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嫌われるインテリがこれから生きていく方法(その3)〜『自分のアタマで考えよう』〜
2016-11-17 23:4531pt嫌われるインテリがこれから生きていく方法(その2)〜インテリに都合の悪い資本主義の終焉〜 のつづきです。 インテリが嫌われたくなければ、「世のインテリたちの言っていることは間違っているかもしれない」と疑うことがスタートと前回締めくくりました。 疑うことくらいなら多くの人が経験しているのではないでしょうか。 たとえば、アベノミクス。政府と日銀が一体となって様々な施策を行いましたが、頼りにできましたか? 私はできません。私は私の周りの景気が良くなってくれなければ、私の収入は増えません。アベノミクスの話を聞いていても、私の収入にはまるでつながる気がしません。 ですから自分で考える必要が出てきます。インテリの中のインテリたちが考えた施策任せにしても、自分の暮らしは変わりません。 インテリであれば、そこでただ愚痴るに終わらせることはありません。自分で考えることができます。インテリのトップたちが考えた理論に勝ることなど到底できないかもしれませんが、そこで諦めていては、インテリでない人から嫌われます。私たち普通のインテリは、実社会の中にいるのに、実社会から乖離した超インテリたちの理論をオウム返ししてはいけないのです。 今取り組み中のこのシリーズはまさにそのための研究です。 「いいね!」で学ぶ、世界一わかりやすいお金の仕組み(その1) いったん、普通のお金の理論はすべて忘れ去って、「いいね!」の仕組みとお金の仕組みを比較しています。「いいね!」の方は、ロングテール理論として長年研究していますから、そこでの理論が適応できます。まだ最後まで見通せてるわけではないですが、アベノミクス政策が「効かない」ことくらいは言えるようになるのではないかと思っています。 普通のインテリは、超インテリの話を鵜呑みにするのではなく、自分たちの住んでいる実社会から目をそらすことなく観察し、それに合う理論を考えなければなりません。 それは簡単なことではないし、正しいかもおぼつかないかもしれませんが、その理論をインテリでない人がバカにすることはないでしょう。なぜなら同じ実社会に住んでいて前提なんかは共感できるのですから。(つづく)《ワンポイントミライ》(?)ミライ: 簡単にいうと、インテリだって嫌われないためには、『自分のアタマで考えよう』ってことでしょうか。ちきりんさんの本のタイトルみたいですが。フツクロウ: ホウじゃな。 -
[S] 自動走行バス、かわいい
2016-11-16 23:4531ptいつもとちょっと違う水曜、今回は気楽に短い記事[S]です。 自動走行バスが初の公道実験 秋田・田沢湖畔:朝日新聞デジタル
かわいい! 運転手いなければこの大きさでいいんですね。休まなくていいから、何往復だってできますしね。道の整備も楽です。 同じ道を運転するというのは、初期の自動運転にもってこいですし。 観光地ですから、遅くても「遅くていい」という人と足腰弱い人に対応できて、とりあえずはそれで十分ですし。 なにしろ観光地ですから、しばらくはそれ自体が珍しくてお客さんを呼び込みますし。 こういう条件が揃っている場所は、日本にたくさんありますから、試験がうまくいけば、あるとき雨後の筍のように一気に広まるのではないでしょうか。来年? さ来年? 車体はいくらくらいするんでしょうね。 東京は6日連日で高齢者の交通事故があってうち5件は死亡事故とかテレビで言ってました。不正確だったらすいません。交通事故死者数は年々減る傾向にありましたが、最近高齢者の事故が増えて下げ止まっている可能性があるようです。 喫緊の高齢者運転の対策も急がれるところですが、いずれは必ず自動運転が普及します。ここは、自動運転の普及に力を入れるべきです。早く普及させれば、高齢者事故を減らせるだけでなく、自動自動車の国際競争力も上がるでしょう。 国交省の大臣が熱烈に主張してもいいと思いますが、それが時期尚早であれば、比例区議員かあるいは自動運転を推進したいようなたとえば茨城県?の議員が、自動運転普及に特化して活動するのではないでしょうか。 一歩一歩だとは思いますが、まずはこのかわいいバスが、普通になる未来が1日でも早く訪れてほしいです!《ワンポイントミライ》(?)ミライ: かわいい!! って叫びたいのに、中の人に先に言われてしまったらどうしたらいいんでしょうか。フツクロウ: ホッホ。 -
