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田原総一朗 「国が何かしてくれるのを待つのはダメだ、「国が真似をする」くらいのベンチャーをやれ!」
2014-10-23 20:00330pt僕は、若い人と話をするのが大好きだ。なかでも何かに挑戦しようとしている人が大好きなのだ。例えば、ベンチャービジネスを立ち上げたりする人たちだ。だから若き日のビルゲイツや孫正義にも取材した。だが、彼らの話を聞いていて、とても残念に感じることがある。日本は、ベンチャービジネスが育ちにくい土壌だということだ。銀行は担保主義である。担保がないと、お金を貸してくれない。出資ファンドもほとんどない。だから、技術やアイデアはあっても、資本がない若い人は起業しづらい。一方、古い企業はなかなか潰れない。日本は、いわゆる「企業の新陳代謝が悪い」社会なのだ。しかし、さほど資金がなくても起業が可能な分野がある。インターネットの世界だ。インターネット関連のベンチャービジネスは、年間1000~1500組が立ち上げられているそうだ。そして、そのうち100~150組が成功しているという。ベンチャーの1割ほどが成功しているのだ。これには少なからず驚いた。ベンチャービジネスの世界が活気づいているのは、大変うれしいことだと僕は思う。今月2日、六本木ヒルズで、ベンチャービジネスを立ち上げた若手経営者10人の話を聞く機会があった。そのうち、最年長は吉田浩一郎さんだ。彼は、クラウドワークスという会社を経営している。この会社は、簡単にいえば人材派遣業だが、これまでの「派遣」のイメージとはまったく違う。アプリの開発、ホームページの制作、デザインなど、さまざまな分野のプロが22万人以上登録している。そして、ネットで依頼された仕事に対して、適切な人材をマッチングする。 -
長谷川幸洋コラム【第68回】リスク重なる世界経済。それでも「消費税10%」というエコノミストやマスコミは財務省の「ポチ」ではないか
2014-10-23 20:00330pt
もし、イスラム国が中東の原油を制圧したら… 〔PHOTO〕gettyimages
世界経済の先行き不透明感が強まっている。国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しは「下ぶれリスクは明白である」と強い言葉で警告した。欧州ユーロ圏は4~6月期にゼロ成長に落ち込み、中国も「すでにマイナス成長ではないか」という声がある。これで日本は消費税を10%に引き上げられるのか。欧州経済の先行きは悲観的
まずIMFの予想をみよう。10月7日に発表された世界経済見通し(http://www.imf.org/external/japanese/pubs/ft/survey/so/2014/new100714aj.pdf)によれば、好調なのは米国と英国くらいだった。あとは日本を含めて悪化か、せいぜい横ばいだ。なかでも停滞が際立っているのは欧州である。ユーロ圏は債務問題という負の遺産から抜け出せず、2012年は▲0.7%、13年も▲0.4%とマイナス成長を続けた。14年はようやくプラス0.8%に転じる見通しだが、これは希望的観測かもしれない。欧州連合統計局(eurostat)が9月5日に発表したユーロ圏18カ国の4~6月期の国内総生産(GDP)は前期比0%成長だった(http://epp.eurostat.ec.europa.eu/cache/ITY_PUBLIC/2-05092014-AP/EN/2-05092014-AP-EN.PDF)。この後に発表された7月の鉱工業生産は前月比1.0%増とプラスを保ったが、建設部門の生産高は同じく0%と横ばいにとどまっている(いずれもeurostat)。景気回復はとても視野に入っていない。IMFも「ユーロ圏の回復が失速し需要がさらに弱まり、低インフレがデフレにシフトするリスクがある」と先行きには悲観的だ。
イタリアを訪れた李克強首相。中国も欧州も経済に暗雲 〔PHOTO〕gettyimages
中国の金の卵は壊れた
