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記事 7件
  • 田原総一朗 「坂の上の雲」を突き抜けてしまった今こそ必要な「物語と哲学」

    2013-08-30 12:00  
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    明治維新以降、日本は上へ上へとのぼり、「坂の上の雲」をつかもうとしてきた。昭和の敗戦の後も必死に働いて、平和で豊かな国を目指してきた。いま、その夢はほぼ実現したといっていいだろう。「坂の上の雲」を突き抜けてしまったのだ。
    もちろん問題がないわけではない。それどころか現在、問題は多様化し、複雑に絡み合っている。「雲」を通過したあとだからこその難しさがある。
    これまでは、豊かな社会を夢見て、それが現実になると信じて、がむしゃらに働けばよかった。日本国民みんなが、ひとつの「物語」を持っていたのだ。
    では、その夢が実現したら、どうなるのか。人間がもっともパワーを発揮できるのは、夢が叶うと信じて努力しているときだ。そして、こうしているあいだが、人は一番幸せなのではないかと僕は思う。だからこそ、いま、国民すべてが持つことのできる新たな「物語」が必要なのである。
    はたして目指すべき夢を描ける者はいるのだろうか。「物語」には「哲学」が必要だ。「哲学」が大事な時代になっているのだと僕は思う。人間は何のために、そして、いかに生きるべきか。このような時代だからこそ、真剣に考えることが必要なのではないか。
    ソクラテス、カント、ショーペンハウエル、ハイデガー、ヘーゲル……。古代から、なみいる思想家たちが、人間の生き方について考え抜いてきた。ところが、せっかくの彼らの思想を、現代の哲学者(研究者)は、わかりやすい言葉で語ってくれない。このことに僕は、おおいに不満を持っている。
    僕は何冊も哲学書を読んだ。真剣に「哲学」を学ぼうとしたのだ。しかし、どの哲学書も難解な思想を、さらに難解な言葉で解説しているのである。実にわかりにくいのだ。理解できないのは、僕の頭が悪いからかもしれない。けれども、なるべく多くの一般読者にわかるように語りかけるのが、この時代に生きている哲学者や研究者の役目ではないだろうか。「難解な話をするのがえらい」「研究者仲間でわかればいい」と考えているのではないかとすら思えてしまう。 
  • 長谷川幸洋 コラム第16回「原発、消費税、TPP、集団的自衛権に憲法改正 政府は国民を騙してるのか」

    2013-08-29 12:00  
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    2013年8月15日の靖国神社 [Photo] Getty Images
    猛暑が続く中、各地でさまざまな勉強会や研修会が開かれている。昨日(8月22日)は愛知県蒲郡市で開かれた私学教職員の研修会に招かれて話す機会があった。与えられた演題は「政府はこうして国民を騙す」。昨年、出版した私の本のタイトルである。
    当時と政権は変わっているが、政府とメディア、国民の関係をめぐって変わった部分もあれば、変わっていない部分もある。政府は国民を騙しているのか、いないのか、あらためて考えてみたい。
    私が講演で扱った材料は福島第一原発の汚染水問題と消費税、環太平洋連携協定(TPP)、それに集団的自衛権と憲法改正問題だ。
    汚染水問題は事故の第2ラウンドの幕開け
    まず汚染水問題をどうみるか。流出した汚染水は300トンとされていたが、講演を終えた後になって「新たにタンク2基で流出か」という記事が流れた。
    報道によれば、東電関係者は外洋に流れた可能性を認めている。そうだとすれば、大変な事態である。事故の第2ラウンドが始まったと言ってもいい。なぜなら第一に、すでに情報提供を求めている韓国はじめ、欧米にも強い懸念が出ている。つまり事故の影響と被害が国際的に広がり始めた。
    第二に、汚染水の流出を止める有効な手段が見つかっていない。半面、地下水の流入は続いている。遮水壁を作るとしても、完成には年単位で相当な時間がかかる。それまで被害の拡大は待ってくれない。そうなると、日本への国際的な批判が高まるのは避けられない。
    前回コラムで書いたが、汚染水対策が遅れた本質的な原因は、事故当時の民主党政権が東電を破綻処理せず、会社を存続させたまま事故に対応しようとしたからだ。
    被災者への賠償も除染も国は一時的に費用負担するだけで、最終的には東電に費用を返済させる仕組みをつくった。会社をつぶさないことが前提なので、国は原理的に東電をさしおいて積極的に事故に対応できない。自分のビジネスで投融資した株主と銀行の責任を棚上げしたまま、国民に負担を求めるわけにはいかないからだ。
    したがって、国が前面に出て対応するには、まず東電を破綻処理することが前提になる。いまの安倍晋三政権も東電を存続させる枠組みを踏襲している。そのままで国が汚染水処理をするには「研究名目」のような苦し紛れの弥縫策をとるしかない。
