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記事 490件
  • 2024年12月16日号:ニュースに一言

    2024-12-16 14:00  
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    ●自転車と乗用車の衝突事故の修理費用を巡る控訴審で、大阪簡易裁判所が一審どおり自転車側の過失を100%とする判決を下したというニュースがありました。 

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  • 2024年12月09日号:ニュースに一言

    2024-12-09 13:30  
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    ●経済産業省が自らを女性だと主張する50代のトランスジェンダー“女性”職員に対する女性用トイレの使用制限を撤廃したというニュースがありました。この職員は幼少時から男性という自身の性別に違和感がありつつも男性として入省し、その後にホルモン投与を受けるなど性別移行を開始し2010年から“女性”として勤務していました。
    しかし、いくら本人が「わたしは女よ」と言ったところで男性時代を知っている者としては「はい、そうですか」といきなり女性扱いするわけにはいきません。庁舎内には生来の女性職員も多数います。そんな彼女たちがトイレでこの“女性”職員に出くわしたらどう思うかと考えた経産省は当該職員が使えるトイレを1箇所に制限しました。
    これに対し、トランスジェンダー職員は「毎回、勤務しているフロアから2階以上離れたトイレまで行くのはかなわん。女性の自分が庁舎内の女性トイレを自由に使えないのは差別だ」と裁判所に訴えたのですから大変です。その結果、2023年7月に最高裁が「トイレ制限は違法だ」という判決を下したのです。
    それでも経産省はその他の女性職員の権利を守るべくトランス職員のトイレ制限を1年4ヶ月にわたり続行していました。それが今回「トイレ制限は不当だ、トランスであろうとなんだろうと“女性”には女性トイレを自由に使用させるべきだ」と人事院が進言したことにより撤廃されたのです。
    そこで働くすべての職員が快適に過ごせる環境を作ることはたしかに重要です。しかし、たった一人の権利を守るために、その他の多くの人々の権利がないがしろにされて良いわけがありません。いままでは「そのトイレに行きさえしなければ元男性のトランス女性と遭遇することはない」とされていたものが、いつどこで鉢合わせするかわからなくなった生来の女性職員の権利はいったいどうするのでしょうか。
    と、言ったところで決定が覆されることはなくもうあきらめるしかありません。なぜなら社会通念や慣習、常識より個人の主張を優先し、例えば“ちんちんが付いていようが「わたしは女性よ」と宣言”すればそれを認めなければならず、認めないのは逆に差別主義者として責められることになってしまったからです。2023年6月に可決されたLGBT理解増進法はそんな恐ろしい法律なのです。
     
     
    ●大阪府教育委員会が、府立高校2校の新入生募集を2026年度入試から停止することにしたというニュースがありました。
    府立学校条例では志願者が3年連続で定員割れし、改善の見込みがない高校は再編整備の対象にすると規定していましたが、1校は21年度から4年連続、もう1校は19年度から6年連続で定員を下回っていました。大阪では去年から「2028年までに9校」をめどに統廃合の計画が進められていますが、その流れは今後ますます加速していきそうです。なぜなら今春の入試で、なんと府立高校のおよそ半数が定員割れとなってしまったからです。
    その原因は今年始まった「私立高校の授業料完全無償化」にほかなりません。大阪は元々、府立に優秀な高校が多いこともあり公立高校希望者が多い土地柄でしたが、現在では多くの私立高校が進学実績を伸ばすなど特色ある学校づくりに尽力して私立を希望する中学生も増えています。
    そうはいっても公立に比べて圧倒的に授業料が高い私立はやはり生徒集めに苦労していました。そこへきての「私立高校の授業料完全無償化」。設備面や最近の中学生が高校選びの重要ポイントとする制服の可愛さやカッコよさでアドバンテージのある私立高校に生徒が流れるのは当然です。その結果、北野高校や天王寺高校など一部の人気校を除いて軒並み定員割れしたのです。
    “無償化”といっても私立高校が「タダでいいよ」というわけもなく、大阪府が親の代わりに授業料を支払っており、その原資は言うまでもなく税金です。大阪のやっている授業料無償化は税金を使って経営努力をせずに新入生が集まらず経営の怪しくなった私学を助けているだけです。中学卒業生のほぼ100%が高校進学する現代で、大阪府、いや維新は“公教育”をいったい何と心得ているのでしょう。
    府の教育庁は府立高校の入試日程を例年の3月から2月に早めて新入生を囲い込もうとしていますが、そんなことで改善できるとはとても思えません。なにより私立も1月に入試を前倒ししたらそれで何も変わりません。そんな付け焼刃の策で振り回される15歳が不憫でなりません。
     
     
    ●ほとんどの空港の出発ロビーの前には、飛行機に乗る人が車で送ってもらったときに降りるだけの停車しか許されない場所があります。英語ではそこを「ドロップオフゾーン」と呼ぶらしいのですが、ニュージーランドのダニーデン国際空港のドロップオフゾーンで最近、ハグする2人のピクトグラムとともに「ハグは最長3分まで」「もっと親密なお別れをしたい場合は駐車場をご利用ください」と書かれた標識が登場し賛否を呼んでいるそうです。
    前述のようにドロップオフゾーンは降車後すぐにクルマを動かさなければ次から次へと訪れるクルマが停まれません。そこでこんな標識が登場したのですが、“3分間のハグ”とは我々日本人からしたらとはずいぶん長いなと感じます。それだけの時間があればハグだけで収まらず“チュー”もしたくなるし、さらにその次も・・・、おっと失礼。いずれにせよ長時間停車を諫めるのにハグを持ち出してくるとはなんとも愉快なお国柄です。
    ハグといえばわたしも10月の選挙活動中にはずいぶんたくさんの人としました。50か所以上で街頭演説をし、終了後にはほとんど握手会の時間があり「本日に限り(毎日言いましたが)希望者はハグもOK」と言えば老若男女問わず多くの人が笑顔で応じてくれたのです。その数は300名、あるいはそれ以上だったか定かではありませんが、それまでの人生の総ハグより多かったことだけは間違いありません。握手は利き手を差し出すことで「武器を持っていない」=「戦う意思がない」ことを示しますが、ハグはそれ以上の信頼関係がなければ出来ません。スタッフは保安面からあまりいい顔をしませんでしたが、きびしい選挙戦の中でおおきな活力源となりました。みなさん、本当にありがとうございました。また、機会があれば是非よろしく。
     
     
    ●今年7月、20年ぶりに紙幣が一新され1万円札の肖像が福澤諭吉から渋沢栄一に代わりました。「近代日本経済の父」とも称される埼玉県深谷市出身の渋沢栄一は、江戸時代末期に農民から武士に登用され徳川慶喜に仕えるようになります。そしてパリの万国博覧会など欧州諸国を訪問したことで日本も近代化が必要と感じ日本初の株式組織「商法会所」を設立します。その後、明治政府に招かれ大蔵省の官僚として新しい国作りに深く関与しました。そして、退官後は実業界に身を投じ、第一国立銀行、東京商法会議所、東京証券取引所などを立ち上げたほか、公共事業や教育機関、研究機関などの設立にも尽力し、関わった企業は生涯で約500、学校や公共事業は約600にも上るといわれています。
    そんな実績から1万円札の顔となったわけですが、なんと「新1万円札での結婚式のご祝儀はマナー違反じゃないか」と物議を醸しているそうなのです。その理由が彼が数々の偉業をもつ一方で愛人を妻と同居させるなど女性関係に難があり、新しい生活をスタートする若い2人にはふさわしくないからというのですから呆れます。
    渋沢栄一の生きた時代は富と名声のある男性には妾の一人や二人は当たり前でした。それを「不倫は絶対にダメ」の時代になったからといって悪者扱いするのはいかがなものでしょう。そんなことをしていたら紙幣の肖像には生身の人間は選ばれず、ドラえもんやウルトラマンなどの架空のヒーローしかなり手がいなくなります。訳知り顔の“マナー講師”の中には「結婚のご祝儀には福澤諭吉版のお札が無難です」なんて言う者まで現れていますが、それなら肖像交代の前に声をあげるべきで、発行されたあとにいくらもっともらしく語っても説得力はありません。
    そもそも今は新旧お札の過渡期ですからまだ福澤諭吉も容易に手に入りますが、あと1年、2年もしたら渋沢版しかなくなります。そのときはどうするのでしょう。まさか「結婚のご祝儀にはPayPayが無難です」なんて言うのでしょうか。結婚のご祝儀に関しては「偶数は割り切れるからNG」とも言われます。しかし、もらう方としては福澤諭吉の3万円より渋沢栄一の4万円のほうがうれしいだろうとわたしは素直に思います。
    そんな結婚ですが、現代ではなんと3組に1組の夫婦が離婚しているそうです。たくさんの人に祝福されながら嫌になったらさっさと離婚する。もちろんもらったご祝儀を返すことはありません。ご祝儀を出してばかりの身としては、そのほうがよほどマナー違反ではと思ってしまいます。
     
     
    ●10月31日、愛知県名古屋市に新たなビジネスモデルを開発するスタートアップ企業の支援や育成に取り組む日本最大級の拠点『STATION Ai』がオープンしました。この施設には見学に訪れた子供たちに将来は起業家になる夢を育んでもらおうと、愛知県にゆかりのある革新的な事業を興した創業者や経営者の業績を伝える施設「あいち創業館」がありますが、そこに展示されるメンバーを選ぶにあたってひと悶着あったというニュースです。
    「あいち創業館」では当初、54人の偉人の展示を予定していました。その内容はトヨタグループの創始者「豊田佐吉」や自動車部門に進出した「豊田喜一郎」と世界のトヨタに成長させた歴代社長、地元の名古屋鉄道や中部電力の設立者など、誰でも知っている企業の関係者が並んでいます。しかし、オープン直前になり市民から偉人の中に女性が1人もいないことに対しクレームがつき、急遽6名の女性を追加展示することにしたといいますから困ったものです。
    1986年に男女雇用機会均等法が施行され女性が男性並みに社会進出するようになってからまだ40年も経っていません。そんな状態において地域で偉大な功績を残した経済人を選ぼうとしたら男性だらけになるのは当然です。それを「男性だけなのは女性差別だ」とばかりに批判し、無理やり女性をねじ込んだのでは当初の意図と違った展示にならざるを得なくなります。
    実際、元々の偉人たちが世界の企業と比べても遜色のない会社の関係者なのに対し、追加メンバーは地元の学校設立者や地域のお菓子製造創業者、宿泊施設創業者など小粒感は否めません。わたしは決して今回追加で選出された女性たちを馬鹿にしているのではありません。彼女たちがその時代を精一杯生き、事業を成功させた功労者なのは間違いなく十分に称えられるべき人物だとは思います。しかし、最初の選考で彼女らが上がらなかったのはその偉業が、その他のそれに比べて大きくなかったからです。それを「女性だから」と下駄をはかせて追加するのは逆に失礼なことではありませんか。
    男女平等とは男と女が何もかも一緒になることではなく、色メガネなしで同じ土俵に上がり同じ物差しで評価されることです。それなのにまだ数にこだわっているなんて。こんなことでは真の男女平等はまだまだ先になりそうです。

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  • 2024年12月02日号:ニュースに一言

    2024-12-02 07:00  
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    ●ちょっと前になりますが、10月1日、東海道新幹線が開業から60周年を迎えました。1964年、戦後20年を待たずして敗戦時に最貧国の1つだった日本が、戦勝国のアメリカやイギリス、ロシアさえ成しえなかった時速200キロ以上の高速鉄道を東京―大阪間で世界に先駆けて走らせたのです。
    東海道新幹線は当時「夢の超特急」と呼ばれ、昭和の高度経済成長期を駆け抜け、平成、令和の3つの時代を走り続けて累計約70億人を運んできました。開業当時の新幹線「ひかり」はそれまで在来線特急「こだま」が6時間30分かけて走っていた東京大阪間を2時間30分も短縮する約4時間で結んだのですからまさに「夢の超特急」だったのです。ちなみに「こだま」はその運行開始前まで東京から大阪まで8時間かかっていたため出張する際には宿泊を余儀なくされていたものを、この列車を利用すれば日帰り、すなわち『行って戻ってくる』ことが可能になることから名付けられました。そして「ひかり」は「こだま」(音)より早いのは光だということで「ひかり」となったのです。
    それから60年、新幹線はさらに進化を続け、いまや東京―大阪間が2時間30分を切るところまでスピードアップされただけでなく九州や東北、北海道、北陸など全国にその路線は拡大されています。わたしは週に1回以上関西の自宅から上京する生活を10年ちかく続けていますが、もし新幹線がなければとてもかなわなかったことでしょう。
    新幹線のすごいところはスピードだけではありません。なんといってもその安全・安心性です。最大で1時間当たり17本が出発するダイヤを組みながら開業以来大きな人身事故はほとんどなく、毎日定刻通りに運行されています。それもひとえに日本人の勤勉さ、真面目さ、誠実さによるもので、技術力だけでなくその国民性も相まって生み出された賜物です。世界中が日本の高速鉄道に注目し、お手本にした昭和40、50年代は今よりずっと日本が豊かで強い時代でした。そして、それをけん引していたのは大正から昭和10年までに生まれ、戦争を経験した先輩たちです。彼らに恥じないためにも今一度、かつての豊かで強い日本を取り戻したいものです。「のぞみ」は捨てません。
     
