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  • 2024年6月7日号:ニュースに一言

    2024-06-07 15:21  
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    ●大相撲5月場所は23歳の新小結・大の里関の初優勝で幕を閉じました。それも過去最短の初土俵から7場所での優勝というおまけ付きです。5月場所は1横綱、4大関のうち3力士が途中休場しましたが、大の里関は休場する前の照ノ富士、霧島を含めて1横綱2大関を倒しており、見方によっては彼が上位陣を休場に追い込んだともいえます。
    スポーツの素晴らしさは、選手の活躍が不特定多数の人たちに勇気や希望を与えるところといわれていますが、テレビ画面に映し出される大の里関の出身地、正月の地震から復興途上にある石川県で地元民がこの快挙に大喜びする様子を見るとまさにその通りで、金銭など物質的な援助ももちろん必要だとして、打ちひしがれた人々を力づけるのはなによりも精神的援助だとつくづく感じました。
    その意味では5月場所での大の里関の優勝は年6場所のうちの1つの優勝に過ぎないのかもしれませんが、この23歳の若者の活躍はそれにとどまらない付加価値の高いものだったと思います。さらに遡ること2ヶ月、3月の春場所では新入幕の24歳、尊富士関が初優勝しています。こちらも新入幕力士の優勝は110年ぶりといいますから近代相撲ではほぼ初めてといってもいいでしょう。
    このところ大相撲では、その世界に入って間もない力士の活躍が、逆に言えばベテラン勢の体たらくが目立ちます。いままで相撲、将棋、ボクシングはプロとアマの力量差が極めて大きい競技だといわれていました。それもあって他の競技だと序列は1位から順に位付けされるだけですが、これらの最高位には横綱、名人、チャンピオンと特別な称号が与えられています。にもかかわらず横綱、大関が休場ばかりで、やっと出てきたと思ったらコロコロ負けるのはいただけません。いままで古くは大鵬、柏戸から北の富士、北の湖、千代の富士、貴乃花、朝青龍、白鵬と絶対的横綱が存在していました。彼らが特別に抜きん出ていたのか、あるいはその周りの勢力が弱すぎたのか定かではありませんが、憎らしいほどの強さに好角家はしびれたものです。
    世間は常にヒーロを求めています。若い人たちの活躍は非常に気持ちのいいものですが、横綱相撲を安心して観るのもまた相撲の醍醐味と思うと少し物足りなさを感じる昨今です。
     
     
    ●パナソニックが6月発売のミラーレス一眼カメラを紹介するホームページで、このカメラで撮ったのではない外部からもってきた写真を使って性能のよさをアピールしていたというニュースがありました。
    このホームページには草むらを遠くから走ってくる小犬の写真に「進化したリアルタイム認識AF(オートフォーカス)により、動きのある被写体の撮影で自動的にピントが合います」との説明文がつけられていました。写真を見ると確かに犬の表情までが寸分の狂いも無く捉えられており「素人の自分でも簡単にこんな写真が撮れるのなら是非欲しい」と誰もが思うことでしょう。しかし、実際にはこの写真はどこかのプロカメラマンが別のカメラで撮影したものだったのですから困ったものです。これでは我が社の製品こそがNo.1とアピールしなければならないメーカーが、自ら自社のカメラで撮った写真では性能の良さを伝えることができないと言っているのと同じです。
    世界に示すべく日本の“ものづくり”に対する矜持はいったいどこにいったのでしょう。これがもし開発から販売までを1人、あるいはごく少数で担う会社でしたらこんなことにはならなかったことと思います。なぜなら、完成させた商品に対する確固たる自信が“自社製品より劣るほかの会社のカメラ”で撮影された写真を絶対に許さないからです。しかし、パナソニックほどの巨大企業になると開発部、営業部、宣伝部などが細分化され“ものづくり”以外の部署が専門分野にのみ従事することでメーカーとしての本来のありかたを忘れてしまいがちです。今回の件で一番落胆し、また憤っているのは騙された購入者ではなく、自分たちの作ったカメラを否定された形になった製品開発に携わった社員たちかもしれません。
    写真といえばいままでは目の前にある真実をそのものズバリ写し出すものでした。そのため撮影者は“決定的瞬間”を逃すまいと緊張の中でカメラを構えたものですが、最近では明るさを変えることはもちろん、影を写らなくしたり、さらには本来そこにあった物を跡形も無く消し去るなどシャッターを押した後にいくらでも好き勝手に加工できるようになっています。写真はウソをつかないなんて過去のものです。音声も人間の声を自由に作り出せる現代、技術の進歩が信じられるものをどんどん少なくしているのは残念なことです。
     
     
    ●今年の正月に羽田空港で日航機が衝突炎上した際、貨物室に預けられていた犬が乗客と一緒に脱出できず犠牲になったことで「ペットも家族の一員なのに」という批判がありましたが、アメリカでワンコが文字通り家族同然に飛行機で海外旅行できるサービスが始まったというニュースがありました。
    この便は犬のおもちゃなどを販売する会社が用意するチャーター便で、搭乗したワンコはケージに入れられないことはもちろん、エリアを指定されることも無く飼い主と一緒に普通に客室のシートに座るといいますから驚くやらおかしいやら。しかも乗れるのは小型犬に限らずあらゆる犬種OKだそうで機内はいったいどうなることやら。
    我々が飛行機に乗ると離陸前にCAさんから機内設備の説明を受けます。救命胴衣の空気が足りないときには息を吹き込めと指示されますが、彼らははたして吸入パイプを噛むことなくうまく吹き込めるのか。シートベルトは身体のどの部分に巻くのか。また、機内食は「ビーフORチキン」のほかに「ORドッグフード」となるのでしょうか、疑問はつきません。
    このチャーター便はニューヨーク=ロサンゼルス、ニューヨーク=ロンドン、ニューヨーク=パリの3路線を定期的運航されるそうです、気になる料金は人間1人込みで国内線が片道6千ドル(約95万円)、国際線が8千ドル(約126万円)と結構なお値段です。まさにファーストクラス並みの価格でどれほどの需要があるのかわかりませんが、乗った犬たちが「“ワン”ダフル」と言うのだけは間違いないようです。
     
     
    ●最近では新婚夫婦の出会いのきっかけNo.1は「マッチングアプリ」だそうです。マッチングアプリとはネット上に自身のこと、望む条件を登録して希望に合った相手を探すものです。そんな現代版キューピッドともいうべきマッチングアプリを東京都が独自に開発しているというニュースがありました。
    民間にいくつもの業者があるのにわざわざ自治体が参入する意味を都は「行政がやることの安心感」と答えています。たしかに多くのアプリでは登録者の情報に虚偽があり、後々になってトラブルに発展するケースがあるようです。それを防ぐために東京都版では申し込み時に顔写真付きの本人確認書のほかに独身証明書か戸籍謄本、収入を証明する源泉徴収票などの書類提出に加えて事前面談もするそうです。配偶者がいるにもかかわらず未婚だと偽るのはもってのほかですが、年収を少しくらいサバを読むのも許さないとなると低収入にあえぐ若者の多い中、果たしてどこまで登録者を集められるのか疑問です。
    既存のアプリで本当は400万なのに500万と申告するのは出会いのチャンスを広げるためです。それをバカ正直に400万として予選落ちの連続でマッチングできなければなんの意味もありません。今は400万でも結婚して頑張れば500万、700万、1000万にもなるかもしれない若者の出会いのチャンスを厳格化により奪うのはいかがなものでしょう。
    なにより結婚しない(できない)理由によく経済的な不安が上げられますが、1人より2人で暮らす方が物心共に豊かになることもあるのです。お金が第一でそのチャンスを逃すのは残念なことです。そもそも行政のやるべきことは結婚相手を探す手伝いではなく、真面目に働きながら結婚したいと考える若者が安心して暮らせるだけの“稼げる環境”をつくることだと思うのですが。都はアプリ開発を含む結婚促進事業に23年度は2億円、24年度は3億円を予算計上しています。これらはすべて未婚者を含めたすべての都民の税金です。もっと有意義に使ってもらいたいものです。
     
     
    ●2025年3月から半年の予定で開催される大阪・関西万博のボランティアが決まったというニュースがありました。1月26日から4月末にかけて行なわれたこの募集には当初目標の2万人を大きく上回る5万5634人の応募があり、急遽採用人数を3万人に増やしました。
    今回の万博は日を追うごとに上方修正される予算や工事の遅れ、参加国の減少などネガテェブな話題ばかりで一向に盛り上がっていませんでしたが、この応募者増に協会幹部は「予想をはるかに超える数」と大喜びのようです。
    応募者の内訳は10~20代が38・7%、30~40代16・7%、それ以上が44・6%で、特に10代の23・6%は年代別ではトップと、中高年が主となる今までのボランティアとは違った年代構成となっています。前期高齢者のわたしの周りでは万博を話題にする人はほとんどいませんが、若者の間では大盛り上がりなのかと思いきや、どうも様子がおかしいことに気付きました。なんと大阪の大学の多くが学生に対し「ボランティアに行け」と動員をかけていたようなのです。
    元々、大阪府内の42大学で構成するNPO法人と万博協会は協定を結んでいましたのである程度の協力があるのは予想していましたが、中にはボランティア実績を単位認定する大学まであったといいますから“やりすぎ感”は否めません。ボランティアとは本来、無償の奉仕活動のはずです。見返りをちらつかせて働かせるのならボランティアなんて聞こえの良い言葉を使うことはやめてもらいたいものです。さらに応募期間は3ヶ月あまりあったのにもかかわらず5万5634人中、3万人が最後の10日間の駆け込み応募ということで、大学側が「さっさと申し込まんかい!」と発破をかけたことがうかがえます。
    そして協会が募った会場ボランティアの3万4190人、府市が募った駅や街中で活動するボランティアの2万1444人の応募者のうち、両方に応募した人が2万204人もいたというのは「仕事内容はなんでもいいから、とにかくボランティアをしたい」という表れでしょう。その理由が「大好きな万博に関わりたい」のか「単位が欲しい」のかはわかりませんが大学の動員活動が寄与したことは間違いありません。
    重複応募を除くと協会幹部が大喜びした5万5634人も、実質3万5430人とさほど大きな数字ではなかったのですが、主催者側は盛り上がっている雰囲気作りに躍起になっています。しかし、前売り券の販売は一向に進んでいませんし、頼りにしていた学校単位の無料招待も会場でのガス爆発事故や交通手段の確保が難しいなどを不安視する先生方の反対がありどうなるのかわからず雲行きはますます怪しくなっています。それもこれも今度の万博が「何を置いても行きたい」と思わすほど魅力的でないからです。
    1970年の大阪万博の「月の石」、2005年の愛知万博の「冷凍マンモス」など過去の万博には“目玉”といわれる展示物がありましたが、今回の大阪・関西万博にはマスコットキャラクターの「ミャクミャク」にたくさんの目玉が付いているだけで肝心の展示物には何もないのですからそれも仕方がないのかもしれません。

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  • 2024年6月2日号:ニュースに一言

    2024-06-02 16:27  
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    ●6月から始まる定額減税で、政府は民間企業に対し給与明細に所得税の減税額を明記することを義務付けるというニュースがありました。すっかり忘れていましたが、昨年11月に国は1人あたり4万円(所得税3万、住民税1万)の定額減税を決めました。その理由を急激な物価高による家計負担を軽減するためだとしていましたが、物価高は今年6月から始まるわけではありません。すでに当時から国民は家計逼迫に喘いでいたのですから、すぐにでも実施すればいいものをなんだかんだと理由をつけ半年も先延ばしにしていたのです。
    もちろんその間、国民が晩御飯のお肉を牛肉から豚肉に替えたり、ビールを発泡酒にするなど日々のやりくりに追われ続けたことは言うまでもありません。その“定額減税”の金額を今度は受け取り手に「はっきりわかるようにせよ」と言い出したのです。その理由を官房長官は会見で「国民のみなさまが政策の効果を実感できるようにすることが重要だ」と述べています。すなわち「ただ減税しただけでは国民はありがたがらないだろう、国が○○円、恵んでくれた。岸田内閣ありがとうと思うようにしろ」と言っているのです。
    冗談じゃない、給料は元々労働者が働いて得たものです。それを返すだけなのに、さも与えるかのごとくなにを偉そうに言っているのか。「減税額を明記せよ」と言う方は簡単ですが、手間が増えるだけでなんのメリットもない実際に明細書を発行する企業は大迷惑です。
    岸田内閣は民間企業に従業員の賃金アップを要請したことを自画自賛しています。その結果、この4月から実際に上がった会社もあったでしょう。しかし、支給額が上がるとそれにつれ控除額もアップします。果たしてどれだけ“手取り”が増えたのやら。減税額を明記しろというのなら、税金や社会保険料の増額分も同じように明らかにしてもらいたいものです。
     
     
    ●千葉県浦安市にある東京ディズニーランドで自身の下半身を露出させ20代女性に押し当てた53歳の男が不同意わいせつの疑いで逮捕されたというニュースがありました。
    ディズニーランドといえば、一歩そこに足を踏み入れたらミッキーやミニー、ドナルドダックなどの人気キャラクターが来場者をこれでもかというくらいに楽しませてくれる場所です。そんな誰もが知る夢の国で、かわいらしさのかけらもない自分の“ダンボ”を使ってうら若き女性に悪夢を見させる男がいたなんて呆れるばかりです。さらに、男の職業が甲府市にある小学校の現役教師で、ランドへの来園理由が修学旅行の引率だったと聞いて驚きました。
    修学旅行は宿泊を伴いながら研修や見学により知見を広げる学校生活における一大イベントで、東京をその行き先とする学校の多くは研修先に東京ディズニーランドを組み入れます。なぜならランドは「子供たちが修学旅行で行きたい場所No.1」だからです。そして、生徒は建前上は研修ですので行きのバスの中では先生からの注意事項を神妙な顔で聞いていますが、いざ入園さえすればこっちのものとばかりに猛ダッシュでお目当てのアトラクションを目指します。ディズニーランドでの一番大切なことは何と言っても「楽しむこと」ですから大はしゃぎは大歓迎です。
    そんな目いっぱい楽しむ生徒と違い、本来なら引率の教師は「子供たちにケガや具合の悪い者はいないか」と気配り目配りでとても楽しむ余裕などないことでしょう。にもかかわらず生徒を放ったらかしにして、ランドに最も相応しくない歪んだ“楽しみ”をしていたこの男の罪は重大です。
    出発時間が迫り集合場所に戻ってきたメンバーの中に唯一この引率教師の姿はありませんでした。「先生がわいせつ行為で捕まった」――こんなとんでもない修学旅行のみやげ話を聞かされた保護者が不憫でなりません。かつての修学旅行では生徒が悪さをしないように教師が目を光らせることが当たり前でしたが、これからの修学旅行は教師が悪さをしないように生徒が見張らなければならないようです。
     
