られたのでは市民もさぞかし気分が悪いことだと思います。そもそも本当に老朽化して水漏れしているのだったら、それを写真に収めればいいだけでそうしないのはそんな場所が無かったのだろうと勘繰られても仕方がありません。
    市の総意ではない担当者たったひとりの発言だとは思いますが、市民にしたら簡単に水に流せないだけでなく不満が写真のように噴き出していることでしょう。
     
     
    ●山梨県の公立高校で実施された「情報技術検定試験」で教諭が生徒に解答のヒントを伝えたため、この教諭が試験監督を務めた教室で受験した生徒28人全員の結果が無効になったというニュースがありました。
    この資格試験は1月20日に行われ、同校の1年生約60人が2教室に分かれ受験しましたが、そのうちの1教室の試験監督を務めていた男性教諭が試験中に少なくとも6人の生徒に口頭でヒントを伝えていたというのです。試験は言うまでもなく自分一人の力でするものです。カンニングがダメなのはその行為をする時点で他者(物)の力を借りることになるからです。それを指導的立場にある教諭がするなんて困ったものです。
    普段通っている学校で実施された資格試験ですから、受験生と監督は顔見知りです。いやそれどころか直接担任している生徒だったのかもしれません。かわいい教え子が解答に苦慮しているのを見ていたたまれなかったのか、あるいは合格率を上げて自身の評価を高めようとしたのかはわかりませんが、いずれにせよ試験という最も公正であるべきものを冒涜したことは間違いありません。
    それにしても解せないのはなぜ「ヒントを伝えた」なのでしょう。どちらにせよ不正なのですから一思いに答えを教えても良かったのに。もし彼の中に「教えるのはアウトだが、ヒントだけならぎりぎりセーフ」との思いがあったとしたら、これほど愚かな教員はいません。ヒントを与えられ解答を導き出した受験生は仕方がないとして、かわいそうなのはそれまで一所懸命準備して試験に臨み合格ラインを超えていたのに、その教室にいたというだけで採点対象外とされた受験生です。校長は今回の決定を「苦渋の決断だった。生徒にはカウンセリングを実施するなど、できる限りの対応をしたい」と語っていますが“苦汁”を飲まされた生徒は堪ったものではありません。
     
     
    ●「二重国籍が認められないのは個人の尊重などを定めた憲法に違反する」と訴えたものの敗訴した“元日本人” 8人が納得せずに控訴していた裁判で、東京高等裁判所は1審に続いて訴えを退け二重国籍を持つことを認めなかったというニュースがありました。
    この8人はスイスやリヒテンシュタインに住み現地の国籍を取得したために日本国籍を失っていました。日本の国籍法は外国の国籍を自らの希望で取得すると日本国籍を失うと規定しており、複数の国籍を持つことを認めていませんので当然の結果です。この法律の中で重要なのは“自らの希望で”というところでしょう。国はなにもしていない日本人から無理やり日本国籍を剥奪したわけではありません。“自らの希望で”他国籍を選んだ人を規定通り日本国籍から外しただけです。それを「憲法違反」だなんてどこまで個人の尊重を拡大解釈すれば気が済むのでしょう。
    一方で国は他国の国籍に変更する自由も認めています。「お前が外国人になるのはまかりならん」と日本国籍に縛り付けることはありません。これ以上の「個人の尊重」があるでしょうか。わたしは国籍は1つに限定するべきだと思っています。なぜなら国家はその構成員たる国民を絶対的に守るものだからです。日常生活上での保障はもちろん、たとえば紛争地帯に勝手に赴きテロ組織に捕らえられ人質になるという非日常的な事態にも、国は「それは自己責任だから」と見放すようなことはせず救出に全力を尽くします。その代わりに国民は国家に忠誠を誓うのですが、仮に二重国籍の二国が戦闘状態になった場合そこに矛盾が生じます。権利と義務は表裏一体ですが、往々にして権利ばかりを主張する風潮が強くなっているのはいただけません。
    いま国会ではLGBT法案なる珍妙な法律を作ろうとしています。これが通れば普通に考えれば認められないとすぐにわかるにもかかわらず「二重国籍を認めろ」なんて言う人たちがいるくらいですから、そのうち「ある時は男、あるときは女」という二重性別を認めないのはおかしいなんて言い出す奴が現れかねません。

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  • 2023年3月3日号:ニュースに一言

    2023-03-03 16:17  
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    ●皆さんこんにちは、“人気”YouTuberの百田尚樹です。
    最近でこそ週刊誌連載の仕事が入り執筆に追われていますが、ここしばらくは書くよりしゃべる時間の方が長くなり「作家」を名乗るのが憚られ、すっかりYouTuberになってしまいました。そんなYouTuberは動画のジャンルよって分類されます。主に内政、外交についての「政治系」、パチンコ、パチスロや競馬などに特化した「ギャンブル系」、ネコやイヌのかわいらしい姿が満載の「ペット系」など、中には「炎上系」「迷惑系」など困ったものもあります。わたしはといえばコロナワクチンについてしゃべったと思ったら、そのすぐ後に大谷選手の話題、さらには漢字についてと思いつくまま気の向くまま何でもありですから、さしずめ「雑食系」といったところでしょうか。
    チャンネル登録者数100万人を超える「料理系」YouTuberの男性料理研究家が謝罪に追い込まれたという話題です。彼がいったい何を謝らなければならないようなことをしたのかというと、ツイッターでカレーのレシピを紹介した際に、その分量を「男性なら1人前、女性なら2人前分あります」と記したからと聞いて呆れてしまいました。批判者は「女性が少食とばかり思うな」「男女で飯の量勝手に決めないでくれ」と憤っているようですが、相手が料理研究家だからといってなんでも「食いついて」いいわけではありません。
    “一般”的に女性は男性に比べて体格が小さく、そのため食べる量も少なくなりがちです。もちろん例外的に大食いの女性もいます。しかし今回、彼が言ったのはあくまでも“一般”論であって、それがダメと言うのならもう何も言えなくなります。我こそが正義とばかりに因縁にも似た言葉狩りが蔓延する社会は窮屈で仕方がありません。
    分量といえば市販薬のパッケージに書かれている用法ほど不思議なものはありません。多くが大人は3錠、子供は2錠など大人と子供でその服用する量をわけているのです。大人は大きく、子供は小さいからというのはわかりますが、ともに20歳の大人で体重40㎏の小柄な女性と160㎏の力士が同じ3錠とはどう考えても不自然です。そういえば多くの人が副反応に悩まされたコロナワクチンも女性の方がその程度が重かったと聞きます。多分、男性と同じ接種量だったのでより強く反応したのでしょう。
    おっと、こんなことを言ったらまた「身体の大きな女性もいる」と噛みつかれかねません。くわばらくわばら。
     
     
    ●全国で相次いでいる強盗事件の捜査で犯人特定の有力な手がかりとなっているほか、犯罪の抑止力としても効果が期待できる防犯カメラですが、青森県で警察と住宅メーカーがその設置を進める協定を全国で初めて結んだというニュースがありました。これは青森県警察本部と大手住宅メーカーの大和ハウス工業北東北支社が締結したもので、今後1年間で大和ハウス工業が手掛ける青森県内の約100棟の住宅に防犯カメラを設置することとしており、手始めに青森市桜川地区で7月末までに着工する分譲住宅4棟に取り付けるそうです。分譲住宅には無条件で、注文住宅は購入者が希望した場合のみ設置するとのことですが、1台あたり10万円ほどの費用をメーカーが負担することもあり「いらない」という人はいないでしょう。
    防犯カメラのついた家は、その所有者の家族の生命財産を守るだけでなく、その地域の治安維持にも貢献できますのでこの取り組みはいいことだらけです。こんな前向きに市民や地域の安全安心のために官民がタッグを組むところがあると思えば、神奈川県川崎市は東京都に次いで新築住宅への太陽光パネル設置を義務付けたといいますから開いた口がふさがりません。
    電気代高騰の折、「太陽光発電で家計の節約が出来る」と喜ぶ人がいるかもしれませんが、それは大間違いです。太陽光は文字通り「太陽」がなければ発電できません。すなわち曇りの日や夜間は用を成さないのです。しかし電気は24時間必要です。そのため電力会社は莫大な費用をかけて予備電力を作らなければなりません。その費用はもちろん電気代に上乗せされます。ですから太陽光発電が増えれば増えるほど電気代は高くなるのです。政府が推し進めたこともあり「太陽光パネル」設置住宅は随分と増えました。そのたびに電気代の請求書の中の「再エネ発電賦課金」がアップしている事実から目を背けてはいけません。
     
     
    ●水道料金の値上げを議会に提案している松山市が、市内の全世帯およそ24万3000戸に配布した市民へ水道管の老朽化対策を訴えるための広報資料に掲載した水漏れ状態を示す写真が、老朽化とは全然関係ない交通事故によるものだったことが分かりました。その写真は路上に水が盛大に噴き出す様子を捉えたもので、それを見たほとんどの人は「こんなことになったら大変だ」と感じたことでしょう。間違いの指摘を受けた担当者は「これはあくまでもイメージ写真なので問題はなく訂正の予定はない」と見事なまでに開き直っていますが市民もなめられたものです。
    ライフラインと呼ばれるものの内、ガスや電気は料金が未納になるとすぐに止められてしまいますが、水だけは猶予が与えられます。それは水が人間にとって命にかかわる絶対に必要なものだからです。ですから料金がアップしたからといって「ほな、うちは結構ですわ」とならないだけでなく、水道管の老朽化が安定した供給の妨げになることはわかっていますので必要な値上げも受け入れます。しかし、その根拠を示す写真がニセモノだったのなら話は違います。さらにそれを指摘され謝罪がないのはもちろん、弁解のひとつもなく堂々と開き直られたのでは市民もさぞかし気分が悪いことだと思います。そもそも本当に老朽化して水漏れしているのだったら、それを写真に収めればいいだけでそうしないのはそんな場所が無かったのだろうと勘繰られても仕方がありません。
    市の総意ではない担当者たったひとりの発言だとは思いますが、市民にしたら簡単に水に流せないだけでなく不満が写真のように噴き出していることでしょう。
     