東大ロボットの成績が伸び悩んだおかげで、「読む力」の弱い子がどこでつまづくか分かった件
2016-11-15 23:4531pt東大ロボットの成績が伸び悩んだおかげで、国語教育にブレークスルーが起こりそうです。 AI研究者が問う ロボットは文章を読めない では子どもたちは「読めて」いるのか?(湯浅誠) - Y!ニュース 東大の試験に受かることを目指していた人工知能(AI)が最近入学を諦めたという記事がありました。ディープラーニングとか出てきたのに、諦め早いなあ?と不思議に思っていたら、別の金脈を探り当てていたようです。 東大ロボットが国語や英語の成績が伸び悩む原因を調べているうちに、成績の悪い子はちゃんと教科書を読めていないのではないかということがわかってきたのです。 それを調べるために、「リーディングスキルテスト」というものを作成し、調査中とのこと。こんな問題が出るそうです。
リーディングスキルテストの実例と結果 (平成27年度実施予備調査) より
予備調査はすでに終わっていて、それによると、
テストを受験した公立中学校生340人のうち、
約5割が、教科書の内容を読み取れておらず、
約2割は、基礎的な読解もできていない
ことが明らかになってしまった。
とのこと。 教科書を読めてない子がたくさんいるというのは、身近な講師たちの話を聞いていると感覚的にはごく当たり前のことでしたが、今回それを正確に調査できるようになったのです!! これは画期的です。先生は、生徒の読解力はわかっていますが、具体的にどこでつまづくかというのは、手探りな場合が多いようです。でも、このテスト結果を見れば、つまづく箇所がわかりますから、補強の仕方も見えてくるでしょう。算数なら分数が苦手なら分数の問題を繰り返し解くなど要素分解できているのですが、国語ではそれはできていませんでした。 記事を読んでいても、このテストは急速に普及しそうですし、テストが普及するということは、その点数をあげるための教育が始まるということです。 このテストに関するプレスリリースサイト、 文章を正確に読む力を科学的に測るテストを開発/産学連携で「読解力」向上を目指す研究を加速でのレポートにとても面白い結果が紹介されています。
RST と同時に実施したアンケートとの関係では、意外なことに「読書が好きかどうか」「(各科目の)教科書を理解できていると感じるか」「塾に通っているか」とは統計的に有意な関係は見当たりませんでした。
「読書が好き」でも「教科書がわかると感じ」ても「塾に通って」ても、「読む力」があるとは限らないという結果です。 特に「親が『うちの子は読書が好き』といっても国語の成績がいいとは限らない」は身近な講師がよく指摘していたので、やはりそうなのかと驚きました。 ここまででわかることは、要は、現在の日本の社会の国語教育は、「読む力」の育成に役立っていないということです。学校の国語教育でも伸びてないし、塾でも伸びてない、家で親が子供にたくさん本を読ませても伸びてないのです。伸びる子は、自分で伸びていただけなのです。 しかし、今測定することができるようになったのですから、これからは違います。訓練できるようになったのです。 先ほど紹介したレポートには、AIで文章を理解しようとすることで得られた、文章理解に必要な 11 のプロセスが紹介されています。そして、それぞれのプロセスを子供たちがどれくらいできるのかということを調査することで、子供たちの「読む力」を正確に把握できるようになったのです。 さらには、今までの国語教育が「読む力」の役に立っていないことまでわかったのです。 東大ロボットが東大受験を諦めざるを得なかったおかげで、今後子供たちの「読む力」をつけることができるようになり、社会そのものが大きく進歩するでしょう。AI研究これまでの、最大の成果になることは間違いありません。《ワンポイントミライ》(?)ミライ: 来ましたね!!! これって、未来の普通「義務教育の学習達成率 99%」への道がより具体的に開けたじゃないですか!!フツクロウ: ホッホッホ! -