    廃炉についても、国が民間会社である東電の仕事について費用負担する法的枠組みがないから、研究費用として独立行政法人に予算をつけた。だが、そうした場当たり対策は行き詰まる。汚染水対策に本腰を入れて対応するためにも、あらためて東電を破綻処理する必要がある。
    政府は国民負担の最小化という原則を貫け
    東電問題は政府と民間企業、エネルギー政策が複雑に絡み合っているが、民主党政権から現在に至るまで基本的構図は変わっていない。東電を破綻処理して株主と銀行に責任を分担してもらえば、その分、国民負担は減る。「国民負担の最小化」という原則について、政府はいまからでも遅くはないから本来、あるべき選択肢を示すべきだ。
    それはメディアの責任でもある。
    破綻処理すれば国民負担が減ることは明らかであるにもかかわらず、一部のメディアは破綻処理に口をぬぐったまま「東電任せにせず、政府が対応を」と叫んでいる。政府は国民の税金で仕事をしているのを忘れているかのようだ。
    政府が本腰を入れるとは、すなわち国民が重荷を背負うという話である。それには東電存続でビジネスをした投資家や銀行の存在を見逃してはならない。規律なき単純なメディアの「政府が対応せよ論」に騙されてはいけない。 
  • 堀潤 連載第9回 ワンコインマーケット「ココナラ」代表・南章行氏インタビュー(後編)

    2013-08-27 12:00  
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    NPO法人「二枚目の名刺」ウェブサイトより
    この連載を読んで下さっている皆さんは、名刺をお持ちだろうか?
    会社員、自営業、フリーランス。働いている方であれば大抵は社名や肩書きの入った名刺を持ち歩き、まさに自分が何者であるのかを相手に説明するための大切なツールとして活用されていると思う。
    名刺はまさにアイデンティティ。自己同一性という訳にふさわしく、生業としての職業は、その人の人生そのものを映し出す鏡のような存在かもしれない。
    ただ、どうだろう。もっと自分の可能性を広げてみたい、新しい自分を発見したい、普段の職場では実現できない自分の思いをどこかで遂げてみたい---皆さんの中にもそんな欲求にかられた経験をお持ちの方は少なくないのではないだろうか。
    今、新しい働き方の一つとして「二枚目の名刺を持つ」という動きがムーブメントになろうとしている。2009年から活動がはじまり、2011年に法人化されたNPO「二枚目の名刺」。
    現在の職場に留まりながら、自分に新たなキャリアデザインを施す人材を育てようと立ち上がった団体だ。
    「ココナラ」代表の南章行氏。 慶応義塾大学を卒業後、1999年4月、住友銀行に入行。運輸・外食業界のアナリスト業務などを経験したのち、2004年1月に企業買収ファンドに入社。 2009年に英国オックスフォード大学経営大学院(MBA)を修了。東日本大震災をきっかけに2011年6月に投資ファンドを退社し、株式会社ウェルセルフを設立。知識・スキルの個人間マーケット「ココナラ」を2012年7月にオープン。
    社会人が本業で培った技術や経験を、他の社会貢献活動に活かす事が出来るようになればより豊かな社会を実現できる。また、本人が本業では関わらないより幅広い人脈に触れ、様々な事象に関わる事で、やがて本業そのももに役立つスキルも向上させられるという理念を掲げている。
    このNPOを立ち上げたメンバーの1人が、会員数およそ6万人を有するWEBサービス『ココナラ』の代表である南章行さんだ。NPO「二枚目の名刺」とは別に、去年新たに立ち上げた事業だ。今、市場からの注目を集める新興IT企業。
    ココナラは、自身の"得意なこと"をオンライン上で売買できるというオンラインフリーマケット。売買するのは自分のスキル。現在"1回500円"という一律の価格設定で運営されているが、出品されているサービスの質はかなり高く、バラエティに富んでいる。一般ユーザーはもちろん、「プログラミングや開発の相談に乗ってほしい」というエンジニアからの支持も集め、盛り上がりを見せている。
    今回、ココナラを運営する南章行さんにインタビュー。金融業界での経験、海外でのMBA取得、2つのNPOの立ち上げと、多様な経歴を持つ南さん。『一人ひとりが「自分のストーリー」を生きていく世の中をつくる』という南さんの考え方は、これからの時代に即した、新しい働き方への大きなヒントとなるのか。インタビューシリーズでお伝えする。
    前回に続き、今回は後編。社会人のためのキャリアデザインとは何か、じっくり聞いた。
    【前編はこちら】
    「イノベーションのジレンマ」から生まれた新サービス
    南: 一昨年、2011年の8月頃に、うちのIT部門担当者が「サービス版のイノベーションのジレンマをやりたい」と言ったんです。
    堀: ほぉ、それはどういうことですか?
