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堀潤 連載第4回 「アメリカ大統領選挙から想像する次世代メディアの姿」
2013-05-28 12:00330pt前回は、インターネットによる選挙活動が解禁されることで、市民による政治参加の間口が広がる可能性がある一方で、専門のITチームを駆使できるような、資金力のある候補や政党に優位に働く制度になるのではないかという課題を提示した。
今回は、インターネットの活用で、選挙報道はどう変わるのかという点に焦点をあてたい。
昨年、アメリカで行われた大統領選挙では、CNNをはじめ、放送局がIT企業と協業してあらたな選挙報道のスタイルを模索している様子が大変興味深かった。ネット選挙先進国である米国の事例から、次世代メディアの姿を想像したい。
どこよりも早く「勝者はロムニー氏」と速報したCNN
大企業優遇か、中間層の底上げか。接戦の末、現職のオバマ氏が再選を果たしたアメリカ大統領選挙。4年前の初当選時には、改革の旗手、米国再生の救世主として圧倒的人気を誇ったオバマ氏だったが、今回の選挙では、対立候補に得票数で僅差まで追いつめられ苦戦した。
広がる格差、改善しない雇用、停滞する経済---これまでオバマ氏を支持してきた中間層、低所得者層からの失望や苛立ちの声が、選挙戦をより混迷へと誘った。経済回復の遅れは、強いアメリカの復活を求める保守勢力の動きを活発にさせ、オバマ氏の社会保障政策に憤る白人宗教右派の台頭を招いた。
こうした選挙戦に対し米国テレビメディアはITメディアとの協業で「次世代型世論調査報道」を競い合った。SNS時代の選挙報道の姿を探りに現場を訪ねた。
去年10月、アメリカ中西部コロラド州デンバーで大統領選挙に向けた初めての候補者ディベートが開かれた。民主党オバマ氏か共和党ロムニー氏か。当時、両候補への支持率は50%台前後で拮抗しつつも、オバマ氏がやや優勢だと伝えられており、ロムニー氏がディベートで巻き返しを図れるかに注目が集まっていた。 -
堀潤 連載第2回 「オープンジャーナリズムが戦争報道を変える」
2013-05-14 12:00330pt先日、ある民放局のラジオ番組に出演し、市民が電波を使って発信できる権利"パブリックアクセス"やインターネットを使って市民とマスメディアが協業でニュース制作を行う"オープンジャーナリズム"の可能性について話をした。
番組はおよそ60分。解説者は大手新聞で論説委員などを務めてきたベテラン記者。時間をかけて"インターネット後"の社会における新たなジャーナリズムのあり方について意見を交換したが、市民発信とマスメディアの協業とは、具体的にどのような形で成り立つのかがわかりにくい、という声も聞かれたので、今回は、ここで具体例を紹介したい。
◆インターネットやSNSの活用で、戦争報道が変わる
前回、連載第1回目では、オープンジャーナリズムの導入を試みる英国の名門紙『ガーディアン』の取り組みを紹介したが、一方で各国のテレビメディアも、市民参画型のニュース発信に力を入れている。
今回は、アメリカのニュース専門チャンネルCNNと中東衛星テレビ局アルジャジーラの試みを取り上げたい。
昨年秋の停戦合意後も緊張関係が続く、イスラエルとパレスチナ。去年11月、イスラエルによる空爆でパレスチナ側に女性や子どもなど多数の民間人の死傷者が出た際には、アメリカ国内でも報道が過熱した。 実はこの紛争では、イスラエル・パレスチナ双方の軍や関係者が、攻撃や被害の状況を自らtwitterやfacebook等を使ってリアルタイムで発信していた。
次のリンクはIDF・イスラエル国防軍のtwitterアカウントだ。 -
【新連載】ジャーナリスト堀潤の新しい活動はここから始まる! 「目指せオープンジャーナリズム」
2013-05-07 13:45330pt筆者がNHKに退職届を提出した事が公になった3月19日、現代ビジネスの瀬尾傑編集長が「わたしたちもメディアの世界を変えたいという思いでやっています。ご一緒できるとすごく嬉しいです」とFacebookでメッセージをくれた。面識はなかったものの「ぜひ」と返事を返すと「今夜会いましょう」とまたすぐに連絡がきた。
午後11時、新橋の居酒屋で落ち合い、終電の時間もすっかり忘れ午前2時頃まで二人で話し込んだ。
組織の建前とジャーナリズムの実践が混在するマスメディアのジレンマ。ソーシャルネットワークの発達で加速する市民発信と既存メディアとの融合の未来像。一次情報保持者が直接発信する時代におけるジャーナリストの役割とは何か---話題は尽きなかった。なかでも、市民発信の可能性についての意見交換は盛り上がった
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