嫌われるインテリがこれから生きていく方法(その2)〜インテリに都合の悪い資本主義の終焉〜
2016-11-14 22:4531pt嫌われるインテリがこれから生きていく方法(その1) のつづきです。 今インテリが嫌われています。インテリといっても一部の人の問題ではありません。「論理的に考え方」が正しいと考えている人は大雑把にいってインテリです。EU離脱やトランプ当選で「論理が感情に負けた」と感じる人です。そういう人たちが今嫌われる対象です。 なぜ嫌われるのか。 インテリは論理的に考え尽くして結論を出していて、論理的に正しいと考えています。 そこが間違っています。 インテリたちの考え方はいろんな分野で古臭くなっていて現代に通用しないのに、まだそれが正しいと思い込んでいます。 たとえば、もう資本主義は終わっています。今までは何かやるには資本が必要でした。なのでまとまった資本があることがとても大切だったのです。 でも今やお金は有り余っていて、お金の方がまとまって資本が必要なところを探し回っています。昔は資本は貴重な資源でしたが今は過剰です。 しかも、まとまって資本が必要な事業は減っています。たとえば今私たちの暮らしを豊かにするアプリが次々生まれていますが、それらは大抵あまり資本を必要としません。個人が頑張って作ったりします。 そういった取り組みが少しお金が必要なら、クラウドファンディングやマイクロファンディングがあります。そういうところの資本需要は旺盛ですが、従来のまとまった資本はそういうところに入り込めてません。まとまっていないので、手間かかるからです。 資本主義が終わったからといって、資本がいらないという話ではありません。農業だって工業だって今主役ではないけど、今でもちゃんとあります。資本もいるけど、単に主役でなくなっただけです。グーグルもフェイスブックも大した資本なく始まってます。その後大きくなるのには必要だったでしょうが、イノベーションの主役ではありません。 こういった資本主義が終わっているという指摘はググればいくらでも出てきます。きっと学会では新しい理論も提案もされていることでしょう。個人的にはどんな数式が提案されているかも気になります。 しかし、そういう議論を私たちが見ることはあまりありません。 インテリたちがそういう話題をしないからです。 これは自然科学分野とは大きく異なる現象です。 例えば自然科学では、こんな記事が、論文が発表されるとすぐに現れます。 自然界の第5の力、発見か|ギズモード・ジャパン こういった最新の話題がソーシャルですぐ拡散され、私たちの目につくところに現れます。 しかし、資本主義に変わる経済理論やその骨子なんて流れてきた試しがありません。 それはインテリが本能的に自分に都合の悪い話題を避けるからです。 インテリは、インテリが繁栄する世界を望みます。自分はまだ大したことないインテリでも、もっとすごいインテリになれば、もっとすごいことができる、成功が約束されるという世界です。でなければ、インテリを磨くのはバカバカしいことです。 第5の力は、まさにその繁栄の象徴です。インテリの中のインテリの超天才科学者が世紀の発見かというわけですから、インテリにとってこんなに喜ばしい話題はないわけです。だから広まりやすいのです。 一方、新しい経済学は、きっとインテリには都合の悪いものです。大きな資本に依存しない、中央銀行も機能しにくい、分散型の理論です。直近インテリにコントロールできないようなものでしょう。インテリにとって面白くない展開です。 だから伝わってきません。そういう話題はインテリしか見つけられないし、でも本能的に避けるので広まらない。だから世の中のインテリのほとんどは、本主義は終わってるのではという疑いすら持ってないでしょう。例えば日本中の大学院生にアンケートしてみればいいのではないでしょうか。 本来、その知性をフルに働かせて、市民の中で真っ先に感づかなくてはいけない層が、もっとも鈍感になっているのです。 だから嫌われるのです。「世の中理屈だけじゃねえよ」と言われてるわけではないのです。そもそも言ってる理屈が間違っているのです。 でも、インテリは、インテリ以外に間違ってると言われても、認めることはないでしょう。インテリでもないのに分かるわけがないと。 だから、嫌われるのです。他人に間違ってるのでは?と指摘されても聞き耳持たない人って、嫌われて当然ですよね。 ですから、嫌われたくなければ、「世のインテリたちの言っていることは間違っているかもしれない」と疑うことがスタートになります。 (その3)につづく《ワンポイントミライ》(?)ミライ: インテリが都合の悪い話題を無意識にスルーし続けている結果がこれかよ! ということでしょうか。フツクロウ: ホッホ。ホの通りじゃ。 -