     
    ●雑誌4冊を盗んだ疑いで52歳の無職の男が再逮捕されたというニュースがありました。窃盗(万引き)の疑いで逮捕されたこの男は、8月22日に新潟市中央区のコンビニエンスストアでギャンブル関係の雑誌4冊(販売価格合計5909円)を盗んでいたのです。そして今回が再逮捕となった理由が今年4月30日にも新潟市中央区にある別のコンビニエンスストアで同様のギャンブル関係の雑誌3冊(販売価格合計4359円)を盗んだからというのですから呆れます。
    どうやらこの男にとって雑誌は買うものではなく盗むものだったようで常習犯なのは明らかです。ギャンブル関係の雑誌といいますから、たぶん「パチンコ必勝法」や「パチスロ攻略本」の類だったのでしょう。ギャンブルは「金を持っている者」が圧倒的に有利です。極端に言えば「勝つまで賭け続ければ絶対に負けることはない」からです。それなのに雑誌を買う金もない無職の男がギャンブル必勝法など読んでどうやって勝つつもりだったのでしょうか。そもそもギャンブルは実力以外に多分に「ツキ」の要素が必要なのに、52歳にして無職の男に「ツキ」があるとは到底思えません。さらに50年間脇目も振らずに一所懸命働いた者に最後に宝くじが当たったのなら「神様の思し召し」ともいえるのでしょうが、いい年をして万引きに勤しむ輩にそれがあるとも思えません。
    金のない男にとって万引きは「捕まるか捕まらないか」という最後に残された究極の賭けだったのかもしれませんが、彼はその賭けにもやはり負けるべくして負けたのです。
     
     
    ●福岡県古賀市が、来年1月6日から市役所の窓口業務を現行の午前8時半~午後5時から、午前9時~午後4時に短縮すると発表しました。その理由を市長は「ブラック職場にしない姿勢を明確にし、就職先として選ばれる自治体になりたい」など働き方改革の一環としています。さらに、余裕のできた職員には政策立案など創造性のある仕事を振り分け市民サービスの向上を図ることで「理解をいただきたい」とも話しています。
    市民サービスの基本ともいえる窓口業務を減らさなければならないほど古賀市職員の労働環境は劣悪なのかと思いきや、約360人いる職員の平均残業時間は1か月当たり10・3時間と知り呆れてしまいました。なんと1日あたり30分ほどの残業さえ“ブラック”だなんて、民間企業の社員が聞いたら怒りで真っ赤になることでしょう。
    わたしは「公僕たる市役所職員は死ぬまで働け」なんて言うつもりは毛頭ありませんが、市役所はあくまで市民優先であって欲しいとは思っています。一般的な会社が5時までなら7時まで、せめて6時まで開庁していたら随分便利になります。それを延ばすのではなく縮めるのですから困ったものです。
    働き方改革・・・一見、耳当たりの良い言葉ですが、その実情はいろいろ問題があるようです。友人の会社でも働き方改革の一環で社内のIT関連を担う「システム課」が在宅勤務になったそうです。それまではパソコンに不具合が生じると内線電話で「直してー」で済んでいたものが、今は勤務中なのか勤務外なのかわからない担当者を見つけ出し、そこからメールで作業内容を依頼しなければならなくなり随分と手間が増えたそうです。年配の社員の中にはその手間に辟易し「もう、ええわ」と、あきらめてしまう者まで現れる始末で営業職の彼の職場では作業効率はガタ落ちだそうです。
    一方で「システム課」の方の報告は「依然と比べ作業効率もアップし、課員の評判もすこぶる良い」ですから何をかいわんやです。要は「システム課」の仕事を営業課が肩代わりしただけで、全体の作業量は一向に減っていないだけでなく場合によっては増えてしまったのです。
    古賀市ではコンビニでの証明書発行手数料を期間限定で10円に割り引くなど来庁者を減らす取り組みも進めているようですが、今回の決定で得をする人、損をする人の見極めは慎重にするべきです。友人の会社では楽になった部署の尻拭いをほかの部署がすることになりましたが、市役所の場合の尻拭いをするのはほかでもない市民なのですから。
     
     
    ●環境省と日本自然保護協会が国内各地で動植物の状況を定点観測したうえで公表した報告書によると、スズメが年3・6%のペースで減っているそうです。この減少ペースが長期間続けば環境省レッドリストの絶滅危惧種の判定基準を満たす可能性があるといいます。
    そういえば以前は最も身近な鳥だったスズメを最近ではすっかり見なくなりました。わたしが子供のころは庭先に米粒をまいておけば、すぐに近づいて来てチュンチュン賑やかだったのですが、いまや都心ではカラスは見てもスズメの姿はありません。その理由は都市部ではアスファルト舗装がほぼ100%となり、エサとなる虫がいないためと容易に想像できますが、畑や田んぼが広がる地域でも減少しているとなると一気に深刻になります。
    その理由を環境省は「地球温暖化で生存に適した気温ではなくなったことや、管理されなくなった里山が増えて生息環境が変わった」としていますが、近年の猛暑がスズメを生きながら“焼き鳥”にしていたなんて・・・。
    今の減少率が続けば20年足らずでスズメの数は半分になります。しかし、現代では商業的にスズメを捕獲する人はいませんので、まさかスズメのお宿にエアコンを付けるわけにもいかず規制のしようがありません。そもそも自然に逆らってまで人間がスズメを守るべきなのか。難しい問題です。
     
     
    ●2025年春の入社予定者の内定式が10月1日に全国各地で行われたというニュースがありました。慢性的な人手不足により学生に優位な「売り手市場」が続く中、企業は内定式を行うことで内定者同士や社員との交流を促し、学生のつなぎ留めを図っているようです。
    わたしが学生のころ(といってもわたしは1社たりとも受験していませんが)も内定日は10月か11月でしたので40年以上経ってもあまり変わっていないと思いきや、今回の内定式の出席者に実質的な内定日が半年以上前の学生がいると聞いて驚きました。なんと現代では大学3年生の6月位から就職活動を始め、早ければ4年に進級する前の翌年3月に内定を得る学生もいるというのです。これでは勉学に専念する期間が2年しかありません。
    いかに日本の大学が入るのは難しい(希望者全入の現在ではちょっと違うのでしょうが)が出るのは簡単だといっても、あまりにも大学での勉強をおろそかにしています。もっとも企業はほとんどの就活生には大学での専門知識なんて求めておらず、そのための社員は大学院卒の中から採ればいいと考えているのかもしれませんが。また最近では学生の身分のまま実際に企業で働くインターシップ制度もあるそうです。これは学生にとってはその会社が自分に合っているかを知ることができ、企業側は“使える人物”か試すことができる双方にとって有意義な制度です。そういえば学生時代の1970年代後半からテレビ局に出入りしてそのまま放送作家になったわたしはその先駆けかもしれません。
    この内定式の記事を読んで学生時代の友人を思い出しました。彼もほかの学生同様就職活動に励み1つの会社で最終面接までこぎつけました。その会社の社長は地方の高等小学校を卒業したのち大阪に出てきて一代で上場企業にまでした立志伝中の人物で、友人は面接のたびに「ウチの会社は学歴なんて関係ない、あくまでも人物本位や」と言われていました。私の友人は口は達者でしたが、勉強はいたってダメで成績表も「優」は皆無でほとんどが最低の「可」ばかりでしたからどうなることかと思いましたが、さすがこの会社は学歴なんて関係なく人物で判断する会社だけになんとか内定を取り付けました。
    そして迎えた3月の卒業。なんと彼は1単位足らずで留年してしまったのです。彼は焦りました。いまさら入社辞退なんて会社に迷惑をかけてしまう。苦慮の末、会社に電話してこう言いました。「卒業はできませんでしたが予定通り入社いたします。高卒扱いで結構ですのでよろしくお願いします」それを聞いた人事部長は一言。「あー、残念、ウチは大卒しかあかんねん」入社する前に社会の厳しさ、建前と本音を知らされた友人が不憫でなりませんでした。内定式に出席した学生の皆さん、卒業まで油断は禁物です。

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  • 2024年9月28日号:ニュースに一言

    2024-09-28 09:01  
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    ●次の衆議院選挙で「日本維新の会」から京都4区で立候補予定だった弁護士の松井春樹氏が出馬を取りやめたうえで離党したというニュースがありました。自民党の総裁選挙の結果次第では早ければ10月にも行われる総選挙まで1か月の今になっての突然の辞退となった理由が、彼の選挙事務所の事務局長が偽名で他陣営の事務所に出入りしていたからと聞いて驚くやら呆れるやら恐ろしいやら。
    この事務局長は松井氏の小学校の同級生で、去年12月ごろから半年間、対立候補となる予定の男性の事務所のボランティアスタッフとして街宣活動に参加したり、ポスターの貼り替えや支援者への電話などの作業をしていたということです。事務局長の潜入の目的は明らかにされていませんが、他陣営の内偵調査、いわゆる“スパイ”活動だったのは間違いないでしょう。作業内容に支援者への電話とあることから、支援者名簿も入手していた可能性があります。これは実際に選挙が始まった際に強力な武器となるものです。
    選挙期間中は街宣車で他陣営とすれ違うたびに「お疲れ様です、お互いに頑張りましょう」なんて耳当たりの良いことを言いながら、裏ではこんなに汚いことをしていたなんて、それだけで国民の代表になる資格はありません。立候補辞退は賢明な判断でしょう。松井氏は今までに計3回、事務局長の潜入を止めたなど自身の関与を否定していますが、積極的に「行け!」と言っていなくても潜入の事実を知っていながら局長を解任せず黙認していたのですから陣営ぐるみのスパイ活動ともいえます。
    さて、気になるのは「日本維新の会」はどこまで今回のスパイ活動を把握していたのか、あるいはまったくの寝耳に水だったのか。その答えが出ることはないでしょうが、「勝つためなら手段を選ばない」選挙とはつくづく恐ろしいものです。
    日本保守党にもボランティアでお手伝いしたいという申し出が多数寄せられています。ほとんどの人は善意の希望者だと信じますが、たった1人でも悪意をもった者が紛れ込むと元も子もなくなります。間近にせまった選挙に心して臨まなければならないと、気を引き締めさせられるニュースでした。
     
     
    ●宮城県登米市で女性用の下着を盗んだ24歳の小学校教諭の男が逮捕されたというニュースがありました。窃盗の疑いで逮捕されたこの男は、市内に住む20代女性の家の玄関先に配達されていた下着2枚をこっそり持ち帰っていました。
    かつての宅配便や小包は配達員が受取人からハンコやサインをもらう対面受け渡しが主流でしたが、最近では受領印を省略して宅配ボックスに入れておく、あるいは荷物の入った段ボールを玄関の外に置いて配達を完了する、いわゆる“置き配”も増えています。それにより荷受人は荷物の到着時刻を気にすることなく外出でき、また配達人は一時期4割を超すともいわれた再配達率を大幅に減少できるようになるなど、双方にとって大きなメリットとなっています。
    しかし、置き配は良いことばかりではありません。門扉から玄関まで距離があったり、置いておく場所が道路から見えないなど配達物の存在が分かりにくければある程度の安全は担保されるのでしょうが、指定場所がマンションの通路に面した玄関前などでしたら泥棒へ「ご自由にお持ちください」と言っているのと同じで、誰かに持ち去られる確率は格段に上がります。
    今回の被害女性も外出から戻った際に指定の場所に荷物がないことから盗みを疑い警察に連絡したようです。それにしても犯人の男は置き配荷物が「下着」だとわかって手を出したのでしょうか。金目のものだと思って持ち帰り、梱包を開くと中には女性用の下着、これは“あたり”だったのか“はずれ”だったのか。警察の調べに対し男は「盗んだ理由は話したくない」と言っています。ということはおそらく彼は箱の中身を知っていたのでしょう。なぜなら理由は「かぶりたかったから」なんて、とても恥ずかしくて正直に言えませんから。
     
     
    ●福岡県田川市の国道でパトカーに乗って警ら中の警察官が3台の原付バイクとすれ違った際、そのうちの1台が無灯火だったため停止を求めたのにもかかわらず、3台はスピードを上げて逃走しました。そこでパトカーが追跡を始めたところ、およそ500m先で右折しようとした原付バイク1台が転倒し、運転していた17歳の女子高校生が両肘と額を擦りむく軽傷を負ったというニュースがありました。取り調べに対し高校生は「声を掛けられるのが嫌だった」と話しているということです。
    また、愛知県春日井市では一時停止せずに交差点に進入する原付バイクを見つけたパトカーが停止するよう呼びかけましたがバイクはそのまま逃走し、直後にバランスを崩して転倒しました。バイクを運転していたのは市内に住む16歳の男子高校生で、こちらも軽傷で済んでいます。高校生は警察に対して「ヘルメットを被っていなかったから逃げた」などと説明していますが、ノーヘルで逃走なんて今回は運がよかっただけで一歩間違えたら“あの世行き”です。交通違反で捕まっても命をとられることはありません。もうすこし自分を大切にしてもらいたいものです。
    それにしてもパトカーから逃げようとする輩のなんと多いことか。アメリカのポリスならパトカーで体当たり、あるいは発砲してでも逃走車を停止させようとしますが、日本の警察は逃走車と一定の距離を保ち安全第一での追跡です。さらに「これ以上の追跡は危険だ」と判断すると途中で捕まえることをあきらめてしまうのですから犯罪者にとって優しいことこの上ありません。逃げる方もそれが分かっているから、いつまでも逃げ続けるのでしょう。
    しかし警察にそうさせているのはマスメディアをはじめとした一部人権派の“偽善者”たちです。逃走中に事故が起きると「パトカーが執拗に追いかけたからだ」とまるで正当な職務遂行をしていた警察が悪いような言いがかりをつけます。そのため警察はいつも「追跡行為に問題はなかった」なんて言い訳をしなければならないのは困ったことです。現代ではいたるところに監視カメラがあり、パトカーの車載カメラの性能も格段によくなっています。そのときは逃げることができても後日必ず捕まることを警察はもっとアピールするべきです。そして法律的には逃げた瞬間に「生涯免許取り消し」や「罰金100万円」などの厳罰化が必要です。逃げ得は絶対に許されません。
     
