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長谷川幸洋コラム第48回 ベトナム船衝突事件から読み解く中国の「尖閣侵攻リスク」
2014-05-16 12:00330pt中国の公船が5月2日以降、南シナ海のパラセル(西沙)諸島付近でベトナムの巡視船などに繰り返し体当りや放水をしていた。現場海域で進める石油掘削作業をベトナムに邪魔させないための実力行動である。衝突はベトナム側の発表であきらかになったが、中国外務省は8日、中国とベトナムの船舶が衝突したという事実関係そのものを否定した。その後、中国は「ベトナム側が衝突してきた」と言い分を修正した。このあたりは階級章などを外してロシアの武装勢力であることを隠しながら、クリミアに侵攻したロシアの手口をほうふつとさせる。私は3月6日公開コラム以降、一貫してロシアのクリミア侵攻が中国に伝染する可能性を指摘してきたが、わずか2ヵ月で早くも現実になった形だ。中国は「力による現状変更」の意思を変えるつもりはまったくない。こうした中国の力づくの挑戦は遠からず、東シナ海の尖閣諸島をめぐっても現実になるとみるべきだ。日本は集団的自衛権の見直しはもとより、漁民を装った尖閣侵攻など、いわゆる「グレーゾーン」問題への対応も急がなければならない。こう書くと、必ず一部から「中国の脅威を煽っている」という反発がある。そういう意見に対しては「起こるかもしれない危機を予想して対応策を考えるのが政治だ」と答えよう。それは原発事故とまったく同じである。原発でも事故が起きる可能性はあったのに「起きない」という前提で政策が展開され、惨事を招いた。原発反対を叫んでいる同じ勢力が集団的自衛権見直し反対を叫ぶのは、私に言わせれば、やや滑稽でさえある。原発も中国の動向も、日本にとっては同じ大きなリスク要因である。リスクには対応策を整えておくべきだ。見たくないシナリオだからといって、中国の尖閣侵攻リスクから目をそらせてはいけない。
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