     
    ●山梨県の公立高校で実施された「情報技術検定試験」で教諭が生徒に解答のヒントを伝えたため、この教諭が試験監督を務めた教室で受験した生徒28人全員の結果が無効になったというニュースがありました。
    この資格試験は1月20日に行われ、同校の1年生約60人が2教室に分かれ受験しましたが、そのうちの1教室の試験監督を務めていた男性教諭が試験中に少なくとも6人の生徒に口頭でヒントを伝えていたというのです。試験は言うまでもなく自分一人の力でするものです。カンニングがダメなのはその行為をする時点で他者(物)の力を借りることになるからです。それを指導的立場にある教諭がするなんて困ったものです。
    普段通っている学校で実施された資格試験ですから、受験生と監督は顔見知りです。いやそれどころか直接担任している生徒だったのかもしれません。かわいい教え子が解答に苦慮しているのを見ていたたまれなかったのか、あるいは合格率を上げて自身の評価を高めようとしたのかはわかりませんが、いずれにせよ試験という最も公正であるべきものを冒涜したことは間違いありません。
    それにしても解せないのはなぜ「ヒントを伝えた」なのでしょう。どちらにせよ不正なのですから一思いに答えを教えても良かったのに。もし彼の中に「教えるのはアウトだが、ヒントだけならぎりぎりセーフ」との思いがあったとしたら、これほど愚かな教員はいません。ヒントを与えられ解答を導き出した受験生は仕方がないとして、かわいそうなのはそれまで一所懸命準備して試験に臨み合格ラインを超えていたのに、その教室にいたというだけで採点対象外とされた受験生です。校長は今回の決定を「苦渋の決断だった。生徒にはカウンセリングを実施するなど、できる限りの対応をしたい」と語っていますが“苦汁”を飲まされた生徒は堪ったものではありません。
     
     
    ●「二重国籍が認められないのは個人の尊重などを定めた憲法に違反する」と訴えたものの敗訴した“元日本人” 8人が納得せずに控訴していた裁判で、東京高等裁判所は1審に続いて訴えを退け二重国籍を持つことを認めなかったというニュースがありました。
    この8人はスイスやリヒテンシュタインに住み現地の国籍を取得したために日本国籍を失っていました。日本の国籍法は外国の国籍を自らの希望で取得すると日本国籍を失うと規定しており、複数の国籍を持つことを認めていませんので当然の結果です。この法律の中で重要なのは“自らの希望で”というところでしょう。国はなにもしていない日本人から無理やり日本国籍を剥奪したわけではありません。“自らの希望で”他国籍を選んだ人を規定通り日本国籍から外しただけです。それを「憲法違反」だなんてどこまで個人の尊重を拡大解釈すれば気が済むのでしょう。
    一方で国は他国の国籍に変更する自由も認めています。「お前が外国人になるのはまかりならん」と日本国籍に縛り付けることはありません。これ以上の「個人の尊重」があるでしょうか。わたしは国籍は1つに限定するべきだと思っています。なぜなら国家はその構成員たる国民を絶対的に守るものだからです。日常生活上での保障はもちろん、たとえば紛争地帯に勝手に赴きテロ組織に捕らえられ人質になるという非日常的な事態にも、国は「それは自己責任だから」と見放すようなことはせず救出に全力を尽くします。その代わりに国民は国家に忠誠を誓うのですが、仮に二重国籍の二国が戦闘状態になった場合そこに矛盾が生じます。権利と義務は表裏一体ですが、往々にして権利ばかりを主張する風潮が強くなっているのはいただけません。
    いま国会ではLGBT法案なる珍妙な法律を作ろうとしています。これが通れば普通に考えれば認められないとすぐにわかるにもかかわらず「二重国籍を認めろ」なんて言う人たちがいるくらいですから、そのうち「ある時は男、あるときは女」という二重性別を認めないのはおかしいなんて言い出す奴が現れかねません。

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  • 2023年2月26日号:ニュースに一言

    2023-02-26 07:00  
    102pt
    ●皆さんこんにちは、“人気”YouTuberの百田尚樹です。
    最近でこそ週刊誌連載の仕事が入り執筆に追われていますが、ここしばらくは書くよりしゃべる時間の方が長くなり「作家」を名乗るのが憚られ、すっかりYouTuberになってしまいました。そんなYouTuberは動画のジャンルよって分類されます。主に内政、外交についての「政治系」、パチンコ、パチスロや競馬などに特化した「ギャンブル系」、ネコやイヌのかわいらしい姿が満載の「ペット系」など、中には「炎上系」「迷惑系」など困ったものもあります。わたしはといえばコロナワクチンについてしゃべったと思ったら、そのすぐ後に大谷選手の話題、さらには漢字についてと思いつくまま気の向くまま何でもありですから、さしずめ「雑食系」といったところでしょうか。
    チャンネル登録者数100万人を超える「料理系」YouTuberの男性料理研究家が謝罪に追い込まれたという話題です。彼がいったい何を謝らなければならないようなことをしたのかというと、ツイッターでカレーのレシピを紹介した際に、その分量を「男性なら1人前、女性なら2人前分あります」と記したからと聞いて呆れてしまいました。批判者は「女性が少食とばかり思うな」「男女で飯の量勝手に決めないでくれ」と憤っているようですが、相手が料理研究家だからといってなんでも「食いついて」いいわけではありません。
    “一般”的に女性は男性に比べて体格が小さく、そのため食べる量も少なくなりがちです。もちろん例外的に大食いの女性もいます。しかし今回、彼が言ったのはあくまでも“一般”論であって、それがダメと言うのならもう何も言えなくなります。我こそが正義とばかりに因縁にも似た言葉狩りが蔓延する社会は窮屈で仕方がありません。
    分量といえば市販薬のパッケージに書かれている用法ほど不思議なものはありません。多くが大人は3錠、子供は2錠など大人と子供でその服用する量をわけているのです。大人は大きく、子供は小さいからというのはわかりますが、ともに20歳の大人で体重40㎏の小柄な女性と160㎏の力士が同じ3錠とはどう考えても不自然です。そういえば多くの人が副反応に悩まされたコロナワクチンも女性の方がその程度が重かったと聞きます。多分、男性と同じ接種量だったのでより強く反応したのでしょう。
    おっと、こんなことを言ったらまた「身体の大きな女性もいる」と噛みつかれかねません。くわばらくわばら。
     
     
    ●全国で相次いでいる強盗事件の捜査で犯人特定の有力な手がかりとなっているほか、犯罪の抑止力としても効果が期待できる防犯カメラですが、青森県で警察と住宅メーカーがその設置を進める協定を全国で初めて結んだというニュースがありました。これは青森県警察本部と大手住宅メーカーの大和ハウス工業北東北支社が締結したもので、今後1年間で大和ハウス工業が手掛ける青森県内の約100棟の住宅に防犯カメラを設置することとしており、手始めに青森市桜川地区で7月末までに着工する分譲住宅4棟に取り付けるそうです。分譲住宅には無条件で、注文住宅は購入者が希望した場合のみ設置するとのことですが、1台あたり10万円ほどの費用をメーカーが負担することもあり「いらない」という人はいないでしょう。
    防犯カメラのついた家は、その所有者の家族の生命財産を守るだけでなく、その地域の治安維持にも貢献できますのでこの取り組みはいいことだらけです。こんな前向きに市民や地域の安全安心のために官民がタッグを組むところがあると思えば、神奈川県川崎市は東京都に次いで新築住宅への太陽光パネル設置を義務付けたといいますから開いた口がふさがりません。
    電気代高騰の折、「太陽光発電で家計の節約が出来る」と喜ぶ人がいるかもしれませんが、それは大間違いです。太陽光は文字通り「太陽」がなければ発電できません。すなわち曇りの日や夜間は用を成さないのです。しかし電気は24時間必要です。そのため電力会社は莫大な費用をかけて予備電力を作らなければなりません。その費用はもちろん電気代に上乗せされます。ですから太陽光発電が増えれば増えるほど電気代は高くなるのです。政府が推し進めたこともあり「太陽光パネル」設置住宅は随分と増えました。そのたびに電気代の請求書の中の「再エネ発電賦課金」がアップしている事実から目を背けてはいけません。
     
     
    ●水道料金の値上げを議会に提案している松山市が、市内の全世帯およそ24万3000戸に配布した市民へ水道管の老朽化対策を訴えるための広報資料に掲載した水漏れ状態を示す写真が、老朽化とは全然関係ない交通事故によるものだったことが分かりました。その写真は路上に水が盛大に噴き出す様子を捉えたもので、それを見たほとんどの人は「こんなことになったら大変だ」と感じたことでしょう。間違いの指摘を受けた担当者は「これはあくまでもイメージ写真なので問題はなく訂正の予定はない」と見事なまでに開き直っていますが市民もなめられたものです。
    ライフラインと呼ばれるものの内、ガスや電気は料金が未納になるとすぐに止められてしまいますが、水だけは猶予が与えられます。それは水が人間にとって命にかかわる絶対に必要なものだからです。ですから料金がアップしたからといって「ほな、うちは結構ですわ」とならないだけでなく、水道管の老朽化が安定した供給の妨げになることはわかっていますので必要な値上げも受け入れます。しかし、その根拠を示す写真がニセモノだったのなら話は違います。さらにそれを指摘され謝罪がないのはもちろん、弁解のひとつもなく堂々と開き直られたのでは市民もさぞかし気分が悪いことだと思います。そもそも本当に老朽化して水漏れしているのだったら、それを写真に収めればいいだけでそうしないのはそんな場所が無かったのだろうと勘繰られても仕方がありません。
    市の総意ではない担当者たったひとりの発言だとは思いますが、市民にしたら簡単に水に流せないだけでなく不満が写真のように噴き出していることでしょう。
     