     
    ●フィンランドのアフタリ動物園にいる2頭のパンダが中国に帰ることになったというニュースがありました。
    このジン・バオバオとフア・バオの2頭は2018年に中国からフィンランドにやってきました。やってきたといっても永住ではありません。世界中にいるすべてのパンダは「中国のもの」で、レンタルという形で各国に送り出されているのです。この2頭も15年間の期限付きでレンタルされたものですが、なんと予定より8年以上も早く返還となりました。
    その理由はやっぱりお金です。ジャイアントパンダの飼育はほかの動物に比べて莫大な費用が掛かります。フィンランドのパンダも獣舎の費用が850万ユーロ(約13億7000万円)、食費を含めた年間の維持費は150万ユーロ(約2億4000万円)もかかっているそうです。にもかかわらず新型コロナウイルスのパンデミックによる来園者数の減少や、ロシアによるウクライナ侵攻後の金利上昇とインフレが、動物園の財務に打撃を与えたため費用の捻出が不可能となったのです。
    金の切れ目がパンダの切れ目となったわけですが、フィンランドは良い選択をしたと思います。交通の発達ですぐどこにでも行け、またインターネットで行かずとも情報を仕入れられる21世紀の現代において、高い金を払ってまでパンダを飼う必要はありません。
    日本でも1972年9月の日中国交正常化を記念して中国からカンカンとランランが上野恩賜動物園にやってきてから50年以上が経ちました。それ以来1頭につき1億円以上といわれるレンタル料を毎年支払い続けていますが、もうそろそろ止めてもいいのではと思います。せっかく繁殖に成功しても生まれた子供の所有権は中国ですからいつまでたっても日本のものにならないだけでなく、貸与中に死亡しようものなら賠償金まで請求されかねません。こんな不平等な契約条件をのんでまでパンダが必要とは到底思えません。そもそも日中友好のシンボル的存在だったパンダですが、今の中国はとても日本を友好国としていません。パンダは遠目に見るとたれ目で愛らしく見えますが、実際の眼光は鋭くクマそのものです。触らぬ神に祟りなし、付き合う相手は慎重に選びたいものです。
     
     
    ●埼玉県警捜査2課と草加署が新型コロナウイルスに関する特例措置を利用して国の雇用調整助成金を不正受給していた、東京都豊島区に住む35歳の会社役員の男を詐欺の疑いで逮捕したというニュースがありました。この男は個人事業主として開業した危機管理コンサルタント業の事業所において、雇用実績がない従業員7人に休業手当を支払ったように装い、2020年10月8~13日の間に5回にわたって自身の預金口座に現金計1288万円を入金させていました。
    この男の犯罪はこれだけではありません。さらに同様の手口で何回も申請し合計7千万円以上もの雇用調整助成金を不正受給していたほか休業支援給付金も不正受給しており、まさに新型コロナウイルスで「濡れ手に粟」のボロ儲けをしていたのです。
    新型コロナでは個人や法人に向け、様々な補助金・助成金・給付金が配られました。緊急事態宣言下では休業を余儀なくされた飲食店には1日当たり6万円の協力金が支給されましたが、日売り収入がなくなり家賃が払えず倒産の危機にある店ならまだしも、年寄り夫婦が自宅で営む1日の売り上げが2万円にも満たない店にまで同額が支給されたものですから“コロナバブル”なんて言葉まで作られてしまいました。なにしろ緊急事態ですからひとつひとつを精査できなかったこともあり「無駄金」も随分あったことでしょう。いまさら返せとも言えないし、正規の手続きを経ての支給は認めざるを得ませんが、絶対に許していけないのは虚偽の申請をして税金が原資のお金をだまし取った詐欺犯罪者です。
    日本中にまだ捕まっていない不正受給者はたくさんいると思いますが、警察や税務署には粘り強く捜査、調査をしていただき一人でも多く悪党を摘発してもらいたいものです。今回の会社役員の男も「どうせバレやしないだろう」と高をくくっていたのでしょうが、天網恢恢疎にして漏らさず、まさに「ざまあみろ」です。4年後の自身の状況を予測もできないで、危機管理コンサルタントが聞いて呆れます。

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  • 2024年9月20日号:ニュースに一言

    2024-09-20 23:02  
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    ●来年4月に始まる大阪・関西万博で、海外パビリオンの建設遅れや工事中に爆発事故を引き起こしたメタンガス対策により最大で98億円の費用が追加になるというニュースがありました。
    この万博では既に建設費が当初予算の1・9倍にあたる2350億円に、運営費が1・4倍の1160億円に大幅アップすることが報告されていますので、ここにきての98億円なんて「ああ、またか」と大して驚きもしませんが、次から次へと出てくる見込み違いには呆れるばかりです。
    そして上振ればかりで膨れ上がった費用をまかなう肝心の入場料収入は逆に下振れ必至といいますから困ったものです。協会は期間中に2820万人の来場者を見込んでいますが、現在売れている前売り入場券は目標の35%に過ぎない500万枚にとどまっています。しかもそのほとんどが企業によるまとめ買い(購入を積極的に希望したわけではなく、実質的には押し付けられた会社の分も含めて)といいますから、一般市民の関心はすこぶる低いようです。
    “まとめ買い”を余儀なくされた企業はその前売り券を福利厚生の一環として社員に配布するようで、わたしの知人の会社でも希望者募集が始まりましたが、関西圏ならまだしも、そのほかの地域ではなかなか手を上げる人もおらず「おい、この大量の前売り券どうしよう」と担当者が頭を抱えているそうです。
    ところで企業はなぜそんな無理をしてまで万博に協力するのでしょうか。万博開催により自社の製品をPRでき、それによる売り上げ増を期待してという会社もあるでしょうが、ほとんどの企業は実質的な主催者である国や強力に推進している“維新”に「恩を売る」ことを目的としているのでしょう。営利の追求を目的とする企業や業界団体が、以降に商売上の便宜を図ってもらうことを期待せずに見学者のあてのない50000や100000枚もの前売り券を買うわけがありません。これは出席する気もないのに言われるままに購入する“政治資金パーティー券”とまったく同じ構図です。そう思うと本来輝き帯びて開催される万国博覧会がくすんで見え、ますます興味が失せてしまいます。
    出展を取り止めた国の建設予定だった場所は“休憩所”として活用するとしていますが、この調子ではわざわざ休憩所を作るまでもなくどこでもゆっくり過ごせる、なんとものどかな万博になりそうです。
     
     
    ●9月から兵庫県神戸市で全国初となる高校生の通学定期代無料化制度が始まりました。これは隣の大阪府で高校の授業料無償化がスタートしたことにより、神戸市内の高校を志願する受験生が減少したことに対応するためで、授業料はかかるが交通費は不要なので“ぜひ、神戸の学校へ”というものです。
    子供を高校に通わす親にとっては経済的負担が減る朗報のようですが、対象者が極めて限られるこの制度にいったいどれほどの効果があるのやら。なにしろ無償化の対象は市に住民登録し、市内の高校や高等専門学校などに通う満16歳~18歳。すなわち市内在住であっても大阪や京都はもちろん、近隣の芦屋市や快速で2駅の西宮市の学校への通学では対象外。また、神戸市内の学校に通学して来るのであっても芦屋や西宮からならダメというのですから。そもそも無料にするといっても市内から市内の学校に通うのにはさほど交通費もかからないでしょう。なんならほとんどが自転車でOKかもしれません。
    この程度のことで神戸市の言う「若年・子育て世帯に選ばれるまち」になれるとはとても思えません。それどころか同じ教室にいる神戸市在住の生徒と明石市から、西宮市から、尼崎市からの生徒との分断を誘いかねないこんな愚策をよく誰も反対しなかったものです。地域のみんなが同じ小学校、中学校に通う義務教育と違い高校は個々の能力や希望により進学先が決まります。そして中には勉強する気なんてさらさらないのに「とりあえず高校だけは」と進学する者もいます。
    自治体は人口を確保するために「住みやすい街」を謳い、なにかにつけて“無償化”をアピールします。大阪府の高校授業料無償化もそうですが、無償化といってもその費用を受益者から自治体が肩代わりしているだけで、その費用は高校なり交通機関に支払われています。そして、その原資はその地域の住人が納めている税金です。まじめに勉強せず遊んでばかりの高校生の3年間に自分の納めた税金が使われる、そんな自治体に私なら住みたくありません。
     
     
    ●鹿児島地方裁判所で現住建造物等放火の罪に問われた74歳で無職の女の裁判員裁判が始まったというニュースがありました。この女は昨年8月、鹿児島市にある自身とほかに5人が居住するアパートの自室で、衣類や丸めたチラシ、空き箱などにライターで火を付け、天井や壁に燃え移らせて83・9平方メートルを焼損させていました。
    検察官の調べに対し女は「生活費などに困窮し、刑務所に入れば困らないと考えた」と答えていますが、そんな理由で巻き添えを食い住むところを失ったほかの5人の住人は怒り心頭のことでしょう。「生活が苦しいから刑務所に入りたい」・・・年末など物入りの時期になると決まってこんな犯罪者が現れるのは困ったことです。本来なら「入れられるくらいなら死んだほうがマシや」とされなければならない刑務所が安全を保障するシェルターのごとく思われているのはどう考えてもいただけません。
    しかし、現代の刑務所は昭和の映画で描かれていた極寒の中、粗末な食事だけで人間扱いされない劣悪な環境と違い、冷暖房完備の3食付き、場合によっては個室(独房)まで与えられ、労働は土日休みの完全週休2日で残業なし。さらに、最近では“人権”に配慮して「さん付け」で呼ばれるなど、ますます居心地の良い場所になっています。こんな体たらくだから今回のばあさんのように「刑務所に入りたーい」と考える輩が出てくるのです。当然のことですが、犯罪には被害者がいます。本人は刑務所に入りたいだけかもしれませんが、そんな理由で今回の5人のアパート住人のように害を被ったのでは堪ったものではありません。
    ところで公判で弁護側は「死傷者が出ていないことや、警察に自首している」ことを考慮するよう求めましたが、これって“刑務所に入りたい”依頼者の利益に反するのでは。ここは減刑でなく「ぜひ、無期懲役でお願いします」と言うべきでしょう。
     
     
    ●滋賀県彦根市で、女性を脅迫して監禁した上でわいせつ行為をした28歳の会社員の男が監禁や強盗、不同意わいせつなどの疑いで逮捕されました。この男は午後9時半頃、同僚の20代女性に対し包丁を見せながら「殺されたくなかったら、車に乗れ」などと脅し車内に監禁したのです。昼間は会社で顔を合わせていた男にいきなり包丁を突き付けられ、さぞかし女性は驚くとともに怖かったことでしょう。さらに、そのあとに繰り広げられるおぞましい行為にも。
    調べに対し男は「女性とトラブルがあってわいせつなことをしてやろうと思った」と説明し容疑を認めていますが、どんなトラブルがあったにせよ、普通の感覚ならその腹いせに“痛い目に合わせてやろう”はあっても“わいせつなことをしてやろう”とはなりません。仕返しというより完全に自身の趣味に走っています。そう“趣味”、いや性癖と言った方がいいかもしれません。
    さて、彼の行ったわいせつ行為とは……。なんと男は抵抗できない状態の女性からはいていた靴下1足を奪ったうえで、自らの鼻をなめさせるなどしたのです。女性にしてみれば、強姦など直接的なわいせつ行為が最悪なのは当然だとして、そうでなくても好きでもない男の鼻をなめさせられるのも、それに匹敵するぐらい虫唾が走ったことでしょう。
    その後、女性は車を降りて逃げ出し警察に届けましたが、行きずりの犯行ではなく容疑者の身元がはっきりしているのですから逮捕まで時間はかかりませんでした。そして男は自らしでかしたことの代償として、これからの人生を“犯罪者”だけでなく“変態”というレッテルも貼られて生きていくことになります。
     
     
    ●日本私立学校振興・共済事業団が今春の入学状況について全国の私立大学598校を調査したところ、なんと59・2%にもあたる354校が定員割れしていたという驚くべきニュースがありました。
    これは前年の53・3%から5・9ポイント(34校)悪化したものでデータの確認できる1989年度以降、過去最悪だそうです。その理由は言うまでもなく少子化ですが、それだけではありません。なんと18歳人口が前年から3万3965人も減少したのもかかわらず、短大から4年制への転換や学部・学科の新設などで入学定員を逆に1239人増やしたというのですから呆れます。
    希望者すべてが“大学生”になれる現在の日本ですが、益々それに拍車をかけるなんて意味がわかりません。大学の定員は学校が勝手に決められるものではありません。文部科学省がその数が適正かどうか審査してはじめて認可されるのです。すなわち今年の定員増も国がOKを出したものなのです。受験生が減っているのに定員を増やしたのでは、そりゃ定員割れにもなるでしょう。普通の感覚なら「これからは志願者が減るから学生の水準を維持するためにも定員を減らそう」と考えるのが当たり前なのに、「よりアホでも入りやすいようにする」なんてもってのほかです。
    訳知り顔の人権大好き派は「学びたい人が学べないのはまかりならん」と宣いますが、現実には高校を卒業しておきながら「アルファベットが書けない、分数の計算ができない」など、どうみても“学びたい”とは思えない大学生が大勢います。彼らは勉強したいのではなく“大学生”という肩書きが欲しいだけなのです。最高学府は高度な学問を究めるところで、その素養のない者は無理して行く必要はありません。
    いま、国がすべきことは「だれでも平等に大学へ」ではなく「大学に進学しなくても、頑張れば「豊かに幸せな暮らし」が送れる社会の仕組み作りです。中央教育審議会の特別部会は8月に「急速な少子化で大学の統合や縮小などを進め、規模の適正化を図るべきだ」とする中間まとめを公表しましたが、何年も前から少子高齢化が進んでいるのに今ごろ何を言っているのやら。