嫌われるインテリがこれから生きていく方法(その1)
2016-11-11 23:4531ptトランプ勝利で巷にはうろたえてる人が溢れています。 特にインテリに。 インテリと言っても、ものすごいインテリでなくてもです。そこそこ高学歴で、こないだのイギリスのEU離脱の時や今回「論理が感情に負けた」と思っているなら、あなたはインテリ部門です。特に都会生まれの都会育ちならなおさらです。 大変です。時代は反インテリ主義。「感情で大切な選挙が決まってしまう」時代。これからインテリはどうやって生きていけばいいのでしょうか。その答えを書きます。 その前に、まず、「論理が感情に負けた」。果たしてそうでしょうか。「感情で大切な選挙が決まってしまう」のでしょうか。 なぜ今、反インテリ主義なのか。 答えははっきりしています。それはインテリの通りにやってもちっとも結果が出ないからです。「論理が感情に負けた」のではありません。「論理が自滅した」からです。 私にはアメリカの中産階級にオバマの施策がどう影響したのかよくわからないので、日本の視点で書きますが、日本や世界の最近の経済対策や金融政策はちっともうまくいっていません。インテリたちが考え実行されている施策がちっとも市民の暮らしを良くしない。 だから嫌われるんです。インテリが。 日本でも今 田中角栄がブームだったりするじゃないですか。インテリがネチネチ考えたことやるより、田中角栄みたいに「日本中に高速道路作るぞ! 作るったら作るぞ!」とかいう号令かけてもらって、みんなで一丸となってやった方が、よっぽどうまくいきそうな気になってくるんですよ。 トランプと一緒でしょ? それがトランプが受ける理由なんです。 じゃあ感情に任せて政策作ればうまくいくのかよと思うかもしれません。インテリたちが「論理的」に考え尽くして、生まれた政策に従ってやっても、うまくいかないのは、それだけ問題そのものが難しいからであって、感情で政策作ったってうまくいくわけがない。 そう思うかもしれません。 でも、その考えこそが、インテリが社会から大きく乖離してしまっている最大の理由なのです。(つづく)《ワンポイントミライ》(?)ミライ: と、突然始まりました。新シリーズ。「お金の仕組み」シリーズ終わってないのに・・・。フツクロウ: ホッホッホ。緊急事態じゃからの。 -
[S] 今回全米が真っ赤な選挙マップを見て呆然とした人はこれをご覧ください。
2016-11-10 23:3031pt今日は木曜ですが、昨日通常運転だったので、今回気楽で短い記事[S]です。 今回トランプが勝利する中、このマップを見て呆然とした人が多いようです。
これは選挙でどっちが勝ったかを州ごとではなく、より細かい郡ごとに描いたマップです。クリントンの青なんて人口の多いところに少しあるだけです!! ・・。 すいません。罠張りました。その図は 2012 年、オバマ(青)が勝った時です。ちなみに同じページに 2008 年のもあります。
大まかに言って、人口の多いところが民主党派、少ないところが共和党派。なのでマップにすると赤ばっかりになります。いつものことです。 ということで、今回のマップをみるとこうなってます。
いったい、どこに違いあるのか、よく注意しないとわかりませんし、少なくともこれらの図を見てどっちが勝っているかを当てることは困難です。 もし、この図を出していかに今回ヒラリーが全米にわたって人気がなかったかを主張する記事があれば、それはすべて釣りです。 初めてこの図を見て本当にびっくりしてツイートするとか以外は、著者は毎回このマップは真っ赤なの知ってて書いてる可能性が高いので、くれぐれもご注意ください。《ワンポイントミライ》(?)ミライ: 恒例のマップですね。フツクロウ: ホウじゃの。 -
トランプが示す日本の未来