     
    ●全国の消費者生活センターに「害虫や害獣駆除の業者から高額請求を受けた」という若者からの相談が相次いでいるというニュースがありました。その内容はゴキブリが出没した部屋に住む20代の女性が駆除業者に電話し、「1万円くらいです」と聞いていた料金が、いざ契約となったとたんに「10万円です」と跳ね上がったりするものです。
    そんなに高額なら断ればいいようなものですが、ゴキブリが大嫌いなこの女性は一刻も早く退治してもらいたくて泣く泣くクレジット支払いの契約を結んだそうです。それにしてもネズミの集団や蜂の巣など素人の手に負えないものならいざ知らず、昔は丸めた新聞紙で“パシッ!”で終わっていたゴキブリまで業者に依頼するとは現代の若者は随分とひ弱になったものです。
    その背景には住宅環境の変化があります。以前はどこの家にもしょっちゅうゴキブリは出てきましたし、暖かくなると台所周辺には大小のハエが飛び交っていました。そのため夏場は料理を守る蝿帳や蝿取り紙は必需品でした。ところが、最近では衛生状態も良くなり、ゴキブリや蝿はすっかり影を潜めました。そんな生まれてこのかたほとんど害虫を見たことが無かった若者が一人暮らしになって初めてゴキブリに相対し、パニックになって業者に助けを求めるようです。
    さらに悪いことには身近にあるスマホでネットを検索することにより、そこに待ち構える悪徳業者の“ホイホイ”にまんまと引っかかってしまうのです。一人暮らしの若者に言いたい。この世で最も恐ろしいのは獣でも虫でもなく、隙あらば騙してやろうと虎視眈々と狙っている悪徳な人間です、と。
     
     
    ●今年2月に行なわれた早稲田大学の一般入試で、カンニングをした18歳の少年が偽計業務妨害の疑いで書類送検されたというニュースがありました。
    わたしが学生時代のカンニングといえば筆箱の中に単語や公式を記した紙片を忍ばすなどの単純なものでしたが、ここ数年は試験会場に携帯電話を持ち込み外部と連絡を取り合って答えを聞き出すなど随分と“ハイテク”化しています。そのため各試験会場ではまず最初に「携帯電話の電源を切ってカバンにしまって下さい!」と強い指示がなされます。監督者も試験中は携帯電話を触っていないかを注意深く見張りますが、今回の受験生はまんまとその監視の目を逃れていました。なぜなら彼が使っていたのは「スマートグラス」と呼ばれる画像撮影と通信機能を併せ持つスパイ映画さながらのメガネ型端末だったのですから。
    高校生の視力1・0以下、いわゆる近視割合は7割ほどだそうです。ということは受験生の半分以上がメガネをかけているのですから「スマートグラス」を装着して試験会場に入ったところで何の違和感もありません。少年はそれで問題用紙を撮影し、事前にSNSで「家庭教師をしてくれませんか」と言って目星をつけていた複数の人たちとその画像を共有して解答を求めていました。
    今回は画像を受け取った人の中の1人が「これは不正ではないか」と気付き、早稲田大学に連絡したことで発覚しましたが、もし協力者が少年の親しい人間だったらこの不正は成功していたでしょう。いや、実際にこのやり方で誰にもバレずに合格を勝ち取ったほかの受験生がいたかもしれません。今後はスマホだけでなく受験生のメガネまでチェックしなければならない学校側は大変です。さらに最近では外見からはまったくそれとわからないコンタクトレンズ型端末まであるそうで、こうなるともはやお手上げです。
    『生き馬の目を抜く』は誰にも気付かれないほどの素早い動き、また油断がならないずるいことの例えですが、これからは生き馬の目を抜く不正受験生を排除するため、各会場には眼科医が常駐して文字通り受験生の“目ん玉”まで取り出して確認する必要があるようです。
     
     
    ●仕事を失い収入の道が途絶えた人が頼りにするのが失業保険(雇用保険)です。その失業保険は「就職しようとする意思と、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就けず、積極的に求職活動を行なっている人」に給付されるもので、申請者は受給期間中は4週間に1度、失業状態が続いているのか、また求職活動を行なっているのかという「働く意思」の確認のためにハローワーク(職業安定所)に出向いて面談を受けなければなりません。その面談が来年から“子育てや介護中の人”、“障害がある人”などハローワークに出向くのが難しい人はオンラインで受けられるようになるというニュースがありました。
    コロナ騒動以来、いろいろなものがオンラインで処理できるようになっています。わざわざ交通費と時間を使わなくてもパソコンやスマホで自宅に居ながら手続きできるのならこれほど便利なものはありません。しかし、なぜ対象者が「出向くのが難しい人」に限定されているのでしょう。無駄を省くというならすべての人を対象にするべきです。そもそもハローワークに出向くことすらできない人がまともに働くことなんてできるのでしょうか。前述のように失業保険は「働く意思があり、すぐにでも働ける人」が対象ですから、その時点で資格がないといってもいいのでは。
    世の中が高度成長期で景気が良く、また終身雇用の時代では生涯失業保険と無縁のサラリーマンがほとんどでしたが、倒産や事業縮小する会社が増え、さらに転職が当たり前の現代では失業保険のお世話になる人が身近にも多くなっています。しかし、中には“保険”という公平な相互扶助の精神から大きくはずれているケースもあるようです。会社経営をする友人によりますと、就職面接に来る応募者の中に、1年ほど勤めては転職を繰り返している者が一定数いるそうです。彼らはさすがに転職慣れしていますから面接もそつなくこなし採用すると、1年ほど経ったころ決まって「そろそろ辞めますわ」と去っていくそうです。不思議に思った友人が調べてみると、どうやら彼らは「失業保険の受給資格を得るまで働き、目的が達せられるとしばらく給付を受け、その期間が終わるとまた資格を得るまで働く」を繰り返しているというのです。
    本来、いざと言うときのための保険が、一部の人たちの間では定期収入として見込まれているのです。彼らのしていることは制度上なんら問題はありません。しかし、一方では人手不足で困っている企業が多数あることも事実です。国や自治体からの給付(公助)を受けることは権利であり、なんら恥じることはありませんが「教育・勤労・納税」という三大義務があることも忘れてはなりません。

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  • 2024年5月31日号:ニュースに一言

    2024-05-31 07:00  
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    ●新年度が始まり学校にも春休みを終えた学生たちが元気な姿で戻って来ました。新学期で気になるのはなんと言ってもクラス分けでしょう。新入生はもちろん、進級した生徒たちもその対象になりますので「○○さんと同じならいいな」「○○君と一緒は嫌だ」など期待と不安でいっぱいのことと思います。そんなクラス分けを滋賀県守山市の中学校が1回決めて発表したにもかかわらず、保護者からの指摘で白紙に戻したというニュースがありました。
    学校側はやり直しの理由を「人間関係などを考慮し修正する中で、最終的に大事な部分が抜けていた」と話していますが、クラス分けをする際には成績上位者をまんべんなく振り分けるほか“いじめっ子”と“いじめられっ子”を一緒にしないなどの配慮は当然されていたはずです。
    それにもかかわらずご破算にしたのは「○○さんと同じクラスになるくらいなら学校にいかない」と言うわが子を説得できなかった、たった一人の親の申し出をそのまま受け入れたからにほかなりません。今回の措置のために始業式がやり直しとなり、授業開始が遅れたといいますから、仮に“生徒のため”だったとしても、一人のために大多数の生徒が迷惑を被っているのは事実です。学校側が事なかれ主義に陥り保護者の言いなりになったのでは、生徒は先生を信用できません。なにより心配なのは学校に意見した親が誰だか分かってしまうことです。その子に対して「なに勝手なこと言ってんだ」「おまえが俺たちを嫌なように、俺たちもおまえが嫌い」なんてことになりかねません。
    学校は一人の保護者の満足のために大きな課題を背負うことになりました。中学校は勉強だけでなく社会性を学ぶ場でもあります。3年間クラス替えがなければ40名だけで終わるクラスメイトが、それにより3倍の120名に増えます。仲の良い友達と離れるのは寂しいでしょうが、クラスが替わろうと友情がなくなることはありません。それよりそれまで親しくなかった人たちと芽生える新たな友情に期待しましょう。今まで頑張ってきた人はさらに頑張る。頑張ってこなかった人はリセットして今度は頑張る。気持ちを新たに未来を向く、そんな新学期であってもらいたいものです。
     
     
    ●大阪府の吉村知事が会見で自身の発言を謝罪撤回したというニュースがありました。吉村知事はテレビ朝日が放送する「モーニングショー」でコメンテーターの玉川徹氏が再三にわたり来年に開催が迫る「大阪万博」に異議を唱えることに反発し、党の集会で「玉川さんは万博に出入り禁止、来たいと言っても入れてやらない」などと発言していました。彼の言葉はすぐにSNSで拡散され「何様のつもりだ」「万博に対しては自由に意見を言うこともできないのか」と批難があふれました。
    吉村さんや維新を嫌いな人がここぞとばかりに攻撃したい気持ちはわからないでもありませんが、わたしは今回の彼の発言を大した問題とは思っていません。実際に知事が来場者を選別する権限を持っているわけでもなく単なるジョークでありいちいち反応する必要はないと考えるからです。さらにその場は“身内”ばかりの私的な会合であり、その中でさえ軽口のひとつも許されないなんて、それこそ発言の自由の侵害です。
    吉村知事の出禁発言ばかりが注目されていますが、重要なのは万博開催の是非であり、玉川さんの来場の是非なんてどうでもいいことです。吉村知事は会見の中で「テレビは公平な放送をお願いします」とも言いましたが、こちらは“出禁発言”と違って重要なことです。新聞なら「万博反対」の論陣を張り一歩的に攻め立てることも許されます。しかしテレビはそうもいきません。放送法第4条に「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」とあるからです。これは新聞が自身の力だけで発行するのに対し、テレビは国民の共有財産である電波を“借り受けて”放送しているからです。
    国民それぞれが違う意見を持つのにテレビが「これ以外は認めん」なんてあり得ないのです。しかし現在のテレビの傲慢ぶりはすさまじく「我こそがオピニオンリーダー」とばかりに偏向放送を垂れ流しています。テレビ放送が始まって以来、放送免許が取り消された事例はありません。正常な放送を取り戻すためにも既得権に守られたこの体制を見直す時期が来ているのではないでしょうか。また、放送法第4条には「政治的に公平であること」ともあります。いよいよ衆院選の補選が始まります。皆さん、ちゃんと守られているかよく監視していて下さい。
     
     
    ●小池百合子東京都知事の学歴詐称問題が再燃しています。彼女の「エジプト・カイロ大学首席卒業」という経歴は以前から「ウソではないか」との疑問がありましたが、エジプト大使館を経由した大学側の「卒業しました」との声明によりうやむやのまま沈静化していました。それがここにきて「過去の声明は小池氏が捏造を依頼して出されたもの」との証言が出てきたのですから大変です。しかもその証言者が東京都の特別顧問や都民ファーストの会事務総長を務めた小池氏の最側近となると穏やかではありません。その信憑性は極めて高いものと考えられます。学歴詐称はれっきとした公職選挙法違反です。もし告発が真実なら小池氏は政治家失格、いや犯罪者と言ってもいいでしょう。わたしは自身が大学中退ということもあり、他人を学歴で評価することはありません。たしかに“偏差値”の高い大学出身者が勉強得意なのは認めます。しかしそれはあくまで紙のテストの答えをすばやく導き出す能力に優れているに過ぎず、人間としての能力が高いのとは別です。ましてや卒業して社会人となれば、そのときの自分そのものが実力のすべてであり過去の学歴なんてただの“足跡”にしか過ぎません。そんなものに小池氏がなぜ執着したのか。小池氏はテレビキャスターから政界に転身しました。すでに知名度もあり、またその職業からも「賢い(真相は別にして)」と思われていたはずです。もうそれだけでも十分なのに貪欲なまでに「カイロ大学・首席卒業」を謳ったのは、東大卒と聞いただけで「すごい!」という人が多い中、50年以上前に外国の大学、それも首席で卒業となれば選挙においてその効果は絶大なものがあったからにほかなりません。これには有権者も肩書きや経歴でなく、候補者自身を見極める目を養わなければならないことを痛感させられます。小池氏は政界での地位を確立し、周りが忖度するようになるにつれ「わたしは誰にも攻撃されない」と自信満々だったのでしょうが、まさに天網恢恢疎にして漏らさず、報いを受けるときが来たようです。もし、小池氏の学歴が本当なら小池氏自身が疑惑を晴らすことは簡単です。しかし、不思議なことに彼女はその簡単なことをしようとはしません。小池氏はこれまでも「言ったことを言ってない」「やったことをやってない」など平然とウソをついてきました。今回もうまく窮地を脱することができるのか見ものです。
     
     
    ●現在、20歳から60歳までの40年間となっている国民年金の納付期間を5年間延長し、65歳までの45年間とする案を厚生労働省が検証するというニュースがありました。年金支給開始年齢が60歳から65歳に延ばされて以来、国は無収入期間を作らないために国民に65歳まで働くことを求めています。そして企業に対しても「65歳までは特段の事情が無い限り雇用を止めてはならない」との縛りをつけました。これにより希望者はほぼ全員が会社に残れるようになったのですが、給料は現役時代より大幅にダウンするため「こんな給料でやってられるか」と今度は“働かないおじさん社員”が増殖する問題が生まれているようです。
    そんなに不満なら延長しなければいいのですが、サラリーマンでいたら「減ったとはいえ収入は保証される」「会社の健康保険に加入できる」「健康のために少しは動かないと」などの理由で、60歳定年即退職の人は少ないようです。そんな勤め人は今でも年金保険料(厚生年金として)を徴収されていますので、今後65歳まで納付期間延長となったところでなんら変わりはありません。
    問題は“第一号被保険者”自営業の人たちです。彼らにとって5年間延長は100万円以上の支出増になります。そしていよいよ給付の年齢になっても、もらえるのは月に7万円弱(これも今後どうなるのかわかりません)。この金額は生活保護の支給額よりはるかに少ないもので「それなら保険料納付なんてしないで、そのときになったら生保申請したほうが得だ」となり、年金制度の根本を揺るがしかねません。
    「100年安心」といわれる日本の年金制度ですが、財源が足りなくなる度に「徴収額を増やす」「納付期間を増やす」「納付義務対象を増やす」と国民に負担を強いています。こんなやり方がまかりとおるのなら誰がやっても100年どころか千年でも万年でも続けられます。賢い役人、国会議員の方々が揃いながらもっとましな案はないのでしょうか。国民が納得できない年金制度なんて存在価値はありません。
     
     
    ●SNS上に著名人になりすまし投資を誘う詐欺広告が横行しているというニュースがありました。これはフェイスブックやインスタグラムなどに現れた有名なエコノミストや実業家が「わたしが儲かる方法を教えます」と謳い、個別のやり取りに誘い込んだ後に投資金を騙し取るもので、実際の本人の写真を使い声もAIで本人のものを再現しており一目ではニセモノとはわからない精巧さです。中には1億円以上を失った人もいるようで全体の被害額は数百億円にも及ぶといわれています。
    命の次に大切なお金を有名人だからという理由で安易に信用して託すのは非常に危険です。そもそも本当に儲かるのなら誰にも言わずみんな自分だけでこっそりやるものです。国は国民に盛んに投資をすすめていますが、投資はあくまで自己責任ということを忘れてはいけません。詐欺をはたらく者が最も悪いのは当然だとして、投資に関しては騙されるほうにも“欲”という落ち度は否めません。それに対し、なんの関係もないのに勝手に名前を使われて悪事の片棒を担ぐ形になったもう一方の被害者は堪ったものではありません。
    そんな“広告塔”にされた著名人からは怒りの声が上がっており、広告を野放しに掲載した運営会社に対し損害賠償請求の訴えが起こされています。勝手に名前を使われた人は経済評論家の森永卓郎さん、実業家の堀江貴文さん、前澤友作さんなどいかにも「この人の言う通りにしたら儲かるだろう」と思わす人が並んでいます。かくいうわたしも広告塔にされていました。ニコ生「百田塾」の写真がそのまま使われており、自信満々に「わたしが指南します」とあるのですからわが事ながら笑ってしまいます。幸いにもわたしの広告を見て「この人なら信用できる」と考え申し込んだ被害者はまだいないようです。これは喜ぶべきか悲しむべきか・・・。
    『この文章を書いた後、秋田氏に住む70代の女性がわたしの名前を騙った投資詐欺サイトの被害者になったというニュースがありました。それを見た感想は悲しみでも、もちろん喜びでもなく、関係ないこととはいえなぜかとても申し訳ない気持ちになりました。』
     