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  • 2024年9月13日号:ニュースに一言

    2024-09-13 14:01  
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    ●札幌市北区の交差点で、24歳の介護士の女性が運転するデイサービスに向かう途中のワゴン車と中国国籍の34歳の女が運転する乗用車が出合い頭に衝突し、ワゴン車に乗っていた91歳の女性1人が死亡、他に2人の女性がけがをする交通事故が発生しました。乗用車側に一時停止の標識があったため、警察が通訳を介して“初心者マーク”を付けたクルマを運転していた中国人女性を取り調べると「(中国語で)間違いありません。私の不注意で相手の方に大きなけがをさせてしまい、申し訳ないと思っています。反省しています」などと話し容疑を認めたそうです。
    この中国人女性は“初心者マーク”を付けていたなど、日本の交通ルールをあるていど理解していたようですが、気になるのは取り調べに“通訳”が必要、すなわち日本語が分かっていないところです。
    警視庁によりますと現在、運転免許の学科試験は英語、ドイツ語、中国語など20か国に及ぶ外国語で対応しており、中にはクメール語、シンハラ語など「それ、どこにある国やねん?」と思うようなものまであるそうです。今回の女性もおそらく中国語で試験を受けたのでしょうが、日本語が話せない、読めない、そんな彼女が果たして一時停止の標識『止まれ』を瞬時に確認できるのでしょうか。
    今回の事故は起きるべくして起きた事故なのかもしれません。なんのために運転免許制度があるのか。それは交通における秩序を維持し安全を守るためです。外国人も日本で運転するには免許が必要で試験を受けさせなければなりません。だからといって日本語が分からない外国人に便宜を図るあまり安全が脅かされたのでは本末転倒です。
    もっとも「雨の日は気を付けて運転しなければならない」という問いに、雨の日は視界が悪いから注意が必要だと思い“〇”を選択するとこれが不正解。その理由は「雨の日だけでなく晴れの日の運転も注意が必要だから」だなんて日本人でも戸惑う問題を外国人に解けというのは到底無理なことでしょうが。
     
     
    ●わたしの住む兵庫県の斎藤元彦知事が“パワハラ”や“おねだり”などの疑惑を告発された問題により、ついに86人いる兵庫県議会の全議員から辞任要求される事態となりました。さらに知事選のときに推薦を受けた自民党、維新の会からも辞職勧告を受け、もはや味方は誰もいない状況にもかかわらず、当の本人は「(県民から)批判の声を直接聞くことはあまりない」「7月以降、(県民から)頑張ってという声をいただくことが多い」とまったく意に介していないのですから、どれだけ面の皮が厚いのやら。
    パワハラも最初は「ふせんを投げつけられた」「暴言を浴びせられた」など、業務上のヒートアップが原因とも思われるものが主だったのが、日がたつにつれ「エレベーターに乗れなくて怒った」「公用車を降りてから入口まで歩かされた」など人間性自体に問題があるものになり、挙句の果てには「おにぎりの具は昆布か梅かおかかで、これがないと激怒する」なんてちっぽけなものまで暴露される始末です。また、おねだりもカニ、革ジャンにはじまり玉ねぎやおもちゃのレゴブロックまで出るわ出るわ、尽きることがありません。
    連日報道される内容に「もう、やめてくれー」とならないのが不思議です。自分のやったことは自分が一番よくわかっているのですから、ここまで世にさらされる前にさっさと幕引きを図ればまだ、再起の余地もあったでしょうにここまで来たら政界はもちろん、ほかの社会でも彼の居場所は皆無でしょう。前任の井戸知事といい、この斎藤知事といいこんな知事を選んだことを兵庫県民として恥ずかしく感じます。川勝県政を選び続けた静岡県民を「アホばっかし」と言っていたわたしはいま穴があったら入りたい心境です。
     
     
    ●「富士は日本一の山」・・・誰もが一度は富士山に登ってみたいと思うものですが、それには万全の準備が必要で、おいそれとというわけにはいきません。
    富士登山を楽しんだ女性が下山できなくなり救助されたというニュースがありました。大阪府に住むこの73歳の女性は、9月8日午前10時半ごろ富士宮口の9合5勺付近を下山していましたが疲労で歩けなくなってしまいました。そこで同行していた息子が9合目の山小屋まで下り、常駐している静岡県警の山岳遭難救助隊に助けを求めることにしました。そして息子から要請を受けた隊員が大急ぎで現場へと向かい、登山道わきにうずくまっていた女性を背負って歩き始めました。いかに山に慣れている隊員とはいえ、生身の人間を背負っての下山はさぞかし危険を伴うものだったことでしょう。
    そして、途中でようやく5合目から登ってきた富士宮署の山岳遭難救助隊と合流し、彼らが持ってきた担架に移し替え5合目まで運んだということです。女性にけがはなく車が乗り入れられる5合目からは普通に帰宅したそうですが、急病や骨折などのけがで動けなくなったのではなく、ただ“疲れた”だけで多くの人の手を煩わせるなんてなんとも人騒がせな登山客です。
    また北海道・利尻富士町の利尻山でも、9月7日午後7時半ごろ、登山をしていた愛媛県の男女2人から警察に救助要請がありました。山岳遭難救助隊などが出動したところ1時間ほどして暗闇の中にいる2人を発見し救助しましたが、こちらも2人にけがはなく自分で歩ける状態だったといいます。なんと彼らの救助要請の理由は「ヘッドランプ(両手を自由にするために頭に括り付ける懐中電灯)の明かりが消え、暗くて下山できなかったから」というのですから「何とか無事でいてくれ」と現場に急行した救助隊も一気に気が抜けたことでしょう。
    救助後に警察が調べたところ、2人のヘッドランプは電池が切れていただけだそうでこんなお粗末なことはありません。標高1721mの利尻山に、それも夜間に登るとなれば灯りの確保は絶対条件です。それにもかかわらず予備の電池も持たずに入山とは山をなめるのにもほどがあります。
    近年、準備不足のまま登山を開始し救助隊のお世話になるケースが増えています。良識ある登山者と救助隊の安全を守るためにも「緊急でもないのに救急車を呼ぶ人が多いから有料にする」と同じように、救助要請の有料化を考える必要があります。
     
     
    ●落とし物を拾ってもそれが即時に自分のものになることはありません。警察が一定期間保管し、落とし主が現れない場合にはじめて拾った人のものになるのです。ですから落とし物を拾って「ラッキー」とばかりに持ち帰り自分のものとするのは犯罪です。
    ごみ置き場で1億円の大金が見つかったなどのニュースが報道されると、毎回のように「歩いているうちに落としたのかもしれない(そんな大金落としたらすぐわかるやろ)」「家に置いてあったものがなくなった(札束が勝手に出ていったのか)」とツッコミどころ満載の申し出があるのは見つけた人がネコババせずに正直に届け出るからです。
    仙台市内の公園に置き去りにされていた自転車を警察に届けず持ち去ったとして、住所不定、無職の41歳の男が占有離脱物横領の疑いで逮捕されたというニュースがありました。警察の調べによりますと、この男は仙台市太白区内の公園で置き去りにされていた時価1万円相当の自転車1台を警察に届け出ずに持ち去ったということです。登録番号からこの自転車は市内に住む10代の男性のものだったことがわかり、男性が警察に出した被害届から、2023年の8月に盗まれた後、この公園に放置されたことが判明しました。なんと1年の時を経てこの住所不定、無職の男の前に現れたのです。
    警察の調べに対し男は「盗んではいないし届け出るつもりだった」という趣旨の供述をし、容疑を否認しているということですが、さあここで問題です。拾ったものをそのまま自宅に持ち帰ったのなら「盗んだ」と判断できますが、住所不定・・・家がない場合、どの段階で「盗んだ」が確定するのでしょう。ましてやこの男は無職ですので職場に持ち込むこともありません。永遠に「届けに行く途中」なんてことにならないのでしょうか。それとも男は公園を根城にしていたと判断され、そこから一歩出た瞬間に「盗んだ」となったのでしょうか。疑問は尽きません。
     
     
    ●法務省が、転移性肝がんと大腸がんを患い拘置所内の病棟で緩和治療を受けていた73歳の男性死刑囚が死亡したと発表しました。
    この死刑囚は刑務所内で知り合った男と共謀し2002年8月、千葉県松戸市の会社社長宅に押し入り現金と貴金属合わせて1000万円ほどを奪い、妻と長女を絞殺したうえで放火し(マブチモーター事件)、翌9月には東京都目黒区で歯科医師の男性を、さらに11月には千葉県我孫子市で金券ショップ社長の妻を殺害するなど3事件で計4人を殺害した罪で死刑判決を下されたとんでもない悪党でした。
    この男の死亡により現在収容中の確定死刑囚は107人になるそうですが、裁判で死刑が確定したら6か月以内に執行しなければならないのにもかかわらず、ほとんど守られていない現状ではこの数は増えることはあっても大きく減少することはないでしょう。死刑執行は「法務大臣」の命令により行われますが、過去には堂々と執行命令書への署名拒否をした大臣もいたように多くはその職務に積極的ではありません。職務を遂行できないのなら「法務大臣」になんかならなければいいのに、“死刑執行は嫌だが閣僚にはなりたい”連中ばかりなのですから困ったものです。
    死刑執行については「犯罪者にも人権が」と反対の声もありますが、わたしは死刑囚にはそれを認めたくありません。なぜなら死刑囚は例外なく殺人者だからです。他人の命を奪っておいて己の人権を主張するなんて言語道断です。仇討ちが許されていないわが国で大切な人を殺された遺族が唯一よりどころとするのは司法です。そこでようやく死刑判決を勝ち取ったところで執行されなければいつまでたっても無念が晴れることはないでしょう。
    今回の死刑囚の病死を被害者遺族がどのように感じるかを想うといたたまれません。ちなみに共犯の男も刑が執行されることなく2017年に拘置所内で食道がんにより74歳で病死していますので一連の事件における「死刑判決」なんてまったく意味がなかったことなります。しかも2人ともガンの痛みをとる緩和ケアを国費で受けてですから、この国の正義は誰のためのものなのでしょうか。
    今回死亡した死刑囚が共犯者とのは知り合った宮城刑務所に服役したのは殺人・窃盗の罪により懲役12年の刑に処せられたからです。なんと男は死刑になる前にも殺人を犯していたのです。その時点で死刑になっていたら、せめて終身刑で刑務所に入れておけば後の4人は命を失わずに済んだと思うと現在の刑罰制度に疑問を覚えざるを得ません。まもなく新しい内閣が発足します。次の法務大臣には我が国の正義を維持するために毅然と職務を遂行してもらいたいものです。

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  • 2024年9月8日号:ニュースに一言

    2024-09-08 21:31  
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    百田尚樹チャンネル会員のみなさま、令和6年6月8日のドワンゴ社に対するサイバー攻撃により配信不能となっていましたメルマガがようやく復旧いたしました。会員のみなさまには長期間にわたってご迷惑をお掛けしたことをお詫び申し上げます。本日から“ニュースに一言”も再開します。今後ともよろしくお願いいたします。
    そして今回は再会記念として、特別にいつもの倍の量でお届けします!
      百田尚樹
     
    ●2022年の総出生数約77万のうち体外受精によって生まれた子供は過去最高の7万7206人だったというニュースがありました。なんと10人に1人が体外受精児だというのですから驚きです。
    体外受精とは男性がパートナーに密着して女性の体内にある卵子に向け直接精子を注ぎ込む自然受精と違い、精子と卵子を体の外で人工的に受精させる主に不妊治療の1つとして行われるものです。近年、結婚して子供を望んでも妊娠しない女性が多く不妊治療をする女性が増えていますが、それには多くの時間と労力、そして結構な費用が必要なため途中で挫折する夫婦も少なくありません。しかし、2022年4月から公的な保険が適用されるようになり費用面でのハードルが下がったことで、2022年は前年から4万5000件余り増えた延べ54万3630件の体外受精が行われました。
    少子高齢化傾向が続く日本では出生数の増加が喫緊の課題となっています。子供の数が増えない理由は多岐にわたりますが、女性の高学歴化や、それに伴う男女雇用機会均等法による社会進出が進んだことによる晩婚化がその中の大きな要因になっているのは間違いないでしょう。現在の女性の平均初婚年齢はほぼ30歳となっています。これはあくまで平均であり、わたしの周りの大学を卒業してお勤めをする女性で、20代での結婚はほとんど聞かず大多数は30代半ばです。
    健康な夫婦が妊娠活動を開始し1年以内に自然妊娠する確率が20代ではほぼ100%なのに対し、30代後半になると60%台にまで低下するそうですので、その時点で彼女らは子作りに関してはハンデを負うことになります。“結婚する、しない”“子供をもつ、もたない”は個人の価値観で他人がとやかく言うことではありませんが、日本人はとかくまわりの雰囲気に流されがちです。本心では「早く結婚して子育てをする専業主婦になりたい」と思っていても、「現代女性は社会進出が当然」に押されて、進学や就職を決める女性がいるかもしれません。
    幸せの種類は1つではありません。そんな彼女たちには本当に自分の望む幸せをぜひ見つけ出し、それを信じて進んでもらいたいものです。また、社会もそれを温かく見守りたいものです。「まだ結婚しないの?」「好きな人はいないの?」など若い女性に聞くことは老婆心からでも“セクハラ”と非難される時代となり“結婚適齢期”はなくなりましたが“妊娠適齢期”は人間が動物である限り未来永劫なくなることはありません。
     