     
    ●山梨県の公立高校で実施された「情報技術検定試験」で教諭が生徒に解答のヒントを伝えたため、この教諭が試験監督を務めた教室で受験した生徒28人全員の結果が無効になったというニュースがありました。
    この資格試験は1月20日に行われ、同校の1年生約60人が2教室に分かれ受験しましたが、そのうちの1教室の試験監督を務めていた男性教諭が試験中に少なくとも6人の生徒に口頭でヒントを伝えていたというのです。試験は言うまでもなく自分一人の力でするものです。カンニングがダメなのはその行為をする時点で他者(物)の力を借りることになるからです。それを指導的立場にある教諭がするなんて困ったものです。
    普段通っている学校で実施された資格試験ですから、受験生と監督は顔見知りです。いやそれどころか直接担任している生徒だったのかもしれません。かわいい教え子が解答に苦慮しているのを見ていたたまれなかったのか、あるいは合格率を上げて自身の評価を高めようとしたのかはわかりませんが、いずれにせよ試験という最も公正であるべきものを冒涜したことは間違いありません。
    それにしても解せないのはなぜ「ヒントを伝えた」なのでしょう。どちらにせよ不正なのですから一思いに答えを教えても良かったのに。もし彼の中に「教えるのはアウトだが、ヒントだけならぎりぎりセーフ」との思いがあったとしたら、これほど愚かな教員はいません。ヒントを与えられ解答を導き出した受験生は仕方がないとして、かわいそうなのはそれまで一所懸命準備して試験に臨み合格ラインを超えていたのに、その教室にいたというだけで採点対象外とされた受験生です。校長は今回の決定を「苦渋の決断だった。生徒にはカウンセリングを実施するなど、できる限りの対応をしたい」と語っていますが“苦汁”を飲まされた生徒は堪ったものではありません。
     
     
    ●「二重国籍が認められないのは個人の尊重などを定めた憲法に違反する」と訴えたものの敗訴した“元日本人” 8人が納得せずに控訴していた裁判で、東京高等裁判所は1審に続いて訴えを退け二重国籍を持つことを認めなかったというニュースがありました。
    この8人はスイスやリヒテンシュタインに住み現地の国籍を取得したために日本国籍を失っていました。日本の国籍法は外国の国籍を自らの希望で取得すると日本国籍を失うと規定しており、複数の国籍を持つことを認めていませんので当然の結果です。この法律の中で重要なのは“自らの希望で”というところでしょう。国はなにもしていない日本人から無理やり日本国籍を剥奪したわけではありません。“自らの希望で”他国籍を選んだ人を規定通り日本国籍から外しただけです。それを「憲法違反」だなんてどこまで個人の尊重を拡大解釈すれば気が済むのでしょう。
    一方で国は他国の国籍に変更する自由も認めています。「お前が外国人になるのはまかりならん」と日本国籍に縛り付けることはありません。これ以上の「個人の尊重」があるでしょうか。わたしは国籍は1つに限定するべきだと思っています。なぜなら国家はその構成員たる国民を絶対的に守るものだからです。日常生活上での保障はもちろん、たとえば紛争地帯に勝手に赴きテロ組織に捕らえられ人質になるという非日常的な事態にも、国は「それは自己責任だから」と見放すようなことはせず救出に全力を尽くします。その代わりに国民は国家に忠誠を誓うのですが、仮に二重国籍の二国が戦闘状態になった場合そこに矛盾が生じます。権利と義務は表裏一体ですが、往々にして権利ばかりを主張する風潮が強くなっているのはいただけません。
    いま国会ではLGBT法案なる珍妙な法律を作ろうとしています。これが通れば普通に考えれば認められないとすぐにわかるにもかかわらず「二重国籍を認めろ」なんて言う人たちがいるくらいですから、そのうち「ある時は男、あるときは女」という二重性別を認めないのはおかしいなんて言い出す奴が現れかねません。

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  • 2023年2月17日号:ニュースに一言

    2023-02-17 16:11  
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    ●2月14日はバレンタインデーでした。女性から男性へ愛のしるしとしてチョコレートを贈るこの日は66歳のオッサンには関係ない(と言っても全然モテなかったわたしは若い時も常に蚊帳の外でしたが)日ですが、朝からチョコレートの数を皮算用して胸躍らせた男性も多かったのではないでしょうか。
    ところがそんなバレンタインデーも随分と様変わりしているようです。マーケットプレイス運営会社のアンケートによるとプレゼントする対象の第1位は「パートナー」を抑え、なんと「家族」だというのです。そして第3位には「自分」(これをプレゼントというのでしょうか、ただの買い食いのような気もしますが)、以下友人同僚と続きます。さらにその相手は男性に限らず女性や、中には「ペットへ」なんて人もいてわたしのイメージする“ワクワクドキドキ”のバレンタインと全然違います。
    もっともバレンタインデー発祥の欧米では、この日は単に「愛の日」として恋人同士はもちろん、夫婦や家族など愛する人すべてを対象にしていますので、ようやく本来の姿に近付いただけなのかもしれません。そもそも「この日だけは女性から告白できる」なんて「女が告白なんて、はしたない」という時代だからこそ貴重なのであって、女性からのアプローチも当たり前の現代にはそぐわないものです。そしてチョコレートを贈るというのも神戸の洋菓子店「モロゾフ」の創業者が1936年に売上アップを目論み、新聞に「バレンタインデーにはチョコを!」と掲載した広告にイベント好きの女性たちが飛びついたものですからロマンチックでも何でもない起源です。
    外国から持ち込まれすっかり定着したイベントはバレンタインデーのほかにもあります。しかし、いずれも本来のものとかけ離れた日本独自のものに変わっています。キリストの生誕を静かに祝う“クリスマス”は三角帽子を被ってクラッカーを鳴らし、から揚げとケーキを食べる日。秋の収穫を祝い先祖の霊をお迎えするとともに悪霊を追い払う“ハロウィン”は若者が仮装して街に繰り出しバカ騒ぎをする日など元々の意味はどこかに行ってしまいました。
    そんな光景を見た外国人たちは「日本には変わった祭りがあるな」と思うだけで、それがクリスマスやハロウィンだと気付いていないかもしれません。
     
     
    ●高齢ドライバーによる事故の増加を受け、一定の違反を犯した75歳以上の高齢者に「運転技能検査」が課されるようになりましたが、その実施状況が警視庁から発表されました。それによりますと昨年5月13日から12月末までの7ヵ月半にのべ7万7083人が受け、合格者は6万9041人だったそうです。この数字を見て「高齢者の10人に9人はしっかり運転しているんだ、思ったより多いな」と思うのは早計でしょう。なぜならこの検査は不合格になっても何度でも受け直すことができるからです。極端な話、受検者全員が1回目は不合格で複数回受検していた可能性もあるのです。ですから延べ人数とその中での合格者の数ではまったく本質を表すことが出来ないのです。本当なら“のべ”ではない総受検者数、1回での合格者、2回目での合格者・・・、最後までダメだった人の公表でないといけないのです。そして恐ろしいのは初回から9回連続信号を見落とし不合格になっていた受検者が10回目にちょうど対面の信号が“青”だったため停止の必要がなく完走すれば合格になってしまうことです。この人はもし11回目を行なえばまた信号無視で失格するのに、11回目の必要がないため晴れて免許更新となるのです。
    こんな人が「お墨付きをもらった」と大手を振って公道に出てくるのですから危ないことこの上ありません。本当に安全を担保するための検査なら受検回数に制限を設けるか、あるいは3回連続の合格のみ可とするなどしないといけないでしょう。福岡県では高齢者講習を受けていた妻を迎えに運転免許試験場を訪れた81歳の男性がバックで駐車しようとした際にアクセルとブレーキを踏み間違えて試験場玄関に突っ込む事故が起きています。どう考えても講習を受けるべきは妻より夫の方ですが、この男性もれっきとした免許保有者なのです。
    現代では衝突を避ける自動ブレーキや車線外れの修正、ブレーキとアクセルの踏み間違いへの対応など運転ミスを補う装置の付いた安全運転サポート車(サポカー)も販売されています。彼がもしサポカーに乗っていたら今回の事故はありませんでした。「運転技能検査」も結構ですが、能力の衰えが不可避の高齢者にはもっと積極的にサポカーへの乗り換えを促すべきでは。「運転技能検査」と同じく昨年5月13日に新設されたサポカー限定免許へ2022年中に切り替えたのは全国でたったの14人です。
     
     
    ●窃盗の疑いで兵庫県姫路市に住む31歳のブラジル国籍の女が逮捕されたというニュースがありました。窃盗犯とはどろぼうのことですが、彼女が盗んだものはなんとパトカーといいますから驚きです。
    この女は、滋賀県に住む姉に自宅のある姫路まで送ってもらっている途中、なにが気に入らないのか突然わめきだし、さらに注意した姉の肩を殴るなどしたそうです。とても手に負えないと思った姉は「妹とけんかをした」と110番通報しました。ほどなくして車を止めていた加東市山口の国道372号沿いに、警官1人がミニパトに乗って到着しました。女は抵抗することなく素直にミニパトの後部座席に座りましたが、ここからがいけません。警察官が署に連行しようとミニパトの車外で無線連絡していたところ、女はするするとパトカーの車内を移動して運転席に座り発車してしまったのです。そして女は赤色灯を付けたまま国道372号線を丹波篠山市方面に約10キロも逃走しました。
    ミニパトを盗られた署員は110番する(警官も困ったときには110番するんだ)とともに、姉の運転する車に乗り大急ぎで追いかけました。かくして、赤色灯を灯した妹のミニパトカーを一姉の一般車両が追跡するという、なんとも奇妙な光景が展開されたのです。そして約12分後に渋滞に巻き込まれ停止したところでようやく捕まえましたが、パトカーを乗り逃げされたこの警察官は大目玉を食らったことでしょう。
    調べに対し女は「盗んだのではなく、借りただけ」と犯意を否認しているそうですが、なんという身勝手な言い訳でしょう。百歩譲ってブラジルではそれで済んでも日本では「貸して」に対し「いいよ」がなければ借りたことにはなりません。
     