2016-11-09 17:3031pt結局、共和党代表選のときと同じ勢いでトランプが大統領選も勝ちました。 ヒラリーが圧勝しないのではないかと、6週間前に話しました。 [S] ドナルド・トランプは負けたのか それでもなぜトランプ氏は共和党の代表に勝ち上がってきたのかということです。 代表戦の時からただの威張り散らすおっさんで、「なんでこんな人が代表に勝ち上がるの???」とみんな思ったことでしょう。あのおっさんは、ずっとあの調子でも勝ち上がるのです。
その時はなぜトランプが強いかは漠然としか分からなかったのですが、 最近この記事を読んで「ああなるほど」と納得していました。これを読んだ時、トランプが勝利するかもしれないと心の準備をしました。 トランプに熱狂する白人労働階級「ヒルビリー」の真実|渡辺由佳里|ニューズウィーク日本版 <知識層からときに「白いゴミ」とまで蔑まれる白人の労働者階級。貧困と無教養を世代を越えて引き継ぐ彼らに、今回の選挙で「声とプライド」を与えたのがトランプだった>
私はアメリカで、この話に出てくるような田舎に住んだことはありませんが、カリフォルニア州のマリン郡という比較的片田舎に3年ほど住んでいたので、その話で描かれている情景はリアルに想像できます。 その人たちがトランプを応援する理由は、日本の地方に住む人たちと同じだと思います。 国政や経済政策を提案する知識人が、無意識か意識的にか、ようは自分たち知識人にとって都合のいいものを提言するからです。 それはインテリが社会に影響力を持てるような仕組みであることです。たとえば地方分権がどんどん進んだとすると、都会のインテリの影響力は小さくなります。そういう仕組みは本能的に嫌います。 世界的に見ても中央銀行の金融政策なんて、たいして効果があがっていませんが、インテリたちはそんなことはないと考えます。だってそうでないと認めることは、自分たちの影響力が減るということです。 ちょっと前は「トリクルダウン」なんて言葉もありました。まず大企業が儲かれば、中小企業や市民にも波及すると。知識人はふだん大企業と付き合いますし、そういうところには自分たちの影響力があります。しかし、日本中の中小企業への影響力はあまりありません。だから、本能的に「トリクルダウン」論を好みます。 しかし、それらの施策はことごとく効果をあげていません。特に地方に住む人にとって、国・東京・大企業がやってることなんて、全然自分たちに効いてきません。アメリカでも同じことが起こっているのです。 トランプ氏の発言は、政治家としては呆れるものばかりで、飲み屋で酔っ払ってるおっさんとなんら変わりませんが、逆にいえば、威張り散らしているおっさんと思えば、その発言は常識の範囲内のものばかりです。彼には緻密な理論に裏連れされた政策はありません。それは知識人が作るものであって、そんなものは、地方の人には役に立たないのです。 トランプ新大統領が今までに公約した過激な政策をどれくらい実現しようとしてくるのかはさすがにわかりません。個人的には大したことはしないんじゃないかと思うのですが、そんなことよりも大事なことは、今までの偏ったグローバル主義にははっきりとブレーキがかかるということです。 日本政府の思惑も大いに外され、これまでの施策やこれからの施策は効果を出しにくくなるでしょう。したがって、日本でも特に地方から、中央への不信感が広がっていくことでしょう。 日本ではどんな動きが始まるのか、これから目が離せません。 (追記: ところでまいどのことですが真っ赤な選挙マップにうろたえてはいけません。 [S] 今回全米が真っ赤な選挙マップを見て呆然とした人はこれをご覧ください。 )《ワンポイントミライ》(?)ミライ: 日本でもトランプさんみたいな人が出るということでしょうか。 フツクロウ: どうかの。少なくともすでに見えてきているストーリーもあるの。らミライ: え。あるんですか? -
「いいね!」で学ぶ、世界一わかりやすいお金の仕組み(その6)〜なぜ「いいね!」は格差を起こすか〜