     
    ●ことし2月に福岡・博多の繁華街で赤信号の交差点に進入し、タクシーと衝突して4人にけがを負わせた会社員の男2人が危険運転傷害の疑いで逮捕されたというニュースがありました。事故後、男は自ら通報していましたが、警察が付近の防犯カメラを確認すると、なんと彼らのクルマが事故当時屋根に赤色灯を点け、ご丁寧にマイクで「交差点に入ります」と覆面パトカーになりすましていたことがわかったといいますから呆れます。
    本物のパトカーなら緊急走行時であっても細心の注意を払って交差点に入りますが、ニセモノの彼らは「パトランプさえ光らせておけば大丈夫」と高をくくっていたのでしょう。そうは問屋が卸さず案の定事故を起こしてしまいました。
    パトカー、救急車、消防自動車などの緊急車両は市民の命や財産を守るために「信号を守らない」「逆走する」「制限速度を守らない」などの特権が許されています。それを何の任務も無いだけでなく訓練も受けていない者がその権利を得るために成りすますなんて絶対に許されることではありません。調べに対し、この20代の男2人は「職務質問を見たかったから前のパトカーを追いかけようと“緊急走行”した」と供述していますが、当の本人が職務質問にとどまらず、容疑者としての取調べを受けることになったとは笑い話にもなりません。
    なにはともあれ、彼らが憧れていた本物のパトカーに乗れたのは良かったです。しかし、それは希望していた運転席ではなく両脇を本物の警察官に挟まれた“後部座席”でしたが。
     
     
    ●買い物をするにもスマホをピッ!、レストランに入ってもスマホをピッ!、電車に乗るのもスマホをピッ!と最近では「キャッシュレス決済」がすっかり浸透し、お財布を持たずスマホひとつだけで外出する人も増えているようです。そんな人たちがパニックに陥ったというニュースです。
    5月15日午後0時過ぎから3時間ほど決済アプリ「PayPay」が使えなくなったのです。不通になったのがちょうど昼時でしたから、サラリーマンの中にはランチを食べて「さあ会計」となって青ざめた人も多かったそうです。ポケット中の小銭をかき集めてようやく支払いができた人はまだましで、店に腕時計を置いたままATMに走ったり、同僚にお金を持って来てもらったりと“無銭飲食”を避けるためオフィス街の飲食店は大混乱だったようです。
    便利なものには必ず落とし穴があるものです。何もかもが1台のスマホに集約されている現代ではそれが使えなくなったら何もできなくなります。支払いや通話はもちろん、電池切れにでもなれば電話帳さえ開くことができず公衆電話があっても番号がわかりません。かつては自宅や会社などよく架けるところの電話番号ぐらいは暗記していたものですが、指先ひとつで架電する現代では市外局番すら覚えていません。
    さて、今回の不具合に懲りて明日からは少額でも現金を持ち歩く人も増えることだと思います。わたしの友人の中にはいざというときのためにスマホケースの中に小さく折りたたんだ1000円札を常に入れている人がいます。しかし、昨今の物価上昇で昼飯も随分と高くなっており1000円では心もとなくなっています。さあ、いまこそすっかり忘れていた“2000円札”の出番です。でも、最近はとんとお見かけしません。
     
     
    ●愛知県に住む30代の男性が、“男性”のパートナーと戸籍上の名字を同じにするよう求めていた審判で、名古屋家庭裁判所が男性の申し立てを認めたというニュースがありました。
    これは「結婚により夫婦は同じ姓を名乗るとなっているにもかかわらず、現行の法律で同性同士の結婚が認められていないからといってパートナーと同じ名字になれないのはおかしい」と訴えていたものです。それに対し裁判所は戸籍法に「やむを得ない事由があれば変更できる」とあるのを「彼らは社会観念上、夫婦と同様だ。よってこれはやむを得ない事由にあたる」と拡大解釈したのです。
    この男性は2017年に相手の男性と公正証書により結婚契約などを結んだ後、翌年から同居を開始し2023年からは里子も養育していました。しかし、この“結婚生活”では里子の保育園の通園手続きで、姓が違うパートナーとの関係確認を求められるなどの不具合が生じていたそうで今回の申し立てとなりました。
    夫婦になっておきながら「同じ姓は嫌だ。別姓を認めろ」というカップルがいれば一方で「夫婦じゃないけど同姓を認めろ」というカップルもいる。千差万別、人間の数だけ「あーしたい、こ-したい」の要望があります。しかし、そのすべてを認めていたら社会秩序なんて成り立ちません。そこで大多数の納得できる「常識的な落としどころ」として法律を定め社会の安寧を保っているのです。それが昨今、個人の権利ばかりが尊重される風潮となっています。
    さらにそれらが裁判で争われることで、本来“例外”として処理されるべきものまで判例により“一般的”のお墨付きを得るのですから困ったものです。それらの審判を下す裁判官は判決理由に「法律制定の時代と状況が変わっている」と言いますが、それなら「昔とちがって現代の子供は身体も大きいのだから中学生でも運転免許をとらせろ」、あるいは「昔は家の外に繋いでいた犬も現代では室内で家族同然に暮らしているのだから結婚させろ」も認めなければならなくなります。個人の権利が最大限尊重されることに異論はありませんが、その個人が社会の一員であることを忘れてはなりません。そして、その社会は一定のルールの下で成り立っているのです。

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  • 2024年5月17日号:ニュースに一言2通目

    2024-05-17 20:43  
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    ●ゴールデンウィークが終わり街中にサラリーマンが戻ってきました。ベテラン社員は気分も新たに「さあ、また頑張ろう」となるのでしょうが、心配なのは今年4月の新入社員です。初めて社会に出て緊張の中での1ヶ月が過ぎ、ようやく仕事に慣れた頃の長期休暇により、また学生気分に戻ってしまい「会社に行くのが嫌だ」となる人が毎年現れるからです。いわゆる“五月病”です。
    発病した若者の中には数日の欠勤の後そのまま退社してしまうケースもあるようで、この時期には新入社員を預かる職場では「ウチの部下は大丈夫だろうか」と気を揉む上司も多いようです。
    ところが、そんな“五月病”が最近は随分と様変わりしているようです。なんと5月を待たずして4月中に会社を辞める新入社員が増えているというのです。中には入社式の当日に辞表を提出することもあるようで、急に欠員の穴埋めを強いられる会社側は大迷惑です。さらに、たった1日での退職理由が「配属先が希望と違った」「思っていた雰囲気と違う」などおじさんからみたら「そんな理由で・・・」というもなのですから困ったものです。
    現代の風潮は「いやな事はしないでいい」「やさしくしてもらうのは当然」で、少しでも気分が悪いことがあると「ハラスメントだー」となる傾向があります。生まれてこのかた“我慢”をしたことのない若者は辛抱できないのでしょうが、せっかく入った会社をすぐに辞めるのは実にもったいないものです。
    もちろん社員を人間扱いしないブラック企業と呼ばれる会社や、このまま続けていたら心身が持たない職務内容から逃れることも必要でしょう。しかし、それを社会人になりたての新入社員がごく短い期間で判断できるのか疑問です。
    日本の雇用形態は長らく“終身雇用”が主流でしたが、近年は「最後までこの会社で」と考える新入社員は2割ほどしかいなくなっているそうです。希望に満ちた若者は転職によりステップアップ(地位や収入が増えていく)を期待するのでしょうが、夢が叶うのはほんの一握りですべての人が成功するわけではありません。そして成功者に共通するのは仮に転職しなくても元の会社で成功できた人物ということです。すなわち「頑張れる人間はどこでも頑張れる、頑張れない人間はどこでも頑張れない」のです。流行に乗っかっての安易な転職ほど愚かなことはありません。一般的に転職は繰り返す毎に条件が悪くなり、やがては採用そのものも危うくなるのですから。そのときになって「正社員になれない社会はおかしい」と叫んだところで後の祭りです。
     
     
    ●韓国の最大野党「共に民主党」の国会議員ら17名が、わが国固有の領土「竹島」に上陸したというニュースがありました。竹島は日本海の南西部に浮かぶ岩山からなる島で、17世紀半ばに日本の領有権が確立され1905年に島根県に編入されました。しかし、第二次大戦後の1952年に韓国初代大統領が突然、隣接海洋に対する主権宣言(いわゆる李承晩ライン)を行い「竹島は韓国のものだ」と主張し乗り込んできたのです。その後、70年以上竹島には韓国の警備隊が常駐しています。
    今回の暴挙に対し日本側の対応は「誠に遺憾である」「厳重に抗議する」といつもの決まり文句だけなのですから歯がゆいことこの上ありません。わたしは冒頭に竹島を“わが国固有の領土”と書きましたが、こんな状態で果たして世界の国々も同じように「竹島は日本の領土」と認めてくれるのでしょうか。国家は他国民が不法に領土内に侵入して来たら実力行使によってでもそれを阻止します。ところが竹島に関して日本は「日本のものだ」と言うだけで、警備隊を追い出すどころかほかの韓国人の上陸も易々と許してしまうのです。これではどうみても竹島は独島(韓国側の呼び名)であって、日本がいちゃもんをつけているようにしか思えません。
    領土問題で優位性を得る材料のひとつが実効支配の有無です。これほどまで長きにわたり韓国の占有があれば国際司法裁判所も簡単に「日本のもの」とは言えないでしょう。そうなると取り返す手段は“戦争”しかなくなります。争いを避けるために穏便に済ませ続けた結果が最も避けなければならない戦争だなんて本末転倒にもほどがあります。
    今日も南の海では中国船が、北の海ではロシアの船が日本の領海を我が物顔で航行しています。もしこれが逆だったら日本船は直ちに拿捕、あるいは最悪撃沈されているところですが、相も変わらずわが国は「遺憾である」「厳重に抗議する」の一点張りです。残念ながらこんなことでは尖閣は中国のもの、北方領土はロシアのものと世界が認める日も遠くないでしょう。
     
     
    ●中国軍の3隻目となる最新型の空母「福建」が試験航行を始めたというニュースがありました。この試験がうまくいけば3隻で「任務・訓練・整備」のローテーションを組むことが可能になり、中国軍は常時戦闘態勢をとることができます。
    中国の空母といえばウクライナから購入して改修した「遼寧」が初めて配備されたとき、日本の軍事評論家たちはそろって「あれは空母といっても戦闘機が満足に発着できない張りぼての船だ」と嘲笑っていました。しかし、時が経ち中国はいまや経済だけでなく軍備においても世界有数の大国となっています。同様に北朝鮮も「核開発といっても所詮は花火程度の爆弾」と思われたものが、すでに核弾頭を装着したうえで大陸を横断できるほどの性能を備えたミサイル開発に成功しています。
    さて、その間の日本はというと防衛費を増やそうとすれば「戦争をしたいのか」、戦闘機を購入しようとしても「戦争したいのか」、自衛隊の活動範囲を広げるために憲法を改正ししようとしても「戦争したいのか」と、反対の大合唱が起きています。日本を攻撃したいと考える国からしたら、日本内部から応援してもらっているのも同然でこんなちょろい国はないでしょう。軍備を増強するのは戦争をするためではありません。十分に報復できる力を見せつけ安易に攻撃させないため、また万一攻撃された場合に反撃し、国土と国民を守るためです。戦後80年近く経過しましたが、いままで戦争に巻き込まれていないからといってそれが未来永劫続く保証はありません。状況は刻々と変化しています。自然災害と同じくあらゆることを想定し、いつでも対処できるようにしておくことがなにより肝心です。
     
     
    ●群馬県が生活保護受給者や、その希望者に向けて配布する「生活保護のしおり」を改訂したというニュースがありました。これは同県桐生市で発生した生活保護関連の問題を調査するために社会福祉の専門家や支援団体関係者らで結成した全国調査団が、県の担当者に対し「丁寧でわかりやすい内容とするように」と改善を申し入れたことを受けたものです。
    せっかくのしおりが複雑で読み手が理解できなければ何の役にもたちません。“丁寧でわかりやすく”は結構なことですが、その改訂内容を見て驚きました。なんと旧のしおりの冒頭にあった「一日も早く自分たちの力で暮らしていけるように、また、毎日の暮らし“はり”をもっていただけるように手助けをする制度です」という文言がすべて削除されているのです。そして、その理由が「生活保護の目的には“一日も早く”なんてなく、生活保護利用は悪と言わんばかりだから」というのですから呆れます。
    生活保護は、なんらかの理由で働くことができなくなり収入を得られなくなった人が利用するもので、それは本来一時的なものであるべきです。病気やけがで恒久的に働けないのなら障害年金など他の給付で対応すればよく、「生活保護があるから働けるけど働かない」なんて許されることではありません。「(今は無理でも)一日も早く保護なくして自分の力で稼ぐ」のどこに問題があるのでしょう。
    また、生命保険は解約して返戻金を生活費に充て、自動車の保有も原則として認めないとあったものも、生命保険は保険料や返戻金が少額ならば継続加入が可能、自動車の保有も障害があったり公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住し通院や通勤に必要ならば認められる場合があると改められています。普通に働いて自分が稼いだ金で生活している人の中にも「貯蓄がそこをついたから保険を解約する」「維持費を捻出できないから自家用車を売却する」ことはいくらでもあります。みんなぎりぎりの中で遣り繰りして頑張っているのです。その人たちが、「貯蓄があり自家用車を乗り回す生活保護受給者」を見てどう思うのか。
    わたしは生保受給者からは「何もかも取り上げろ」と言っているのではありません。場合によっては認めざるを得ない場合も当然あるでしょう。しかし、それはあくまで例外であって個々に判断すればよく明文化する必要はないと言っているのです。これらの文言により、いたずらに希望をちらつかされた来訪者に対し“少額”や“不便”なんてあいまいな言葉で可か不可を決めなければならなくなった窓口担当者の疲弊が目に浮かびます。
    篤志家が自分の金を「かわいそうだから」とばら撒くのなら何も言いませんが、生活保護費の原資は税金です。税金を使う福祉に不公平感があってはなりません。自助、共助、公助と生活保護は最後の命綱であるはずが、いきなり「さあ、どうぞ」となれば税金を納める国民の不公平感は増すばかりです。
     