    南: イノベーションのジレンマって、いろんな要素があるんですけれども、安かろう悪かろうみたいな領域って、(従来の)カメラに対してデジカメが出てきた時、こんなクオリティの低いものを誰も使わないだろう、市場も小さいしみたいな、既存のプレイヤーもガン無視だったわけじゃないですか。
    でも、だんだん大きくなってきて、気がついたら性能も上がってプレミアム市場をとっちゃって、後から入ろうとしても手遅れみたいな。これがイノベーションのジレンマの一つの事例としてあります。だから、サービスで、普通に5000~1万円で提供されてるものが300円、500円とか、すごい安いもので、もし仮に提供できるんであれば、量的にはマジョリティーってそっちなんじゃないかと考えたんです。そういうサービス版で、イノベーションのジレンマみたいなことをやりたくて。すごく安い、個人が気軽にスキルを売れる。それでむちゃくちゃ安いみたいなことをやりたいって言い出してですね。
    僕は最初、却下したんですよね。全然そんなのマーケット小さいし、何人集まって、いくら取引が発生したらどれくらい給料になるんだよという話をしたら、ああ無理っぽいね、と。でも、アイデアとしてはやりたいなって、他のメンバー2人が言っていました。
    そんなことがちょろちょろあった時に、ヘルスケア事業のために管理栄養士さんにインタビューをしていて、彼女が当時言ってたのは、病院でいつも患者さんに栄養のアドバイスやってますと。でも、自分のスキルとか知識を生かせば、病院の外でもアドバイスできるから、子育てしてるお母さんに、子供が野菜を食べるような何とかとか、いろいろ栄養にからんで何でも言えるんだけれども、そういう場がないと言っていたんです。本当はもっといろいろ提供したいと言っていて、すごく真摯でまじめな人が多かったんですよね。
    ああ、人ってこういうの求めてるんだなあって思った時に、あれ待てよと。自分自身も働きながらNPOをやってきて、それで人の役に立ったらうれしいというレベルを超えて、意味わかんないぐらいにがんばる人がいるじゃないですか。そういう人を多く見てきた中で、本質って、自分が機能してる感覚とかを人は求めてるのかもしれないなと思いました。そこで得られる成長とか、そこで成長すると、またいろんなものがポジティブなサイクルに入っていくみたいな。
    得意な部分が伸びると人って、オーラが出てくるじゃないですか。そうするといい人が寄ってきて、また次におもしろいチャレンジが回ってきて、というサイクルがある。それを自分がNPOで経験してたんで、人のこういうところを、お小遣い稼ぎサイトじゃなくて、人の役に立ったらうれしいじゃない、成長するじゃない、人生豊かになるじゃないという軸で、さっきのマイクロサービスプラットフォームをとらえ直すと、実はすごい豊穣な世界が待っていそうだなと。過去の経験がつながったんですね。
    その時に初めて、僕たちだったらこれをうまくやれるね。でも大企業とかだったら無理だろうと思いました。こういう領域で新しい市場を作っていこうと思ったら、共感マーケティングみたいなものが必要で、それってベンチャーの方が絶対強いわけですよ。一方、僕らにはストーリーがある。自分たちが働きながら、NPOをやってきていて。個人をエンパワーメントするようなNPOだったんですよね。
    堀: 具体的にはどういうNPOですか?