2016-11-08 20:3031pt「いいね!」で学ぶ、世界一わかりやすいお金の仕組み(その5) の続きです。 ここまで、「いいね!」の構造とお金の構造を比較してきました。「いいね!」はロングテール構造を持っていて、その分析をお金にも当てはめることで、お互いを比べることができ、「いいね!」のジニ係数を調べたり、両者の「格差指数」を計算して比較もしました。 しかし、そもそもなぜ「いいね!」の世界はこんなに格差が生まれるのでしょうか。 (その3)ではなぜお金の格差はなくならないかという問に対して、「いいね!」と同じ構造だからとしましたが、ではなぜ「いいね!」はそんな構造になるかということです。 だれか強力な権力者が私たちに強いているのでしょうか? そんなことはありません。私たちが「いいね!」する自然な行動から生まれています。 それは人々の適応能力に由来します。あるいは個性と言ってもいいでしょう。 たとえば人間全てがクローンで機械のように同じ思考をしていたらどうなるでしょう。 ニコ動にアップされる動画について、「いいね!」するしないを選ぶとします。すると、ある基準を超えた動画には、全ての「機械人間」が「いいね!」をします。その基準を超えない動画には、誰も「いいね!」をしません。ニコ動には「満点」の動画と「0点」の動画しかありません。 このような世界がいいのか悪いのかは別にして、この地球で種が生き延びていくためには、このような種は生き延びるのが困難です。 たとえば人間がバナナだけ食べて生きている生物とします。バナナはクローンで作られているので、一度病気が広がると全滅しかねません。過去には全滅した種もあります。もし人間がバナナしか食べてなかったら、諸共全滅です。 地球全体に多様な種が繁栄しているのは、生物たちがそれぞれの環境にそれぞれの戦略で適応しているからです。中には非常に限られた環境に特化して生きている種もいれば、より広い環境に適応している種もいます。 その結果、たとえば、気温が20度から25度に適応している種が100匹いたら、気温が25度から30度に適応している種も100匹いて、さらに20度から30度に適応している種が200匹いるようになります。じっさいある地域の種別個体数をグラフにすると、見事なロングテールになっていると聞きます。 そうやってそれぞれの種がそれぞれのやり方で適応することによって、地球上のあらゆる場所に生命が繁栄しているのです。 そして人間は、それをたった一種でやってのけました。一人一人が個性を持つことで、地球上のあらゆる場所にはびこったのです。 ですから、ネットのコンテンツに対しても、「いいね!」をつけるかどうかは一人一人違います。音楽で言えばロックが好きな人もいればクラシックが好きな人もいるように。 つまり、動画の再生数が多い少ないは、それだけでは、その動画の優劣を示しません。ニッチな分野であれば、たとえ再生数が10000程度でも、その世界では傑作なことでしょう。そういう動画が何百もあるわけです。 その中で、最大公約数的な傑作がずば抜けた再生数を獲得します。スマホが一気に広まり世界に広がったように。 それは最初から大きな再生数を狙ったものかもしれませんが、それを狙ったからといって実際に思っただけ再生数が取れる動画などごくわずかでしょう。逆にPPAPのように、日本でちょっとうければいいやみたいな動画が世界で爆発することもあります。再生数が多いものは、むしろ、そういったものが多いことはみんな経験的に知っています。 昔のヒットコンテンツは大きなメディアが全国民向けに作ったものからしか生まれませんでしたが、今は個人の他愛のない動画だってその可能性があるわけです。 それを支えるのが、人々の個性。つまり動画をアップする人は、自分の周りにこれを気に入ってくれる人がいるというインフラだからアップしているのであり、それが結果的に爆発的に再生される動画を生み出しています。 上で機械のように同じ思考をする人間を考えましたが、実はその世界では、全ての動画は満点か0点かではありません。全て満点になります。だって、0点になる動画なら、そもそも自分がダメだと思って、アップしませんから(笑 なぜ「いいね!」の世界は格差がひどいのか。あらゆる規模のコンテンツが存在できるプラットフォームだからです。それは劣ったコンテンツという意味ではなく、その規模で成り立つニッチ市場も無数に存在できるということなのです。それはテレビ番組などマスメディアではまったく許されないことでした。(つづく)《ワンポイントミライ》(?)ミライ: おお。格差が広がるのは、小さいものも存在できるから。フツクロウ: ホウじゃ。しかも無数に。小さいものは小さいながらに無数の需要があるんじゃ。ミライ: えーと、なぜ無数の需要が? -