     
    ●SNS上に著名人になりすまし投資を誘う詐欺広告が横行しているというニュースがありました。これはフェイスブックやインスタグラムなどに現れた有名なエコノミストや実業家が「わたしが儲かる方法を教えます」と謳い、個別のやり取りに誘い込んだ後に投資金を騙し取るもので、実際の本人の写真を使い声もAIで本人のものを再現しており一目ではニセモノとはわからない精巧さです。中には1億円以上を失った人もいるようで全体の被害額は数百億円にも及ぶといわれています。
    命の次に大切なお金を有名人だからという理由で安易に信用して託すのは非常に危険です。そもそも本当に儲かるのなら誰にも言わずみんな自分だけでこっそりやるものです。国は国民に盛んに投資をすすめていますが、投資はあくまで自己責任ということを忘れてはいけません。
    詐欺をはたらく者が最も悪いのは当然だとして、投資に関しては騙されるほうにも“欲”という落ち度は否めません。それに対し、なんの関係もないのに勝手に名前を使われて悪事の片棒を担ぐ形になったもう一方の被害者は堪ったものではありません。そんな“広告塔”にされた著名人からは怒りの声が上がっており、広告を野放しに掲載した運営会社に対し損害賠償請求の訴えが起こされています。勝手に名前を使われた人は経済評論家の森永卓郎さん、実業家の堀江貴文さん、前澤友作さんなどいかにも「この人の言う通りにしたら儲かるだろう」と思わす人が並んでいます。
    かくいうわたしも広告塔にされていました。ニコ生「百田塾」の写真がそのまま使われており、自信満々に「わたしが指南します」とあるのですからわが事ながら笑ってしまいます。幸いにもわたしの広告を見て「この人なら信用できる」と考え申し込んだ被害者はまだいないようですが、これを喜ぶべきか悲しむべきか・・・。

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  • 2024年5月17日号:ニュースに一言

    2024-05-17 20:38  
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    ●総務省が発表した人口推計によりますと、2023年10月1日現在の日本の人口は約1億2430万人で、前年に比べて59万5000人減っています。この1億2430万人の中には24万2000人増加した外国人が含まれていますので、日本人だけをみるとなんと83万7000人も減っているのです。
    そして総人口のうち75歳以上は71万3000人増の2007万8000人とはじめて2000万人を超えた一方で、15歳未満は32万9000人減の1417万3000人と少子高齢化がますます進んでいることがわかります。
    今後の日本の人口は現在の予測では24年後の2048年に1億人の大台を割り、さらにその12年後の2060年には8670万人にまで落ち込むとされていますが、このままではその速度はより加速しそうです。国は少子化に歯止めをかけようと、いろいろな策を講じますが一向に改善の兆しがみえません。なぜなら、そのどれもが付け焼刃、それもみみっちいものばかりだからです。1回や2回10万円もらったところでどこに「さあ、子供を産もう」なんて考える人がいるのでしょう。どうせ配るなら“子供ひとりにつき1000万”くらいのインパクトがないと何も変わりません。
    なにより少子化の要因は金銭面だけではなく多岐にわたるのです。1970年代は「22歳の別れ」( “結婚適齢期”に差し掛かった女性がそれまで付き合っていた男性と「この人とは結婚できない」と感じ別れを決心する内容)にもあるように20代前半で結婚する女性が大半でした。そのため若い女性をクリスマスケーキに例え「24は売りごろ、25は売れ残り、26以降は誰も手を出さない」なんて、現代では絶対に口に出せないようなことも平然と言われていました。
    それが80年代になり4年制大学に進む女性が増えるにつれ結婚年齢が徐々に上がり、1985年の男女雇用機会均等法の施行で晩婚化の流れが決定的になりました。能力のある女性が「女だから」という理由で不当に差別されることはあってはなりませんが「女性も仕事をするのが当たり前、そうしないのはダメな女」「結婚なんていつでもできるからまずは仕事」となったのは良いのか悪いのか。その結果、女性の平均初婚年齢は現在ほぼ30歳にまで上がっています。もちろん結婚は個人の自由、したい人がしたい時にすればいいのですが、「結婚適齢期」はなくても「出産適齢期」は間違いなくあるのです。
     
     
    ●開幕まで1年を切っているにもかかわらずパビリオン建設が遅々として進まない大阪万博で、参加各国が敷地内に自由なデザインで建設する「タイプA」のパビリオンが当初に予定していた60カ国から3割以上減の約40カ国になる見通しだというニュースがありました。
    「タイプA」とは奇抜なデザインやその国々の特色を表すことのできる建物で万博の華とも称され、それがなければそこらのミュージアムで開催される普通の展示会となんら変わらなくなります。大阪万博ではいつまでたっても着工されないパビリオンに対し「こんなことで間に合うのか」「完成しなければどうするのか」と心配の声も多くありましたが、必死になっていたのは主催者(なんとしても開催したい大阪維新)だけで、参加予定国は「出来なければほかのタイプでも構わない」「最悪、出展を取り止めればいい」くらいにしか考えていなかったようです。
    パビリオンの建つことがなくなった場所は“芝生広場”などに活用されるといいます。現在、跡地として緑の芝生が広がる1970年開催の大阪万博では“無線電話”や“自動運転”などの「未来」が多く展示されていましたが、今度の2025大阪万博では開催中からそこかしこに“芝生”という閉幕後の跡地を展示することになりそうで、未来は未来でも近未来にも程があります。
    こんな万博が果たして成功するのでしょうか。気になる入場券の売れ行きは昨年11月末の販売開始以来、2300万枚の目標に対し830万枚となっています。しかし、この830万枚のうち700万枚は企業に押し付けたもので、実際に自らの意思で購入されたものは130万枚に過ぎません。身銭を切って買ったチケットなら来場も確実でしょうが、企業からタダでもらったものなら必ず来場するとは限りません。すなわち、まだ予定している6%の来場者しか見込めていないのです。これではチケットは売れたのに会場内は毎日ガラガラなんてことにもなりかねません。
    実際に見学者が来なければ物品販売や飲食収入が確保できず「運営費」が大幅赤字となります。その場合それはいったい誰が負担するのか。チケットでとことん無理をさせられた企業がそっぽを向くことは確実です。そうなるとも税金で補填するしかないのです。維新はなにかというと「身を切る改革」と言いますが、身を切られるのはいつも市民、国民です。時と場合によっては「身を切る」ことも必要でしょうが、それが致命傷になっては元も子もありません。
     
     
    ●冬季オリンピックにおいての日本人金メダリスト第1号、元ジャンプ選手の笠谷幸生氏が亡くなったというニュースがありました。日本が何もかも失い、世界の最貧国のひとつとなった敗戦からわずか19年で開催したアジアで初めてのオリンピック、1964年「東京オリンピック」から8年後の1972年に札幌で行なわれた、こちらもアジア初開催となる冬季大会「札幌オリンピック」の70メートル級ジャンプで彼は優勝したのです。
    夏の大会とちがい1928年スイス・サンモリッツ大会に初参加して以来、半世紀近くで獲得したメダルは1956年の猪谷千春選手の銀メダル1個だけという、外国にまったく歯が立たなかった冬の大会での金メダルですから日本中が歓喜の渦に巻き込まれました。さらにこの70メートル級ジャンプ競技では2位、3位にも金野選手、青地選手が入り日本人だけで表彰台を独占する快挙となったのですから、そのときの熱狂ぶりはすさまじいものがありました。それからしばらくの間は全国どこの公園でも、笠谷選手を真似てひざを折った体勢て靴底で滑り台を滑り降り、下に着く瞬間に飛び上がる「ジャンプ」に興じる子供たちの姿が多く見られたほどです。
    笠谷氏の逝去を受けて過去の映像や画像が繰り返し流されましたが、それらを見て驚くのはその格好です。現代のジャンプ選手は衝撃を吸収すべくモコモコとしたスーツにヘルメットと完全防備の姿ですが、笠谷選手のそれは体操選手が着るような細身のウエアに毛糸の帽子と、よくそんな格好で100メートルちかくも飛んで怖くないものです。これではヘルメットをかぶらずにバイクに乗り、時速100キロ以上で疾走するようなものです。いや、バイクはまだ地面に密着しておりいつでも止まることができますが、ジャンプ競技は空中を飛んで自由がきかない分さらに危険です。強靭なその胆力には今さらながら恐れ入ります。
    笠谷選手の優勝記録は84メートルでした。直近開催の2022年北京大会での70メートル級が呼び名を替えたノーマルヒルの優勝記録は日本の小林選手の104メートルとなっており、札幌大会の笠谷選手と比べ“記録”は大きく伸びています。しかし、今でも50年以上前の彼の勇姿を鮮明に覚えていることを考えると、スポーツが後世に残すものは記録ではなく記憶だとつくづく思わされます。
     
     
    ●警察庁が全国の交番や駐在所の勤務形態を変更するという方針を明らかにしました。それによりますと、現在は24時間体制の交番を日中だけにしたり、警察官が住み込んでいる駐在所を通勤制に変更したり、さらに複数の交番をまとめて運用するブロック制を取り入れるようにするというのです。
    日本は世界でもっとも治安の良い国のひとつだと言われていますが、その理由に交番があります。交番とはその名の通り「交代で番をする所」で街のいたるところに警察官がいるのですから犯罪者にとっては鬱陶しいことこの上ないでしょう。その効果に注目した外国にはそのまま「KOBAN」として導入するところも増えており交番=KOBANは日本が世界に誇る善き文化です。
    そんな“そこにさえ行けば必ず警察官が助けてくれる”という安心感にあふれた交番が“ただいまの時間は閉店中”となるのですから市民としては戸惑います。警察官の仕事は犯罪者の検挙だけではありません。交通事故や落し物の処理、尋ね人の捜索など多岐にわたります。都内で道に迷い近くの交番に駆け込んだことのある地方出身者も少なくないしょう。それらが今後は「用件があるなら電話か最寄りの警察署へ」となるのですから明らかにサービス低下です。
    その背景には警察官のなり手不足、働き方改革による労働時間の制限があるのは明らかです。警察官だからといって「時間無制限で働け」なんて言うつもりはもちろんありませんが、白昼堂々と強盗事件が発生するなど以前より治安悪化が進むわが国で、さらに犯罪が増えないか心配です。犯罪者は「いまは交番が閉店中だからやめておこう」なんて考えるはずもなく、逆に「今がチャンス」となるでしょう。もうこうなったら泥棒などの犯罪者にも“働き方改革”を導入させ、夜間の交番が閉まっている時間帯の活動を制限するしかありません。もっとも「わしらは夜勤で昼に休んでいるから対象外」と言われたらおしまいですが。
     
     
    ●東京・世田谷にある公園近くの路上で午前3時頃、下半身裸で自転車に乗っていた56歳の自営業の男が公然わいせつ容疑で逮捕されたというニュースがありました。春になり暖かくなったとはいえ真夜中にちんちん丸出しで自転車に乗るなんて、想像しただけでこちらまで“縮み上がって”しまいそうです。
    しかし、男の犯罪は単に下半身を露出しただけではなかったのです。警察官が男の携帯電話を調べると、そこには公園で全裸で過ごす男の姿が写っており、さらに自身の肛門を水道の蛇口にこすりつけているものまであったのですから驚きです。公園は幼児から高齢者まですべての市民が安心してくつろげる場所であるはずなのに、誰も気付かぬうちにこんなことをされていたなんて油断も隙もありません。
    知らせを受けた公園側は、衛生上の理由としてすぐさま蛇口の使用を禁止しましたが、浅はかな若者が回転すし屋での不適切動画をSNSに投稿したとき、すべてのすし屋の醤油差しに疑心暗鬼になったように、もうこれからは安心して公園の水道を使うことができなくなりました。
    露出の被害はいても一部の人たち、しかも今回は真夜中でしたから幸か不幸か被害者はいませんでしたが、水道が使えなくなるのは不特定多数の人たちを被害者にする大事件です。いや、これから使えなくなるだけでなく、この公園で過去に水を飲んでいた人たちの気持ちを考えると・・・、なんとおぞましい。男は調べに対し「性欲を満たすためだった」などと供述しています。性癖は人それぞれ千差万別とはいっても、裸で肛門を水道の蛇口に押し付けることで満足する“性欲”なんてわけがわかりません。
     
     
    ●仙台国税局が兼業を禁止する国家公務員法に違反したとして、福島県内の税務署に勤める20代の男性職員を停職1ヶ月の懲戒処分にしたというニュースがありました。この職員は2022年8月から2024年2月までの約1年半の育休期間中に62台のクルマと4台の携帯電話を転売し、なんと2億円も売り上げていたのです。62台ということは月に4台弱と自動車販売店の営業マン並みの実績です。
    その方法はインターネットやディーラーを通じて購入したクルマをオークションサイトや中古車買取店に売却するもので、中には1200万円で売れたものもあったようです。2022年といえばコロナ禍で世界的に半導体不足となり、新車の生産がストップしたため中古車価格が高騰した時期で、車種によっては新車で買ったものが1年間使ったのにもかかわらず、購入価格よりも高く売れるものもありました。そこにすばやく目をつけるのですから、この職員はすぐれた才覚の持ち主です。また「これは儲かる」と思ってもなかなか実行に移すことは出来ないものですが、短期間でのこの行動力に驚きます。
    彼は聞き取りに対し「楽しくてやめられなかった」と言っていますが、右から左へ飛ぶように売れ、その度に利益が増えるのですから、そりゃ楽しいでしょう。この職員は処分を受けて即日退職したそうですが、今後は心置きなく商売に専念することでしょう。これからはせいぜい稼いで、元税務署員としてたんまり税金を納めていただきたいものです。
     
     
    ●現在、20歳から60歳までの40年間となっている国民年金の納付期間を5年間延長し、65歳までの45年間とする案を厚生労働省が検証するというニュースがありました。
    年金支給開始年齢が60歳から65歳に延ばされて以来、国は無収入期間を作らないために国民に65歳まで働くことを求めています。そして企業に対しても「65歳までは特段の事情が無い限り雇用を止めてはならない」との縛りをつけました。これにより希望者はほぼ全員が会社に残れるようになったのですが、給料は現役時代より大幅にダウンするため「こんな給料でやってられるか」と今度は“働かないおじさん社員”が増殖する問題が生まれているようです。
    そんなに不満なら延長しなければいいのですが、サラリーマンでいたら「減ったとはいえ収入は保証される」「会社の健康保険に加入できる」「健康のために少しは動かないと」などの理由で、60歳定年即退職の人は少ないようです。そんな勤め人は今でも年金保険料(厚生年金として)を徴収されていますので、今後65歳まで納付期間延長となったところでなんら変わりはありません。
    問題は“第一号被保険者”自営業の人たちです。彼らにとって5年間延長は100万円以上の支出増になります。そしていよいよ給付の年齢になっても、もらえるのは月に7万円弱(これも今後どうなるのかわかりません)。この金額は生活保護の支給額よりはるかに少ないもので「それなら保険料納付なんてしないで、そのときになったら生保申請したほうが得だ」となり、年金制度の根本を揺るがしかねません。
    「100年安心」といわれる日本の年金制度ですが、財源が足りなくなる度に「徴収額を増やす」「納付期間を増やす」「納付義務対象を増やす」と国民に負担を強いています。こんなやり方がまかりとおるのなら誰がやっても100年どころか千年でも万年でも続けられます。賢い役人、国会議員の方々が揃いながらもっとましな案はないのでしょうか。国民が納得できない年金制度なんて存在価値はありません。
     