     
    ●京都市右京区にある東映太秦映画村のお化け屋敷で、お化け役の演者をケガさせた男性が映画村の運営会社を相手取り約550万円の支払いを求めて京都地裁に提訴したというニュースがありました。???
    加害者が「金払え」と訴えるなんていったいどういうことでしょう。この49歳の男性は2011年9月(当時37歳)、社員旅行で映画村を訪れ「史上最恐」を謳うお化け屋敷に入りました。映画村のお化け屋敷は「史上最恐」というだけあってその怖さは折り紙付きです。なにしろ日頃本物そっくりに映画のセットを作っている職人が屋敷を作り、お化けもアルバイト学生ではない本物の役者が扮して脅かしにかかるのですから。
    そこにやってきたのが今回の男性です。プロのお化けの迫真の演技で恐怖におののいた男性はパニック状態になり、思わずお化けのあごを蹴ってしまいました。いきなり反撃されたお化けもさぞかし驚いたでしょうが、なにしろ相手が悪かった。なんとこの男性は空手5段の強者で、お化けは一撃で骨折などの重傷を負ってしまいました。それにしても、いくら「史上最恐」とはいえ所詮は作り物です。それに対し本気で反撃するなんて、どうやら彼は鍛錬により屈強な肉体を作ることはできても、お化けを恐れないたくましい精神を作ることはできていなかったようです。男性は、警察から事情聴取を受けましたが刑事処分はなく、男性演者に謝罪し治療費などを支払うことで一件落着しました。
    ところが大ケガをした演者側はその後の15年3月に男性相手に損害賠償請求を起こしたものですから大変です。自身が空手の達人で素人にケガをさせたことを悔いていた男性は解決金約1千万円を支払うことで16年3月に和解したそうですが、彼にしたら「なんで自分だけが1000万も払わなければならないの」と、ずっと腹の虫がおさまらなかったのでしょう。事故から12年も経っていくらかでも取り戻そうと今回提訴したようです。
    訴状で男性は「双方の安全のため客とお化け役の間に十分な距離や仕切りを確保する必要があった」「恐怖に陥った観客がどのような反応をするかは予想できず、とっさに手を出すことは十分あり得るのでお化けに注意喚起が必要だった」と運営会社の安全配慮義務を主張しています。しかし、サバンナのライオンの前には怖くて立てなくても動物園のライオンの前は平気なのと同じで、しきりは明らかに恐怖を取り除くものです。そんなものがあっては「お化け屋敷」なりません。さらに客を警戒してオドオドしているお化けなんて怖くも何ともありません。
    男性の主張は恐ければ怖いほど値打ちがあるお化け屋敷を真っ向から否定するものです。もし、男性が勝訴すれば各地のお化け屋敷にはこんな注意書きが掲げられることでしょう。『当お化け屋敷のお化けの中身は人間ですから怖がる必要はありません。けっして怖がって殴らないでください』と。こんな「史上最低」のお化け屋敷にはだれも行きません。
     
     
    ●1945年8月6日、広島に投下された原子爆弾は一瞬で多くの人々の命を奪いましたが、悲劇はそれだけでは終わりませんでした。九死に一生を得たと思った人もその後、長きにわたって原爆症に悩まされることとなったのです。国は被爆者援護法に基づき、原爆が投下された際に爆心地にいたり、後になって爆心地に入り放射線を直接浴びた人に対し、がん検診などの健康診断を無料で実施するほか各種手当の交付などの援護をしています。その人数は戦後77年を経た今もまだ11万人以上を数えるなど、いかに原爆の威力が大きく恐ろしいものだったのかがわかります。
    そんな中、被爆者の子供、いわゆる広島原爆2世の28人が「被爆2世が親の遺伝的影響を受けることは否定できない」のに被爆2世を被爆者と区別して援護対象としていないのは、平等権を保障する憲法14条に違反するとし、国に原告1人あたり10万円の支払いを求めて起こした裁判に対し、広島地裁が国の賠償責任を認めず原告側の請求を棄却したというニュースがありました。
    放射線被曝が悪性腫瘍(がん)や白血病の発病に大きく関与することは知られています。被爆2世の中には、その病気により親(被爆者)を見送った人も多いことでしょう。そんな2世が「親の血を引いている自分もいつか発症するのでは」と不安になる気持ちはわかります。彼らにしてみれば身体の中に時限爆弾を抱えているのと同じでしょう。しかし、今回の判決は国側の「親の被爆による次世代への遺伝性影響は確認されていない」を支持しました。では、2世の中にがんや白血病になった人はいないのでしょうか。もちろんそんなことはなく単に「影響は確認されていない」すなわち「因果関係が明確でない」と言っているだけです。それで死ぬまで不安が続く被爆2世が、長崎投下分を含めてまだ全国に20万から30万人もいるのですから改めて原爆がいかに非道な兵器だったのかがわかります。
    「因果関係が明確でない」・・・全国で超過死亡数が大幅に増加している最近よく聞く言葉です。専門家の中にもその原因がコロナワクチンにあると指摘する声がありますが、国は頑として「因果関係が明確でない」と突っぱねます。しかし、ワクチン接種後、突然亡くなったり原因不明の不調に悩まされる人がいるのは事実です。さらに厄介なのはそれがいつまで続くのかわからないことです。アメリカに落とされた原爆で被爆2世を強いられた人と、自ら進んで接種して異変に見舞われた人とを同列にはできませんが、彼らもまた不安を抱えて生きていかなければなりません。数年後、あるいは数十年後原爆同様に「国が保障しろ」との訴訟が各地で起こらないか心配です。もっともそれでもそれは「因果関係が明確でない」で片付けられるのでしょうが。いまはこの心配が杞憂に終わることを願うばかりです。

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  • 2023年2月12日号:ニュースに一言

    2023-02-12 08:36  
    102pt
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    ●救急車の窓ガラスをたたくなどして救急搬送を妨害した48歳の会社役員の男が公務執行妨害の疑いで逮捕されたというニュースがありました。
    この男が息子と自宅付近でキャッチボールをしていたところに、急病の男児の搬送要請を受けた救急車がやってきました。そしていざ病院に向けて出発しようと隊員が男の息子に救急車から離れるように言うと、男は激昂して救急車に近寄り「うちの息子に何言ったんや」「いつまで止めてるんや。赤いライト付けたままやったら近所迷惑になるやろ」などと怒鳴り散らすのですから、わけがわかりません。
    まともな大人ならパトライトを点けた緊急車両を見た場合、その作業を邪魔しないよう子供を促し、そっとその場から離れるものです。それを大人がすすんで邪魔しにかかるなんて頭がおかしいとしか思えません。そもそも赤いライトは緊急事態を周囲に知らせるためのもので、それなくしての作業の方がよほど迷惑です。男はさらに助手席側の窓から手を差し入れるなどして出発を妨害したといいますからとんでもない男です。
    彼がひとりで騒いでいる間、一刻も早く病院で治療を受けたいのにいつまでも出発できない救急車の中で男児とその家族はさぞかし不安だったことでしょう。結局、救急隊員が本部に応援要請をかけ、到着した別の救急車に男児を乗せ換えて出発するまで約20分も余計な時間がかかってしまいました。
    男は調べに対し「故意に救急搬送を遅らせるためにしたわけじゃない」「病人が乗っていることは後から知った」などと話しているそうですが、これほど愚かな言い訳があるでしょうか。赤色灯を灯している救急車が緊急搬送中なことは子供でも分かります。たとえその車内を覗かなくても、ほんの少しの想像力で「早く病院に」と祈る姿を思い浮かべることができます。同様に街中で後ろから近づく救急車に道を譲らず、ちんたら走る車を見ると「お前らには想像力がないのか」と腹立たしさを覚えます。
    幸いにも今回搬送された男児は命に別条なかったそうですが、もしものことがあったらと考えると男の罪は重大です。もっとも男にはそれを想像する力もないのでしょうが。
     
     
    ●法制審議会の戸籍法部会が、いままで戸籍に記載されていなかった氏名の「読み仮名」を必須とすると共に、読み方の基準を定める戸籍法改正の要綱案をまとめたというニュースがありました。
    現状では名前の読み方に決まりはなく「尚樹」も(なおき)(しょうき)(しょうじゅ)いずれもOKです。さらにこれは(たろう)だ、と言い張ればそれも認められるのです。しかし、昨今「どう読んだらいいの」という、いわゆる「キラキラネーム」が増えてきて、このままでは収拾がつかなくなると考え今回の改正が行われるようです。
    実在する「キラキラネーム」では、美気意(みっきー)や美似意(みにー)はまだなんとか読めますし、核(あとむ)や海(まりん)も頑張ればたどり着けるかもしれません。しかし、光宙(ぴかちゅう)泡姫(ありえる)今鹿(なうしか)となるともうお手上げです。
    今回の改正案では「氏名に用いる文字の読み方として一般に認められているもの」と読み方を認める範囲に一定のルールを設けることにしており、具体的には「高(ヒクシ)」など本来の意味にそぐわない、「太郎(ジロウ、サブロウ)」など一般慣習とかけ離れている、「太郎(ジョージ、マイケル)」など意味不明のものは許容されない見込みです。
    「キラキラネーム」が“音”を重視しているのに対し、かつての名前は“意味”重視でした。子だくさんでもうこれ以上はいらないとしての「トメ」や「末吉」。そして時代が昭和になるとそれを祝し「昭夫」や「和子」。憧れの人の名前をそのまま自分の子供につけることもありました。「荒木大輔」選手が甲子園で大フィーバーを巻き起こした年に生まれた子供の多くが「大輔」と名付けられました。その中の一人が18年後、甲子園に現れた「松坂大輔」選手です。彼もまた大活躍で高校野球史に大きな足跡を残したことで、高校野球ファンの親の多くは我が子の名を「大輔」としました。その結果、18年周期で甲子園に「大輔」が帰ってくるのは愉快なことです。
    子供の健やかな成長と明るい未来を願わない親はいないでしょう。どんな名前でも大きな愛情が詰まっていますが、出来ることなら平凡でも親しみがもて、かつ周囲が覚えやすいものがいいのでは。なぜなら名前は一生ものですから。
     
