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記事 4件
  • なぜ対日強硬路線か? 中国新国家主席・習近平が抱える「3つの恐怖」

    2013-03-28 19:00  
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    3月17日、中国で全国人民代表大会、いわゆる全人代が開催され、習近平氏が国家主席に就任、「習近平体制」が発足した。この新体制に対して翌日の朝刊各紙は、一斉に「対日強硬路線」と報じた。尖閣諸島をめぐる問題などを背景に、中国は武力行使も辞さない姿勢を続けるだろう、というわけだ。だが、本当にそうなのか。
    いま中国は、高度成長の真っただ中にある。実はこの高度成長にもっとも貢献している国は、日本なのだ。このことは中国側もはっきりと認めている。中国の成長への貢献の割合は、日本が約6割だと言われている。ちなみにアメリカが約2割、韓国は1割に満たない。国民に経済成長を約束している中国にとって、日本の存在が不可欠なのは、間違いない。
    その日本に対して、中国が戦争を仕掛けてくるはずがない。当然、アメリカを相手に戦争をするはずもない。それなのになぜ、習近平氏は演説の中で、いまにも戦争を仕掛けるかのようなことを言うのか。
    実は、中国政府は危機感を持っている。挑発的な演説は、この危機感の表れだと言っていいだろう。なによりも軍部に気を遣っているのだ。武力を独占する軍部がクーデターを起こして、政権をひっくり返すことは歴史上、多くの国で見られる。そのことを中国政府は恐れているのである。
    そしてもうひとつ、国民が怖いのだ。中国には「言論の自由」がない、とよく言われる。だが、そんなことはないと僕は思っている。いまの中国には、確実に「言論の自由」が育っている、と実感しているのだ。
    「日中ジャーナリスト交流会議」という、中国人ジャーナリストとの交流を、僕は続けている。年に2回、日本と中国で交互に開催し、2012年6月には、沖縄の地で7回目の会議を開いた。この会議の第1回目のとき、「中国は、経済は自由だが、政治は違うじゃないか」と中国人ジャーナリストに言ったことがある。僕の言葉に、彼らは顔色を変え、「そんなことを言うなら帰る」と怒りを露わにして席を立ってしまった。ところが5回目くらいから雰囲気が変わった。同じ質問を彼らにぶつけると、「おっしゃるとおりだ。だが政治もどんどん変わる。民主化、言論の自由を考えると、いずれ中国も多党制になるのがいいと思う」とまで言うようになった。
    共産党一党支配の国で「多党制が理想」と言えるまでになったのだ。もちろん「制限付きの自由」である。「微博(ウェイボー)」という中国版のツイッター上では、発言のおよそ8割が政府批判だという。力で押さえつけすぎて中東のようなクーデターが起こるより、適当にガス抜きをさせたほうがいいという判断である。政府は「批判」までなら許しているのだ。だが、許されるのは「批判」までで、「政府を倒そう」「集まろう」というような行動を伴う書き込みは許されていない。
    さらに付け加えれば、世界から孤立することも中国は恐れている。アメリカ主導で進められているTPPは、中国はずし以外の何ものでもない。世界からの孤立、軍部、そして国民の不満に対する怖れ。国内外に溢れるさまざまな「不安」から、今回の強硬な演説になった。「強気」なのではない。「強がり」なのだ。
    今回の新体制でひとつ、日本にとってよい材料がある。駐日大使を務めていた王毅さんが、外相に就任したことだ。僕は、彼と何度も会って、食事をともにしたことがある。王毅さんは、非常に聡明な知日派だ。彼の外相就任は、日本の対中国外交にとって、たいへんよいことだろう。
    それにしても、中国という国家は経済と政治のねじれ現象がどんどん大きくなっているように見える。昔と違って、いまは海外からどんどん情報が入ってくる。その情報をすべて規制するのは不可能だ。民主化の流れを止めることはもはや難しいだろう。
    それでは中国は、どうやったら血を流さずに民主化していくのか。習近平新体制がどのようにソフトランディングするかを僕は注意深く見ていきたい。