     
    ●技術職として採用された男性が合意なく“総務課”に配転されたのは「職種限定合意」に反して違法だと訴えていた裁判で、最高裁第二小法廷は男性の言い分を認め違法だという判断を示しました。この男性は滋賀県の福祉協議会に福祉用具を扱う技術者として採用され18年間勤務したあと、事務しかない総務課に回されたことに「約束が違う」と異議を唱えていたのです。
    たしかにやりたい仕事をするために入った場所で意に沿わない業務に就くのは辛いものがあります。また今回の技術職に固執する男性の「いまさら新しいことなんかしたくない」と思う気持ちもわかります。しかし、事態は刻々と変化していることも忘れてはなりません。彼が入ったときは福祉用具の製作需要も多く、そのための人材が必要だったのでしょうが、需要が減ればその人材も必要なくなります。1年や2年で状況が変わったのではありません。18年もの期間を経ればある程度変化するのも仕方が無いことです。
    パイロットとして入社した社員が地上職へ、アナウンサーとして入社した社員が他部署へ配置転換されるなんてことも過去にいくらでもありました。最近ではコロナ禍で欠航が相次いだ航空業界で乗務する飛行機がなくなったCA(客室乗務員)が会社から自治体や民間のコールセンターに出向を命じられることもありました。本当は気が進まなくてもみんな状況を理解して甘んじて受け入れているのです。
    今回の最高裁の判断により“会社都合の人事”は制限されることになるでしょう。企業は利益を上げることが存続の第一歩です。そのためには組織を見直し不採算部門を縮小、廃止することも必要となりますが、一部の社員のためにそれが出来ず会社が業績不振に陥ったのでは元も子もありません。労働者の権利を尊重するのは結構ですが、あまりにそれが過ぎれば会社、社会が傾き本末転倒です。今回の判断は4人の最高裁判事の全員一致の意見とされていますが、だれひとりそこに考えを及ばさなかったのが不思議です。

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  • 2024年4月10日号:ニュースに一言

    2024-04-10 21:44  
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    ●大阪の私立高校に通う当時2年生の男子生徒が自殺したのは教師らの不適切な指導が原因だとして、両親が学校に対し約1億円の損害賠償を求める訴えを起こしたというニュースがありました。
    この生徒は2021年12月の期末試験でカンニングが見つかり、全科目0点、8日間の自宅謹慎、反省文の提出などの処分を受けました。そして、その2日後に、カンニング発覚後の指導の中で教師たちが試験前の朝礼で副校長が「カンニングは卑怯者がする行為」と話していたことを引き合いに出したことで、生徒は「このまま周りから卑怯者と思われながら生きていくのが怖い」という遺書を残し自ら命を絶ったのです。それに対して「先生が卑怯者とさえ言わなければ・・・」と提訴するのですから訴えられる先生たちも困惑しきりでしょう。
    大切な息子を失った親の悲しみは痛いほどわかります。しかし、記事を読む限り学校側の指導に行き過ぎは感じられません。いきなり指導室で「この卑怯者が・・・」と罵倒したのならまだしも、事前に「カンニングするのは卑怯者」と言っていたのにもかかわらずそれをした生徒に「それをした君は卑怯者」と言ってどこが悪いのでしょう。
    副校長の訓示には言外に「君たちは卑怯者になるな」という意味が含まれていたはずです。厳しいようですが卑怯者になりたくなければカンニングなんかしなければ良かっただけです。自らの非を棚に上げて「先生のせい」はいただけません。
    そもそもこの高校は頭髪チェックなど厳しい生活指導で知られています。そんな高校で人の道に外れた行為をすれば厳しい罰を受けることくらい事前にわかって入学したはずです。それが嫌なら校則の緩やかな学校を選べばいいのです(と言ったところでカンニングOKの高校なんてどこを探してもないでしょうが)。なにより悪いことをした生徒を叱って“怒られる”先生たちは大変です。
    “若いときの苦労は買ってでもせよ”という言葉があります。社会に出たら理不尽なこと、いやな事、努力せざるを得ないことが山ほどありますが、叱られたことがない、いやな事をされたことがない、頑張ったことのない子供たちはどんな大人になることやら。もっともこんな爺さんの心配なんて何でもかんでも“ハラスメント”と叫べば言ったもの勝ちになる世の中では大きなお世話かもしれませんが。


    ●長野県飯山市の市長がSNSで下水道にマスクを捨てる人を「人間が腐ってきている」と発信したことで謝罪に追い込まれたというニュースがありました。
    この市長は市内の下水道に不織布マスクや下着が流されていることを憂慮し「どういう神経をしているんだ、人間が~」と苦言を呈していました。それに対し「腐るとは何事や、人権侵害だ」とクレームがついたというのですから呆れます。下水道に水に溶けないものを混入させることはポンプの故障などの原因となり、その修理には莫大な金額が必要となります。その費用はもちろん税金から支払われますので、ごく少数の不届き者のために多くの善良な市民が害を被ることになるのです。
    そんな子供でも分かることを平気でするのは“頭のおかしい”人間以外にはいません。頭がおかしい=脳みそが腐っている=人間が腐っている・・・どこに問題があるのでしょう。市長として言うべきことを、それも事実であるにもかかわらず言えないとしたら「市長は一切ものを言うな」と同じです。
    市長は「品位を疑われるような表現があった」と謝罪し投稿を削除しましたが、“人権”という言葉を盾にして一方的に言論を封殺することは絶対に許せません。そもそも“品位”ってなんでしょう。「公人が耳障りのする言葉を使うのはけしからん」というのだとしても、今回の場合は不届き者を諌めるためにはあえて厳しい言葉が必要でもありました。
    わたしは“クズ”という言葉をよく使いますが、それは“クズ”が対象を最も端的に表しており聞き手に伝わりやすいと考えるからです。言葉尻を捕らえてばかりでは本質を見誤ります。今回の批判者が責めるべきは市長でなく、彼にそう言わざるを得なくした人たちの方だったのではないでしょうか。


    ●アメリカの空港でチケットを持たずに旅客機に乗り込んだ男が捕まったというニュースがありました。この男はスキーをするために訪れたユタ州から地元のテキサスにサウスウエスト航空の同伴者無料パスを使って戻ろうとしましたが、あいにく満席だったためパスを使って保安検査場を通過し出発ゲートでキャンセル待ちをしていました。しかし、待てど暮らせど一向に空きが出ず遂に飛行機は男を置いて飛び立ってしまいました。
    普通の人間ならそこであきらめて出直すところですが、なんと彼はチケットが無いにもかかわらず同じ行き先というだけでデルタ航空に乗ってやろうと決心するのですからとんでもない男です。
    といっても搭乗券がないのですんなりとゲートを通るわけにはいきません。そこで彼は一計を案じました。なんと他人の正規の航空券を盗撮し、それを使おうというのです。最近では紙の搭乗券を持っていなくても、スマホに情報さえ入れておけばそれをかざすだけでゲートを通過できます。男はそこに目をつけたのです。
    そうはいっても赤の他人に「ちょっとチケットを見せて」なんて言えば怪しまれること間違いありません。苦労のすえ、最終的に一人の子供がチケットをひらひらさせているのを見つけ、その撮影に成功しようやくゲートを通ることが出来ました。そのあとにゲートに現れた子供のチケットは当然「使用済み」と表示されましたが、子供だけ乗せないわけにもいかず「機械のエラー」だと判断され何事もなかったように出発準備は進みました。
    機内に入った男はトイレに隠れ、全員が乗り込んだ後に空いている席に座ろうと出てきましたが悪いことはできません。なんとこの便も満席だったためどこにも座る席がなかったのです。そして、機内をうろうろしているところを客室乗務員に見つかりご用となったのです。
    前代未聞の出来事ですがこれは遠い外国だけの話ではなく、日本でも類似の犯罪が報告されています。最近ではコンビニでスマホ決済をする人が増えています。多くの人は会計をスムーズに行なうためレジ待ちの間にスマホ画面にバーコードを準備しますが、その画面を盗撮し他人のバーコードで何食わぬ顔をして支払いをする悪党がいるのです。もう油断も隙もあったものではありません。
    スマホは電話、テレビ、お財布から百科事典にいたるまであらゆる用件をそれひとつでまかなえる非常に便利なものです。それだけにその管理には細心の注意が必要だと教えられたニュースでした。


    ●京都大学が2026年4月入学の入試から理学部と工学部の理系2学部で「女子枠」を設けるというニュースがありました。この措置により現在、理学部7・9%、工学部10・1%の女子比率をどちらも15%まで引き上げようというのです。
    京大総長は「女性が理工系に向いていないというのは幻想」「彼女らの希望に応じてチャレンジできる制度を作らないといけない」と話していますが、本来公平でなければならない入学試験に男女で差をつけるのはいかがなものでしょうか。「女に学問はいらん!」という時代じゃあるまいし、現代では女性であろうと希望すればどんな学校にも進学できますし、またどんな職業にも就くことができます。いまさら“チャレンジできる制度”なんていらないでしょう。さらに高校生の学力を男女で比べると、女性のほうが優秀だともいわれています。難関といわれる“医科大学”で「成績順で合格者を決めたら女学生ばかりになってしまう」と男子受験生にゲタをはかせるところもあったくらいです。
    ですから理学部であろうと工学部であろうと“女性だから”合格点に達しないなんてことはないはずです。にもかかわらず女性の数が少ないのは彼女らが「そこで学びたい」と希望していないからです。本当に女学生を増やしたいと思うのなら女子枠を作るのではなく、そこを彼女たちにとって魅力のある場所にすることのほうこそが重要なのです。
    そもそも、なぜ理系学部の女子比率を上げなければならないのでしょうか。男女平等といっても何もかも同じにする必要はありませんし、できません。性別によって出来る事、向き不向きは間違いなくあります。それを無理やり変える意味がわかりません。なにより、男女平等と言いながら女子だけの特別枠を設けることは「女はバカだから大目に見てやる」にほかならず、これ以上の女性蔑視はありません。


    ●東京・品川~名古屋間を最短40分で結ぶリニア中央新幹線の開業が当初予定していた2027年から大幅に遅れる見込みをJR東海が示しました。いや、正確には2027年開通を諦めたと言ったほうがいいでしょう。その理由が南アルプストンネルの工事を静岡県が認めず着工できないからといいますからとんでもないことです。
    同トンネルは全長25キロに及び、貫通までは最短でも10年を要する中央新幹線全路線の中でも最難関工区でそのうち静岡工区は8・9キロです。工事契約は2017年11月に締結されていましたが、それから6年以上が経過しても川勝静岡県知事が「やれトンネルから排出された残土が置き場から崩れる」「大井川の水が干上がる」など荒唐無稽な言いがかりをつけ着工できていません。たった8・9キロために国家的事業がストップしているのです。
    リニアの開通は沿線に莫大な利益をもたらします。2027年に向けて各地では着々と準備を進めてきましたが、それも静岡県のせいで金だけ使って恩恵のない状況が延々と続き回収はいつになるのかわかりません。
    リニア中央新幹線は海側を通る東海道新幹線の代替線としても期待されていました。代替線がないまま南海トラフ地震が発生すれば日本の機能がすべてストップしてしまい大混乱を引き起こします。そうしないためにも一日も早く完成させなければならないのに、それも静岡県のせいでいつになるのかわかりません。
    さらにリニア中央新幹線の開業は世界最初のリニアモーターカーとしてアピールでき、それはその後に全世界に対し技術を売り込むための材料となり、それによる国益は計り知れません。かつてリニアの開発は日本の独壇場でしたが、現在では中国が激しく追い上げてきています。リニア中央新幹線の開業が遅れて喜ぶのは“なんとしても世界初の称号が欲しい”中国です。工事の遅れはすなわち中国を利することにほかなりません。川勝知事の邪魔が自身の意思なのか、あるいは中国の命令によるものなのかは定かではありませんが、結果的に彼が国賊となっていることだけは間違いありません。
    1964年、東海道新幹線が開通したとき人々はそれを“夢の超特急”と呼びました。それから60年、さらなる技術の進歩で作り上げた世界に誇るリニアモーターカーがたったひとりの男のせいで“夢”に終わるのはだけ絶対に避けなければなりません。

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  • 2024年3月23日号:ニュースに一言

    2024-03-23 17:14  
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    ●3月16日、東京と金沢を結ぶ北陸新幹線が敦賀へ延伸し、東京から福井まで乗り換えなしで行けるようになりました。初めて新幹線が通ることになった福井県の喜びはすさまじく、地元の福井新聞は東京へ向けた一番列車が敦賀駅を6時11分に発車するとすぐさま「今、一番列車が敦賀駅を出発しました」と“号外”を発行し、さらにその後も「今、越前たけふ駅をでました」、「今、福井駅をでました」と芦原温泉駅までの県内各駅を通る度にそのつど二段、三段と追加発行するはしゃぎぶりでした。
    今回の延伸により、今まで福井県民は金沢まで在来線で行き、そこから新幹線に乗り換えて東京に向かっていたものが乗り換えなしの一本になったのですから時間短縮も含めすこぶる便利になります。しかし、それとは逆に福井から大阪に向かう場合、特急サンダーバードで直通だったものが、新幹線が敦賀まで延びたことによりサンダーバードの終点は敦賀駅になり、そこで必ず乗り換えなければならなくなり延伸の恩恵はほとんどないどころか不便になったとさえ感じます。
    進学や就職でふるさとを後にするとき、いままで北陸地方からは首都圏とおなじくらい近畿圏にも人が流れていましたが、今回の延伸による時間短縮で今後ますます首都圏一極集中にならないか心配です。
    明治時代に新潟県が人口日本一だったことがあります。これは主な産業が農業だった時代に、現代でもコメどころとして知られる新潟県にはそれだけの人口を食わす食料とそれを作る豊かな土地があり、またなりより多くの稲作の仕事があったからです。それが日本の近代化が進むとともに工業が盛んになり東京や大阪など太平洋側の人口が増えるようになりました。要するに仕事のあるところに人は集まるのです。
    そして今では東京、神奈川、埼玉、千葉のたった4都県で構成されえる東京圏に日本の総人口の3分の1が集中する事態となり、その結果、新築マンションの平均価格が8100万(東京23区に限れば1億1400万超)まで高騰しているのですから困ったものです。これでは日本人でありながら日本にマイホームを持つこともできません。交通網や通信網の発達により国土はどんどん小さくなっていますが、そこに住む人々の幸福度を含めた格差は大きくなるばかりです。
     
