• このエントリーをはてなブックマークに追加

記事 3件
  • 田原総一朗 「アメリカ、中国、韓国が弱っている今だからこそ、日本ができることがある」

    2013-10-16 20:00  
    330pt
    〔PHOTO〕gettyimages
    いま、アメリカが大変なことになっている。先月30日深夜、オバマ大統領は、「政府機関は活動ができなくなった」と言った。
    アメリカ議会で、暫定予算案が通過しなかったことを受け、連邦政府の一部が閉鎖した。実に17年ぶりのことだ。いまアメリカは、国が国として機能していないわけである。
    なぜこうなったかといえば、オバマ大統領が公約として掲げ、法案もすでに通っている健康保険制度、通称「オバマケア」に反対する共和党のいやがらせのためだ。日本では国民皆保険が当たり前である。だが、アメリカにはその制度がない。だから富裕層はいい医療を受けられるが、貧困層は病院にさえいけない。アメリカは格差社会なのだ。
    オバマ大統領念願の健康保険制度は、2010年3月に、医療保険改革法案に彼自身が署名して成立している。実施は2014年の予定だった。ところが、その直前になって、費用がかかりすぎるなどと、共和党がごねているというわけだ。すでに法律が成立しているにもかかわらず、だ。
    アメリカ議会には上院と下院がある。その上院の第一党は民主党だが、下院の第一党は共和党だ。いわゆる「ねじれ」国会なのだ。そしていま、オバマ大統領の支持率が落ちている。これが、共和党の嫌がらせの背景にあるのだ。 
  • 田原総一朗 それでも、シリア攻撃に突き進む「変節」オバマ大統領のなぜ?

    2013-09-11 18:00  
    330pt
    〔PHOTO〕gettyimages
    アメリカのオバマ大統領が、シリア攻撃へと動き出した。内戦状態にあるシリアのアサド政権が、化学兵器を使ったというのがその理由だ。ところが、国連安全保障理事会の常任理事国の足並みは揃っていない。
    常任理事国とは、ロシア、中国、イギリス、フランス、そしてアメリカである。そのうちロシアは、シリアの後ろ盾だ。だから、シリア政府が化学兵器を使用したという疑惑自体を否定している。中国もシリア攻撃には反対だ。
    一方、オバマ大統領があてにしていたのはイギリスである。ところが、イギリス議会はシリアへの軍事介入を承認しなかった。フランスがアメリカと連携するかどうかも微妙な状況である。他の欧州諸国はどうか。ドイツやポーランドは軍事攻撃への不参加を表明。オランダも国連安保理決議がないことから、慎重姿勢をとっている。
    アメリカは、このままでは国連安保理の決議なしに、単独で攻撃することになるかもしれない。非常に厳しい状況に立たされている。
    そもそも、なぜオバマ大統領は、シリア攻撃を表明したのか。かつて共和党政権だったときのアメリカは、「世界の警察」として、アフガニスタンやイラクなどに積極的に軍事介入した。しかし、それらはことごとく失敗し、泥沼状態となったのだ。この結果、アメリカ国内で厭戦気分が高まった。なによりアメリカ経済が受けたダメージが大きかった。こうして、アメリカ国民は、「戦争をしない」民主党のオバマ大統領を支持したのだ。 
  • 堀潤 連載第5回 オバマ大統領に銃規制強化を決意させた民意陳情サイト 「We The People」

    2013-06-04 12:00  
    330pt
     今月5日。アメリカ中西部オハイオ州コロンバスの州立大学の卒業式で、オバマ大統領は米国議会に対して不満を口にした。多くの有権者が望む政策が、力を持つ特定の団体のロビイストたちの手によって葬り去られているのが現状だと唇を噛んだ。
     この発言の念頭にあるのは、米国議会上院で否決された銃規制強化法案だ。
     昨年12月、コネチカット州の小学校で起きた銃乱射事件では26人の小学生が亡くなった。直後から銃の規制を求める声が高まった。オバマ大統領は、一期目の選挙でも公約に掲げていた銃規制に本腰を入れて取り組むため、より厳格な規制を設けた法案を策定。議会に諮った。
     しかし、共和党のみならず、民主党内の保守系議員からも激しい抵抗に合い、先月、規制法案は上院で否決された。背後には政治力の強い、NRA(全米ライフル協会)の存在がある。
     オバマ大統領は今も、銃規制は諦めないと主張を続けている。銃の所持が合衆国憲法で認められているアメリカでは長年賛否が分かれてきた難しい課題だ。それでも、大統領は「多くの有権者が望む政策」だと断言する。
     オバマ大統領が打ち出す強い姿勢の裏付けには、ホワイトハウスに設けられた陳情サイトの存在もある。
     「インターネットは政治をどう変えるか?」3回シリーズの締めくくりは、この陳情サイトについて報告する。 極めて民主的な請願システム「We The People」
     去年、"オバマ大統領が宇宙要塞・デススターの建造を否定"という見出しのニュースがこちらのメディアで話題になったことがあった。
     当時、何事かと思って確認してみると、アメリカ大統領府・ホワイトハウスのホームページに設けられた陳情サイトに寄せられた市民からの請願に対し政府が回答した中身についてのニュースだった。
     市民からの請願は「政府は雇用対策の一環として2016年までに映画スターウォーズに登場する帝国軍の宇宙要塞・デススターの建造に着手するべきだ」というもの。
     これに対し、政府の科学技術担当の役人が、
    ▼建造に85京ドルもの莫大な費用がかかる計算で、財政赤字の削減に取り組むオバマ政権としては応じられない ▼戦闘機1機の攻撃で破壊されるリスクを持つ要塞に予算をつぎ込めないなどと回答。
     さらに、
    ▼NASAをはじめとした国際チームが既に宇宙ステーションでの様々な実験に着手しており我々は未来空間に生きていると説明し、最後に「科学に従事する研究者達よ、フォースと共にあれ」とおなじみの台詞で締めくくった。(※リンクは該当サイト: https://petitions.whitehouse.gov/response/isnt-petition-response-youre-looking)
     「We The People」と名付けられたこの陳情サイトは、2011年9月にオバマ政権によって運営が開始された。
     アカウントをつくれば、誰でも政府に対し請願ができ、その内容が直ちにサイトで公開される。一般のSNSの投稿サイトのようなデザインで、公開された請願内容に賛同した人がFacebookの「いいね!」を押す感覚で「署名」できる専用のアイコンが設置されている。賛同者が2万5000人に達すると、政府は請願内容を検討し市民に回答する義務を負うという仕組みだ。
     このサイトそのものが、Facebookやtwitterと連動しており、投稿者や賛同者が自らその請願内容をSNS上で広めることもでき、それぞれがSNSを使ってメッセージの拡散を行い、2万5千署名の達成を目指す。
     皆で力を併せて目標数を達成することができれば政府が実際に検討するという、ゲーミフィケーション的な要素も盛り込まれているあたりは、SNSを使った選挙戦略で大統領の座を勝ち取ったオバマ氏らしい取り組みだ。