    「二枚目の名刺」のススメ
    南: 僕は2つのNPOをやってて、「ブラストビート」と「二枚目の名刺」っていうNPOなんですけど、ブラストビートというのは高校生、大学生向けの社会教育プログラムをやっています。10人ぐらいでチームを作って、一時的に会社を作って、3カ月後に音楽のライブイベントやってくださいってオーダーを与えるんですね。
    会社名を決めて、名刺を作って、社長を決めて、マーケティングマネジャーにPRマネジャーなど全部決めて、会社の形態をとって企画して、ライブハウスに交渉しに行って、アーティストも自分たちで引っ張ってきて運営も全部やる、みたいな。一連のプログラムを回すというものなんですけど、高校生は親と学校に言われたこと以外はやったことないじゃないですか、それを初めて自分たちで何かをアクションする。
    これが結構大変なわけですよ、知らないアーティストが来るライブイベントなんて誰もチケット買わないわけですよね。友達であっても。売るのも必死だし、そこで何か自分が行けるようなイベントじゃないと、自信もって売れるイベントじゃないと人は来ないっていうのがわかって、リアルにペルソナ分析からして、思いを込めて売っていくと何となく最後イベントは成功していく。そして最後には、得た利益を自分たちで選んだチャリティーに寄付するっていうことなんですね。
    堀: へえ。
    南: それで全体を通してチームワーク、リーダーシップみたいなものをリアルに学びます。それからビジネス、人の役に立つ、人が喜ぶとお金が入ってくるとか、ビジネスってそういうことなんだと。自分で稼いだお金で世の中の社会問題を解決できるんだとか、そういうむちゃくちゃ濃い経験、生きるとは、働くとはみたいなものを3ヵ月でやるプログラムで、もうこれをやったことでむちゃくちゃ変わるんですよ。とんでもなく変わるんですよ。本当に人生が変わるプログラムです。 
  • 長谷川幸洋 コラム第15回「福島第一の賠償---政府は市場経済の原則を厳守し対処せよ」

    2013-08-22 12:00  
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    [Photo] Bloomberg via Getty Images
    東京電力・福島第一原発から1日当たり推定300トンもの汚染水が海に流出している、という政府の試算があきらかになった。政府は数百億円といわれる国費を投入して、原発の周囲に凍土壁を埋め込む計画だ。
    このニュースを聞いて「やっぱり、こういう事態になったか」と暗澹たる気分になった。「汚染水が止まらず結局、海に放出されるだろう」というのは、原発事故の早い段階から十分に予想されていた話である。私は事故から2カ月半後のコラムで、次のように書いている。
    イタチごっこは何十年も続かない
    〈汚染水も毎日、上から大量の水を注ぎ込んでいるのだから、汚染除去に成功して循環システムが構築できない限り、タンクに収容するといっても、いずれ満杯になるのは、だれにも分かる話だった。それなのに「タンクへの収容話」は連日報じられても「一杯になったらどうするのか」はほとんど報じられなかった。
    私は専門家ではないが、常識的に考えて抜本的な解決策が見つからない限り、いずれ高濃度の汚染水が再び、海に垂れ流されてしまうのは時間の問題だと思う〉
    原発を冷やすには上から大量の水を流し続けねばならない。このコラムを書いた当時は、まだ循環システムは完成していなかった。だから、冷やした後の汚染水はタンクに収容する以外になかった。それでタンク作りを懸命に始めたが、そんなイタチごっこが何十年も続けられるわけがない。
    だから循環システム作りが鍵を握ったのだが、そのシステムはいまだに完成していない。放射性物質を完全に除去できないのだ。
    加えて、山側から原発敷地内へ「地下水の流入」という新たな難問が出てきて、汚染水問題は一層、深刻になった。
    コラムを書いた11年5月時点でも、汚染水漏れを防ぐために原発の地下にぐるりと壁を作る案は出ていた。当時の細野豪志原発担当相は同年7月の会見で「できるだけ早い時期に着工できないか、検討を始めた」と語っている。
    ところが、その後、計画は立ち消えになってしまう。費用が巨額に上り、東京電力が「負担しきれない」と渋ったからだ。東電の試算では当時、1000億円レベルに上る可能性があるとされ、そんな費用を新たに計上すると、いよいよ債務超過で経営破綻が現実になる懸念があった。
    ようするに「カネがないから、遮水壁は作れない」という話である。
    カネのない東電の法的整理は避けられない
    汚染水の海洋流出がごまかせなくなって、いよいよ遮水壁の建設は待ったなしの課題になってしまった。汚染水流出を放置すれば、海洋汚染が国際問題になるのは不可避である。東電にカネがない以上、政府がカネを出す以外にない。だが、そうなると次は、必然的に東電の法的整理が課題になる。
    そもそも事故を起こしたのは東電であり、壁を作る場所も原発の敷地内である。究極的には自分のビジネス=カネ儲けで東電の株を買った株主や融資した銀行の責任を問わずに、税金を投入して負担を国民に肩代わりさせるわけにはいかないからだ。
    これまで被災者への賠償や除染については、原子力損害賠償支援機構法と放射性物質汚染対処特別措置法の枠組みで、政府が一時的に資金を肩代わりしても、最終的には東電(および一部は他の電力会社)が負担する仕組みができ上がっている。
    賠償と除染に加えて廃炉もある。
    先の2本の法律では、廃炉費用の一時肩代わりまではできない。だが、政府は実質的に廃炉費用の負担にまで踏み込んでいる。12年度補正予算では独立行政法人の日本原子力研究開発機構に対して「放射性物質研究拠点施設等整備事業」として850億円の拠出を盛り込んだ。
    この施設は放射性物質を扱うロボットの開発研究などが目的である。つまり、廃炉に備えて技術開発をしようという計画だ。これだけでも事実上、東電への支援になるが、今回はもっと露骨に汚染水対策にまで政府がカネを出そうというのだ。 
  • 田原総一朗 「終戦の月」に考える、なぜアメリカは日本以外の占領に失敗し続けるのか?