それから中国である。IMFの見通しは14年に7.4%成長を見込んでいる。これは中国政府の公式目標7.5%とほぼ同じだ。ところが、中国出身の中国ウォッチャーである石平・拓殖大学客員教授は最近発売された『月刊Voice』の論文で「中国経済はいま、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされている」と書き出して、次のデータを紹介している。「それを端的に示しているのは、今年8月20日に中国煤炭工業協会が公表した2つの数字である。今年1月から7月までの全国の石炭生産量と販売量は前年同期比でそれぞれ1.45%減と1.54%減となったという」そのうえで、李克強首相が公式のGDP統計を信用せず、もっぱらエネルギー消費量や物流を基に本当の成長率を判断する、という有名なエピソードを紹介しつつ「このような物差しからすれば、…政府公表の『7.4%』ではなく、実質上のマイナス成長となっている可能性がある」と指摘している。日本の市場関係者に聞いてみても「7%成長は信用できない。実際はせいぜい3~5%くらい、というのが市場のコンセンサス」という。先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40720)でも指摘したが、中国では不動産バブルがすでに弾けた。中国の国家的闇金融であるシャドーバンキングは、不動産バブルが高金利を生み出す金の卵になっていた。その卵が壊れたからには、いずれシャドーバンキングの破綻も免れない。GDPの半分に達する500兆円規模ともいわれる闇金融システムが壊れれば、どうなるか。中国だけにとどまらず、中国への輸出で息をついている韓国、さらに世界経済への打撃も避けられない。 -
田原総一朗「「世界の全共闘」となったイスラム国は、いったい何がしたいのか?」
2014-10-16 20:00330pt9月23日、ついにアメリカが 「イスラム国」への空爆を始めた。 今回の軍事作戦には、サウジアラビア、 アラブ首長国連邦、ヨルダン、 バーレーン、カタールの5カ国も参加したという。 だが、空爆によって すぐに何かが解決するとは、とても思えない。このイスラム国だが、いったい何か。 どういう組織なのか。何を目指しているのか。 いま、僕は非常に興味を持っている。イスラム国によってネット上に流された、フランス人やアメリカ人の人質を 「処刑」する残虐な映像をご覧になった方も多いだろう。 こうやって欧米諸国を「脅す」という、 ネット時代の新しい形のテロ組織だ、といっていいだろう。イスラム国は、イスラム教スンニ派の過激派テロ組織だ。 組織の人数は正確にはわからない。 2万人とも5万人ともいわれる。 とにかく、かなり大規模な集団だ。なぜ、このような組織が生まれたのか。かつてアメリカは、イラクに対して、 フセイン政権は独裁である、 さらに、大量破壊兵器を持っている として攻撃した。 イラク戦争である。 この戦争で、アメリカはイラク国民を「解放」したといっていた。だが、アメリカの狙いは、 中東の分断支配だったといえよう。 フセイン政権が倒れたあと、アメリカは思惑通り親米の マリキ政権を立てたのだ。ところが、これがうまくいかなかった。 イラクは大混乱に陥ったのだ。イスラム教は、大きくスンニ派と シーア派という2つの宗派に分かれる。フセインはスンニ派だ。だが、イラクはシーア派が国民の6割以上を占めている。 少数派だったフセイン政権は、実はシーア派やクルド族をうまく治めていたのだ。シリア、エジプト、リビアなどもそうだが、 中東には中東の民族性があり、風土があり、そして宗教があるのだ。欧米流の民主主義をいくら押しつけても うまく行くはずがない。当然といえば当然のことだ。だから、フセイン政権が倒れたあとの イラクは大混乱に陥ったのだ。 そして、そのようななかで現れたのが、 スンニ派過激派のイスラム国と いうわけだ。ではイスラム国は、いったい 何をしたいのか。コーラン、つまりムハマドの教えをよりどころに、理想のイスラム国家を建国したいという。 その理想にあこがれて、なんとイギリスやドイツ、フランス、アメリカから、若者たちが次々と加わっているそうだ。その若者の多くは、欧米で暮らすイスラム系移民の子孫だ。彼らは、いま住んでいる国で差別を受けている、と感じている。不満もあり、鬱屈している。彼らの目に映る「イスラム国」は、理想の国を目指す希望の存在なのだ。 -