「いいね!」で学ぶ、世界一わかりやすいお金の仕組み(その5)〜ジニ係数と「格差指数」〜
2016-11-07 23:1531pt「いいね!」で学ぶ、世界一わかりやすいお金の仕組み(その4) の続きです。 前回は、「いいね!」(の代わりにニコ動の動画再生数)とお金(世帯所得)について、「規模別の合計」というものをグラフにして、高いとこと低いとこ、つまりいわゆる金持ちと貧乏を比べました。お金では10倍の差がありますが、動画再生数ではなんと1000倍もの開きがあったのです。 この比にすでに名前がついているかわからないので、とりあえず「格差指数」と呼ぶことにしましょう。 さて、格差といえば、よくジニ係数と言われるものが使われています。たとえば日本のジニ係数は、37.9%などと言われています。 ジニ係数を調べるにはローレンツ曲線というグラフを作るそうです。 以前から使っている世帯所得のデータでローレンツ曲線を描いてみると、
こんな風になります。赤と青の線で囲まれた部分の面積を求め、右下半分の直角二等辺三角形の面積0.5との比を求めると、 36% となります。これがジニ係数です。 データが粗くて、曲線がカクカクしてますから、実際はもう少し大きいのでしょう。実際のジニ係数は 37.9% ですから、だいたい計算できていることがわかります。 さて、では同じことをニコ動の動画再生数でやってみます。
うわ。これはひどい。経済学者が見たら泡吹くんじゃないでしょうか。このグラフからジニ係数を計算すると、80%です。データが粗くて線がカクカクしているので、実際はもう少し大きいことでしょう。 ここで、世界・収入不平等指数ランキングを見てみると、格差が一番ひどいとされる、レソト、南アフリカ、ボツワナといった国々でも 63% 台です。 もし動画再生数に比例して払われる報酬だけで人々が暮らしていたら、どんな恐ろしい世界になるのでしょうか(苦笑 とはいえ、ジニ係数が 80% と 63% と言われても差がよくわかりません。そこで、逆にジニ係数63%だと、「格差指数」がいくらになるのか推定してみましょう。 そのために作ったグラフがこれです。
これは、ジニ係数と「格差指数」との関係を表したものです。対数正規分布というロングテールの分布を持つ関数をいろいろ変化させて、そのジニ係数と「格差指数」を計算して作りました。 例えば、ジニ係数が80%では「格差指数」は1000倍となり、ニコ動の例とよく合っています。また、40%弱で10倍となり日本の例とだいたい合っています。ジニ係数の小さい方は対数正規分布だとあんまりうまく表現できてないので、この結果はいささか怪しいです。今後の課題です。 ということで、このグラフをみると、ジニ係数63%あたりでは、「格差指数」は100倍くらいのようです。 日本の「格差指数」は10倍です。日本の場合、極端に所得が低い世帯と高い世帯を取り除くと、その広がりは、200万円から2000万円となり、その倍率が10倍というのが「格差指数」の意味です。所得2000万円っていうと、たとえば開業医の所得はそれよりもちょっと上でしょうか。つまり街に普通に存在する金持ちです。 もし、日本のジニ係数が世界最悪の63%程度になると、「格差指数」は100倍となり、つまり所得の広がりは 200万円から 2億円となります。開業医は2億円所得があるような世界です。すっごい豪邸に住んで使用人も何人もいるイメージでしょうか。それが街に普通に存在しちゃう世界です。 もしも、「いいね!」の世界のように「格差指数」が1000倍になると、所得の広がりは200万円から20億円。日本で所得20億円というと、いわゆる高額役員報酬のランキングに出てて、せいぜい一人か二人です。そんな人がたとえば開業医として街に普通にいるような社会。なんか、ちょっとぶすっと刺したくなりそうです……。 このように「格差指数」を使うことで、格差の度合いを具体的にイメージすることができます。この指数はロングテールをいじっていれば自然に出てきます。ロングテール分布での統計解析が進むにつれ、この「格差指数」も未来で普通に使われる指標になるのではないでしょうか。 《ワンポイントミライ》(?)ミライ: ニコ動再生数のローレンツ曲線wwフツクロウ: これはひどいの。こんな曲線初めて見たわ。 -