     
    ●NHKが2024年8月19日にラジオ国際放送などの中国語ニュースの中で、沖縄県の尖閣諸島について「中国の領土である」という放送をしたと発表しました。これはNHKが外部委託している関連団体に属する中国籍の外部スタッフがニュースを伝える際、原稿のどこにもそんな記述がないにもかかわらず、いきなり前述の発言をしたものです。
    尖閣諸島は言うまでもなく日本国固有の領土であり、それを日本国の公共放送が否定するなど絶対にあってはならないことです。この大不祥事(国賊的犯罪と言った方が良いかもしれません)に対し、当のNHKは「ニュースとは無関係の発言が放送されたことは不適切であり、深くお詫び申し上げます。再発防止策を徹底します」とコメントした上で業務委託契約を結んでいる関連団体を通じて本人に厳重に抗議するとともに、関連団体が本人との契約を解除するとしていますが、今回の件は謝ったから終わり、クビにしたから終わりとなるような簡単なものではありません。
    NHKは“ニュースとは無関係の発言”が不適切だったと謝罪していますが、ニュースに関係が有る無しに関わらず「尖閣諸島が中国の領土である」というまったく虚偽の、それもわが国の国益を損なう内容を伝えたことが問題なのですから、そもそも謝るべきポイントが違います。そして、なによりも真実を伝える報道機関として通り一遍の謝罪より、先ずしなければならないのは「先日、放送された『尖閣が中国の領土である』は間違いであり、正しくは日本の領土です」という訂正放送を全世界に向けて発信することです。
    日本中が怒りに震えるこの期に及んでまだ「尖閣は日本のものだ」と声高に叫べないとしたら、NHK(日本放送協会)はいったいどこの放送局なのでしょう。
     
     
    ●9月になりましたが、連日猛暑日が続いています。屋外やクーラーのない場所で仕事をしている方たちには、くれぐれも体調に留意してもらいたいものです。そんな中、宅急便で知られる物流大手のヤマト運輸でたった1人でストライキを決行した社員がいたそうです。
    この社員は兵庫県内の倉庫で仕分け作業を担当する55歳の男性で、彼の要求は「倉庫内が暑すぎるから対策して欲しい」というものでした。男性の話では倉庫内の気温は温度計が振り切れる40度にもなり、その中でヘルメットをかぶり、最大30キロもの荷物を抱えることもあるといいます。そんな環境で一日中作業をしていたら身体を壊してしまいます。
    「とてもじゃないがやってられない」と意を決した彼は労働環境の改善を求め会社に団体交渉を申し入れましたが、しばらくして彼はとんでもない光景を目の当たりにすることになります。なんと毎日確認していた倉庫内の温度計が撤去されてしまったのです。これでは気温のチェックができません。まさか会社側が温度計さえなければ20度も40度もないと考えたのか。これでは事故を起こした車両を埋めてしまい“何もなかったことにする”どこかの国と同じです。
    あまりにも会社の宝である人材を軽んじる対応に驚きます。その後、扇風機とスポットクーラーを設置するなどの措置がとられたそうですが、じっと一箇所での作業ならともかく倉庫内を動くこの男性社員には満足な効果がありませんでした。男性は引き続きファン付きの作業服や首に巻く扇風機の支給を求めていくそうです。たったそれだけの物なら会社も買ってやればいいのにとは思いますが、大会社であればあるほど1人の要求をきけば他の社員にも波及し、莫大な経費となりますので簡単にいかないのでしょう。
    しかし、近年の猛暑は命にもかかわります。ぜひとも安全な環境で仕事ができるようにしてもらいたいものです。そしてまたそれらを可能にするために利用者も過度な値引きを求めず正当な対価を支払う必要があるのは言うまでもありません。本来“送料無料”なんてあってはならないのです。
     
     
    ●三重県松阪市で6月から救急車が一部有料になったというニュースがありました。これは松阪市内の3基幹病院に救急搬送された患者が、医師に入院の必要がないなど軽症と判断されれば料金が発生するというものです。救急車や消防車など行政が管轄し市民サービスに使う車両は今まで「無料」が原則でした。それが1回につき7700円(税込み)の徴収となるのですから市民の間に不安が広がっているようです。
    今回の措置は対象の松阪地区での救急車の出動件数が2023年に1万6180件と過去最高を記録し、このままでは救急車が足りなくなり、救える命が救えなくなることへの憂慮が理由とされています。もし本当に救急車が足りないのなら何を置いても有料化より台数を増やすことのほうが先だとも思いますが、実態はどうも違うようなのです。なんと1万6180件のうち、半数以上が救急搬送の必要がなかったというのです。中には「平熱より1度上がったから」、「爪がはがれたから」など家庭薬でも十分対応できるものや、もっとひどいのになると「酒を飲んだのでクルマを運転できなかったから救急車を呼んだ」なんてタクシー代わりにしていたものもあったのです。こんなことでは救急車がいくらあっても足りず、無駄な出動抑止のための有料化もやむを得ないでしょう。
    国は地域の医療体制を守るため、2016年に健康保険法を改正し、初期の診療は地域の病院で受け、そこで手に負えない高度な専門的医療のみを町医者からの紹介状をもとに大病院で行なうこととしました。しかし、それでもなお「いや、わしは絶対に大病院じゃないと嫌だ」と紹介状なしで200床以上の地域医療支援病院を訪れる患者に対しては“選定療養費”として7700円を徴収することにしており、今回も必要のない救急車=選定療養としたのです。
    この7700円に対し「いざというときに救急車と呼ぶのをためらってしまう」なんて否定的な声もあるようですが、救急車は文字通りためらう間もない救急のときに呼ぶものです。「お金がかかるからやめておこう」で済むのなら、それは救急ではありません。
    それにしても救急車まで有料になるとは随分と世知辛い世の中になったものです。それもこれも不届き者が増えたせいです。人殺しがいなければ“殺人罪”は、泥棒がいなければ“窃盗罪”は、ペテン師がいなければ“詐欺罪”は必要ありません。本来、善良な人間だけなら何にも縛られずのんびりと暮らせるものが、一部のそうでない人たちのためにどんどん窮屈になるのは困ったものです。
     
     
    ●男女別学の県立高校の在り方を検討していた埼玉県教育委員会が「主体的に共学化を推進していく」とする報告書を公表したというニュースがありました。これは一昨年に県民から寄せられた「男子高校が女子に対し、女子であることを理由に入学を拒んでいることは不適切」という苦情を受けた埼玉県の男女共同参画苦情処理委員からの「早期に共学化せよ」という勧告に応えたもので、教育委員会としてゆくゆくは全県立高校を共学にする方向で進めていくというものです。
    “男女平等”“ジェンダーフリー”という言葉の下、性別によるすべての区別(差別でなくても)を無くそうとする昨今の風潮もあり、そういう報告しかできなかったのかもしれませんが、日本の未来を担う若者を育てる教育現場の方針として “長い物には巻かれろ”的な諦めはいただけません。そもそも「埼玉県の県立高校には男子校しかないため、女子は私立高校にしか進学できないのは不公平」というのなら「女子にも開放しろ」はわかりますが、現在、県内の国公立高校133校のうち別学(男子校、女子校)は12校で、残りの121校は誰でも通える共学です。すなわち公立への進学希望者は男子校、女子高、共学校いずれも自由に選択できるのです。これは共学の公立高校しかない他の都道府県の中学生からみたら「埼玉は選択肢が多くていいな」と映ることでしょう。
    実際、県教委が県内の高校生にアンケート調査したところ、「男女別学校は共学化した方がよい」は7.8%「男女別学校は、共学化しない方がよい」は57.2%と、当事者は共学化に反対する意見が多かったそうです。そして、共学推進派が男女共同参画の観点から言う「高校3年間を男女が互いに協力し、学校生活を送ることに意義がある」という意見も、別学が山奥の校舎の中で24時間、365日同性だけで生活しているのならまだしも、下校後はファストフード店で、カラオケ屋で、進学塾で、さらにSNSなどインターネットを通していくらでも異性と交流できる現代ではたいした説得力をもちません。
    ジェンダーレスを声高に叫ぶ人たちはなにかにつれ多様性が大事と訴えますが、全体の1割にも満たない別学すら認めないで多様性も何もあったものではないでしょう。
     
     
    ●大手銀行が中途採用を活発化し、それにともない年功序列給与の見直しを進めているようです。
    かつての日本企業は新卒で入社すると、そこで退職金をもらう定年まで勤め上げることが一般的でした。給与も新入社員の時の安月給が年齢とともに昇給していきますので、一度社員の座を得たらそれなりに人生設計ができたものです。それをみずほフィナンシャルグループは、人事制度を刷新しポストごとに付与した等級に基づき支払う「役割給」に給与を一本化し、年齢や年次にかかわらず昇進や昇給できるようにしたのです。すなわち今まではポストによって支給される役職手当と年齢による基礎給与を合わせたものを月給としていたものを、役職手当がそのまま月給となりそれ以外がなくなるのです。これにより40代の主任より20代の課長のほうがはるかに高給取りになり、実績を上げれば20代で年収2000万円超も可能になるといいます。
    仕事のできる人、仕事量の多い人の給料が高いのはある意味合理的ですが、年功(年齢)部分を一切なくしてしまうのはいかがなものでしょうか。20代で社会人となり結婚し、やがて子供ができます。そして、その子供が社会人となるまで自身の年齢が上がるとともに教育費などの子育て費用がかかるようになります。いままではそれを年功部分でカバーできていたものが、出世が遅れ新入社員の給料のままでは破綻しかありません。こんなギャンブルのような人生では、とても結婚や子育てなんてできません。
    銀行は改革の理由をデジタル化などで業務が多様化する中、人材の獲得競争が激化しており能力の高い社員を高給で確保するためとしています。若い社員の中ではこの変更を歓迎する声が多いようですが、はたして10年後までその喜びは続くのかは疑問です。なぜなら、彼らは転職を重ねるたびに給料がアップするアメリカの雇用システムに自身を重ねているのでしょうが、そんな人材は限られたごく一部でしかなく、全員がなれるわけではないからです。
    そもそも会社は特別優秀な社員、優秀な社員、普通の社員、どんくさい社員などいろいろな人材で成り立っているものです。三井住友銀行や三菱UFJ銀行などほかのメガバンクも同様の改革を進めていますが、いままで“全般的”に高給で社員を集めていたものが、これからは“一部の優秀な社員”だけ高給で果たして会社を維持できるのでしょうか。特別優秀な社員の生産性は高く、その仕事はその他大勢の普通の社員にはできないものでしょうが、普通の社員、どんくさい社員のしていた仕事もまた優秀な社員にはできません。「適材適所」・・・会社、社会の発展には役割に応じた人材配置が肝心であり、その役割はどれも必要なものです。 
     
     
    ●今年6月までの上半期に一人暮らしの自宅で亡くなった人が全国で3万7227人に上ったというニュースがありました。そのうち85歳以上が最多の7498人で、そのあとに75~79歳の5920人、70~74歳の5635人と続き、65歳以上が76%を占めています。
    しかし、孤独死は高齢者だけではありません。30歳代が512人、20歳代が431人、さらに15~19歳も42人いたということで、親元を離れた一人暮らしの若者が不慮の病に倒れたと考えると不憫でなりません。
    そして家族が同居している場合は朝に起きてこなければ「どうしたんだろう」と様子を見に来てくれすぐに見つけてくれますが、一人暮らしだとそうもいきません。死亡推定から遺体発見までの経過日数は、全体の約4割にあたる1万4775人が当日~1日以内でしたが、この人たちは現役で仕事をしていて無断欠勤で心配してくれる人がいる、あるいは近所に親しく気遣ってくれる人がいたのでしょう。反対に周囲との交流が乏しかったのか1か月以上が3936人と約1割もいたのは考えさせられます。周囲に誰もおらずたった1人で死んでいくのも悲しいものですが、周囲にたくさんの人(それも顔見知りの)がいたのにもかかわらずたった1人で死ぬのはさらに寂しいものがあります。
    アメリカの銀行で従業員が自分の机に伏したまま亡くなっているのにもかかわらず、誰にも気に留められず発見されるまで4日を要したというニュースがありました。この従業員は60歳の女性で、勤務中に自分の机で突然亡くなったようです。日本の会社はワンフロアに机を並べて顔を突き合わせながら仕事をするのが主流ですが、映画やドラマで見るアメリカのオフィスは1人1部屋とはいかないまでも簡易的にでも仕切りを立て、ある程度のプライバシーは保たれるようになっています。この女性の机もパーテーションで仕切られた中にあったため発見が遅れたようですが、それにしても4日間とは。そのあいだ彼女には1つの業務連絡もなかったのでしょうか。また、ランチを誘う同僚はいなかったのでしょうか。退勤後に「ちょっと一杯」の友人はいなかったのでしょうか。亡くなったことだけでなく、いろんな意味で悲しくなるニュースでした。
     