長谷川幸洋コラム【第67回】政府もIMFも弱気なのに、日銀だけはなぜ強気なのか? 現状維持政策の読み方
2014-10-16 20:00330pt
「タマ」はまだ取っておきます!〔PHOTO〕gettyimages
日銀が10月7日に開いた金融政策決定会合で、景気は「緩やかな回復を続けている」という基調判断を据え置いた。日銀の強気は突出して異様
一方、内閣府は同日に発表した景気の現状を示す指数の低下を受けて、基調判断を「下方への局面変化を示している」と引き下げた。政府が弱気なのに、日銀はなぜ強気なのか。弱気なのは日本政府だけではない。国際通貨基金(IMF)も2014年の日本を0.9%成長と予想し、7月時点の見通しから0.7%ポイントも引き下げた。4月の消費税引き上げで4~6月期の成長率が予想以上に落ち込んだためだ。さらに言えば、15年についても0.8%成長と同じく0.2%ポイント引き下げた。私はよく各地の中小、零細企業経営者たちと話をする機会がある。8日には兵庫県姫路市で税理士たちの話を聞いたが、彼らは異口同音に「私たちの顧客である中小、零細企業には景気回復の実感がありません。厳しい状況ですね」と言っていた。田園風景が広がる田舎に行けば、道を走っているのは軽自動車ばかりだ。生活の足になっている軽自動車のガソリン代値上がりが可処分所得を直撃している。家族数にもよるが、一世帯当たりでトータルの所得減は1万円を超える場合もあるという。これは物価上昇を加味した実質ではなく名目の話である。目の前で現金が消えていくのだ。そういう肌感覚や政府、IMFの発表と比べると、日銀の強気は突出していて、やや異様な感じさえある。
10%消費増税がどちらに転んでも「いま緩和する必要はない」
日銀内の事情に詳しいウォッチャーに話を聞くと、実は日銀の中でも意見が割れているらしい。それはそうだろう。「景気の先行きについて、事務方ではこの数週間で急速に弱気派が増えました。日銀は上司の顔色をうかがう“ヒラメ集団”でもあるので、トップの黒田東彦総裁が強気だと、あえて表で異論を唱える人はいませんが…」という。事務方だけではない。岩田規久男副総裁と黒田総裁の間でも意見が割れている、という説もある。岩田本人に確かめたわけではないから、それはひとまず措くとしよう。私は金融政策決定会合がまだ続いていた7日午後、テレビの生番組(BSスカパーの『チャンネル生回転TV Newsザップ!』)に出演していた。景気判断と金融政策の据え置き決定を聞いて「あ、これはタマを出し惜しみしたな」と直感し、番組でそう解説した。黒田総裁はこの先に控えている消費税増税問題をにらんで景気判断の変更と追加緩和を先送りした。私はそう思う。本来なら、ここで追加緩和に踏み切ってもおかしくない局面なのに、緩和どころか景気判断も現状維持にしてしまったのだ。ご承知のように、安倍晋三政権は消費税を10%に引き上げるかどうか、7~9月期の国内総生産(GDP)の数字をみて12月に判断する方針だ。ここで増税断行を決断すれば、政権は増税による一段の景気悪化を防ぐために、政策でテコ入れしなければならない。本当は増税しなくてもテコ入れが必要なくらいの局面だ。補正予算の編成と追加金融緩和である。補正予算編成は政府の裁量で可能だが、金融緩和は日銀の仕事である。建前はそうだが、政府は日銀に意見を述べることができる。当然、日銀に緩和圧力がかかる。黒田総裁とすれば、それはいまから十分に予想できるから、そのときに備えていまは緩和に踏み切らない。つまりタマをとっておいた。逆に増税を先送りした場合、露骨な緩和圧力はなくなるので、日銀には裁量の余地が広がる。そうであれば、緩和を急ぐ必要はない。増税先送りは前向きなサプライズになって、景気にプラス効果さえ生むかもしれない。それなら、なおさらいま緩和する必要はない、という話になる。