     
    ●大東亜戦争末期、日本各地を空襲が見舞うようになると動物園の猛獣が逃げ出し市民を襲うことを防ぐため、軍部から動物たちを処分する命が下されました。殺す方法は主に毒殺でした。日頃世話をしている飼育員は全員が「どうか食べないでくれ」と祈るような気持ちでエサに毒薬を忍ばせ与えるのですが、腹を減らしたライオンや虎は一口で飲み込み絶命しました。
    そのなかでゾウのトンキーは毒入りエサを見抜き食べません。飼育員は安どするのですが命令は絶対です。「早く処分を」とせかされた動物園は毒を注射しようとしますが、ゾウの厚い皮膚がそれも阻みます。そこで仕方なく餓死を待つことになるのですが、日に日に痩せていくトンキーは片足を上げる芸をしてなんとか食べ物をもらおうとします。その姿に飼育員は涙を流し戦争を恨みました。
    1999年12月2日、愛媛県のとべ動物園で生まれたシロクマの「ピース」は母親の飼育放棄で生命の危機に陥りました。そこで動物園は人工保育を試みますが、それまで人工保育での国内生存記録は104日間でありとても長生きは望めません。しかし保育を任された飼育員はあきらめませんでした。昼間はもちろん、夜間も自宅に連れ帰り文字通り24時間体制で面倒をみたのです。子グマといっても鋭い爪と牙で部屋の畳はズタズタ、柱はボロボロになりましたが、その甲斐あってピースはすくすくと成長し、生後10か月には70キロを超えるまで大きくなりました。そして104日を遥かに超える2023年の今も動物園で元気に愛嬌を振りまいています。このように「ペット」でない動物園の展示用動物でも飼育員は深い愛情をもって世話をします。
    メキシコ南部ゲレロ州の動物園で、飼育している動物の一部を食肉目的で殺したとして動物園の元責任者が告発されたというニュースがありました。州の環境省にいる野生動物の担当者が、チルパンシンゴにある動物園のピグミーゴート(小型のヤギ)の飼育頭数が正確でないことに気付きました。不審に思い調べてみると、なんと雌と雄が5頭ずついたピグミーゴートのうち雄4頭が大晦日の夕食に職員たちに食べられていたといいますから驚きです。
    ピグミーゴートは園内で殺され調理されたそうで、この施設は動物園というより「ジビエ料理屋」と言ったほうがいいようです。かつては日本でも家で飼っているブタやニワトリを晴れの日につぶして食べることはありましたが、それはあくまで食用として育てているもので、ペットやましてや動物園の展示用動物をたべるなんてあり得ません。自然界では肉食獣に、そして動物園では人間に食べられるピグミーゴートのなんと哀れなことか。動物園は動物にとって自由を奪われる代わり食べ物の心配のない安住の地のはずでしたが、こんなことがあるのではうかうか昼寝もしていられません。
     
     
    ●岡山県浅口市の寺院「円珠院」に保存されている「人魚のミイラ」が本物ではない「作り物」だったことを倉敷芸術科学大学の研究チームが解明したというニュースがありました。
    このミイラは体長約30センチで、5本指の両手が顔を覆っているように見える霊長類のような上半身と、魚類のような下半身からなっており木箱に入れて保存されていました。ご丁寧に一緒に残された書き付けには「元文年間に高知沖で漁網に掛かった」と、さも「天然もの」のように記されていましたから、多くの人が“本物”だと信じていたのです。それを今回、研究チームがエックス線などを用いて科学的に分析した結果、頭には哺乳類の体毛を、口は魚の上下のあごを使い、上半身の内部には綿や布を入れて厚みをもたした上で表面にフグの皮や和紙と石膏を混ぜたとみられる紙を重ねて貼っていることがわかりました。そして人魚たる所以の下半身は、中身をくりぬいたニベ科の魚で全体が砂や墨で黒く塗られていたと結論付けたのです。
    作られた時期は1800年代後半とみられ、書き付けににあった元文年間との記述はどうやら「100年ほど前に見つかった体」にしたかったようです。今回の発表でいままで「人魚伝説」で参拝客を集めていた寺は痛手でしょうが、1800年代に作られた200年もバレないほど精巧な「作り物」を見に行くのも一興かもしれません。
    日本全国に「河童のミイラ」「つちのこのミイラ」がありますが、そのうち本物はいかほどか。近代技術を駆使すればそれらの真偽を確かめることは可能でしょうが、果たしてそれをするのが正解かどうかは意見のわかれるところでしょう。
     
     
    ●これほどまでにおぞましい事件があったでしょうか。勤務する葬儀社の安置所で女性の遺体を触っていた元職員に対し、東京地裁が懲役2年6か月執行猶予4年の有罪判決を言い渡したというニュースがありました。
    この42歳の元職員は、2021年から2022年にかけ勤務していた都内の葬儀場で、18歳の女子高生を含む3人の女性遺体の胸を揉んだり陰部に指を入れたりする目的で遺体安置室や冷蔵室に侵入したり、葬儀場の女子トイレに携帯電話を置き女性25人を撮影したりしていたのです。この男は遺体にわいせつな行為をする様子を自身の携帯電話で撮影し、保存していたことからもそれが男の性癖に由来するものであったことは明らかです。
    『屍姦』とは死体を姦する(性的に犯す)。あるいは死体に欲情する性的嗜好のことで、まさにこの男そのものです。抵抗されることがないのはもちろん、「死人に口なし」何をしようと絶対に訴えられることのない相手を狙う卑怯極まりないこの犯罪は絶対に許せません。なによりこの世に未練を残しながら若くして黄泉の国へと旅立った女性たちは、死してなお凌辱を受けるなんて微塵も思っていなかったはずです。こんなことをされたのでは、あまりに悔しく残念でそれこそ「死んでも死にきれない」ことでしょう。
    さらに大切な人を亡くし、悲しみに暮れていた遺族がこの事件を知ったときの心境を想うと言葉がありません。安置室から棺に納められ、告別式のあと霊柩車で出発するまでの一連の儀式を好色な目で見届けていたであろう男の目には虫唾が走ります。鬼畜にも劣るこれだけの行為をしておきながら、男の罪名は「建造物侵入罪」です。なぜなら現行の法律において遺体は“ヒト”ではなく“モノ” として扱われるため、それへのわいせつ行為は罪にならないからです。
    ご遺体という最も神聖なものを身勝手な薄汚れた欲望で汚した男の罪が「建造物侵入」なんていう軽いものでしかないのはどう考えても納得できません。

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  • 2023年2月4日号:ニュースに一言

    2023-02-04 07:00  
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    ●国土交通省が高速道路無償化の期限を現在の2065年から50年延長し、2115年にするための法改正案を国会に提出するというニュースがありました。本来“道”は誰のものでもなくアメリカのハイウェイのようにすべての人がタダで自由に往来できるもののはずですが、日本では高速道路など多額の建設費用がかかる道を作る場合、それを利用することによって得(目的地に早く到着するなど)をする人に『受益者負担』として、その費用が償却されるまでという条件付きで通行料金を負担してもらうことになっています。
    しかし、1962年12月の首都高速、翌63年7月の名神高速道路開通から半世紀以上が経過しましたが、無償化された道路はほとんどありません。それどころか値上げを繰り返し、首都高は当初の50円から現在は最高で1950円となんと39倍にもなっています。もちろん当時より道そのものが延伸していますので一概に比べることはできませんが、それでも「早くタダにならないかな」と待っている人たちの期待を裏切り続けていることは間違いありません。
    無償化しない理由を「道路を維持するのに金がかかる」「新しい道路を作る費用が必要」としていますが、それは最初からわかっていたことです。それでいて「建設費用が償却できたらタダにする」としたのですから、吐いた言葉の責任をいったいどう考えているのでしょう。数少ないタダになった道路に、大阪と奈良の境にある生駒山を通る「阪奈道路」があります。この道はそれまで片道100円だか150円だかを徴収していましたが1981年に無償化されました。そのときわたしは「本当にタダになるんだ」と驚いたことを覚えています。
    でも、驚きはそれっきりでその後は皆無です。いまや誰も高速道路が無償になるなんて思っていないでしょう。2065年だとしてもわたしを含め今生きている人の多くはいないだろうし、さらに2115年ならこれから生まれる人も大部分が死んでいます。それでもなお「延期」でお茶を濁す神経には呆れます。どうせできないのだから、いつまでも期待させるようなことを言わずにさっさと白旗を上げるべきでは。それは非常に残念で、そして情けないことですが。
     