     
    ●愛知県瀬戸市のハローワーク(職業安定所)に無言電話などをかけ続けていた55歳の無職の男が偽計業務妨害の疑いで逮捕されたというニュースがありました。この男は2月から8月までの間、6000回以上にわたり自身の携帯電話から瀬戸市のハローワークに電話をかけ、職員らに対し「お疲れ様です」などと言うのみで通話を終了したり、無言の状態を続けるなどしていたそうです。6000回といえば月に1000回ほどになりますので、土日が休みのハローワークに対し、単純計算で毎日50回もダイヤルを回していたのですから恐れ入ります。
    もちろん発信は携帯電話でしたから番号を記憶させておいてピッ!とワンプッシュだけだったのかもしれませんが、それにしても50回となれば9時から5時のハローワークの開庁時間のほとんどを電話にかかりっきりだったのは間違いありません。まともな社会人ならとても出来る芸当ではありませんが、そこは無職の強み、時間だけは十分にあったようです。
    このニュースを見て誰もが「そんなことに労力を使うくらいなら働けよ」とも思うでしょうが、彼はそれなりに努力はしていたようです。なぜならこの男は職を探すため十数年間もハローワークに通っていたというのですから。それだけの期間があればハローワーク中のすべての求人票を閲覧することもできたはずですが、十数年かかっていまだに“無職”とは、人手不足で困っている企業も多い中どれだけ選り好みをしていたのでしょう。あるいはハローワークが彼の適正に応じた会社を紹介していなかったのか。次回、男が訪れたときには“テレホンコールセンター”をお勧めしてはいかがでしょうか。そこなら電話がかけ放題ですからきっと長続きするはずです。
     
     
    ●近年、全国各地で住民がエサを求めて人里まで下りてきたクマに襲われる事故が増えています。その地域に住む人は外出時にはクマ避けの鈴を腰にぶら下げ難に遭わないように注意しますが、なにしろ相手は野生動物ですからそれに100%の効果は望めません。それで付近でクマの目撃情報があればもう家に閉じこもるしかなくなるのです。
    そんな時、出番となるのは地元の猟友会です。彼らは住民が平穏な生活を取り戻すため、恐ろしい野生のクマに敢然と立ち向かってくれるのです。そんな猟友会への出動依頼を北海道空知地方の奈井江町が断念したというニュースがありました。否、正確には猟友会が「協力できない」と拒否を示したのです。なぜなら出動1回につき、たったの8500円しか日当がでないからです。
    山で無抵抗の雉や鴨を撃つのではありません。相手はいつどこから襲ってくるかわからない獰猛なクマです。噛まれることはもちろん、すこし爪が触れただけで肉が引き裂かれ瀕死の重傷を負うのです。そんな命がけの仕事でありながら報酬が学生バイト並みの8500円だなんて「やってられないよ」と言う気持ちもわかります。そして首尾よくクマを駆除したとしても鉄砲を撃った場所が人家に近ければ「(人家に近いからこそ住民の危険回避のために撃ったのにもかかわらず)銃器の不適切使用」で警察につかまり、挙句の果てに実態をなにも理解していない動物愛護団体からは「なんで殺すんだ、クマがかわいそうじゃないか」と批判されるのですからこんな割りに合わない仕事はありません。よほどのメリット(リターン)がなければ誰もやらないでしょう。
    銃を扱うのは猟友会の他にも警官や自衛隊員がいますが、彼らは野生動物相手の訓練は受けていません(2015年には人を襲ったたった1匹の紀州犬を警官が射殺するのに13発もの弾数を要した事件が発生しています)。いくら命令とはいえ「クマ退治」なんて堪ったものではないでしょう。今回、猟友会との交渉決裂によるハンター不足を町はボランティアと民間業者で補うとしていますが、8500円の予算でどこまで集めることができるのやら。
    そうこうしている間にもクマは人里に下りてきますので、今回の揉め事の一番の被害者は町民です。こんなときこそ国が“金太郎”にならなければならないのに、肝心の国会議員たちはクマでもないのに冬眠を決め込み知らんふりなのですからまったく頼りになりません。

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  • 2024年6月7日号:ニュースに一言

    2024-06-07 15:21  
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    ●大相撲5月場所は23歳の新小結・大の里関の初優勝で幕を閉じました。それも過去最短の初土俵から7場所での優勝というおまけ付きです。5月場所は1横綱、4大関のうち3力士が途中休場しましたが、大の里関は休場する前の照ノ富士、霧島を含めて1横綱2大関を倒しており、見方によっては彼が上位陣を休場に追い込んだともいえます。
    スポーツの素晴らしさは、選手の活躍が不特定多数の人たちに勇気や希望を与えるところといわれていますが、テレビ画面に映し出される大の里関の出身地、正月の地震から復興途上にある石川県で地元民がこの快挙に大喜びする様子を見るとまさにその通りで、金銭など物質的な援助ももちろん必要だとして、打ちひしがれた人々を力づけるのはなによりも精神的援助だとつくづく感じました。
    その意味では5月場所での大の里関の優勝は年6場所のうちの1つの優勝に過ぎないのかもしれませんが、この23歳の若者の活躍はそれにとどまらない付加価値の高いものだったと思います。さらに遡ること2ヶ月、3月の春場所では新入幕の24歳、尊富士関が初優勝しています。こちらも新入幕力士の優勝は110年ぶりといいますから近代相撲ではほぼ初めてといってもいいでしょう。
    このところ大相撲では、その世界に入って間もない力士の活躍が、逆に言えばベテラン勢の体たらくが目立ちます。いままで相撲、将棋、ボクシングはプロとアマの力量差が極めて大きい競技だといわれていました。それもあって他の競技だと序列は1位から順に位付けされるだけですが、これらの最高位には横綱、名人、チャンピオンと特別な称号が与えられています。にもかかわらず横綱、大関が休場ばかりで、やっと出てきたと思ったらコロコロ負けるのはいただけません。いままで古くは大鵬、柏戸から北の富士、北の湖、千代の富士、貴乃花、朝青龍、白鵬と絶対的横綱が存在していました。彼らが特別に抜きん出ていたのか、あるいはその周りの勢力が弱すぎたのか定かではありませんが、憎らしいほどの強さに好角家はしびれたものです。
    世間は常にヒーロを求めています。若い人たちの活躍は非常に気持ちのいいものですが、横綱相撲を安心して観るのもまた相撲の醍醐味と思うと少し物足りなさを感じる昨今です。
     
     
    ●パナソニックが6月発売のミラーレス一眼カメラを紹介するホームページで、このカメラで撮ったのではない外部からもってきた写真を使って性能のよさをアピールしていたというニュースがありました。
    このホームページには草むらを遠くから走ってくる小犬の写真に「進化したリアルタイム認識AF(オートフォーカス)により、動きのある被写体の撮影で自動的にピントが合います」との説明文がつけられていました。写真を見ると確かに犬の表情までが寸分の狂いも無く捉えられており「素人の自分でも簡単にこんな写真が撮れるのなら是非欲しい」と誰もが思うことでしょう。しかし、実際にはこの写真はどこかのプロカメラマンが別のカメラで撮影したものだったのですから困ったものです。これでは我が社の製品こそがNo.1とアピールしなければならないメーカーが、自ら自社のカメラで撮った写真では性能の良さを伝えることができないと言っているのと同じです。
    世界に示すべく日本の“ものづくり”に対する矜持はいったいどこにいったのでしょう。これがもし開発から販売までを1人、あるいはごく少数で担う会社でしたらこんなことにはならなかったことと思います。なぜなら、完成させた商品に対する確固たる自信が“自社製品より劣るほかの会社のカメラ”で撮影された写真を絶対に許さないからです。しかし、パナソニックほどの巨大企業になると開発部、営業部、宣伝部などが細分化され“ものづくり”以外の部署が専門分野にのみ従事することでメーカーとしての本来のありかたを忘れてしまいがちです。今回の件で一番落胆し、また憤っているのは騙された購入者ではなく、自分たちの作ったカメラを否定された形になった製品開発に携わった社員たちかもしれません。
    写真といえばいままでは目の前にある真実をそのものズバリ写し出すものでした。そのため撮影者は“決定的瞬間”を逃すまいと緊張の中でカメラを構えたものですが、最近では明るさを変えることはもちろん、影を写らなくしたり、さらには本来そこにあった物を跡形も無く消し去るなどシャッターを押した後にいくらでも好き勝手に加工できるようになっています。写真はウソをつかないなんて過去のものです。音声も人間の声を自由に作り出せる現代、技術の進歩が信じられるものをどんどん少なくしているのは残念なことです。
     
     
    ●今年の正月に羽田空港で日航機が衝突炎上した際、貨物室に預けられていた犬が乗客と一緒に脱出できず犠牲になったことで「ペットも家族の一員なのに」という批判がありましたが、アメリカでワンコが文字通り家族同然に飛行機で海外旅行できるサービスが始まったというニュースがありました。
    この便は犬のおもちゃなどを販売する会社が用意するチャーター便で、搭乗したワンコはケージに入れられないことはもちろん、エリアを指定されることも無く飼い主と一緒に普通に客室のシートに座るといいますから驚くやらおかしいやら。しかも乗れるのは小型犬に限らずあらゆる犬種OKだそうで機内はいったいどうなることやら。
    我々が飛行機に乗ると離陸前にCAさんから機内設備の説明を受けます。救命胴衣の空気が足りないときには息を吹き込めと指示されますが、彼らははたして吸入パイプを噛むことなくうまく吹き込めるのか。シートベルトは身体のどの部分に巻くのか。また、機内食は「ビーフORチキン」のほかに「ORドッグフード」となるのでしょうか、疑問はつきません。
    このチャーター便はニューヨーク=ロサンゼルス、ニューヨーク=ロンドン、ニューヨーク=パリの3路線を定期的運航されるそうです、気になる料金は人間1人込みで国内線が片道6千ドル(約95万円)、国際線が8千ドル(約126万円)と結構なお値段です。まさにファーストクラス並みの価格でどれほどの需要があるのかわかりませんが、乗った犬たちが「“ワン”ダフル」と言うのだけは間違いないようです。
     
     
    ●最近では新婚夫婦の出会いのきっかけNo.1は「マッチングアプリ」だそうです。マッチングアプリとはネット上に自身のこと、望む条件を登録して希望に合った相手を探すものです。そんな現代版キューピッドともいうべきマッチングアプリを東京都が独自に開発しているというニュースがありました。
    民間にいくつもの業者があるのにわざわざ自治体が参入する意味を都は「行政がやることの安心感」と答えています。たしかに多くのアプリでは登録者の情報に虚偽があり、後々になってトラブルに発展するケースがあるようです。それを防ぐために東京都版では申し込み時に顔写真付きの本人確認書のほかに独身証明書か戸籍謄本、収入を証明する源泉徴収票などの書類提出に加えて事前面談もするそうです。配偶者がいるにもかかわらず未婚だと偽るのはもってのほかですが、年収を少しくらいサバを読むのも許さないとなると低収入にあえぐ若者の多い中、果たしてどこまで登録者を集められるのか疑問です。
    既存のアプリで本当は400万なのに500万と申告するのは出会いのチャンスを広げるためです。それをバカ正直に400万として予選落ちの連続でマッチングできなければなんの意味もありません。今は400万でも結婚して頑張れば500万、700万、1000万にもなるかもしれない若者の出会いのチャンスを厳格化により奪うのはいかがなものでしょう。
    なにより結婚しない(できない)理由によく経済的な不安が上げられますが、1人より2人で暮らす方が物心共に豊かになることもあるのです。お金が第一でそのチャンスを逃すのは残念なことです。そもそも行政のやるべきことは結婚相手を探す手伝いではなく、真面目に働きながら結婚したいと考える若者が安心して暮らせるだけの“稼げる環境”をつくることだと思うのですが。都はアプリ開発を含む結婚促進事業に23年度は2億円、24年度は3億円を予算計上しています。これらはすべて未婚者を含めたすべての都民の税金です。もっと有意義に使ってもらいたいものです。
     
     
    ●2025年3月から半年の予定で開催される大阪・関西万博のボランティアが決まったというニュースがありました。1月26日から4月末にかけて行なわれたこの募集には当初目標の2万人を大きく上回る5万5634人の応募があり、急遽採用人数を3万人に増やしました。
    今回の万博は日を追うごとに上方修正される予算や工事の遅れ、参加国の減少などネガテェブな話題ばかりで一向に盛り上がっていませんでしたが、この応募者増に協会幹部は「予想をはるかに超える数」と大喜びのようです。
    応募者の内訳は10~20代が38・7%、30~40代16・7%、それ以上が44・6%で、特に10代の23・6%は年代別ではトップと、中高年が主となる今までのボランティアとは違った年代構成となっています。前期高齢者のわたしの周りでは万博を話題にする人はほとんどいませんが、若者の間では大盛り上がりなのかと思いきや、どうも様子がおかしいことに気付きました。なんと大阪の大学の多くが学生に対し「ボランティアに行け」と動員をかけていたようなのです。
    元々、大阪府内の42大学で構成するNPO法人と万博協会は協定を結んでいましたのである程度の協力があるのは予想していましたが、中にはボランティア実績を単位認定する大学まであったといいますから“やりすぎ感”は否めません。ボランティアとは本来、無償の奉仕活動のはずです。見返りをちらつかせて働かせるのならボランティアなんて聞こえの良い言葉を使うことはやめてもらいたいものです。さらに応募期間は3ヶ月あまりあったのにもかかわらず5万5634人中、3万人が最後の10日間の駆け込み応募ということで、大学側が「さっさと申し込まんかい!」と発破をかけたことがうかがえます。
    そして協会が募った会場ボランティアの3万4190人、府市が募った駅や街中で活動するボランティアの2万1444人の応募者のうち、両方に応募した人が2万204人もいたというのは「仕事内容はなんでもいいから、とにかくボランティアをしたい」という表れでしょう。その理由が「大好きな万博に関わりたい」のか「単位が欲しい」のかはわかりませんが大学の動員活動が寄与したことは間違いありません。
    重複応募を除くと協会幹部が大喜びした5万5634人も、実質3万5430人とさほど大きな数字ではなかったのですが、主催者側は盛り上がっている雰囲気作りに躍起になっています。しかし、前売り券の販売は一向に進んでいませんし、頼りにしていた学校単位の無料招待も会場でのガス爆発事故や交通手段の確保が難しいなどを不安視する先生方の反対がありどうなるのかわからず雲行きはますます怪しくなっています。それもこれも今度の万博が「何を置いても行きたい」と思わすほど魅力的でないからです。
    1970年の大阪万博の「月の石」、2005年の愛知万博の「冷凍マンモス」など過去の万博には“目玉”といわれる展示物がありましたが、今回の大阪・関西万博にはマスコットキャラクターの「ミャクミャク」にたくさんの目玉が付いているだけで肝心の展示物には何もないのですからそれも仕方がないのかもしれません。