「いいね!」で学ぶ、世界一わかりやすいお金の仕組み(その4)〜お金と「いいね!」の格差度合いを比べる〜
2016-11-04 21:4531pt「いいね!」で学ぶ、世界一わかりやすいお金の仕組み(その3) の続きです。 お金は「いいね!」と同じような仕組みを持っているため、売れるものはますます売れるし、大半のものは売れないという構造を持ちます。それはそのまま個人の収入の差にもなるでしょう。 本当にそのような構造を持っているか、データで見てみましょう。 国税庁の民間給与の実態調査結果を使います。 図14に所得金額階級別にみた世帯数の相対度数分布というのがあります。
なんか平成22年って少し前のグラフですね。なんで少し古いの拾っちゃったのかよくわかりません。ごめんなさい。もう作っちゃったのでこのまま使います。 このグラフを読み取って、ロングテールのグラフを作ったものがこれです。全世帯数が4864万であることも使っています。
このデータによると、全国で収入の多い世帯から並べた時、2000万円だと、58万番くらいになります。 1000万円では580万番くらい。 500万円だと、2100万番くらいです。これを(その3)で紹介したニコニコ動画再生数のグラフと比べるとよく似ていることがわかります。
やはり、お金の世界も「いいね!」と同じ無慈悲な超格差社会なのでしょうか。(注:グラフは「いいね!」のグラフでなくニコ動の動画再生数です。「いいね!」のデータは持ってないので代用です。多分そんなに変わりませんが、すいません) それを調べるには、このグラフを眺めるよりもっといい方法があります。 それは ゼロから学ぶロングテール(その4)〜ロングテールの本質=規模別合計〜 で紹介したこのようなグラフを比べることです。
ニコ動には、1000万を超える化け物のような動画がいくつかありますが、それらの再生数を全部合計しても、再生数全体からすると、0.1%にしかなりません。 一方再生数が5桁つまり 1万から10万の動画は大量にありますから、それらの再生数を合計すると、全体の35%にもなります。つまり、適当に動画を見ると、3本に1本は再生数が5桁のものなのです。 グラフを見ると、中央の3つの範囲が大きな割合を占めています。再生数1000から100万までの合計で、90%になります。つまり普段見ている動画の大半はこの範囲に入ることになります。 さて、同じグラフを世帯所得で作ってみます。
ニコ動再生数とすごくよく似たグラフができました。 しかし、ここで注目すべきは横軸です。ニコ動再生数のときは、横軸の区切りは10倍でした。「1万から10万」といった風にです。しかし、世帯所得の方では、横軸の幅は「500万円から1000万円」とおよそ2倍です(一部「200万円から500万円」と2倍でないところがあります)。 中央の主要な3つの範囲を合計すると全体の91%をカバーすることになります。日本の全世帯が得ている所得の9割は、所得が200万円から2000万円の世帯に行き渡っているということです。 ニコ動再生数では9割をカバーするのに、再生数は1000から100万と1000倍もの広がりを見せていましたが、世帯所得では10倍です。 もちろん所得が200万円の世帯から見れば、同じ日本人の世帯のくせに、所得2000万円もあるとはなんて格差だと思って当然ですが、もしも、お金が、その原理である「いいね!」に忠実に振る舞っていたなら、今の感覚で2000万円の所得がある世帯は、20億円もの所得があることになります。 そんな格差社会、考えただけでも恐ろしいですが、昔奴隷制度があった頃は、実はそれくらいあったのかもしれません。 そして、今も、世界の地域によっては、100倍くらいは格差がありそうだという衝撃的なデータがあるのです……。 (つづく) 《ワンポイントミライ》(?)ミライ: いやー、ちょっとそのデータ見てきましたけど、もう次行きましょうよ、次。ここで雑談してる場合じゃないですよ。フツクロウ: ホッホッホ。まあそう急くなて。どうせ来週の月曜じゃ。
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