    2013-08-09 12:00  
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    『終戦のエンペラー』の公式サイト
    今年も8月を迎えた。この8月は、多くの日本人にとってやはり「終戦の月」である。日本が終戦した当時11歳だった僕にとってこの8月は、それまで信じていたものが、見事にすべて覆される、という強烈な体験をしたときだった。だからこそ、7月27日に公開された映画『終戦のエンペラー』を、深い思いを持って見たのだ。
    話は、日本がポツダム宣言を受諾し、無条件降伏したところから始まる。そして、ダグラス・マッカーサーを最高司令官とするアメリカ軍が、日本に乗り込んでくる。マッカーサー元帥の任務は、日本を占領することであった。さらにいえば、占領という名の国家管理を行なって、日本を「民主主義国」として独立させようとしたのだ。
    そのためには、「戦争責任者」たちを逮捕して、連合国の裁判で裁くことが必要であった。そこで問題となったのが、昭和天皇を「戦犯」に含めるべきかどうかだった。そこでマッカーサー元帥は、ボナー・フェラーズ准将にその調査を命じる。フェラーズ准将は、日本のキーパーソンに直接会って天皇の戦争責任を問うた。昭和天皇を裁判にかけるべきかどうか、開戦直前まで総理大臣をつとめた近衛文麿、開戦時に総理大臣だった東条英機陸軍大将、内大臣の木戸幸一らに話を聞いたのである。
    結局、フェラーズ准将は、昭和天皇を裁判にかけることをせず、「天皇制」も続けるべきだと判断する。日本人がいかに天皇に深い思いを抱いているかを知り、もし天皇を裁判にかけたりしたら、日本が大混乱して、占領政策がまっとうできないと判断したからだ。近衛文麿、東条英機、木戸幸一らは、いま「戦犯」だったとされている。だが、彼らは自らの命をかけて、天皇を守ったとも言えるだろう。 
  • 長谷川幸洋 コラム14回「黒田氏を日銀総裁に決めたように 安倍総理が消費税増税延期を決断する日」

    2013-08-08 12:00  
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    黒田東彦日銀総裁 [Photo] Bloomberg via Getty Images
    消費税引き上げをめぐって、政府与党内の議論が激しくなってきた。安倍晋三首相や菅義偉官房長官は慎重に判断する姿勢を変えていないが、麻生太郎副総理兼財務相、甘利明経財財政担当相、高村正彦自民党副総裁らは増税に傾斜した発言を続けている。
    はたして消費税は引き上げるのか、それとも引き上げを延期するのか。引き上げるとしても、当初予定の2014年4月に8%、15年10月に10%へという2段階路線を修正し、たとえば1%ずつといった小刻みな引き上げに修正するのか。
    結論がどうなるにせよ、この問題を最終決断するのは安倍首相以外にない。逆に言えば、いまの段階で政府与党内からどんな声が上がっていようと、安倍が「こうする」と言えば、そうなる。アベノミクスを引っさげて参院選に圧勝した安倍の方針に弓を引いてまで抵抗するような閣僚や自民党幹部はいない。
    安倍総理は消費増増税を延期するだろう
    そこで、安倍がどうするかが唯一最大の焦点である。
    閣僚らの増税傾斜発言の裏側には、もちろん増税に執念を燃やして、糸を引いている財務省がいる。ということは、増税問題とは安倍が財務省の意向をどう受け止めて対処するか、という問題でもある。
    新聞はじめメディアは、安倍が日本経済の現状をどう見立てて、それに消費税引き上げがフィットするか否かという観点から増税問題を論じるケースがほとんどだ。言い換えれば、経済政策問題としての消費税問題である。だが「安倍・菅vs財務省」という政治的構図でみれば、消費税問題とは実は「政治主導か官僚主導か」という政治のあり方をめぐる問題でもある。
    むしろ「日本の政治そのもの」と言ってもいい。そういう観点から、安倍はどうするかと考えると、私は「増税を延期する可能性がかなり高い」とみる。