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  • 2024年6月2日号:ニュースに一言

    2024-06-02 16:27  
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    ●6月から始まる定額減税で、政府は民間企業に対し給与明細に所得税の減税額を明記することを義務付けるというニュースがありました。すっかり忘れていましたが、昨年11月に国は1人あたり4万円(所得税3万、住民税1万)の定額減税を決めました。その理由を急激な物価高による家計負担を軽減するためだとしていましたが、物価高は今年6月から始まるわけではありません。すでに当時から国民は家計逼迫に喘いでいたのですから、すぐにでも実施すればいいものをなんだかんだと理由をつけ半年も先延ばしにしていたのです。
    もちろんその間、国民が晩御飯のお肉を牛肉から豚肉に替えたり、ビールを発泡酒にするなど日々のやりくりに追われ続けたことは言うまでもありません。その“定額減税”の金額を今度は受け取り手に「はっきりわかるようにせよ」と言い出したのです。その理由を官房長官は会見で「国民のみなさまが政策の効果を実感できるようにすることが重要だ」と述べています。すなわち「ただ減税しただけでは国民はありがたがらないだろう、国が○○円、恵んでくれた。岸田内閣ありがとうと思うようにしろ」と言っているのです。
    冗談じゃない、給料は元々労働者が働いて得たものです。それを返すだけなのに、さも与えるかのごとくなにを偉そうに言っているのか。「減税額を明記せよ」と言う方は簡単ですが、手間が増えるだけでなんのメリットもない実際に明細書を発行する企業は大迷惑です。
    岸田内閣は民間企業に従業員の賃金アップを要請したことを自画自賛しています。その結果、この4月から実際に上がった会社もあったでしょう。しかし、支給額が上がるとそれにつれ控除額もアップします。果たしてどれだけ“手取り”が増えたのやら。減税額を明記しろというのなら、税金や社会保険料の増額分も同じように明らかにしてもらいたいものです。
     
     
    ●千葉県浦安市にある東京ディズニーランドで自身の下半身を露出させ20代女性に押し当てた53歳の男が不同意わいせつの疑いで逮捕されたというニュースがありました。
    ディズニーランドといえば、一歩そこに足を踏み入れたらミッキーやミニー、ドナルドダックなどの人気キャラクターが来場者をこれでもかというくらいに楽しませてくれる場所です。そんな誰もが知る夢の国で、かわいらしさのかけらもない自分の“ダンボ”を使ってうら若き女性に悪夢を見させる男がいたなんて呆れるばかりです。さらに、男の職業が甲府市にある小学校の現役教師で、ランドへの来園理由が修学旅行の引率だったと聞いて驚きました。
    修学旅行は宿泊を伴いながら研修や見学により知見を広げる学校生活における一大イベントで、東京をその行き先とする学校の多くは研修先に東京ディズニーランドを組み入れます。なぜならランドは「子供たちが修学旅行で行きたい場所No.1」だからです。そして、生徒は建前上は研修ですので行きのバスの中では先生からの注意事項を神妙な顔で聞いていますが、いざ入園さえすればこっちのものとばかりに猛ダッシュでお目当てのアトラクションを目指します。ディズニーランドでの一番大切なことは何と言っても「楽しむこと」ですから大はしゃぎは大歓迎です。
    そんな目いっぱい楽しむ生徒と違い、本来なら引率の教師は「子供たちにケガや具合の悪い者はいないか」と気配り目配りでとても楽しむ余裕などないことでしょう。にもかかわらず生徒を放ったらかしにして、ランドに最も相応しくない歪んだ“楽しみ”をしていたこの男の罪は重大です。
    出発時間が迫り集合場所に戻ってきたメンバーの中に唯一この引率教師の姿はありませんでした。「先生がわいせつ行為で捕まった」――こんなとんでもない修学旅行のみやげ話を聞かされた保護者が不憫でなりません。かつての修学旅行では生徒が悪さをしないように教師が目を光らせることが当たり前でしたが、これからの修学旅行は教師が悪さをしないように生徒が見張らなければならないようです。
     
     
    ●全国の消費者生活センターに「害虫や害獣駆除の業者から高額請求を受けた」という若者からの相談が相次いでいるというニュースがありました。その内容はゴキブリが出没した部屋に住む20代の女性が駆除業者に電話し、「1万円くらいです」と聞いていた料金が、いざ契約となったとたんに「10万円です」と跳ね上がったりするものです。
    そんなに高額なら断ればいいようなものですが、ゴキブリが大嫌いなこの女性は一刻も早く退治してもらいたくて泣く泣くクレジット支払いの契約を結んだそうです。それにしてもネズミの集団や蜂の巣など素人の手に負えないものならいざ知らず、昔は丸めた新聞紙で“パシッ!”で終わっていたゴキブリまで業者に依頼するとは現代の若者は随分とひ弱になったものです。
    その背景には住宅環境の変化があります。以前はどこの家にもしょっちゅうゴキブリは出てきましたし、暖かくなると台所周辺には大小のハエが飛び交っていました。そのため夏場は料理を守る蝿帳や蝿取り紙は必需品でした。ところが、最近では衛生状態も良くなり、ゴキブリや蝿はすっかり影を潜めました。そんな生まれてこのかたほとんど害虫を見たことが無かった若者が一人暮らしになって初めてゴキブリに相対し、パニックになって業者に助けを求めるようです。
    さらに悪いことには身近にあるスマホでネットを検索することにより、そこに待ち構える悪徳業者の“ホイホイ”にまんまと引っかかってしまうのです。一人暮らしの若者に言いたい。この世で最も恐ろしいのは獣でも虫でもなく、隙あらば騙してやろうと虎視眈々と狙っている悪徳な人間です、と。
     
     
    ●今年2月に行なわれた早稲田大学の一般入試で、カンニングをした18歳の少年が偽計業務妨害の疑いで書類送検されたというニュースがありました。
    わたしが学生時代のカンニングといえば筆箱の中に単語や公式を記した紙片を忍ばすなどの単純なものでしたが、ここ数年は試験会場に携帯電話を持ち込み外部と連絡を取り合って答えを聞き出すなど随分と“ハイテク”化しています。そのため各試験会場ではまず最初に「携帯電話の電源を切ってカバンにしまって下さい!」と強い指示がなされます。監督者も試験中は携帯電話を触っていないかを注意深く見張りますが、今回の受験生はまんまとその監視の目を逃れていました。なぜなら彼が使っていたのは「スマートグラス」と呼ばれる画像撮影と通信機能を併せ持つスパイ映画さながらのメガネ型端末だったのですから。
    高校生の視力1・0以下、いわゆる近視割合は7割ほどだそうです。ということは受験生の半分以上がメガネをかけているのですから「スマートグラス」を装着して試験会場に入ったところで何の違和感もありません。少年はそれで問題用紙を撮影し、事前にSNSで「家庭教師をしてくれませんか」と言って目星をつけていた複数の人たちとその画像を共有して解答を求めていました。
    今回は画像を受け取った人の中の1人が「これは不正ではないか」と気付き、早稲田大学に連絡したことで発覚しましたが、もし協力者が少年の親しい人間だったらこの不正は成功していたでしょう。いや、実際にこのやり方で誰にもバレずに合格を勝ち取ったほかの受験生がいたかもしれません。今後はスマホだけでなく受験生のメガネまでチェックしなければならない学校側は大変です。さらに最近では外見からはまったくそれとわからないコンタクトレンズ型端末まであるそうで、こうなるともはやお手上げです。
    『生き馬の目を抜く』は誰にも気付かれないほどの素早い動き、また油断がならないずるいことの例えですが、これからは生き馬の目を抜く不正受験生を排除するため、各会場には眼科医が常駐して文字通り受験生の“目ん玉”まで取り出して確認する必要があるようです。
     
     
    ●仕事を失い収入の道が途絶えた人が頼りにするのが失業保険(雇用保険)です。その失業保険は「就職しようとする意思と、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行なっている人」に給付されるもので、申請者は受給期間中は4週間に1度、失業状態が続いているのか、また求職活動を行なっているのかという「働く意思」の確認のためにハローワーク(職業安定所)に出向いて面談を受けなければなりません。その面談が来年から“子育てや介護中の人”、“障害がある人”などハローワークに出向くのが難しい人はオンラインで受けられるようになるというニュースがありました。
    コロナ騒動以来、いろいろなものがオンラインで処理できるようになっています。わざわざ交通費と時間を使わなくてもパソコンやスマホで自宅に居ながら手続きできるのならこれほど便利なものはありません。しかし、なぜ対象者が「出向くのが難しい人」に限定されているのでしょう。無駄を省くというならすべての人を対象にするべきです。そもそもハローワークに出向くことすらできない人がまともに働くことなんてできるのでしょうか。前述のように失業保険は「働く意思があり、すぐにでも働ける人」が対象ですから、その時点で資格がないといってもいいのでは。
    世の中が高度成長期で景気が良く、また終身雇用の時代では生涯失業保険と無縁のサラリーマンがほとんどでしたが、倒産や事業縮小する会社が増え、さらに転職が当たり前の現代では失業保険のお世話になる人が身近にも多くなっています。しかし、中には“保険”という公平な相互扶助の精神から大きくはずれているケースもあるようです。会社経営をする友人によりますと、就職面接に来る応募者の中に、1年ほど勤めては転職を繰り返している者が一定数いるそうです。彼らはさすがに転職慣れしていますから面接もそつなくこなし採用すると、1年ほど経ったころ決まって「そろそろ辞めますわ」と去っていくそうです。不思議に思った友人が調べてみると、どうやら彼らは「失業保険の受給資格を得るまで働き、目的が達せられるとしばらく給付を受け、その期間が終わるとまた資格を得るまで働く」を繰り返しているというのです。
    本来、いざと言うときのための保険が、一部の人たちの間では定期収入として見込まれているのです。彼らのしていることは制度上なんら問題はありません。しかし、一方では人手不足で困っている企業が多数あることも事実です。国や自治体からの給付(公助)を受けることは権利であり、なんら恥じることはありませんが「教育・勤労・納税」という三大義務があることも忘れてはなりません。

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  • 2024年5月31日号:ニュースに一言

    2024-05-31 07:00  
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    ●新年度が始まり学校にも春休みを終えた学生たちが元気な姿で戻って来ました。新学期で気になるのはなんと言ってもクラス分けでしょう。新入生はもちろん、進級した生徒たちもその対象になりますので「○○さんと同じならいいな」「○○君と一緒は嫌だ」など期待と不安でいっぱいのことと思います。そんなクラス分けを滋賀県守山市の中学校が1回決めて発表したにもかかわらず、保護者からの指摘で白紙に戻したというニュースがありました。
    学校側はやり直しの理由を「人間関係などを考慮し修正する中で、最終的に大事な部分が抜けていた」と話していますが、クラス分けをする際には成績上位者をまんべんなく振り分けるほか“いじめっ子”と“いじめられっ子”を一緒にしないなどの配慮は当然されていたはずです。
    それにもかかわらずご破算にしたのは「○○さんと同じクラスになるくらいなら学校にいかない」と言うわが子を説得できなかった、たった一人の親の申し出をそのまま受け入れたからにほかなりません。今回の措置のために始業式がやり直しとなり、授業開始が遅れたといいますから、仮に“生徒のため”だったとしても、一人のために大多数の生徒が迷惑を被っているのは事実です。学校側が事なかれ主義に陥り保護者の言いなりになったのでは、生徒は先生を信用できません。なにより心配なのは学校に意見した親が誰だか分かってしまうことです。その子に対して「なに勝手なこと言ってんだ」「おまえが俺たちを嫌なように、俺たちもおまえが嫌い」なんてことになりかねません。
    学校は一人の保護者の満足のために大きな課題を背負うことになりました。中学校は勉強だけでなく社会性を学ぶ場でもあります。3年間クラス替えがなければ40名だけで終わるクラスメイトが、それにより3倍の120名に増えます。仲の良い友達と離れるのは寂しいでしょうが、クラスが替わろうと友情がなくなることはありません。それよりそれまで親しくなかった人たちと芽生える新たな友情に期待しましょう。今まで頑張ってきた人はさらに頑張る。頑張ってこなかった人はリセットして今度は頑張る。気持ちを新たに未来を向く、そんな新学期であってもらいたいものです。
     