     
    ●相も変わらず「本日の感染者は○○人」と大々的に伝えられる新型コロナの2類相当から5類への移行がゴールデンウィーク明けの5月8日になるという報道がありました。2類相当にとどまる事で様々な得をしてきた人たちにとっては、せっかくの儲け口がなくなりさぞかし残念なことでしょうが、意味のない規制で数々の制限を強いられていた身としては喜ばしい限りです。ようやく一歩前進することになりましたが、それでもまだ3ヶ月もかかるのが辛いところです。
    2月に入り寒さが厳しくなるにつれ、福岡県で小中学校の76クラスが学級閉鎖となるなど全国でインフルエンザが久しぶりに猛威を振るっています。病院によってはコロナ患者よりインフル患者が多いところもあるようで、いま注意が必要なのは明らかにコロナよりインフルです。
    インフルがこの3年間流行しなかった理由は「コロナでみんなマスクをしているから」とされていましたが、現在でも街でノーマスクの人を見ることがないことを考えるとその真偽は微妙です。
    わたしは医者ではありませんので専門的なことはわかりませんが、インフルエンザの症状は「発熱」「咳」「喉の痛み」などでほぼコロナと同じことからも、いままで「コロナ」と過剰に警戒していたものもインフルの一種でこの3年間も例年通り流行していたと考えると合点がいきます。「コロナなんて普通の風邪と変わらない」はあながち間違っていなかったのかも。そしてそのインフルエンザは5月まで待つこともなく今も昔も5類なのです。
     
     
    ●なんでもかんでもすぐに訴訟になるアメリカですが、中には「なんだそれは」という判決も少なくありません。2017年4月にマサチューセッツ州キングストンのゴルフ場に隣接する家を75万ドルで購入した夫婦は住み始めてすぐに後悔したそうです。なぜなら、この家は15番ホールのドッグレッグのちょうど曲がり角にあり、ゴルファーの打球が絶え間なく自宅の壁を直撃したからです。その数、4年間で660回以上といいますから驚きです。
    ゴルフボールといえば当たり所が悪ければ死亡事故にもなりかねない硬さですから、夫婦は毎日気が気ではなかったでしょう。苦情を受けたゴルフ場は家の近くに植栽し、カップの位置を変更するなど直撃事故を防ごうとしましたが、夫妻が望んでいた保護ネットの設置には応じませんでした。そこで業を煮やした夫婦は訴えを起こしたところ、陪審員はゴルフ場の過失を認め2021年12月に493万ドル(約6億5000万円)の賠償金の支払いを命じる評決を勝ち取りました。75万ドルの家が493万ドルに化けたのですから万々歳でしょう。
    ところが、2022年の12月末になりマサチューセッツ州最高司法裁判所が「前の判事の明らかな間違いがあったため、評決を取り消すものとする」としたのですから大変です。評決を覆した裁判官は「ゴルフにおける誤打球は野球のフォアボールやエラーのようなもの。最高レベルの選手でさえゴルフというスポーツの難しさに挑戦している。練習し技術の改善を繰り返しても当然のことながらゴルフショットはうまくいかない」、すなわちゴルファーがボールを誤って意図しない場所に打ち込むことは仕方がなく責められるものではないと言うのですからわけがわかりません。
    夫婦は故意か過失かは関係なく、ボールが飛んでくることがかなわんと言っているのに呆れた論点ずらしです。こんな裁判官が上級裁判所にいたのではマサチューセッツ州の裁判は差し戻しだらけになってしまいます。493万ドルは確かに高額過ぎるとは思いますが、ゴルフ場と夫婦ではどうみても夫婦側の言い分に分があります。納得できない夫婦の弁護士は新たな訴訟を提起するそうですが当然でしょう。
     
     
    ●合理的根拠が無いのに「飲むと胸が大きくなる」とインタグラムに投稿しサプリメントを売ったのは景品表示法に違反するとして、消費者庁が販売元の会社に1億1716万円の課徴金納付を命じたというニュースがありました。この会社はカプセルタイプと粉末タイプの2種類の豊胸サプリを販売するにあたって、少なくとも15人のインスタグラマーにサンプルを無償提供する代わりに、商品写真とともに「#バストアップ」や「#胸大きく」などをインスタグラムに表示するよう指示していたのです。
    「あの店のラーメンは旨い」「あそこの八百屋の野菜は新鮮だ」「あの先生はヤブ医者だ」良いことも悪いこともかつては人から人への“クチコミ”で広がっていたものが、現代ではインターネットがそれに取って代わりました。レストランを予約するときにグルメサイトの点数を、買い物するときに通販サイトの購入者レビューを見て決める人も多いでしょう。それだけに売る方はそこに良い“クチコミ”が集まることを期待します。
    今回の会社も自社の商品をネット上で多くの人の目に付くようにし、効果抜群と思わせることで購入させようとしていました。そしてその結果の販売量は課徴金が1億超ということからも十分なものだったことがわかります。会社は商品が売れたことで「しめしめ、うまくいったわい」とご満悦でしょうが、大きなバストを夢見た購入者は堪ったものではありません。消費者庁が「そのサプリは効果がない」と決めつけた今回のニュースを知った、インスタグラムを見て同社の商品を購入した女性たちはさぞかし落胆、そして憤慨していることでしょう。なぜなら彼女たちが胸が大きくなったと信じたインスタの書き手はグラマーはグラマーでもただのインスタ“グラマー”だったのですから。
     
     
    ●イランで21歳の男性とその婚約者の22歳の女性が街中でダンスしている動画をソーシャルメディアにあげたことで禁錮10年半の有罪判決を受けたというニュースがありました。
    この2人は首都テヘランのアザディタワーの前で踊っている映像をインスタグラムに投稿していました。TikTokやInstagramなどSNS上は老若男女のダンス映像であふれています。プロ並みのキレキレダンスもあれば、踊っているのかもがいているのかわからないものまでいろいろですが、共通しているのは誰もがみんな楽し気で、見ているこちらも愉快になります。
    今回のカップルもきっと楽しく踊ったのでしょうが、その結果が禁錮10年半とは。2人の罪状は「腐敗と売春の促進、国家の安全に反する共謀、反体制的プロパガンダ」ということですが、街中で踊ることのどこが「腐敗」「反体制的」なのでしょう。厳しい戒律で知られるイスラム教徒の国だとしても、われわれ日本人には到底理解できない決まりです。
    まだ言葉を話せない幼児でも楽しい音楽が流れてくると自然と身体が動くようにダンスは人間の本能といってもいいでしょう。それを否定されたカップルが不憫でなりません。このような厳しい国に比べて日本のなんと自由なことか。
    しかし自由だからといってなんでも許されるわけではありません。回転すし店の業務を妨害する映像をSNSに投稿する若者が相次いでいます。彼らはレーン上を流れる寿司に「わさびを乗せる」「指でツバをつける」、さらには醤油ボトルや湯呑みを舌でなめ回すなどのとんでもない行為をしていました。動画がアップされるとすぐに批判の声が上がりましたが当然です。回転すしは子供の好きな外食レストランで常に上位です。家族そろって出掛けるその場所の「安全・安心」を崩壊させた罪は軽いものではありません。店舗側は警察に被害届を提出し刑事と民事の両方で犯人を追及していくようですが、大いにやってもらいたいものです。
    刑事では警察が犯人を捕まえ未成年であってもきっちり罪を償わせる。民事ではしっかり損害賠償を請求することが同様の事件の抑止力になります。決して謝ったからといって許すことのないように。どれだけ厳しくやったとことでやり過ぎにはなりません。なぜなら、こんな「腐敗」した「反社会的」な行為はイランなら間違いなく『死刑』でしょうから。

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  • 2023年1月27日号:ニュースに一言

    2023-01-27 22:06  
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    ●岸田総理が今春をめどに新型コロナウイルスの感染症法上の分類を第2類から5類に引き下げる方針を固めたというニュースがありました。
    国は、ひとたび罹れば命に危険を及ぼすペストなどの「1類」から、感染しても死に直結しないインフルエンザや梅毒などの「5類」まで感染症を5つに分類しています。2020年1月、中国武漢で発生した新型肺炎感染者が日本で初めて確認されたとき、コロナはその特性がわからなかったためひとまず「2類相当」とされました。しかし、すぐにこの病気が極めて危険だと判断した政府は感染者を完全に隔離することはもちろん、その接触者も徹底的に調べ上げ「絶対に感染を拡大させない」方針を打ち出し、外出自粛要請など「2類」よりも厳しい措置がとれるほか、緊急事態宣言のような強い行動制限もできるよう5つの類型に入らない「新型インフルエンザ等感染症」にコロナを位置付けたのです。
    それから3年が経過し、コロナはさほど恐ろしい病気ではないことがわかりました。アメリカやヨーロッパではすでにコロナは過去のものとなりすっかり日常を取り戻している中、日本は相も変わらず「2類相当」の病気として扱っていましたが、ようやくそれを変えようというのです。
    そもそも現在では「発熱、咳、のどの痛み」などコロナが疑われる症状があっても「市販の検査キットを使って自分で判断してください」なのですから2類もなにもあったものではありません。とっとと普通の病気あつかいにするべきなのですから今回の表明には大賛成ですが、その中身は疑問だらけです。「2類」では患者は一定の自由を奪われる代わり医療費は全額公費負担となります。それに対し5類は国家的公権による制限は受けませんが、治療に関する公費負担などの恩恵もありません。しかし、今回は5類に引き下げても入院や検査費用の公費費負担は継続の方針といいますから呆れます。
    病気になったら治療費が必要なのは当たり前でしょう。「お金がなくて治療が受けられない人がいたら大変だから」がその理由のようですが、それなら胃潰瘍を治療しても、結膜炎を治療しても、捻挫を治療してもすべてタダでないと辻褄が合いません。なぜ“コロナ”だけが特別なのでしょう。5類にするということとは“普通の病気”だと認めることなのに。さらにワクチンまで無料継続とは。もっともこちらは有料にして在庫がはけなくなるのが困るからなのでしょうが。
    さらにおかしいのは5類にするとともに「マスクをしないでもいいよ」と言うつもりだとしているところです。国が2類から5類にしたら、それに合わせてウイルス感染力が弱くなるのでしょうか。もう、やっていること、言っていることが支離滅裂です。何かと言えば「検討、検討」で一向に「決断」せず、少しも事態を進展させない岸田内閣。百歩譲って分類変更には手続き上の問題があり春までかかるとしても、今すぐにでも言える「マスクなんていらない」すら「検討」するなんて・・・。ああ情けない。
     