〔PHOTO〕gettyimages
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田原総一朗「『1強』自民党の独走を止められるのは誰か? 僕が注目する政治家はこの人だ」
2014-10-11 20:00330pt現在の日本の政治情勢は、「1強多弱」といわれる。「1強」はもちろん自民党、その他の政党は「弱」という。要は、野党がだらしないということなのだ。アベノミクスにしても、集団的自衛権にしても、批判するばかり。「対案」を出すことができない。そういうところを、国民は情けない思いで見ているのだろう。ところが、ここのところ野党が活性化し始めている。まず「日本維新の会」と「結の党」が合併した。そして「維新の党」が誕生した。野党の牽引役たるべき民主党も、新体制を発足させた。一時は海江田代表降ろしを画策した、岡田克也さんが代表代行になっている。いわば現体制が、岡田さんを「引き入れた」格好となったのだ。そんな民主党に対して、僕がとても期待しているのは、新幹事長の枝野幸男さんだ。僕が見る野党議員のなかで、枝野さんは「対案」を出せる唯一の人物といっていいだろう。彼は、まずアベノミクスに反対している。経済成長する時代は終わったと考えているのだ。ご存じのとおりアベノミクスは、「経済成長」を大前提とする政策だ。そのため「異次元」の金融緩和、そして公共事業をおこなって、成長戦略を掲げているのだ。それに対して枝野さんは、「無理だ」と考えている。さらにいえば、「資本主義の終わりがきている」とも考えているようだ。だから、これからはいかに富を分配するのか、いわば「ポスト資本主義」を示そうとしているのだ。一方、集団的自衛権についても、はっきりと反対の立場を打ち出している。安倍内閣は戦争をしないといっている。だが、後世の内閣が解釈を変えて「行使できる」としてしまえば、戦争をできるようになってしまう。極端なことをいえば、日本に共産主義の政権が生まれたとする。それは日本共産党のことではない。その政権が、ロシアや中国から要請され、軍隊を海外に出すことも十分に考えられるのだ。僕は、枝野さんの立法能力にも非常に期待している。そんな彼が幹事長に就任したことは、民主党にとって大きな原動力となるだろう。 -
田原総一朗「僕が、80歳を過ぎても徹夜で議論できるワケ」
2014-10-10 20:00330pt僕は今年80歳になる。毎週土曜にBS朝日「激論!クロスファイア」、月に一度、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」の司会をしている。また、ラジオ番組は週に2本あり、雑誌の連載は6本、ネット連載は3本ある。そのほか、単発のテレビ出演や講演もあり、僕の手帳はいつも真っ黒だ。「その歳で、なぜそんなに元気なのですか」と、よく聞かれる。そんなとき僕はいつも、「悩まないこと」と答えている。もちろん、日々迷うことはある。いろいろと考え込むこともある。けれど夜になれば、悩んでも仕方ないと寝てしまうのだ。だから、失敗しても引きずらない。済んでしまったことを、くよくよ悩んでも仕方ないからだ。ぼくは、特別な健康法なんてしてはいない。ただ、しいていえば、たっぷり7時間睡眠をとるようにしている。そして、好きなことしかしない。このふたつだけは、心がけている。人間、ストレスが一番体に悪いのだ。以前、人に頼まれて、オーケストラの指揮者の真似事をやったことがある。カラオケの音楽に合わせてイヤイヤ指揮棒を振る練習をしたら、たちまち消化器系がダウンしてしまった。それ以来、僕は嫌だと思う仕事は受けないようにしている。食事も、嫌なものは食べない。好きなものしか食べないのだ。たとえ身体によくても、食べたくないものなんか食べても、身体が喜ばないのではないか。僕は、そう考えているのだ。だから、朝はトーストと目玉焼き、ちぎったレタスと紅茶。そして、すりおろしたリンゴと季節の果物と決まっている。昼は、だいたいうどんだ。夕食は、外食になることが多いが、それでも、あきれられるほどいつも同じメニューにしている。