    なぜか。
    それを整理するには、アベノミクス第1の矢である大胆な金融緩和と2%の物価安定目標設定という政策がどうして実現できたか、なぜ黒田東彦日銀総裁を選んだか、という問題を考えてみればいい。
    安倍は今回の消費税引き上げ問題でも、黒田日銀の指名に始まる第1の矢と同じ発想で対処する、と考えるのが自然である。黒田日銀の誕生と金融緩和、物価安定目標こそが「安倍政権の原点」であるからだ。
    いまとなっては、黒田日銀は「すでにそこにある存在」になった。だが、それはけっして自然とすんなり決まったわけではない。財務省との激しいバトルの末に、安倍が勝ち取ったものだ。多くの読者が覚えているだろう。財務省は当初から、総裁には武藤敏郎元財務事務次官を強力に推していた。
    麻生副総理は武藤敏郎元財務事務次官を日銀総裁に推していたが
    財務省の意を汲んで武藤総裁実現に汗をかいたのは麻生である。
    財務省は安倍対策に麻生を押し立てる一方、主な新聞やテレビ局には幹部が絨毯爆撃して「武藤がいかに日銀総裁にふさわしいか」を力説して歩いた。その結果、NHKはじめ主な新聞、テレビは決定ぎりぎりまで「武藤最有力」と報じ続けた。財務省得意の外堀を埋める作戦である。
    だが、私の知る限り、安倍が武藤総裁の可能性を真剣に考慮したことは、ただの一度もない。最初から武藤は除外していた。最終的に武藤を選ばず、黒田で決着したのは承知のとおりだ。
    そのとき、麻生はどうしたか。
    麻生は武藤を推していたものの、最後は「これは総理のご判断。総理が決めれば、私は全面的にそれを支える」と言って、総理の決断に委ねた。麻生は立派だった、と思う。さすがに内閣総理大臣経験者である。
    安倍が黒田を選んだのは、けっして財務省や日銀の意を受けたわけではない。たしかに黒田は財務省出身だが、ナンバー2の財務官当時、その前の国際局長時代から金融緩和と物価安定目標政策に熱心だった。読売新聞やフィナンシャルタイムズにも、その線で寄稿している。現役の官僚でそこまで出来る人は生半可ではない。
    そして、ここが肝心なのだが、そもそもアベノミクスの柱である大胆な金融緩和と物価安定目標は財務省や日銀から生まれた政策ではない。それは2006年の第1次政権が倒れた後、野に下った安倍自身が徹底的に経済と経済政策を勉強して身につけた政策である。
    今回の安倍以前の政権では、自民党でも民主党でも経済政策を作ってきたのは事実上、霞が関だった。そして金融政策は日銀まかせだった。内閣総理大臣が自前の、いわば手作りの経済政策で勝負したのは、実に今回の安倍政権が初めてなのだ。そういう意味で、アベノミクス第1の矢はまさしく「政治主導」の政策である。 
  • 長谷川幸洋 コラム第13回 TPP脱退の選択肢はない 政治もメディアも国民もリアリズムを受け入れよ

    2013-08-01 12:00  
    330pt
    TPP交渉参加に反対する農業関係者(2011年10月) [Photo] Bloomberg via Getty Images
    マレーシア・コタキナバルで開かれている環太平洋連携協定(TPP)の交渉会合に、日本が初めて参加した。約100人の政府代表団だけでなく、自民党は西川公也TPP対策委員長ら4人の国会議員も送り込んで、農業の重要5品目(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、サトウキビなど甘味資源作物)の高関税を死守する構えだ。
    自民党は先の参院選を前に、参加慎重派の議員でつくる「TPP交渉における国益を守りぬく会」(森山裕会長)が「国益が確保できないと判断した場合は交渉からの脱退も辞さない」とする決議をまとめ、政府に提出している。
    これを受けて、党の参院選公約は「交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求します」と記した。
    これだけ読むと、場