     
    ●大阪府の吉村知事が会見で自身の発言を謝罪撤回したというニュースがありました。吉村知事はテレビ朝日が放送する「モーニングショー」でコメンテーターの玉川徹氏が再三にわたり来年に開催が迫る「大阪万博」に異議を唱えることに反発し、党の集会で「玉川さんは万博に出入り禁止、来たいと言っても入れてやらない」などと発言していました。彼の言葉はすぐにSNSで拡散され「何様のつもりだ」「万博に対しては自由に意見を言うこともできないのか」と批難があふれました。
    吉村さんや維新を嫌いな人がここぞとばかりに攻撃したい気持ちはわからないでもありませんが、わたしは今回の彼の発言を大した問題とは思っていません。実際に知事が来場者を選別する権限を持っているわけでもなく単なるジョークでありいちいち反応する必要はないと考えるからです。さらにその場は“身内”ばかりの私的な会合であり、その中でさえ軽口のひとつも許されないなんて、それこそ発言の自由の侵害です。
    吉村知事の出禁発言ばかりが注目されていますが、重要なのは万博開催の是非であり、玉川さんの来場の是非なんてどうでもいいことです。吉村知事は会見の中で「テレビは公平な放送をお願いします」とも言いましたが、こちらは“出禁発言”と違って重要なことです。新聞なら「万博反対」の論陣を張り一歩的に攻め立てることも許されます。しかしテレビはそうもいきません。放送法第4条に「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」とあるからです。これは新聞が自身の力だけで発行するのに対し、テレビは国民の共有財産である電波を“借り受けて”放送しているからです。
    国民それぞれが違う意見を持つのにテレビが「これ以外は認めん」なんてあり得ないのです。しかし現在のテレビの傲慢ぶりはすさまじく「我こそがオピニオンリーダー」とばかりに偏向放送を垂れ流しています。テレビ放送が始まって以来、放送免許が取り消された事例はありません。正常な放送を取り戻すためにも既得権に守られたこの体制を見直す時期が来ているのではないでしょうか。また、放送法第4条には「政治的に公平であること」ともあります。いよいよ衆院選の補選が始まります。皆さん、ちゃんと守られているかよく監視していて下さい。
     
     
    ●小池百合子東京都知事の学歴詐称問題が再燃しています。彼女の「エジプト・カイロ大学首席卒業」という経歴は以前から「ウソではないか」との疑問がありましたが、エジプト大使館を経由した大学側の「卒業しました」との声明によりうやむやのまま沈静化していました。それがここにきて「過去の声明は小池氏が捏造を依頼して出されたもの」との証言が出てきたのですから大変です。しかもその証言者が東京都の特別顧問や都民ファーストの会事務総長を務めた小池氏の最側近となると穏やかではありません。その信憑性は極めて高いものと考えられます。学歴詐称はれっきとした公職選挙法違反です。もし告発が真実なら小池氏は政治家失格、いや犯罪者と言ってもいいでしょう。わたしは自身が大学中退ということもあり、他人を学歴で評価することはありません。たしかに“偏差値”の高い大学出身者が勉強得意なのは認めます。しかしそれはあくまで紙のテストの答えをすばやく導き出す能力に優れているに過ぎず、人間としての能力が高いのとは別です。ましてや卒業して社会人となれば、そのときの自分そのものが実力のすべてであり過去の学歴なんてただの“足跡”にしか過ぎません。そんなものに小池氏がなぜ執着したのか。小池氏はテレビキャスターから政界に転身しました。すでに知名度もあり、またその職業からも「賢い(真相は別にして)」と思われていたはずです。もうそれだけでも十分なのに貪欲なまでに「カイロ大学・首席卒業」を謳ったのは、東大卒と聞いただけで「すごい!」という人が多い中、50年以上前に外国の大学、それも首席で卒業となれば選挙においてその効果は絶大なものがあったからにほかなりません。これには有権者も肩書きや経歴でなく、候補者自身を見極める目を養わなければならないことを痛感させられます。小池氏は政界での地位を確立し、周りが忖度するようになるにつれ「わたしは誰にも攻撃されない」と自信満々だったのでしょうが、まさに天網恢恢疎にして漏らさず、報いを受けるときが来たようです。もし、小池氏の学歴が本当なら小池氏自身が疑惑を晴らすことは簡単です。しかし、不思議なことに彼女はその簡単なことをしようとはしません。小池氏はこれまでも「言ったことを言ってない」「やったことをやってない」など平然とウソをついてきました。今回もうまく窮地を脱することができるのか見ものです。
     
     
    ●現在、20歳から60歳までの40年間となっている国民年金の納付期間を5年間延長し、65歳までの45年間とする案を厚生労働省が検証するというニュースがありました。年金支給開始年齢が60歳から65歳に延ばされて以来、国は無収入期間を作らないために国民に65歳まで働くことを求めています。そして企業に対しても「65歳までは特段の事情が無い限り雇用を止めてはならない」との縛りをつけました。これにより希望者はほぼ全員が会社に残れるようになったのですが、給料は現役時代より大幅にダウンするため「こんな給料でやってられるか」と今度は“働かないおじさん社員”が増殖する問題が生まれているようです。
    そんなに不満なら延長しなければいいのですが、サラリーマンでいたら「減ったとはいえ収入は保証される」「会社の健康保険に加入できる」「健康のために少しは動かないと」などの理由で、60歳定年即退職の人は少ないようです。そんな勤め人は今でも年金保険料(厚生年金として)を徴収されていますので、今後65歳まで納付期間延長となったところでなんら変わりはありません。
    問題は“第一号被保険者”自営業の人たちです。彼らにとって5年間延長は100万円以上の支出増になります。そしていよいよ給付の年齢になっても、もらえるのは月に7万円弱(これも今後どうなるのかわかりません)。この金額は生活保護の支給額よりはるかに少ないもので「それなら保険料納付なんてしないで、そのときになったら生保申請したほうが得だ」となり、年金制度の根本を揺るがしかねません。
    「100年安心」といわれる日本の年金制度ですが、財源が足りなくなる度に「徴収額を増やす」「納付期間を増やす」「納付義務対象を増やす」と国民に負担を強いています。こんなやり方がまかりとおるのなら誰がやっても100年どころか千年でも万年でも続けられます。賢い役人、国会議員の方々が揃いながらもっとましな案はないのでしょうか。国民が納得できない年金制度なんて存在価値はありません。
     
     
    ●SNS上に著名人になりすまし投資を誘う詐欺広告が横行しているというニュースがありました。これはフェイスブックやインスタグラムなどに現れた有名なエコノミストや実業家が「わたしが儲かる方法を教えます」と謳い、個別のやり取りに誘い込んだ後に投資金を騙し取るもので、実際の本人の写真を使い声もAIで本人のものを再現しており一目ではニセモノとはわからない精巧さです。中には1億円以上を失った人もいるようで全体の被害額は数百億円にも及ぶといわれています。
    命の次に大切なお金を有名人だからという理由で安易に信用して託すのは非常に危険です。そもそも本当に儲かるのなら誰にも言わずみんな自分だけでこっそりやるものです。国は国民に盛んに投資をすすめていますが、投資はあくまで自己責任ということを忘れてはいけません。詐欺をはたらく者が最も悪いのは当然だとして、投資に関しては騙されるほうにも“欲”という落ち度は否めません。それに対し、なんの関係もないのに勝手に名前を使われて悪事の片棒を担ぐ形になったもう一方の被害者は堪ったものではありません。
    そんな“広告塔”にされた著名人からは怒りの声が上がっており、広告を野放しに掲載した運営会社に対し損害賠償請求の訴えが起こされています。勝手に名前を使われた人は経済評論家の森永卓郎さん、実業家の堀江貴文さん、前澤友作さんなどいかにも「この人の言う通りにしたら儲かるだろう」と思わす人が並んでいます。かくいうわたしも広告塔にされていました。ニコ生「百田塾」の写真がそのまま使われており、自信満々に「わたしが指南します」とあるのですからわが事ながら笑ってしまいます。幸いにもわたしの広告を見て「この人なら信用できる」と考え申し込んだ被害者はまだいないようです。これは喜ぶべきか悲しむべきか・・・。
    『この文章を書いた後、秋田氏に住む70代の女性がわたしの名前を騙った投資詐欺サイトの被害者になったというニュースがありました。それを見た感想は悲しみでも、もちろん喜びでもなく、関係ないこととはいえなぜかとても申し訳ない気持ちになりました。』
     
     
    ●ことし2月に福岡・博多の繁華街で赤信号の交差点に進入し、タクシーと衝突して4人にけがを負わせた会社員の男2人が危険運転傷害の疑いで逮捕されたというニュースがありました。事故後、男は自ら通報していましたが、警察が付近の防犯カメラを確認すると、なんと彼らのクルマが事故当時屋根に赤色灯を点け、ご丁寧にマイクで「交差点に入ります」と覆面パトカーになりすましていたことがわかったといいますから呆れます。
    本物のパトカーなら緊急走行時であっても細心の注意を払って交差点に入りますが、ニセモノの彼らは「パトランプさえ光らせておけば大丈夫」と高をくくっていたのでしょう。そうは問屋が卸さず案の定事故を起こしてしまいました。
    パトカー、救急車、消防自動車などの緊急車両は市民の命や財産を守るために「信号を守らない」「逆走する」「制限速度を守らない」などの特権が許されています。それを何の任務も無いだけでなく訓練も受けていない者がその権利を得るために成りすますなんて絶対に許されることではありません。調べに対し、この20代の男2人は「職務質問を見たかったから前のパトカーを追いかけようと“緊急走行”した」と供述していますが、当の本人が職務質問にとどまらず、容疑者としての取調べを受けることになったとは笑い話にもなりません。
    なにはともあれ、彼らが憧れていた本物のパトカーに乗れたのは良かったです。しかし、それは希望していた運転席ではなく両脇を本物の警察官に挟まれた“後部座席”でしたが。
     
     
    ●買い物をするにもスマホをピッ!、レストランに入ってもスマホをピッ!、電車に乗るのもスマホをピッ!と最近では「キャッシュレス決済」がすっかり浸透し、お財布を持たずスマホひとつだけで外出する人も増えているようです。そんな人たちがパニックに陥ったというニュースです。
    5月15日午後0時過ぎから3時間ほど決済アプリ「PayPay」が使えなくなったのです。不通になったのがちょうど昼時でしたから、サラリーマンの中にはランチを食べて「さあ会計」となって青ざめた人も多かったそうです。ポケット中の小銭をかき集めてようやく支払いができた人はまだましで、店に腕時計を置いたままATMに走ったり、同僚にお金を持って来てもらったりと“無銭飲食”を避けるためオフィス街の飲食店は大混乱だったようです。
    便利なものには必ず落とし穴があるものです。何もかもが1台のスマホに集約されている現代ではそれが使えなくなったら何もできなくなります。支払いや通話はもちろん、電池切れにでもなれば電話帳さえ開くことができず公衆電話があっても番号がわかりません。かつては自宅や会社などよく架けるところの電話番号ぐらいは暗記していたものですが、指先ひとつで架電する現代では市外局番すら覚えていません。
    さて、今回の不具合に懲りて明日からは少額でも現金を持ち歩く人も増えることだと思います。わたしの友人の中にはいざというときのためにスマホケースの中に小さく折りたたんだ1000円札を常に入れている人がいます。しかし、昨今の物価上昇で昼飯も随分と高くなっており1000円では心もとなくなっています。さあ、いまこそすっかり忘れていた“2000円札”の出番です。でも、最近はとんとお見かけしません。
     
     
    ●愛知県に住む30代の男性が、“男性”のパートナーと戸籍上の名字を同じにするよう求めていた審判で、名古屋家庭裁判所が男性の申し立てを認めたというニュースがありました。
    これは「結婚により夫婦は同じ姓を名乗るとなっているにもかかわらず、現行の法律で同性同士の結婚が認められていないからといってパートナーと同じ名字になれないのはおかしい」と訴えていたものです。それに対し裁判所は戸籍法に「やむを得ない事由があれば変更できる」とあるのを「彼らは社会観念上、夫婦と同様だ。よってこれはやむを得ない事由にあたる」と拡大解釈したのです。
    この男性は2017年に相手の男性と公正証書により結婚契約などを結んだ後、翌年から同居を開始し2023年からは里子も養育していました。しかし、この“結婚生活”では里子の保育園の通園手続きで、姓が違うパートナーとの関係確認を求められるなどの不具合が生じていたそうで今回の申し立てとなりました。
    夫婦になっておきながら「同じ姓は嫌だ。別姓を認めろ」というカップルがいれば一方で「夫婦じゃないけど同姓を認めろ」というカップルもいる。千差万別、人間の数だけ「あーしたい、こ-したい」の要望があります。しかし、そのすべてを認めていたら社会秩序なんて成り立ちません。そこで大多数の納得できる「常識的な落としどころ」として法律を定め社会の安寧を保っているのです。それが昨今、個人の権利ばかりが尊重される風潮となっています。
    さらにそれらが裁判で争われることで、本来“例外”として処理されるべきものまで判例により“一般的”のお墨付きを得るのですから困ったものです。それらの審判を下す裁判官は判決理由に「法律制定の時代と状況が変わっている」と言いますが、それなら「昔とちがって現代の子供は身体も大きいのだから中学生でも運転免許をとらせろ」、あるいは「昔は家の外に繋いでいた犬も現代では室内で家族同然に暮らしているのだから結婚させろ」も認めなければならなくなります。個人の権利が最大限尊重されることに異論はありませんが、その個人が社会の一員であることを忘れてはなりません。そして、その社会は一定のルールの下で成り立っているのです。

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