     
    ●北海道で75歳の看護師の女が逮捕されたというニュースがありました。まず驚いたのは、いくら高齢化社会とはいえ75歳で現役看護師とはどれだけ元気なのでしょう。そして彼女の逮捕理由もまた「元気やなー」というものでした。
    この女は法定速度60キロの国道を34キロオーバーする94キロでぶっ飛ばしていたところを速度違反自動取り締まり装置により写真を撮られていたのです。自動取り締まり装置とはスピード違反をしているクルマを撮影し後日出頭を促すものですが、この女は警察からの通知書や電話、さらには自宅訪問まで合計24回の接触をすべて無視し続けたといいますからとんでもない女です。
    調べに対し女は写真に写る女性を「私ではない」と容疑を否認しているそうです。わたしも恥ずかしながらスピード違反で写真を撮られたことがありますが、警察に出向いて驚くのはその写真の鮮明さです。スピード違反になるくらいですから猛スピードで走っているにもかかわらず、まったくぶれなくクルマのナンバーと運転しているわたしの顔がバッチリ写っているのです。出頭前に「少しでも不明瞭な部分があれば否認してやろう」と考えていても、瞬時にあきらめ「わたしです」と認めざるを得ません。それなのに頑として認めないとはどういうことでしょう。
    世界中にはそっくりな人が7人いるといわれます。本当に写真に写っている女性は逮捕された老看護士なのでしょうか。たとえば彼女に双子の姉妹がいたとしたら・・・。もっとも本当に無実なら逃げも隠れもせず、すぐに出頭して説明したでしょうが。今後警察がどのようにして女を追い詰めていくのか、すぐに降参して「わたしです」と認めた身としては興味津々のニュースでした。
     
     
    ●愛知県警守山署が名古屋市北区に住む37歳の無職の男と、63歳のその母親を県迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕したというニュースがありました。ニュースになる迷惑行為防止条例違反といえば、そのほとんどは痴漢やつきまとい、ピンクビラ配布や盗撮などいずれも他人に言えないハレンチなものばかりです。今回の親子がいったい何をしたのかと思ったら、御多分に洩れず「盗撮」。それも女湯ねらいというのです。
    女湯を盗撮する場合、その実行役(撮影者)はほとんどが女性です。言うまでもなく、女湯に男が侵入したらそれだけで大事件ですが、女性なら怪しまれることなく撮影できるからです。今回の実行役ももちろん母親で、昨年8月頃から約20回にわたって入浴施設に侵入し脱衣場と浴場で裸の女性を小型カメラを使って盗撮していました。女性が見ても面白くない女湯盗撮を女性が引き受ける理由は「金で雇われて」のほか「好きな彼氏に頼まれて断れず」がほとんどですが、今回の場合はそのどちらでもなく「約20年前から引きこもりがちだった息子が少しでも落ち着くならと思って要求に応じた」というのですから呆れます。
    親は子供がいくつになっても惜しみない愛情を注ぐものですが、これほどまでに間違った愛情表現がほかにあるでしょうか。「おかーちゃん、ぼく女の子の裸が見たくてたまらないの」なんて息子が言ったら、普通の親なら横っ面をひっぱたいて「なにアホなこと言ってるんや」とたしなめるものなのに「そうかい、そうかい。おか―ちゃんが何とかしたるから待っとき」とカメラを持ち出すのですから困ったものです。この親にしてこの子あり。親子そろってしばらくは刑務所に引きこもっていてもらいましょう。
     
     
    ●現在、原付バイクと同じあつかいで運転免許を持っている者がヘルメットをかぶって乗っている「電動キックボード」が、道路交通法の改正により今年7月から免許不要、ノーヘルでも罰則なしになるというニュースがありました。
    今では当たり前になった自動車のシートベルトもバイクのヘルメットもわたしが子供のころは必須ではありませんでした。それが交通量の増加により事故が増えたことで「国民の安全のため」にルール作りが進んだのです。それ以降、交通ルールに関して規制が厳しくなることはあっても緩められることはほとんどありませんでした。それが今回、大幅に緩和されるというのです。
    今回の改正でキックボードの最高速度は免許が要らなくなった代わりに現在の30キロから20キロに下げられることになりました。一見これは安全に寄与するように思えますが、はたして本当にそうでしょうか。サーキットを300キロを超えるレーシングカーが事故もなく走るのは、同じ力量のドライバーが同じ速度で同じ方向に向かって走るからです。また高速道路で事故なく走れるのも全車が一定のスピードをキープしているからです。事故を防ぐうえで一番大切なことはその流れに乗ることです。自動車やバイクが行き交う中に、ノロノロのキックボードなんて事故誘発以外のなにものでもありません。さらに今後は車道だけでなく歩道も走れるようになるなんて意味が分かりません。
    車道とは逆に子供や高齢者などスピードの遅い人のいる歩道をキックボードが疾走すれば事故の起きないほうが不思議です。現在、車道や歩道で自転車がらみの事故が多発しているのも同じ理由です。こんなどこから見ても改悪としかいえない法案がよく通ったものです。
    「電動キックボード」推進派から利権がらみの強い要請があったであろうことは想像に難くありません。「国民の安全のため」より「自己の利益のため」を優先する国会議員。そして犠牲になるのがいつも国民だと思うと怒りしかありません。自動車を運転する身としては、今回の改正(改悪)でより一層緊張を強いられることになる7月以降のドライブが憂鬱で仕方がありません。なぜなら、わたしは被害者はもちろん加害者にもなりたくないからです。
     
     
    ●国内で承認されていない成分を含むゼリーを販売したとして、医薬品医療機器法違反容疑で東京都荒川区に住むベトナム人夫婦が逮捕されたというニュースがありました。令和の世でもスリムな体型は女性のあこがれのようで、特に若い女性は痩せることにご執心です。最近では最も健康的である「適正体重」のほかに、最もきれいに見える「シンデレラ体重」なんてものもあるようで、どうやら彼女たちのゴールはそちらのようです。
    ちなみに160センチの女性の「適正体重」が56キロなのに対し、「シンデレラ体重」は46キロとなんと10キロも差があります。そんな乙女心につけ込んだのが今回の容疑者夫婦です。この2人は「食べたら痩せる」と謳うゼリーをSNSを使って販売していたのです。
    このゼリーには未承認の医薬品成分「シブトラミン」などが含まれており、購入者から各地の自治体に健康被害の相談が相次いでいました。購入者によると問題のゼリーを一口食べたところ、すさまじい苦みがいつまでも口に残りそれ以降食欲は湧かなかったそうです。さらにその後、突然激しい動悸を覚え立っていられなくもなったそうです。それでも、販売側から「1日1本。慣れるまで時間がかかる」と説明されていたこともあり、2日に1本のペースで食べ続けたといいますから「シンデレラ体重」に対するすさまじい執念です。
    その結果、この女性は12日間で体重が4・5キロ減ったそうで、確かに「食べたら痩せる」は間違っていませんでした。(食欲がなく何も食べなかったら痩せるのは当たり前ですが)しかし、当初の目的は果たしたものの、その代わりに慢性的な動悸や頭痛に悩まされることになり、何よりも大切な健康を失ったのですから哀れなものです。
    女性が「美しさ」を求めることを否定はしませんが、「健康」あっての物種です。美人薄命なんて小説の世界だけで十分です。ダイエットは女性だけのものではありません。成人病の原因の多くは肥満によるものですから男性も「適正体重」を維持したいものです。食っちゃ寝生活を続けていた友人の体重が遂に90キロを超えてしまいました。さすがにこれではいけないと考えた彼は一念発起し、朝夕1時間ずつのランニングをすることにしました。しかし10日を過ぎたころからどうも足の調子がおかしくなります。日に日にかかとの痛みが増し、とうとう歩くことさえままならなくなりました。病院での診断結果は疲労骨折でした。ここしばらく頑張って運動していたことを伝える彼に医師が放った言葉がすごかった。
    「足が体重を支えられなかったみたいやね。運動するならその前に痩せなさい」

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  • 2023年1月20日号:ニュースに一言

    2023-01-20 13:13  
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    ●日本では「今日のコロナ感染者は3週連続増加」「1日の死者が初めて500人を超えた」など相も変わらず大騒ぎしていますが、そんな極東の小さな島国を世界はどう見ているのでしょう。
    2020年初めのコロナ発生以来、芸能、スポーツの分野では出演者や選手はPCR検査で陰性が確認された者のみがその舞台に立つことを許され、また見る側も無観客あるいは人数制限が施されていましたが、1月16日に開幕した今年のテニスの四大大会、全豪オープンはそれらすべてが撤廃されまったくコロナの影響を受けていません。昨年は同大会通算で9回の優勝を誇るノバク・ジョコビッチ選手が新型コロナワクチン未接種だったため強制送還され出場できなかったことから考えると大きな方向転換です。
    出場する選手は新型コロナウイルスの検査を受ける必要がないばかりか、仮に陽性だったとしても出場できるというのです。我が国では先日の高校バレーでもチームの中のたった1人が陽性判定(その後の精密な再検査で陰性になったにもかかわらず)だっただけで、その高校は出場辞退に追い込まれたのですから、その差は歴然です。
    全豪テニスがなぜここまで規制を緩めたのか。その答えは簡単です。なぜならオーストラリアでコロナは既に“風邪”以下の扱いだからです。風邪を引いたからといって「あんたは出たらダメ」なんて誰も言わないのと同じように「コロナ陽性だから」は制限の根拠には一切ならないという判断です。昨年日本中が熱狂したサッカーワールドカップをみてもわかるとおり、世界の国々ではコロナは既に過去のものとなっています。街を往く人々のどの顔にもマスクなんて野暮なものはありません。
    ここにきて日本でも「いつまでマスクしなければならないんだ」という不満の声が出てきてますが「それはあなたが決めたらいい」のです。多くの国はマスク着用が罰則付きの義務でしたからそれを解除する必要がありましたが、日本はそうではありません。責任逃れ(誰かのせいにする)のために指示を待つのは愚かなことです。全豪オープンの主催者は「具合が悪ければ各自で隔離などの対応をしたらいい」と言っていますが当然でしょう。
    「言われるまでもなく自身で判断して行動する」それが成熟した社会の大人の対応というものです。
     