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  • 直接、会って話してわかった、安倍首相の「本音」

    2013-03-21 19:00  
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    僕が司会をする番組「激論!クロスファイア」に、安倍晋三首相が出演した。 番組始まって以来の、現役首相の出演だ。しかも生放送である。 番組での安倍さんは、終始落ち着いていて、自信に満ちているようにみえた。 その自信の根底には、もちろん「アベノミクス」に市場が反応していることが 挙げられるだろう。 首相に就任する前、1ドル70円台まで円高は進んでいた。 いま1ドル95円前後だ。株価も1万2千円を超えている。 ただし、安倍さんは、具体的な経済対策を実施したわけではない。 あくまでも、こういう経済対策をすると打ち出しただけだ。 言うまでもないことだが、これからが本当の勝負なのだ。 一方、普天間基地移転問題にも、自信を持っているように見えた。 担当大臣である山本一太さんが沖縄側と信頼関係を築いていて、 辺野古の埋立申請についての話し合いが、進んでいるからだろう。 そもそも民主党政権以前の自民党政権の時代には、沖縄の県知事や名護市長たちは、 普天間基地を辺野古へ移すことに賛成していた。 自民党の野中広務さんたちが、地元の人たちの理解を得るために、沖縄まで 何度も足を運んだからだ。 まるで沖縄で暮らしているかのように、精力的に通っていたのだ。 ところが、民主党政権、とくに鳩山由紀夫元首相は、その関係を壊してしまった。 この壊れてしまった信頼関係を、安倍さんは再構築することができるのではないか。 安倍さんは、「信頼関係」という言葉を番組で何度も口にしていた。 これも自信の表れなのだろう。 そして、憲法改正の問題である。安倍さんは新憲法制定を目指してきた。 そのために、首相に就任したら、まず憲法第96条の改正から手をつけるだろうと 言われてきた。 憲法を改正するためには、衆参でそれぞれ3分の2以上の国会議員の賛成が必要だ。 それを半数の賛成で改正できるようにする。もちろん憲法第9条を変えるためだ。 ただし、安倍さんは、第9条第1項「戦争の放棄」の改正には反対である。 安倍さんは、右翼に近い考え方を持っている、と言われている。 けれど一方で、とてもバランスのよい考え方も持っている。 だから僕は、安倍さんに、 「あなたは、保守本流だという意識を持ち、両足をしっかり大地につけ、右や左の 現実味のない理想には目を向けるべきではない」 と言っている。 この夏の参院選で自民党が勝利すれば、安倍さんは憲法改正に本格的に 取り組むのではないか、という見方がある。 だが、番組で安倍さんと話をして、そんな心配はないと感じた。 参院選で勝利したとしても、安倍さんは経済再生といった目の前の問題解決のための 政策を続けていくだろう、という印象を僕は持ったのだ。 これは日本にとってよいことだ。 そして安倍さんという人間は、この正しい判断ができる人だと僕は信じる。 いま、市場の反応がよいこともあって、安倍さんを批判したり、強くものを 言う人はいない。 だからこそ僕は、安倍さんに対して、いままで以上に厳しい意見を言い、 どんどん発言していきたい、と思っている。

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  • 入院中のベッドの上で考えた【その2】、理想論と現実論、相反する問題解決に何が必要か?

    2013-03-11 14:00  
    3月7日に無事退院しました。みなさんには本当にご心配をおかけしました。 お見舞いや励ましのお言葉、ありがとうございました。
    さて、入院中、ベッドで大人しくしていると、普段は気にも留めていなかったことが 気にかかったりする。たとえば新聞の記事だ。 いま国会で侃々諤々の議論が繰り広げられている、TPPについての記事だ。 僕はそれを読んで、いくばくかの違和感を覚えた。 TPPに反対する理由として、「震災後、循環型地域社会を目指す日本にとって」と いうようなことが書かれていたのだ。
    「循環型地域社会を目指す」といえば、たしかに響きはよい。 だが、その言葉は何を意味するのか。 いうまでもなく、地域内で食糧もエネルギーも自給自足していく、ということである。 だが、そんなことは果たして可能なのか。そもそも、そんな社会を目指したら 日本は貧しくなるだろう。 もちろん、それぞれの地域が自分の地域の農産物などを大切にすることに、僕は大賛成だ。 けれど、それは地域社会という狭い範囲の考え方である。
    この記事はひとつの例にすぎない。このように口当たりのよい言葉が、 あらゆるところに見受けられる。 耳にやさしい、一見、受け容れやすそうな発言をする論者が、いまだに多くいるようだ。 現実をしっかりと見ていれば、こんな発言はできないはずだと僕は思う。
    現実は甘くない。 だから、現実を見すえた議論からは、口当たりのよい言葉で言い表せるような結論が 生まれるはずがない。 気迫に満ちた議論の過程では、人心を惑わす優しげな言葉は、ふり落とされるものだ。
    徹底した議論こそが、現実に即した、堅実な答えを導き出すことができる。 僕はこれからも厳しく議論を重ねていきたい。 そうして初めて、現実の厳しさに向き合える答えを出していけると思うからだ。

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  • 入院中のベッドの上で考えた、日本の教育の「病巣」