     
    ●琉球大学が2月25日に実施した一般選抜(前期日程)で、入試の実施ミスがあったというニュースがありました。入試のミスというと答えが2つ、あるいはない問いがあったなどの出題ミスがほとんどですが、今回は「欠席者を誤って合格扱いにした」なのですから笑ってしまいます。
    受験生は「自分ではよく出来たつもりだけど大丈夫だろうか」「ぜんぜん出来なかったからダメだろう」など合格発表まで不安な日々を過ごすものですが、試験を受けていなければ100%受かることはありません。そこに「おめでとう、合格です」の通知が舞い込むのですから???以外のなにものでもありません。
    琉大によりますと、受験生はそれぞれ受験番号と同じ番号が記された座席に座らなければならないところ、出席した受験者は別の席に間違えて座ってしまい試験用紙にもその座席番号を記入したことにより本来いない受験生が受けたことになってしまったようです。
    試験監督者は受験番号と顔写真は確認したものの席番号との照合はしておらず、その席に本来座るはずの受験生も欠席したためミスに気づけなかったといいますからお粗末なことこの上ありません。過去には現役東大生や娘のためにと女装した父親が代わりに受ける“替え玉受験”がありました。しかし、そんな危険を冒さなくても「出願を2つして当日に席を入れ替わるこの方法を使えばバレなかった」と今頃くやしがっていることでしょう。
    今回は欠席者側から合格通知書が届いたとの連絡があったことから発覚しましたが、それがなければ無試験で合格という前代未聞の事態になっていました。いや、公になっていないだけで「あれ、欠席したのに合格してる」と何食わぬ顔をして入学している学生は既にいるのかもしれません。
     
     
    ●「島耕作」さんが佐賀県の副知事に就任したことに対し、県議が「議会の同意を得ずに副知事に就任している」と糾したというニュースがありました。
    地方自治法162条は「副知事は議会の同意を得て選任する」と定めています。これは知事が勝手に副知事を決め、タッグを組んでやりたい放題するのを防ぐためで、今回の件を議会として看過できないというのは当然です。
    しかし、この島耕作さんがあの人気漫画「島耕作」シリーズの島耕作となれば話は別です。「島耕作」シリーズは1983年に「課長島耕作」として連載が始まり、部長から取締役、社長、会長まで順調に出世し、その後の相談役、社外取締役までのサラリーマン人生を描いたものです。そんな島さんに情報発信プロジェクト「サガプライズ!」の一環として、退職後にスポーツビジネスに携わった彼の手腕に着目した佐賀県が白羽の矢を立てたのです。
    県では2023年11月から島副知事の執務室を県庁に開設し一般公開していました。要するに「島耕作副知事」は広報活動における企画物上のもので、実際に彼が県政に携わるものではなかったのです。そもそも島耕作は実在の人物でないので携わりようがありません。それに対し「議会を軽視している」と本気で噛み付くのですから呆れます。
    県会議場での「議会の同意を得ずに島耕作が副知事に就任しているが、規定を無視して任命したのか」との怒りを帯びた質問に、「あくまで情報発信のプロモーション企画として考えている」と平然と答弁するやり取りを傍聴席の市民は「いったい何を見せられているんだ」としか思えなかったことでしょう。
    こんな漫画よりも面白いことを現実の、それも厳粛であるべき議会でやられては「島耕作」作者の弘兼憲史さんは立つ瀬がありません。
     
     
    ●高知市の山中にある崖っぷちでゴトゴト揺れるのに決して落ちないことから「受験生の聖地」と呼ばれた巨石を動かなくしたとして、関東の大学生6人が高知簡易裁判所から器物損壊罪で罰金刑をうけたというニュースがありました。
    この石は6トンほどの重さがあるにもかかわらず手で押すと揺れるのです。しかし、どんなに頑張っても決して崖からころげ落ちない不思議な石で、地元の人が注連縄を巻き「ゴトゴト石」と呼んでちょっとした観光名所にもなっていました。
    そんな石を男5人、女1人の大学生が「それなら俺たちで落としてやろう」と2022年11月26日朝にレンタカーを借りてわざわざ東京から駆けつけたというのですから呆れます。夜になってようやく現地に到着し、早速“作業”を開始しましたが全員で力いっぱい石を押しても噂どおり石は落ちません。道具がなければとても無理と察した彼らはホームセンターで荷絞めベルトやハンマーを買い込み再び挑戦しますがやはりうまくいきません。
    そうこうするうちに石の向きが変わり、まったくゴトゴト動かなくなってしまいました。そこで今度は車用品販売店でジャッキを買って山中に戻りましたが、それでも石は微動だにせず、遂にはジャッキが壊れてしまい万事休すです。そして27日夕方まで20時間近く現場周辺にいて疲れ果てて道具を放置したまま帰ったといいますから、なんともご苦労なことです。
    学生たちにとってはただの“青春の思い出”なのかもしれませんが、そんな状態で放置された地元は堪ったものではありません。「ゴトゴト石」をふつうの「石」にされた現地民の怒りはすさまじく、500人の署名で学生たちを刑事告訴し今回の罰金刑となったのです。
    過疎化が進む場所に住む人にとっては藁にもすがる想いの観光資源だっただけに学生たちの面白半分の軽率な行動はいただけません。自然が作った不思議な「ゴトゴト石」。今後なんとか手を加えて元通り動くようになったところで、それはもう人間の造形物に過ぎません。大学生たちは自分たちのしでかしたことの重大さをしっかりと心に刻まなければいけません。
     
     
    ●北海道の同性カップル3組が「同性婚を認めないのはおかしい」と国に対し1人100万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が行なわれ、札幌高等裁判所は同性カップルの結婚を認めない民法などの規定は憲法第24条、14条に反し違憲だという判断を下しました。
    憲法第24条には「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」とあります。両性とは言うまでもなく「男性」と「女性」の2つの性のことです。その組み合わせのカップルなら誰にも邪魔されることなく結婚できるというのを、今回の裁判長は「当事者の自由意思で婚姻するために『両性』と表現した。制定当時は同性婚を想定していなくても、現在では性的指向や同性婚の自由も十分に尊重すべきだ」としたのですから驚くべき拡大解釈です。
    また14条の「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」を盾に「同性のカップルを差別してはいけない」となると、もう日本の司法は“言ったもの勝ち”を認めると宣言したのも同然です。これでは「15歳同士の結婚を認めないのは差別だ」「親子、兄妹で結婚させろ」「愛してやまない愛犬と結婚したい」すべて認めなくてはならなくなります。
    現行の法律で結婚は「18歳以上の両性(男女)の合意により婚姻し、新たに1つの戸籍を作るもの」と規定されています。これは社会的、経済的に責任をとれる年齢の男女が結婚し国の未来をつくる子供をもうけ、その籍の中で養育するという、いたって合理的なものです。それをごく一部の人たちのために変えたのでは全体の秩序が乱れるばかりです。
    わたしは「少数者を排除しろ」と言っているのではなく、またその権利も認めるべきだとは思います。彼らは「婚姻」しなければ不都合、不利益が多いと言います。ならば結婚という形にとらわれることなく、それを改善すればいいだけでしょう。実際、すでに内縁(事実婚)の妻にも旦那の遺族年金は支給されるようになっていますし、パートナーシップ制度を導入する自治体も増えています。そもそも“家族”になるには養子縁組制度もあります。結婚はあくまで両性(男女)の合意によるもので、それ以上でも以下でもありません。
    人は誰にも自由に幸福になる権利がありますが、自分が社会を構成する一員であることを忘れてはいけません。そしてその社会には全体が幸福になるためのルールがあるのです。

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  • 2024年3月15日号:ニュースに一言

    2024-03-15 23:37  
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    ●2015年6月、新横浜-小田原間を走行していた東京発新大阪行き東海道新幹線「のぞみ225号」の先頭車両で71歳の男がガソリンをかぶって自身のからだにライターで火をつける焼身自殺を図り、男とその巻き添えを食った乗客の女性が死亡し、ほかに乗客26名と乗務員2名の計28人が煙を吸うなどして重軽傷を負う事件が発生しました。
    また、2018年6月には同じく新横浜-小田原間を走行中の「のぞみ265号」の12号車で当時22歳の男が旅客3人を鉈で切りつけて1人を殺害し、2人に重傷を負わせる事件が発生しています。
    安全、安心であるはずの新幹線内で起きたこれらの事件を受け、JR東海はそれまで車掌や鉄道警察が担当していた車内巡回を強化するため“警備員”の乗り込みを決定し、現在ではすべての列車に警乗するようになっています。
    わたしは毎週のように東海道新幹線を利用し東上していますが、新大阪から東京までの2時間半に車内で数回は警備員に出会います。彼らの制服姿は犯罪を企んでいる者には恐怖心を、善良な乗客には安心感を与え犯罪抑止に寄与するものですが、その警備員が自ら犯罪をしでかしたというとんでもないニュースがありました。
    2月下旬、新幹線に乗っていた20代の女性客から「乗務員に体を触られたような気がするので確認してほしい」と申し出があり車内の防犯カメラなどを調査したところ、なんと巡回中の25歳の男性警備員が寝ている女性の上半身を故意に触っていたというのです。乗客は彼ら警備員に守られていると思っているから安心して寝ているのです。その信頼を裏切る行為は絶対に許すことはできません。
    この男性警備員は調査に対し「わいせつ目的だった。周りに人があまりいなければ大丈夫だろうという認識でやっていた。去年の夏ごろから同じ行為を繰り返していた」と話しており、男の警乗の目的が犯罪を防ぐためでなく“獲物を探すため”だったとは呆れてものが言えません。警備会社は男を即刻解雇しましたが失った信頼はそうそう取り戻せないでしょう。
    わたしも車内ではよく寝ていますが、知らないうちにいままで何回も“触られていた”と思うと恐怖で身体が震えます。
     
     
    ●『夫婦喧嘩は犬も食わない』といいますが、犬なら「いらん」で済むものも警察は通報されたら「知らん」と言えませんので大変です。
    札幌市豊平区で、それぞれ髪をつかんだり包丁を示したりしたどちらも20代の夫婦が暴行と暴力処罰法違反の疑い逮捕されたというニュースがありました。午前10時半ごろ、酒を飲んで朝帰りした夫が妻にちょっかいを出したことで口論になり夫は妻の髪をつかみました。怒った妻は「夫に髪を引っ張られた」と110番通報した後、夫に包丁を示して「何かしたら正当防衛だからね」などと言い放つのですからすこぶる気の強い嫁はんです。
    それを見た夫も負けていません。妻の通報の2分後に今度は「妻に包丁を向けられている」と再度通報するのですから、電話を受けた警官も「なんじゃ、この夫婦は」と呆れたことでしょう。
    2人の通報によりほどなく駆け付けた警察官がその場で夫婦を逮捕しましたが、調べに対し夫は「妻の髪をつかんで、引っ張ったことは間違いない」。妻も「包丁が夫の方に向いていたことは間違いない」などと話しどちらも素直に容疑を認めているということで、まったくもって何がしたかったのかわからないとんだお騒がせ夫婦です。
    この夫婦をめぐっては、おととしにも妻から「夫に暴力をふるわれている」という相談があったそうで警察は引き続き捜査していますが、離婚することもなく未だに夫婦でいる2人っていったい仲がいいのか悪いのか。そんなことで仕事を増やされる警察は堪ったものではありません。
    “イヌ”と比喩される警察官もこの時ばかりは本気で「わたしも“知らん”で逃げられる犬になりたい」と思ったことでしょう。
     
     
    ●「DRAGON BALL」や「Dr.スランプ」などの名作を生みだした漫画家の鳥山明さんが、3月1日に68歳で亡くなりました。彼はわたしも含めた昭和30年度生まれの同い年のホープでした。漫画はもちろんゲーム「ドラゴンクエスト(ドラクエ)」の大ヒットもあり、世界中でもっとも有名な日本人の1人でもあった彼のご冥福を祈ります。
    そんな鳥山明さんの“ニセ”イラストやサインがインターネット上のオークションサイトやフリマアプリで多く販売されているというニュースがありました。出品者はテレビが連日彼の特集を組んでいる「今なら売れる!」と考えたのかもしれませんが、このタイミングでこのニュースを聞くなんて彼の功績を想うとあまりにも悲し過ぎます。中には実際に数万円で販売されたものもあるようで“火事場泥棒”にも似たやり口には怒りしかありません。ニセモノがもってのほかなのは言うまでもありませんが、仮に“本物”だったとしても鳥山さんが心を込めて描いたものを勝手に現金化するのは、明らかに彼に対する冒涜です。
    わたしもサインを求められることはありますが、出来る限り対応するように心がけています。その際にはその出会いがよい思い出になるよう、一言でも二言でも会話するようにし、書いたサインを終生大事にしてもらえることを願います。
    このように本当ならサインは求めてくれる人と対面でしたいものですが、全国すべての町に出向くことはできません。そのためあらかじめサインを記した“サイン本”を作ることがあります。書店に並ぶサイン本の文字は、もちろん印刷などではなく、これを手にした読者が喜んでくれる顔を想像しながら一冊一冊丁寧に直筆でサインしています(ちなみにサイン本だからといって価格が割り増しになることはありません)。
    直筆サインの証明について特許を持ち筆跡鑑定も行う専門家は今回ネット上にあがった鳥山さんのイラストやサインに対し、「一見したところ偽サインしかない。偽物は本物をコピーしたり上からトレースして簡単に作れるので注意が必要。特に鳥山明さんのサインはひらがなだけなので難易度は低い」「サインをもらった時のエピソードなどが書いてあるものもあるが、エピソードはウソをつける」と一刀両断しています。
    そりゃそうでしょう。なぜならもう二度と新たにサインをもらうことができないのですから、本物なら誰も手放すわけがありません。
     
     
    ●悪質な交通違反を繰り返す「自転車乗り」に対応する道路交通法の改正案が3月5日、閣議決定されたというニュースがありました。
    この改正案の目玉は自転車による交通違反への反則金制度導入で、成立すれば「スマホを使いながらのながら運転」「信号無視」「右車線の逆走」などの悪質な違反に「青切符(反則金納付)」が切れるようになります。現行の「赤切符(刑事処分)」による違反処理は、取り締まり現場で長時間の手続きが必要、後日出頭が必要、さらに前科が付くなど違反者とトラブルになりかねないことが多く「ハイ、違反!」というわけにはいきませんでしたが「青切符」では反則金さえ払えば終わりという手軽さで簡単に「ハイ、違反!」ができるとしています。
    気になる反則金の額は〇指定場所一時不停止:5000円、〇信号無視:6000円、〇携帯電話などの使用:1万2000円などどれもそれなりの金額です。さらに反則金が納付されなかった場合、刑事処分として手続きされ起訴された場合は裁判に発展し懲役・罰金などが科せられ前科がつくことになりますので遵法意識はあきらかに高まるでしょう。
    しかしそれも取り締まりが的確に運用されたらの話です。一部報道によりますと、取り締まりは警察官の警告に従わずに違反行為を続けた場合や、事故につながりかねない交通の危険を生じさせた場合とされています。すなわち一方通行を逆行して警官に見つかっても「コラ!」の声に対しすぐに自転車を降りれば、スマホのながら運転を見つかっても「コラ!」の声に対しすぐにポケットにしまえば切符を切られない可能性があるようなのです。これでは違反があれば有無を言わさず即摘発される自動車のドライバーと大きな違いで「謝れば大丈夫」の規則に果たしてどれだけの効力があるのか疑問です。
    そもそも運転免許の不要な自転車でどうやって本人確認するのでしょうか。その場しのぎの適当な住所と名前で切符を切られ、そのあとは知らんぷりなんてことにならないか心配です。傍若無人な自転車乗りが増えている昨今法改正は大いに結構ですが、誰もが「絶対に守らなければ」と考えるようなものでなければ改正の意味がありません。
     