     
    ●自転車で歩行者をはねてそのまま走り去ったとして、東京都大田区に住む79歳の無職の男が重過失傷害と道路交通法違反(ひき逃げ)の疑いで逮捕されたというニュースがありました。
    この男は通院している病院に自転車で向かう途中、前方を歩いていた70代男性に後ろからぶつかって転倒させ、左太ももの骨が折れる重傷を負わせておきながら救護せずそのまま逃走していたのです。男は調べに対し「病院に行く時間が迫っていた」と説明しているそうですが、そんなものが理由にならないのはいうまでもありません。そもそも自転車をかっ飛ばして通行人にけがをさせ、そのまま一目散に逃げるほど元気がありながら「病院に・・・」もなにもないでしょう。
    可哀そうにそのまま放置された被害者は約1時間後に、道にうずくまっているところを通行人に発見され病院に搬送されましたが、驚くことに被害男性も加害者と同じ病院に行く途中だったことがわかりました。そのうえ救急搬送された先も当初向かっていた病院だったといいますから、すこぶる狭い範囲で完結した事件です。
    もちろん無事にというわけではありませんでしたが、紆余曲折の末、最終的に全員が目的地に辿り着いたのです。超高齢化社会の現代で、何もなければ同じ空間にいたとはいえ挨拶さえ交わすこともなかった2人の同じ病院に通う高齢者が、1つの事故で加害者と被害者というまったく逆の立場となった、なんとも考えさせられる事件でした。
     
     
    ●インド・ベンガルールの空港で、搭乗するはずだった乗客の一部を滑走路上に停めたシャトルバス内に取り残したまま旅客機が出発してしまったというニュースがありました。
    現在、世界中の空港で搭乗客は待合室から飛行機まで蛇腹状に伸びる「ボーディング・ブリッジ」と呼ばれる設備を通って移動します。これにより雨が降っていても濡れることなく搭乗できるのですが、すべての旅客が対象になるわけではありません。「ボーディング・ブリッジ」に対応できない小型機の場合は、滑走路の端に止めた飛行機までバスで移動しタラップを昇らなければなりません。また、対応可の大型機だったとしてもその航空会社が空港使用料を値切るなどした場合「それなら、近くに停めることはまかりならん。空港の端の方を使っとけ」とブリッジを使えない場所に飛行機を停めることになります。
    今回のニュースの飛行機もあらゆる経費を削減し、低価格で運航する格安航空会社「ゴーファースト」社のものでした。ニューデリー行きの便に乗る予定の乗客55人は手荷物を預け出発ゲートから飛行機に向かうバスに乗り込みました。ところがバスがタラップの傍らに到着する前に、だれも「ゴーファースト」なんて言っていないのに飛行機が滑走路を走り出し飛んで行ってしまったのですからわけがわかりません。
    日本では、機内で出発時間を過ぎても動かないことを不審に思っていると「あと1人のお客様を待ってます」とアナウンスが流れることがあります。日本の航空会社は全ての乗客の人数、座先を事前に把握しており、その席に全員が座っていなければ出発準備完了となりませんので、待合室に残っていないか機内のCAと地上係員が連絡を取り合い捜すことになります。それなのに55人も足らずによく「出発準備完了」となったものです。
    CAがガラガラの機内を見てなんとも思わなかったのが不思議です。ほとんどの交通機関が定刻通りに運行されないと揶揄されるインドだけに、汚名返上とばかりに「定時出発」にこだわったのでしょうか。そうだとしても客を乗せていないのでは“旅客機”ではありません。航空会社はよく利用してくれる、いわゆる「お得意さん」に対し空港ラウンジを開放する、キャンセル待ちの順番を先にする等の優遇を用意しています。その中のひとつに「優先搭乗」があります。これは機内の準備が整うまで待機する待合室から、一般客に先駆けて機内に案内されるものです。飛行機は予め座席が決まっていますので、先に乗った人が“いい席”をとることもなく、ましてや早く乗ったからといって目的地に早く着くわけでもないのですから、「優先搭乗」にどれほどの意味があるのかわかりませんが、それでも「優先」という言葉がうれしいのか、案内アナウンスが流れるとすぐに多くの人が立ち上がり搭乗ゲートに向かいます。
    この「優先搭乗」はバスを使う場合にもありますが、これがなんとも滑稽です。出発ゲートを出たところにあるのはバスです。たしかにバスには“先”に乗れますが、肝心の飛行機には最後にバスに乗り込んだ一般客から乗り込むのですからとんだ「優先搭乗」です。どうみても「優先乗車」でしかありません。
     
     
    ●1月18日、東京都営地下鉄大江戸線で「女性専用車」の運用が始まりました。都営地下鉄では2005年の新宿線に続く2路線目だそうです。首都圏や近畿圏など人口過密地域の列車には、当たり前のように「女性専用車」が設けられています。この車両はラッシュ時における満員電車内での痴漢行為を防ごうと始まったもので、その起源は1912年(明治45年)1月31日に当時の東京府の中央線で朝夕の通勤・通学ラッシュ時間帯に登場した「婦人専用電車」だとされています。
    卑劣な痴漢からか弱い女性を守る「女性専用車」の存在に異論はありませんが、初登場してから110年で社会状況は大きく変化しました。なによりも女性の社会的地位が向上し、あらゆる場面で男性と差をつけることが禁じられています。時代が変わろうと男は男、女は女と考えるわたしは「生物学的に体力で劣る女性は男性に守られて然るべきだ」と思うのですが、そんなこと言おうものなら「女性蔑視だ」と叱られかねません。「劣る」「弱い」「低い」などのネガティブな言葉は、その本意がどこにあろうと「差別」に結び付けられてしまうのです。そんな“平等主義”の現代に女性限定の「女性専用車」とは。
    毎日ラッシュ時に通勤している友人は、空席の目立つ「女性専用車」を横目に、いつも満員の一般車両に立っているとこぼします。彼は「男性専用車」がないのは差別だといいますが、元が男が原因の痴漢対策だけにあまり説得力はありません。しかし、よく考えてみれば痴漢が狙うのは女性だけではなく、男性が好きな痴漢もいます。さらに“見た目”で決めつけてはいけないLBGTの人々の権利も認めなければなりません。今後「女性専用車」は“心身共に女性”“身体は女性だが心は男性の座りたい人”“体は男性だが心は女性”“男が怖いか弱い男性”で満員になるかもしれません。
    ちなみに鉄道会社の見解は自身が女性だと認識していれば「女性専用車」へ乗車できるそうです。
     
     
    ●海外旅行に必要なものといって最初に思いつくのはやはりパスポート(旅券)でしょう。これは自身がどこの国籍であるのかを示すもので、いわば国際的な身分証明書です。それ対し、ビザ(査証)は行きたい国の領事館等が発行する入国許可申請を行う際に必要な書類です。ですから渡航には出国するためのパスポートと「あなたは我が国に入国してもいいですよ」というビザが必要になるのです。
    しかし必ずしもビザが必要かというとそうでもなく、いわゆる「ビザなし渡航」出来る国もあります。イギリスのコンサルタント会社がビザなし渡航できる都市が最も多い国・地域ランキングで日本が5年連続で第1位になったと発表しました。これは国際航空運送協会(IATA)のデータをもとに、199ヵ国・地域のパスポートを比較・集計したもので、1位の日本は世界227都市のうち193都市にビザなしで渡航することができます。以下、2位は韓国とシンガポールの192都市、3位はドイツとスペインの190都市と続き、アメリカは186都市で7位となっています。
    一方、いまやGDPが世界第2位で有数の経済大国となった中国は我が国の半分にも満たない80都市の66位です。ビザとは簡単にいえば、その国・地域に入国しようとする人を事前に判断する「身元調査」のようなものであり、その人が入国しても問題ないという証拠です。それを必要としない「ビザなし渡航」ができるパスポートとは「その国の国民すべてを信用しています」の証明にほかなりません。ですから日本人は世界で最も『信用できる国民』というお墨付きをもらっているのです。これはひとえに戦後一致団結して底辺まで落ち込んだ経済を復興させ、また世界各国と誠意をもって接し信頼関係を築いてきた日本人がいたからにほかなりません。今わたしたちが自由に世界中を旅できるのも、すべてはそんな先人たちのおかげだと考えると感謝しかありません。
    それに比べて中国人の可哀そうなこと。急激な経済成長を追い風に2015年頃から世界中を旅行するようになった中国人ですが、多くの国から「あんたは信用できない」と言われ入国を拒否されているのです。いくら金持ちになったところで自由に使えなければ宝の持ち腐れです。そのため、中国人の中には自由に世界中を訪れることの出来る日本のパスポートを手に入れたいがために日本国籍を取得しようとする不届き者もいますが、そんな“エセ日本人”に日本国のパスポートを使って日本の評判を落とされるなんて堪ったものではありません。
    今日も南の海では中国船舶が日本の領海を我が物顔で航行していますが、言うまでもなくビザは発給していません。

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