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田原総一朗 『参院選、「決められない政治」を終わらせるために、何を選択すべきか』
2013-07-13 12:00330pt7月4日、参議院選挙が公示された。第2次安倍晋三内閣発足後、初の大型国政選挙だ。21日の投開票に向けて17日間の熱い選挙戦が始まった。僕は現在の時点で、すでにすべての党の党首に話を聞いた。なかでも印象的だったのは、「日本維新の会」共同代表の橋下徹さんと、「生活の党」代表の小沢一郎さんだ。
橋下さんは、正直言ってとても参っているようだった。慰安婦発言に対して、メディアからの大批判、さらに共同代表である石原慎太郎さんからも責任を問われた。その挙句に東京都議会選で敗北。打たれ強い彼にとってさえも、よほど大変な状況が続いたということだろう。
一方の小沢さんは、人を口説く天才だ。かつて、新生党代表幹事だった小沢さんは、日本新党、新党さきがけ、公明党、日本社会党などとの連立を謀った。反自民連合を作り、細川護煕内閣を樹立させたのである。そのため自民党は、第一党でありながら野に下ることになる。小沢さんの胆力と口説きがあったからこそ、生まれた内閣であった。1993年のことだ。
その後、小沢さんは民主党の代表となる。そして、民主党が衆議院選挙で圧勝し、第一党となった2009年、小沢さんは首相になるはずだった。ところが、その直前に公設秘書が逮捕される。西松建設をめぐる汚職事件だ。これで、小沢さんは首相への道が絶たれた。その後の検察からのリークで、メディアにさんざん極悪人扱いをされた。メディアに潰されたと言ってもいいだろう。
今回、小沢さんに会って、その独特の「力」のようなものが、感じられなくなっていた。橋下さんと小沢さん、この野党党首2人に、本来のパワーを感じられないのは大変残念なことだ。「闘う相手は?」という僕の問いに、橋下さんは「メディア」、小沢さんは「自民党だ」と答えていたのが印象的だった。
小沢さん、そしてまだ若い橋下さんの力を奪ってしまった「報道」とは、いったい何なのだろうか。果たしてそれは、国民のためになっているのだろうか、と考えざるを得なかった。 -
衆議院選挙後の「二つのまさか」を大胆予測する!
2012-12-10 17:00今回は、2つの「まさか」を大胆予想してみた。 衆院選がいよいよ公示になったが、その「選挙後」に起こり得るシナリオだ。 ひとつめは、2013年の春から夏にかけてダブル選挙が行われる、という予想だ。 その時期に予定される参院選にあわせ、衆院選が行われるのだ。 「この12月に衆院選をしたばかりでなぜ?」と思われるだろう。 その理由を説明しよう。 実は、今回の衆院選は、「一票の格差」問題が解決されないまま選挙が行われる。 2011年3月に最高裁が格差を「違憲状態」と断じた。 にもかかわらず、「違憲状態」を是正しないまま衆院選に突入したのだ。 このような状態での選挙だ。 選挙後、当選した候補者たちはよいが、落選した候補者たちは黙っていられるだろうか。 「今回の選挙は違憲だったから無効だ」と訴える可能性は充分に考えられる。 もし裁判に訴えれば、選挙の無効が認められるだろう。 当然、選挙はやり直しになり、参院選とのダブル選挙になる可能性は高い。 僕はそう思うのだ。 2つめの予想は、大連立政権だ。それも自民党以外の政党による大連立政権である。 自民党の優勢が言われているが、その獲得議席は、200前後と見られている。 おおかたの予想では、第一党の自民党が、公明党と、それにさらに別の政党を加えて政権をとると言われている。 だが、自民党をはずした、大連立政権の可能性も十分にある、と僕は予想する。 1993年の細川連立政権の成立を思い出してほしい。 このとき自民党は、結党以来、守り続けてきた政権の座から引きずり落とされたのだ。 自民党は第一党ではあるが、単独過半数の議席をとれなかった。 一方、日本新党、日本社会党、新生党、民主党、公明党、そして新党さきがけなどが非自民で連立。細川護煕さんを首班とした内閣ができたのだ。 この前代未聞の政権を作った立役者は、誰か。 それが小沢一郎さんだった。 このとき、官房長官を務めた新党さきがけの武村正義さんと外務大臣となった 新生党の羽田孜さんに、組閣前、僕はインタビューをした。 このインタビューで二人は、「政権とは距離を置く」とはっきりと言っていた。 ところがフタを開ければ、二人とも重要ポストに就いている。 「距離を置くというのはウソだったのか」と、のちに聞いてみた。 すると二人は口を揃えてこう答えた。 「あの言葉は断じてウソではなかった。けれど小沢さんに口説き落されたのだ」 小沢一郎さんは、口説きの天才だ。 今回も滋賀県知事の嘉田由紀子さんを説得して、「日本未来の党」を立ち上げさせた。自分は黒子に徹するという。 その小沢さんが民主党、日本維新の会、社民党、公明党、みんなの党など、 自民党以外の主たる政党を得意の口説きで落としていったら、どうなるか。 ようやく無罪が確定し、「これが最後」と政治への意欲に燃える小沢さんなら、このようなシナリオも充分考えられるだろう。 すでに細川政権で、大連立を実現した男なのだ。 今回の衆院選の「地雷」――。 「一票の格差という違憲」「口説きの天才、小沢一郎」が2013年の政界をどう揺さぶるか。目が離せない。
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