     
    ●新幹線の車内で、車掌の顔を殴ってケガをさせた男が逮捕されたというニュースがありました。
    傷害の疑いで現行犯逮捕されたこの50歳の自称無職男は午後2時45分ごろ、広島駅から福山駅の間を走行していた山陽新幹線博多発東京行き「のぞみ32号」の車内で40歳の車掌の顔を殴って前歯を折るケガをさせていたのです。通報を受け駆けつけた警察官がJR福山駅構内で男を現行犯逮捕しましたが、こんな“ならず者”さえ乗車拒否できない公共交通機関の従業員は大変です。
    暴力行為に“良い”ものがないのは当然だとして、わたしが最も許せないのは男の殴った相手が『女性』車掌だったことです。百歩も千歩も譲って相手が男性だったのなら、理由のいかんによっては酌量の余地があるかもしれませんが、男が女に手を挙げた時点で「男が悪い」が決定です。なぜなら女性は男性より“弱い”からです。こう言うと「レスリングの霊長類最強女子や柔道のヤワラちゃんは男性より強い」なんて反論する人が必ずでてきますが、それはあくまでも例外であってわたしは一般論として言っているのです。
    すると今度は「女は男より弱いと決めつける百田は差別主義者だ」と来るのですから辟易します。誰が何と言おうと、LGBT理解増進法が成立しようと生物としてオスがメスより大きく力が強いのは不変です。それを「平等」という言葉でまやかしていたのでは本質を見誤ります。男性と女性は平等ではあるが同等ではありません。にもかかわらず「なにもかも同じ」とするから無理が生じるのです。
    それにしても、今回の男は車掌が男性でも殴っていたのでしょうか。もし相手が女性だったからだとしたらこの男は男の風上にも置けないクズ中のクズです。

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  • 2024年3月8日号:ニュースに一言

    2024-03-08 18:21  
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    ●2023年12月、長野県軽井沢町で電動キックボードに乗っていて大型バスと衝突して死亡した当時39歳の女性が、無免許運転と信号無視、ノーヘルメットの道路交通法違反の疑いで被疑者死亡のまま書類送検されたというニュースがありました。
    この事故は信号機がある丁字路交差点で、電動キックボードに乗っていた女性が信号機が赤なのに交差点に進入して左折しようとし、直進してきた大型バスと衝突し死亡したものです。その後の調ベで女性の電動キックボードは、最高時速が20キロを超える「一般原動機付自転車」に区分され、運転免許がなければ公道を走ることができないのにもかかわらず、女性は運転免許を持っていなかったことが分かっています。すなわちこの女性は無免許の上に、信号無視までしていたのです。こんな無法者に突撃されたバスの運転手は災難でしかありません。
    交通事故の場合、一般的に歩行者と自転車なら自転車、自転車とバイクならバイク、バイクと乗用車なら乗用車、乗用車と大型バスなら大型バスと、大きいほうの責任割合が高くなります。これは破壊力の強いほうがより気をつけないといけないからと一見合理的なようですが、それも時と場合によります。今回のように一方的な法令違反の場合にまでそれを持ち出し、なんら落ち度がないにもかかわらず“バス”というだけで責任を押し付けられたのでは堪ったものではありません。
    その意味では女性の落ち度のみを明確に認めた今回の処分の意義は大きいでしょう。このニュースを見て“平気で信号無視を繰り返す自転車乗り”が減れば幸いです。電動キックボードは2023年7月の道路交通法の改正で、免許所持とヘルメット着用が必須だったものが最高速度によって「免許が必要、不要」「ヘルメットが必要、不要」に分けられました。しかし、電動キックボードはスピードが出ないから安全というわけにはいきません。なぜならこの乗り物には小さな2つの車輪しか付いていないからです。自転車やバイクもそうですが、2輪車はある程度のスピードを出すことによって安定して走行できるのです。スピード違反はダメだからといって不安定な状態でよろよろと路肩を走られたのでは周囲のドライバーは恐怖でしかありません。そんな危険な乗り物の規制を国はなぜ“緩和”したのでしょう。
    ソーラーパネルやEV自動車など“電気関係”のほとんどは今や「メイドイン中国」です。電動キックボードも御多分に洩れていません。まさかとは思いますが、親中派の連中が「自己の利益と引き換えに国民の安全を売り渡した」なんてことがあったらわたしは許しません。
     
     
    ●和歌山県警白浜署が自殺をしようと「三段壁」を訪れた乗客の命を救った地元の同じタクシー会社に勤務する2人のドライバーに感謝状を贈ったというニュースがありました。
    「三段壁」とは南紀白浜の観光名所で千畳敷の海岸にそそり立つ高さ50メートルほどの「そこから落ちたらひとたまりもない」と思われる断崖です。54歳の運転手は午前0時10分といいますから真夜中です。紀伊田辺駅から女性客を1人乗せました。女性は行き先を二転三転させた後「三段壁へ」と。
    こんな時間に「三段壁」なんてどう考えてもおかしいと感じた運転手が「『アレ』しにきたんか?」と聞くと女性は「うん」。(ちなみに『アレ』は阪神優勝でも“事件の謎解き”でもありません)そのただならぬ様子に「降ろすわけにはいかない」とタクシーを白浜署に横付けしました。
    また、別の68歳の運転手は午後5時40分頃、白浜駅で1人の女性客を乗せ「三段壁」に向かいましたが、観光客にしては荷物が小さなカバンだけ、そのうえ表情も暗かったことを不審に思い「誰かと待ち合わせですか?」「何しに行くの?」と話しかけたところ、女性は突然涙を流し始めたそうです。「このまま分かれたら彼女は・・・」と感じた運転手は110番通報し、駆けつけた警察官に後を託しました。
    どちらも運転手が「俺らの仕事は言われるままに客を運ぶだけ」と考えていたら違った結末を迎えていたかもしれません。感謝状を手に運転手さんは「素晴らしい白浜を自殺の名所にしたくなかった」と答えています。彼らの地元愛と仕事に対するプライドが最悪の結果を回避したのです。
    「俺が、俺が」と自己の欲望のためだけに頑張る“上級国民”のいやなニュースばかりを見せられる毎日ですが、市井の人たちは誇り高く、また他人に対するやさしさを忘れずに生きていると感じたニュースでした。
     
     
    ●大阪府八尾市の市立小学校1年生の女子児童が、遠足でお茶を買わせてもらえなかったために熱中症になったとして、両親らが市に慰謝料など220万円の損害賠償を求めて起こした裁判の第1回口頭弁論がありました。
    訴状などによりますと、遠足は令和4年5月末にあり、その中に往復で約2時間歩く行程があったそうです。それを見た母親は前日に体力面の不安から欠席したいと伝えましたが、担任教諭から「大丈夫です」と促されて参加を決めたそうです。担任も「せっかくみんな揃って行くのに参加しないとかわいそう」と思ったのでしょう。その際、母親は「300円を持たせますので水筒のお茶が足りない場合は買い与えてください」さらに「しんどいと言ったら迎えにいくので電話をください」と申し入れていました。
    しかし当日、女児が教諭に「お茶を買わせてください」と伝えても校長の判断で認めなかっただけでなく、めまいを覚えて「ママを呼んでください」と伝えても聞き入れなかったそうです。そして下校の際に迎えに行った母親が高熱に気づき、女児は救急搬送されて熱中症と診断されました。
    母親にしたら「あれだけお願いしていたのになぜ?」と思うのも当然です。女児側は学校側に「安全配慮義務違反があった」と訴えている一方、学校側は「様子を確認し体調に問題ないと判断した。児童に熱中症の症状が出た際は、飲料水を購入することを想定していた」と主張しています。しかし、現実に女児は熱中症で救急搬送されているのですから、学校側の言い分にはなんら説得力はありません。きっと学校は団体行動の最中に自動販売機で飲み物を買うことを1人に認めたら収拾がつかなくなると考えたのでしょう。でも、そうだとしたら暑い中の遠足なら担任が予備の飲み物を準備しておくなどしなければならなかったのです。
    小学校に入ってまだ2ヶ月の初めての遠足。この女児は身体が小さかったため母親は「周囲に迷惑をかけては」と不参加を申し入れました。それに対し、担任が参加を促したのが「自分のクラスから欠席者を出したくない」という子供第一でない自己保身からだったとしたら、そんな教師に子供は預けられません。なによりも、しんどいときに誰にも助けてもらえず辛い思いをした女児が今後、大人を信頼できなくなったとしたらそれだけで十分に教師失格です。
     
     
    ●中古車販売店の倉庫に侵入したとして、兵庫県警川西署に建造物侵入の疑いで住所不定無職の64歳の男が逮捕されたというニュースがありました。
    2月25日の午前2時半頃、この倉庫から白煙が上がっているのに気付いた近隣住民から119番通報があり消防と警察が出動しました。駆けつけた警察官が建物の中を確認すると、そこにあったのは1枚の“マイナンバーカード”です。これ以上身分を証明するものはないと警官がそれを手に待っていると、白煙の残る中に男がのこのこ帰ってきたのですから文字通り「飛んで火にいる夏の虫」です。
    調べに対し男は「昨年末から住んでいた」と素直に容疑を認めていますが、あまりの寒さに倉庫内で焚き火をしたのが運の尽きとなってしまいました。それにしても3ヶ月近くも住んでいたのはよほど居心地がよかったのでしょうが、勝手に入り込んで“住んでいます”とは恐れ入ります。まさかマイナンバーカードにこの倉庫の住所が書いてあったのでしょうか。どうせなら手書きでもそうしておけば捕まらなかったかもしれないのに。身分証明といえば運転免許証か健康保険証が定番でしたが、政府はそれに代わるものとして“マイナンバーカード”を猛プッシュしています。なるほど住所不定無職もこれさえあれば日本国民を証明できることが今回よくわかりました。
     
     
    ●アメリカ・バイデン大統領の飼い犬が大統領警護隊(シークレットサービス)隊員に次々と噛み付いていたというニュースがありました。ホワイトハウスで2021年12月から飼われていたこの犬は「コマンダー」という名の2歳のジャーマンシェパードで、分かっているだけでも1歳を越えた2022年10月以降に24件の“噛み付き事案”を起こしていました。そしてこの24件にはシークレットサービス以外のホワイトハウス職員などが関係する事案は含まれていないそうですので、実際の被害者はさらに多いことでしょう。
    ジャーマンシェパードといえば警察犬や盲導犬にも使われる賢い犬です。しかし、どんな優秀な犬でもしつけをしなければやりたい放題のわがままな犬に育ってしまいます。「コマンダー」は飼い主がアメリカ大統領ですから、さぞかし有能な訓練士がついていたでしょうに、なぜ(日本の野党でもないのに)誰彼なしに噛みつく犬になったのか不思議です。よほどのバカ犬だったのか、あるいはシークレットサービスを無能だと感じ「わたしがご主人様を守らなければ」と思う忠誠心の塊だったのか。そうだとしたら「コマンダー」(司令官)でありながら自ら敵陣に飛び込んでいくのですから見上げた心意気です。
    いずれにせよホワイトハウスに入るためにシークレットサービスにさらに「コマンダー」避けの警護隊が必要だなんて笑い話にもなりません。そんな「コマンダー」は“更正の見込みなし”ということになり、ついにホワイトハウスを追放され今は別の場所に移されたそうです。
    今年は秋に大統領選挙があります。バイデン氏も再選されなければホワイトハウスを追い出されることになります。大統領の肩書きがあれば周りの人たちすべてが“尻尾を振って”近づいてきますが、そんな人たちも大統領でなくなれば潮が引くように消えていきます。しかし、バイデンさん、なにも心配することはありません。なぜなら、そのときには「コマンダー」が本心から“尻尾を振って”再会を喜んでくれるでしょうから。
     
    ●札幌市円山動物園でオスとして飼育されていた1歳半になるライオンのクレイ「君」が、実はメスのクレイ「さん」だったことが分かったというニュースがありました。
    クレイは旭山動物園から譲り受けたメスのライオンのイトさんとオスメスのペアで展示しようと1歳を過ぎた2023年10月に愛媛県のとべ動物園から円山動物園にやってきました。しかし、1歳6か月を過ぎても同じ年齢のオスライオンで見られるようなタテガミの成長がなく、さらに排尿の様子などから本当はメスではないかとの疑いが生じたということです。そしてその後の血液による遺伝子検査で遂にメスと判定されてしまったのです。
    それにしても人間なら“チンチン”が付いているのは男、ないのは女とすぐに分かりますが、ライオンにはメスにもチンチンが付いているのでしょうか。あるいはある程度成長するとタテガミと同じようにオスだけにチンチンが生えてくるのでしょうか。動物園の飼育係や獣医ですら間違えるチンチンっていったいどんな形をしているのでしょうか。疑問は尽きません。
    今後、クレイは「メスに用はない」と元の愛媛県とべ動物園に戻されることになるそうですが、果たしてクレイは納得しているのか心配です。なぜなら外見が“メス”だからといってオスではないと決め付けるのは現代では認められないからです。肝心なのはクレイ自身の性自認で、今までオスとして育てられてきた“彼女”が「わたしはオスよ」と言えばタテガミがあろうとなかろうとオスなのです。さあLGBT推進者のみなさん出番です。人間の勝手で振り回される哀れなクレイになにとぞ力をお貸しください。
     
     
    ●名古屋市内の小学生が「同級生に93万円だましとられた」と訴えているというニュースがありました。この現在小学6年生の男子児童は、おととし11月~去年2月にかけて計8回にわたって3人の同級生から“投資話”を持ち掛けられ、あわせて約93万円支払ったというのです。
    被害を訴える父親によりますと、児童は3人からメダルを見せられ「このメダルは“純金製”。いま金のレートは1g9000円ぐらい。その価値が上がっていく一方だ」と言われ、このメダルを36万円で購入したそうです。しかし、実際は純金などではなく、名古屋港水族館で数百円で販売されているただの記念メダルでした。また、別の日には珍しい紙幣だといわれカナダの10ドル札(日本円で1200円ほど)も25万円で購入していました。
    このニュースを聞いて、まず驚くのは小学生がよく93万円もの大金を持っていたことです。この男子児童は、親戚にもらった祝い金やお年玉などを貯め、100万円以上を自宅で保管していたそうですが、それを同級生に「ぼくは自由に使える金を100万円もっている」と言ってしまったのですから大変です。話を聞いた3人が「よし、その金をもらおやないか」と相談し、騙すことを思いついたようです。
    大人の世界でも金持ちをねらう詐欺事件は多く発生しています。彼らは言葉巧みにもうけ話を持ち掛け“ケツの毛” までむしり取っていきます。それが小学校を舞台に行われたのですから驚きです。さらに騙した方は「いま金のレートは1g9000円ぐらい」と的確に金相場を把握する念の入れようですから、これはもう小学生の遊びというよりいっぱしの詐欺師です。同級生3人のうち一人の保護者は、「ことの大きさを知って、やってしまったことに深く親子一同反省している。被害にあわれた児童と親御さんには直接謝罪した。二度とないようお金に関する教育を今一度しっかりやっていきたい」と話しているように周りの大人はしっかりと事件を受け止めています。
    93万円という小学生にあるまじき金額が動いた事件ですが、ここはお金を返し徹底指導でいいのではと思います。新NISAも始まり国は盛んに“投資”を奨めていますが、今回の事件は被害者にとってこの上ない反面教師となったことでしょう。
     
