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  • 長谷川幸洋 コラム第12回 自民が勝っても「違憲国会」では憲法改正できないと、安倍首相は知っている

    2013-07-25 12:00  
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    [Photo] Bloomberg via Getty Images

     参院選の焦点の1つに憲法改正問題がある。自民党が勝った場合、すぐにも憲法改正に動き出すのではないか、という見方を強調するメディアもある。はたして、自民党をはじめ改憲派が多数を占めた場合、本当に改正発議のような動きが始まるのだろうか。
     私はそうは思わない。少なくとも、いまの国会を前提にする限り、可能性はほぼゼロに近いとみる。理由は簡単だ。相次いだ高裁の判断で「いまの衆院は違憲」とみなされているからだ。
     昨年末の衆院選について全国14の高裁と高裁支部で示された16件の判決中、14件が違憲、残る2件が違憲状態という判断だった。違憲判決のうち2件は衆院選そのものが無効という厳しい内容だ(たとえば日本経済新聞)。
    「すっきりしたいねえ」
     これを素直に受け止めれば、いまの衆院議員は「違憲の議員」という話になる。そんな違憲の議員が選んだ安倍政権は「違憲の政権」である。そもそも違憲の政権が改憲に動く正統性があるか。もちろん、ない。これは単純明快な原理の話だ。
     分かりやすく言えば、自民党がいくら選挙カーの上から改憲を訴えてみたところで、路上から「政権自体が違憲じゃないか。改憲を言う前に国会を解散して政権を選び直せ」とヤジを飛ばされれば、それで終わりである。
     誤解がないように言うが、私自身は憲法改正に賛成だ。だから、改憲に反対するために書いているのではない。だが、その私からみても、安倍政権が本気で改憲に動き出そうとするなら、そういうヤジを飛ばすだろう。
     実は安倍晋三首相に直接、そういう趣旨の話を申し上げたことがある。それは5月14日夜に会食したときだ。
     いまから2カ月前で結論も出た話なので、もう書いてもいいだろう。私は安倍に「衆参ダブル選挙は考えないのか」と聞いた。衆院が違憲状態なので、選挙で改憲の話を言うなら、まず衆院解散が先になる。そこで参院選に合わせて、ダブルで総選挙に打って出る可能性はないか、と尋ねたのだ。
     私自身はできるなら「すみやかに解散すべきだ」と考える。それは政権が改憲を目指そうが、目指すまいが関係ない。裁判所から憲法違反と指摘されて、国会が対応しないのは政治の怠慢と思うからだ。まして政権が改憲を唱えるなら、なおさらという話である。
     それに対する安倍の答えは「できるものなら、やりたいよね」だった。それから言葉を続けて「でも長谷川さん、日程が間に合わないんだ」と言った。
     つまり、衆院で1票の格差を是正する0増5減の公職選挙法改正案を成立させて、そこから1カ月の周知期間をおくと、7月21日の参院選投開票日に間に合わないという話である。実際、0増5減法案が衆院の再議決で成立したのは6月24日だったので、参院選には間に合わなかった。
     そこで、次が本当のポイントである。安倍はそう説明した後、思案顔で「でも、すっきりしたいよねえ」と言ったのだ。 
  • 田原総一朗 『ワシントン・ポスト』など外国主要メディアの安倍首相批判、ここが大間違いだ!

    2013-05-20 16:00  
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    ゴールデンウィークは終わったが、 依然として安倍政権の好調は続いている。 安倍晋三首相はロシアに続き、 中東を訪問、大成功に終わった。 経済も、株価は1万4000円を越え、 円安傾向も持続……。 好材料ばかりのようだ。 ただ、その好調の安倍内閣に、 アメリカ、イギリス両国から 鋭い矢が飛んできた。
    アメリカの『ワシントン・ポスト』が 4月26日、安倍首相を 強く批判する社説を掲載したのだ。 「侵略の定義は国際的にも定まっていない」 と安倍首相が述べたことについて、 歴史を直視していないと批判、さらに、経済政策の成果も台なしにしかねない、 という懸念も示している。
    イギリスの『フィナンシャル・タイムズ』も 4月29日の社説で批判を展開。 安倍首相の靖国神社への供物奉納、 そして、歴史をめぐる発言に対し、 「支持率の高さを受け、本性をのぞかせた」 と述べ、経済政策に集中すべきだと 苦言を呈しているのだ。
    だが僕は、安倍さんの言動はともかく、 両紙の批判は間違っていると考える。長年、僕は日本の近代史を 取材してきた。 その結果、満州事変、日中戦争は 日本の侵略だったという結論に達した。 しかし、太平洋戦争は違う。太平洋戦争は、「侵略国」である、 イギリス、アメリカなどの連合国、 そして同じく「侵略国」である日本との 闘いだった。 当時、イギリスもアメリカも、そして日本も 植民地を「持てる国」だったのだ。

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  • 長谷川幸洋 コラム第2回 『政府は公に語らないが、ここだけはおさえておくべき話』