    2013-03-05 20:30  
    僕はいま、入院している。 そのことをツイッターに書いたところ、多くの人にお見舞いの言葉をいただいた。 改めてここで御礼を申し上げます。ありがとうございます。 僕の身の上に起きたことを簡単に話します。 2月23日夕方、近所で転んで、救急車で病院に運ばれた。どうも「食あたり」だったらしい。 入院してからずっと点滴を続けていて、ここ数日でだいぶ回復してきた。 27日には病室でラジオの収録もしたし、翌日は一時外出でラジオ出演もしてきた。 もうそろそろ退院できるだろう。 先週の2月22日金曜日は、月1度の「朝まで生テレビ!」の日だった。 実は、その数日前から僕は調子が悪かった。 会食をした後、帰宅して寝ようとすると吐き気が止まらず眠れない、そんな日があった。 それにもかかわらず僕は、帯広、熊本、沖縄、大阪、青森と、日本全国を飛び回っていたのだ。 そして22日のことだ。「朝まで生テレビ!」の放送が始まったが、どうにも具合が悪い。 後で知ったことだが、本番のときに、番組のスタッフにそうとう心配をかけたようだ。 なんとか放送を乗り切り、ホテルに戻ったが、まったく眠れない。睡眠薬を飲んでもダメだ。 仕方がないので、朦朧としながら自宅に帰ったのだが、やはり具合はよくならなかった。 そこで、僕は余計なことをした。本当に具合が悪いのか歩いて確かめよう、と思ったのだ。 そして、外に出てみたのだが、十数歩、歩いたところで倒れてしまった。 幸いにも近所の方が助けてくださり、なんとか立ち上がることができた。 ところが、そのとき僕はもう一度、外に向かって歩き出したのだ。 こんなとき、家に戻ろうとしないで、逆に外に向かうのが僕という人間なのだと、 我ながらあきれる。 だが、今度は二十数歩、歩いたところで意識を失ったらしい。 倒れている僕を警備員さんが見つけて、救急車を呼んでくれた、というわけだ。 僕は好奇心が非常に強い。 面白そうなことがあると、何にでも興味をもってしまうため、 この歳になってもますます忙しくなっている。 だから、体が悲鳴をあげて「少し休みなさい」と言った、ということなのかもしれない。 さて、その「朝まで生テレビ!」は、「教育」をテーマに激論をした。 ここにきて、「体罰」「いじめ」といったさまざまな問題が噴出してきている。 その根本に「戦後教育」があるのは、間違いないだろう。 そして、戦後教育を振り返ると、「教育委員会」というものに突き当たる。 太平洋戦争が終わったとき、日本を占領したアメリカは、 なぜ日本が「侵略戦争」をしたのかを考えた。 そして、国家が国民を教育していることに理由を見出した。 「国家が教育をするから悪いのだ」と考えたのだ。そこで アメリカのような“民主的”な教育委員会を設けた。 各自治体ごとに選挙で教育委員を選ぶという制度だ。 ところが、日本人は教育というものに熱心ではなかった。 というより、教育は「お上」がしてくれるもので、教育行政に自分たちが参加するという意識が なかったのだろう。だから教育委員に誰も立候補しないし、当然、投票率も低かった。 一方、共産党や社会党などの革新系の人たちは教育に熱心だった。 というより、「国家」がすることにとにかく熱心に反対する。 だから、どうしても彼らが当選することになるのだが、それはまずいということで、 教育委員は任命制度になったのだ。つまり名誉職である。 いま、教育委員長はたいてい、退職した校長などがなっている。 現役の校長たちにとって、教育委員長は先輩ということなるから、どうしても遠慮が出てしまう。 教育委員会も「自分たちがやる」という意識が低いので、役に立たない。 だから、大阪の橋下徹市長は、教育委員会への関与強化を進めているのだ。 教育問題について、安倍晋三総理も非常に熱心である。 平成18年、第1次安倍内閣では、「教育再生会議」を設置し、教員免許更新制導入や 教育委員会への国の関与強化などを実現させた。 いわば「政治主導」で改革の方向性を示し、提言を打ち出した。 安倍さんの教育改革は、教育を教育委員会から「国家」の手に戻そうとするものだ。 僕は、それを完全に否定するわけではない。 けれど、僕が実際に取材をした東京の杉並区立和田中学校や三鷹市立第四小学校では、 地域の人びとも参加して新しい教育の形を実現していた。 このような学校をつぶしてはならないと僕は思うのだ。 今回の「朝まで生テレビ!」にはその和田中学校の元校長、藤原和博さんが出演してくれた。 小学校で実際に教えていた乙武洋匡さんも話をしに来てくれた。 実のある話になるはずだったが、僕が体調不良であったため、うまく仕切りができず、 いまひとつ議論を深めることできなかった。とても残念だ。 教育は日本の将来を左右する、非常に大切な問題だ。このような問題こそ、 活発な議論が必要である。番組ではこれからも教育問題を取り上げていきたい。 そして、みんなが喧嘩になるぐらいの激論をしたいと思っている。

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