     
    ●一攫千金と聞いて一番に思い浮かぶのはやはり“宝くじ”です。ギャンブル依存症が社会問題となる中、最近では1等が10億円なんてものまで売り出されているようで、これほどまでに射幸心を煽るものを国がお墨付きを与えて売っているのですから、見事なまでのマッチポンプぶりです。誰もが1等を夢見て購入するものの、実際に10億円を手にできることはほとんど(絶対と言っても良いほどの極めて低い確率)なく、末等でも当たれば御の字というのが現実です。
    そんな宝くじが大盤振る舞いをしたというニュースがありました。インターネット専用の宝くじ「クイックワン」で本来10本しかないはずの1等200万円が間違って20倍の200本で設定されてしまったのです。さらに2等の10万円も10倍の2000本と設定されたのですから、一気に当選確率はアップしました。その代わりと言っては何ですが、6等の200円は本来40万本なければならないところ、なんと10本しか設定できていなかったといいますから困ったものです。これでは1等200万円を当てるより6等200円を当てるほうが難しいのですから、笑ってしまいます。
    この失敗は購入者からの指摘で発覚したそうですが、買うくじが1等2等と連発したのか、あるいは10本に1本当たる6等が何枚買っても当たらなかったのか。多分後者だと思いますが、「せめて200円だけでも取り戻したい」と思う気持ちが不憫でなりません。競馬や競輪の“儲け”が雑所得として課税されるのに対し、宝くじの賞金は非課税です。10億円が丸々自分のものになるのですから「ギャンブルするなら宝くじ」と言いたい所ですが、ここには大きな落とし穴があります。それは競馬の配当還元率が75%なのに対し、宝くじは45%となんと半分以上がてら銭として取られているのです。すなわち売り上げが100億円として競馬は75億円を払い戻すのに、宝くじは45億円しか戻してくれないのです。こんな割の合わないギャンブルなんて「するだけ損」でしょう。しかし、ジャンボ宝くじの発売日には毎回長い行列ができます。購入者は「買わないと当たらないから」といいますが、わたしは68年生きてきて知り合いに1等当選者は1人もいません。
     
     
    ●木原防衛大臣が3月16日の北陸新幹線の金沢~敦賀間開業にあわせて、航空自衛隊のアクロバットチーム「ブルーインパルス」が能登半島地震の被災者を激励するために石川、福井両県上空を展示飛行すると語りました。
    「ブルーインパルス」は1964年、2021年の2度の東京オリンピックで大空に5つの輪を描いたほか、2020年5月29日には、新型コロナウイルス感染症対策に当たる医療従事者に敬意と感謝の気持ちを伝えるため自衛隊中央病院など東京都内の上空を飛行するなど、いままでにも多くの人々を激励、そして感動させています。しかし、この試みに対し「もっと生きたお金の使い方考えたら?」「ブルーインパルスが飛んだら瓦礫は撤去できるの?水道は復旧するの?」「税金の無駄遣い、被災地にそのお金を回せば良い」などの批判がでているといいますから困ったものです。
    能登半島地震が発災して2カ月が経ちますが、いまだに避難所生活を強いられている人が多くいるのは事実です。しかし、今日現在瓦礫の下で救助を待っているのなら確かにブルーインパルスよりも救助ヘリの方がいいのでしょうが、いまは差し迫った危険はなく、すでに「いかに元の生活に戻るか」の段階に入っています。そんなときに空の上から激励されることに不満を抱く人なんているのでしょうか。2011年3月に東日本大震災が発生した時、テレビのすべてのチャンネルは震災報道一色となり民放からはCMすら消え日本中が自粛ムードに包まれました。当時、わたしが構成を担当していた「探偵!ナイトスクープ」も御多分に洩れず放送休止を余儀なくされました。この番組は「スクープ」といっても、報道番組ではなく実態はお笑い中心の娯楽番組です。24時間「おもろいこと」ばかりを考えて来たスタッフはいつ再開したらいいのか分からず不安な日々を過ごしていましたが、他局がまだ被災地の様子ばかりを伝えている中で「本当に放送していいのか」という葛藤はあったものの「こんなときにこそお笑いを」といち早く放送再開を決断しました。果たして被災地からのその反響は「久しぶりに腹の底から笑った」「明日への活力になった」など概ね好意的なものばかりでスタッフ一同は胸をなでおろすと共に笑いの力を再認識したものです。
    そもそも今回のブルーインパルス飛行を批判しているのは被災地の人たちなのでしょうか。わたしには批判者は安全な場所にいて「われこそ被災者の気持ちを代弁している」と自己満足に浸る偽善者か、あるいは国のすることはすべて気に入らない反権力主義者のどちらかとしか思えません。なによりも被災地で大活躍する自衛隊に感謝しない人はいません。その自衛隊のブルーインパルスが3月16日、空から被災地を激励するのです。これのどこにケチのつけようがあるのでしょうか。当日は多くの被災者が上空を見上げ笑顔で手を振ることでしょう。笑顔は復興の一番

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  • 2024年2月24日号:ニュースに一言

    2024-02-24 07:00  
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    ●兵庫県川西市の中学校で昨年9月から始まった給食のごはんにかける“ふりかけ” 持参に共産党の市会議員が待ったをかけたというニュースがありました。これは2023年4月に行われた市長と中学生との意見交換会で、生徒から「給食の食べ残しを防ぐためにふりかけ持参を認めてほしい」との要望があり、教育委員会が1人1袋、友達などへ渡さないことを条件に許可していたものです。
    それに対し市議は「給食は栄養バランスと衛生管理・食中毒などの事故が起こらないよう管理されている。それなのに家庭から違う食べ物を持って入ることには危機感がある」と異議を唱えたのですが、あまりの建前論に驚きます。
    たしかに給食は生徒1人あたりのカロリーやたんぱく質、塩分などが綿密に計算されていますので、勝手に“ふりかけ”を食べられたら塩分過多になるなど当初の目論見が外れてしまいます。しかし、おかずを全部食べてしまったためにごはんを残してしまうのなら、今度は肝心のカロリーが不足してしまいますのでどちらにしても目論見通りにはいかないのです。
    そもそも生徒たちは1日の全部の栄養を給食で賄っているわけではありません。朝と昼は各家庭で食べているのですから、昼の給食をきっちり計算通りにして1日の栄養素を完璧にしようなんてナンセンスなのです。「いや、それでも未確認の食品により学校内でアレルギーによる事故が発生したら・・・」と心配なのかもしれませんが、自分の家から持ってくるものが食べてよいのか否なのかは本人が一番よく知っています。相手は幼稚園児や小学校の低学年児童ではありません。中学生なのですからもう少し信用してもいいのではないでしょうか。
    昼食時に各々が校外からUber Eatsで好きなものを持ち込んでいるわけじゃあるまいし、ふりかけの小袋に目くじらを立てるこの市議の過保護ぶりには呆れます。せっかく生徒たちが正当な手段で勝ち取った“ふりかけ持参”の権利が、こんなことで“事なかれ主義”の大人たちによって奪われることの方がよほど問題です。
     
     
    ●前を走っていたタクシーが一瞬目を離したすきに客を乗せるため急停止。「ぶつかる!」と思った瞬間、自動ブレーキで間一髪セーフ。雨の中、見通しの悪い四つ角から飛び出してきたトラックと「あわや衝突」と思った瞬間、自動ブレーキで九死に一生。左折した瞬間、横断歩道上の歩行者にビックリ、でも大丈夫、自動ブレーキが事故を回避。テレビからは安全性能を競うクルマのCMがこれでもかというくらい流れてきます。
    乗用車の自動運転システムの性能を試そうとして、友人の男性2人をひいた68歳の男が過失運転致傷の容疑で現行犯逮捕されたというニュースがありました。この3人は事故前、男が所有する軽自動車の“自動運転システム”について話をしており「本当にそんなにすごいのか」と、その性能を確認することになったそうです。そして男が運転席でエンジンを作動させたところ、後退を始めた車は一切止まることなくそのまま2人を轢いたといいますから、とんだ“自動運転システム”です。轢かれた男性のうち1人は頭蓋骨を骨折する重傷で、クルマ自慢をしていた男は取り返しのつかない事態に後悔しきりのことでしょう。
    高齢者の運転ミスによる事故も多発しており、自動車メーカー各社は自動運転システムの開発を急いでいます。日本では法律の関係で認められていませんが、高級外車の中には既に車内に誰も乗せずに自動で駐車場に行き、そこからまたスマホ操作ひとつで元の場所にどこにもぶつかることなく戻って来れるものもあるそうです。
    ショールームに行けば営業マンは「この車はアクセルを踏まなくても、ハンドルを持たなくても自動で前の車についていきます」や「人や障害物を感知すると自動で止まりますから事故になりません」など盛んに“自動運転システム”をアピールします。そして自身の目だけが頼りの旧車に乗っていた人は最新式の自動運転システム完備の新車に意気揚々と乗り換えるのですが、いざ新車を引き渡す際になると自動車メーカーの販売員は「絶対に自動ブレーキを試さないでください」としつこいくらいに念を押します。なぜそこまで必死になるのか不思議でしたが、その理由がようやく今回わかりました。
     
     
    ●なんとも胸糞の悪いニュースを見てしまいました。
    2月に入り大学入試が真っ盛りですが、この季節になると受験生を狙った痴漢が増えるというのです。その理由が「受験生は試験に遅れるわけにはいかないので被害に遭っても通報せず安心して触れる」からだというのですから虫唾が走ります。中にはSNS上で「その日は痴漢し放題の祭だ」と意気上がる変態グループもいるようで、嫌悪感が頂点に達する想いです。
    受験生はこの日のためにと寝る間も惜しんで頑張ってきました。大人ならそんな彼女らを「いままでよく頑張った、思う存分試験に臨みなさい」と応援するのが当然なのに、それを“痴漢”という卑劣な行為で邪魔をするのですから腹立たしいことこの上ありません。
    被害者は試験に遅刻しなかったとしても、その瞬間の恐怖と怒りで心穏やかならず、実力を発揮することができなくなるでしょう。鉄道会社や警察は駅で受験生に合格祈願のメッセージが書かれたチョコレートを贈ると共に、防犯ブザー機能などが盛り込まれたアプリのQRコードが入ったチラシを配りながら痴漢への注意を呼びかけています。さらに駅構内や電車内での見回りの人員を増やすなどして警戒も強化しているそうですが、受験生と乗り合わせた善良な乗客の皆さんにも、ぜひ彼女らを気にかけ守ってもらいたいものです。
    「毎月5の付く日はポイント2倍」など、時期によって特典が変わるサービスはよくあります。それに倣って、この卑怯極まりない痴漢の刑罰を受験シーズンは大幅に上乗せすることは出来ないでしょうか。初犯であろうと一切の酌量なしで全員が懲役10年など、一撃で人生を棒に振るくらいのダメージを与えたいところです。こんなことを言うと「法治国家にあるまじき暴論」と笑う方もいるでしょうが「将来が決まるかもしれない大切な日を台無しにした輩にはそれでも足りないくらいだ」と、わたしは思います。
     
     
    ●女性に性的暴行したとして逮捕・起訴されていた58歳の警視正の男が勾留先の広島中央署の留置場で自殺したというニュースがありました。
    警視正とは警察の10ある階級の上から4番目で、全体の0・3%としかいないエリート中のエリートです。そんな警察幹部の男の捕まった理由が、マッチングアプリで知り合った10代の女性に対し「オレは警察官だ。“売春”で捕まりたくなかったら言うことを聞け」と脅して性交したからだというのですから呆れます。
    その後の取調べにより被害者はほかにも複数名いたことが判明し、犯罪を未然に防がなければならない立場の警察のこれ以上ない面汚しです。百歩譲って非番の日に身分を隠して“若いねーちゃん”と遊ぶのならまだしも、この男は相手を本物の警察だと信用させるために正真正銘の制服を着ていたといいますからとんでもない男です。
    日本でおとり捜査が認められていないのは、それによって“犯罪”が生み出されるからですが、この警視正は自らの手で“売春”よりもさらに悪質な犯罪を生み出したのですからしっかりと罰を受けなければならなかったのに自殺で幕引きとは・・・。
    広島県警はこの警視正を自殺などの恐れがある「特別要注意者」に指定していたそうです。それでも自殺は行なわれました。広島では刑務所に収監されていた受刑者が24時間カメラで監視されていたのはプライバシー侵害だとして提訴していることもあり、広島県警の中に相手が警察の幹部だけに「ずっと監視はどうも」という気持ちがあったとしたら問題です。いずれにせよ“死なせた”県警の失態であることは間違いなく批判されても仕方がないでしょう。この警視正は最期もまた仲間の警察官の名誉を汚したのです。
     
     
    ●法務省が刑務所や拘置所に収容されているすべての人を今年4月から「さん」付けで呼ぶよう各所に指示するというニュースがありました。
    今まではほとんどの刑務所では受刑者を呼び捨てにしていましたが、これからは「〇〇さん」とまるで先輩やお客さんに対するようにするというのです。これは2022年に発覚した名古屋刑務所の刑務官による受刑者への暴行事件を受けた改革の一環で、名古屋刑務所では彼らを「懲役」と呼ぶなど不適切な呼称が横行していたことで人権意識が希薄になり、それが暴行事件につながったと考えたようです。
    「極寒の網走刑務所で満足な食事も与えられない上に過酷な労働を強いられ怪我や栄養失調で命を落とす」なんて大昔の話で、現代の刑務所は「空調完備の上に栄養計算された食事が3食用意され、土日休みの完全週休2日制」と残業休出当たり前のブラック企業の社員が聞いたら羨むばかりの待遇です。そんな肉体的負担のほとんどない受刑者の、さらに精神的負担まで取っ払おうというのですから、この国はどこまで犯罪者にやさしい国なのでしょう。
    そもそも刑務官の不祥事が問題なら、彼らへの教育を徹底すれば済むことで、そこに“受刑者”を巻き込む必要はありません。刑務所が矯正、あるいは懲罰のための施設であるなら、同じ人間であってもそこには明確な上下関係がなければなりません。さもなくば「なんであんたの言うことを聞かなければならないの」と秩序も何もあったものではなくなります。「受刑者も刑務官も同じ人間だから、そこに上下関係があるのはおかしい」なんてきれいごとはやめてもらいたいものです。
    そして今回の決定には受刑者にも刑務官を「先生」と呼ばず「職員さん」「担当さん」にするよう求めることも含まれています。先生とは本来、学校の教師や医師、弁護士などその知識を自分のために使ってくれる人に対しての敬意を込めた呼称だったものが、いつのまにか「当たり障りのない呼び方」や「相手の機嫌を良くする呼び方」に変わってしまいました。
    その最たる対象が“議員”です。面白いのは「揉め事を避けるために、これでもかというくらい気を遣え」という風潮の昨今、先生側(議員は除く)もすこぶる丁寧になっていることです。学校ではモンスターペアレント対策もあり父兄は「保護者の皆さん」ですし、病院ではモンスターペイシェント対策でさらに上をいく「患者さま」になっています。「病気を治して」とお願いする立場でありながらのお客様扱いなんておもはゆいことこの上ありません。「丁寧に丁寧に、波風立てないように」とこんなことが続いていけば、そのうち犯罪者さえも「受刑者さま」と呼ぶことになりかねません。

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