僕は、お酒は一切飲まない。そのかわり、白いごはんと味噌汁、煮るか焼いた白身の魚、野菜の煮物かお浸しと豆腐。デザートは旬の果物だ。25年来、ほぼ毎日、こんな食事をしているが、飽きることはない。かなり前のことだが、「三世紀会」という、政治家の会合を取材したことがある。会長は、1896年生まれの岸信介さん。岸さんは戦中戦後に活躍した政治家で、安倍首相の祖父である。この岸さんはじめ、会員はみんな19世紀生まれだ。そもそも会の名称は、19世紀、20世紀、21世紀と、「三世紀を生きよう」ということでつけられたのだ。つまり、みんなで100歳以上生きようというわけである。では「長生きのコツは?」と僕は会員たちに聞いた。すると、3つの答えが返ってきた。ひとつめは、つきあいを悪くすること。つきあいがよいと、パーティや飲み会についつい毎晩顔を出して疲れてしまうというのだ。ふたつめは、悩まないこと。悩んでも物事は解決しない。3つめは、肉を食うこと。これは、最近の研究でも科学的に実証されているようだ。僕は、肉は好きではないので、残念ながら3つめは実践できない。でも、ひとつめとふたつめは、実によく実践できていると思う。僕にとって何より大事なことが、ひとつだけある。それは、毎日いろんな人たちと会うことだ。家で本を読んだり、原稿を書いているとき以外は、たいてい人と会っている。なぜ人に会いたくなるのか。それは「好奇心」があるからだ。好奇心が、僕の原動力になるのだ。 -
長谷川幸洋コラム【第66回】香港はどこへ行くのか?自由や民主主義のありがたさを知る人々の反対に、 習近平は追い詰められている
2014-10-10 20:00330pt
拡大する香港の民主化運動---〔PHOTO〕gettyimages
民主化を求める香港の抗議行動が拡大している。事の起こりはといえば、行政長官の選出について、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会が8月末に決めた「普通選挙案」が民主主義にほど遠く、中国の息がかかった候補者からしか選べない仕組みになったからだ。香港はどこへ行くのか。「50年間、民主主義を尊重」の約束は破られた
これまで行政長官は選挙委員会(定員1200人)が選出する間接選挙の仕組みで決まっていた。それを、2017年からは新しい指名委員会が指名する2~3人の候補者の中から住民が1人1票で選ぶ方式に改めた。一見、住民の意思が尊重されるように見えるが、肝心の指名委員たちは親中派が多数を占める見通しなので、民主派は事実上、候補者の段階で閉めだされてしまう。そこで民主派は「1人1票とは名ばかりで結局、中国の言いなりになる」と強く反発しているのだ。香港は1997年に英国から中国に返還されたときに、中国が共産主義と市場経済に基づく民主主義の1国2制度を認め、2047年まで50年間にわたって民主主義を尊重する約束があった。今回の選挙改革案はこれを真っ向から破るものと言っていい。だから、米国上院のメネンデス外交委員長は「香港市民に対する約束を破った」と非難し、オバマ大統領も民主派を支持している。だが、国連の潘基文事務総長は「中国の内政問題」というのが基本的立場だ。香港が中国のものであるのはその通りである。だが、中国は対応を一歩誤ると火の粉が自らにふりかかり、大きなダメージを受けるだろう。たとえば、最終的には人民解放軍が出動して実力で抗議行動を制圧するのではないか、という観測もある。そうなると、1989年の天安門事件の再現になる。香港の状況は逐一、世界中に報じられており、もしも香港が血の雨に沈むようなことがあれば、中国は天安門事件どころではない、世界中から非難の嵐を浴びることになる。いまのところ、中国に「武力鎮圧の考えはない」と報じられている。催涙弾を使った制圧作戦が強い批判を浴びて、逆にデモが一層拡大した経緯もある。デモ隊は梁振英行政長官の辞任を要求しているが、梁長官は拒否し一歩も引かない構えだ。となると、抗議行動は長期戦が必至である。
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