    2013-05-09 15:30  
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     政府は口が裂けても言わないが、実は「この問題はここがキモ」という話はたくさんある。本来なら、メディアが問題のポイントを鋭く突いて広く議論を促すべきなのだが、どうも日本では政府や官僚、政治家が言わないと、メディアも積極的に書かない風潮がある。
     政府が公に語らない話をズバズバ書いて「もしも自分の理解がトンチンカンだったら大変だ」とビビッているような感じなのだ。つまり、あえてリスクをとりたくない。そこで今回は「政府は絶対に言わないけど、ここはおさえておくべきだ」という話をまとめて紹介しよう。
    ◆メディアが正面から書かないTPPの本質
     まず、環太平洋連携協定(TPP)だ。
     TPPについては「日本が自動車で米国に譲歩した」とか「米国にやられてしまう」といった話が相変わらず流れている。ところが、そういう見方は評価の基本軸がずれている。TPPは単に貿易自由化を目指す通商交渉ではない。米国を軸とした外交・安全防衛上の枠組みに参加する意味合いがあるのだ。
     TPP交渉に参加している国はいずれも自由と民主主義、市場経済、法の支配といった理念と価値観を共有している。だが、たとえば北朝鮮はそうではない。民主主義どころか貿易すら極めて限定的で、鎖国した独裁国家だ。他国と貿易を通じた相互依存関係にないから、ともに利益を享受する「ウィンウィン関係」には入りようがない。
     それどころか核ミサイルを振りかざし、日本や米国、韓国を脅して生き残りを図ろうとしている。こういう国に対処するために、米韓はいま日本海で合同軍事演習を展開中だ。日本もイージス艦を出して米韓と隊列を組んでいる。
     中国はどうか。こちらは市場経済に移行しつつはあるが、政府の関与はまだ非常に大きい。民主主義や法の支配もけっして十分ではない。日本とは尖閣諸島問題で険しく対立している。
     そういう中で、TPPはアジア太平洋地域の平和と繁栄に寄与する枠組みになる。言うまでもなく、地域の「平和と安定」は「繁栄」の前提だ。だから、TPPの損得勘定は繁栄=貿易自由化だけでなく、平和と安定=安保防衛という側面も視野に入れて考えなければならない。
     はっきり言えば、日本がTPPの枠組みに入って平和と安定の基礎が強化されるなら、貿易自由化で多少、譲歩したところでトータルでみれば収支が合うのだ。こういう議論を表立って言うと「日本は米国の属国になるのを認めるのか」といった感情的な反発が起きたりする。だから、メディアもなかなかずばりと書かない。

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  • 直接、会って話してわかった、安倍首相の「本音」

    2013-03-21 19:00  
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    僕が司会をする番組「激論!クロスファイア」に、安倍晋三首相が出演した。 番組始まって以来の、現役首相の出演だ。しかも生放送である。 番組での安倍さんは、終始落ち着いていて、自信に満ちているようにみえた。 その自信の根底には、もちろん「アベノミクス」に市場が反応していることが 挙げられるだろう。 首相に就任する前、1ドル70円台まで円高は進んでいた。 いま1ドル95円前後だ。株価も1万2千円を超えている。 ただし、安倍さんは、具体的な経済対策を実施したわけではない。 あくまでも、こういう経済対策をすると打ち出しただけだ。 言うまでもないことだが、これからが本当の勝負なのだ。 一方、普天間基地移転問題にも、自信を持っているように見えた。 担当大臣である山本一太さんが沖縄側と信頼関係を築いていて、 辺野古の埋立申請についての話し合いが、進んでいるからだろう。 そもそも民主党政権以前の自民党政権の時代には、沖縄の県知事や名護市長たちは、 普天間基地を辺野古へ移すことに賛成していた。 自民党の野中広務さんたちが、地元の人たちの理解を得るために、沖縄まで 何度も足を運んだからだ。 まるで沖縄で暮らしているかのように、精力的に通っていたのだ。 ところが、民主党政権、とくに鳩山由紀夫元首相は、その関係を壊してしまった。 この壊れてしまった信頼関係を、安倍さんは再構築することができるのではないか。 安倍さんは、「信頼関係」という言葉を番組で何度も口にしていた。 これも自信の表れなのだろう。 そして、憲法改正の問題である。安倍さんは新憲法制定を目指してきた。 そのために、首相に就任したら、まず憲法第96条の改正から手をつけるだろうと 言われてきた。 憲法を改正するためには、衆参でそれぞれ3分の2以上の国会議員の賛成が必要だ。 それを半数の賛成で改正できるようにする。もちろん憲法第9条を変えるためだ。 ただし、安倍さんは、第9条第1項「戦争の放棄」の改正には反対である。 安倍さんは、右翼に近い考え方を持っている、と言われている。 けれど一方で、とてもバランスのよい考え方も持っている。 だから僕は、安倍さんに、 「あなたは、保守本流だという意識を持ち、両足をしっかり大地につけ、右や左の 現実味のない理想には目を向けるべきではない」 と言っている。 この夏の参院選で自民党が勝利すれば、安倍さんは憲法改正に本格的に 取り組むのではないか、という見方がある。 だが、番組で安倍さんと話をして、そんな心配はないと感じた。 参院選で勝利したとしても、安倍さんは経済再生といった目の前の問題解決のための 政策を続けていくだろう、という印象を僕は持ったのだ。 これは日本にとってよいことだ。 そして安倍さんという人間は、この正しい判断ができる人だと僕は信じる。 いま、市場の反応がよいこともあって、安倍さんを批判したり、強くものを 言う人はいない。 だからこそ僕は、安倍さんに対して、いままで以上に厳しい意見を言い、 どんどん発言していきたい、と思っている。

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