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記事 74件
  • 田原総一朗 忘れていたものを思い起こさせてくれる映画『ワレサ 連帯の男』は必見だ

    2014-08-07 20:00  
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    『>ワレサ 連帯の男』のwebサイトより
    『ワレサ 連帯の男』という映画を見た。ポーランドの政治的なテーマを撮り続けているアンジェイ・ワイダ監督の作品だ。主人公のワレサは、1980年、ポーランドの労組「連帯」を組織し、その初代委員長を務めた人物だ。70~80年代、ポーランドを含む東欧諸国はソビエト連邦によって実質支配されていた。検閲、思想統制があたり前という社会状況のなか、「連帯」は結成された。それまでは政府系組合しかなかった。だが「連帯」は、はじめて労働者によって組織されたのだ。はじめての自主的かつ全国規模の労働組合だったのである。だが81年、政府は戒厳令を公布、多くの関係者を拘束する。「連帯」を率いるワレサは、一労働者から指導者となり、労働者のため、民衆のために闘うことになる。そして、この「連帯」の闘いが口火となって、東欧の民主化が実現したのだ。自由な議論や思想を禁じられた社会とはいかなるものか。その恐ろしさを改めて感じるとともに、民衆の力によって、社会を変革できるのだということに、震えるような感動を僕は覚えた。ワレサがいなければ、ポーランドの民主化、ひいては東欧の民主化はなかったかもしれない。しかし、この映画は、ワレサを「英雄」としてではなく、きわめて人間的に描いているのがとても興味深かった。 
  • 田原総一朗 安倍自民党、滋賀県知事選敗北で、秋の福島、沖縄県知事選はどうなる?

    2014-08-01 20:00  
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    7月13日、僕の故郷の滋賀県で知事選挙が行われた。三日月大造さんが、小鑓隆史さんを破って新知事となったのだ。とはいえ、三日月さんと小鑓さんの得票差はわずか1万3000票あまり。僅差であった。ともに無所属だが、小鑓さんは自公推薦、三日月さんはもともと民主党の所属。事実上、自公対民主という構図といってよいだろう。新知事になった三日月さんは、前知事の嘉田由紀子さんが応援した。いわば「後継者」である。前知事の嘉田さんは、もともと政治家ではなく、環境社会学者だった。2006年の知事選で、新幹線新駅の建設凍結、ダム建設計画の凍結見直し、廃棄物処分場の中止などを主張。「もったいない」を合言葉に初当選したのだ。これまで政治家は、選挙では道路や空港など何かを「作る」ことを打ち出すのが一般的だった。ところが嘉田さんは、「作らない」と宣言した。琵琶湖を中心とする滋賀県の環境を守る姿勢を貫いたのだ。震災後には、「脱原発」ではなく、ゆるやかになくしていこうという、「卒原発」を打ち出した。こうした「嘉田路線」継続を、滋賀県民は支持したのだろう。そして、もうひとつ三日月さんが勝利した大きな要因がある。7月1日に、集団的自衛権行使容認を閣議決定したことだ。この決定が選挙結果に大きく影響した、と僕はみている。滋賀県民の行使容認への拒否反応の表れもあるだろう。だが、それだけではないのだ。集団的自衛権行使容認に対して、公明党の支持母体である創価学会、とくに婦人部は、最後まで反対だった。そのため、今回の滋賀県知事選では、創価学会の動きが鈍かったと言われている。自民党本部は、事前調査で劣勢を伝えられていた。そこで安倍首相はじめ、菅官房長官、石破幹事長、小泉進次郎さん、野田聖子さんなど、錚々たる顔ぶれを現地に送り込み、小鑓さんを応援した。だが、「自民党カラー」を全面に出したことが仇になり、小鑓さんの票はかえって伸び悩んだようだ。対して三日月陣営は、民主党カラーを一切出さなかった。それで勝利を掴んだのだ。きわめて対照的である。 

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  • 田原総一朗 安倍首相は本当は何にこだわったのか?

    2014-07-31 20:00  
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    今月1日、集団的自衛権の行使容認が閣議決定された。早速、僕はその文書、「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」を読んでみた。読んでみて最初に感じたことは、「あんなに大騒ぎをしてまで、解釈改憲で集団的自衛権行使の容認、という閣議決定をする意味があったのだろうか」ということだ。公明党が強く反対をしたため、政府・自民党は大きく妥協。さまざまな条件をつけるなどして、当初の案を大幅に変更した。その結果なのだろう。できあがったものは、「個別的自衛権」で十分やれるのではないか、という内容なのだ。その文書を一部、引用してみよう。「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許容されると考えるべきであると判断する」よく読んでみてほしい。「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」なのだ。それなら、個別的自衛権で十分に対応できるはずではないか。それなのに、なぜ安倍首相は「集団的自衛権の行使容認」にこだわったのだろうか。簡単に言えば、「これまでの日本とは変わったのだ」というシンボルが、安倍さんはほしかったのではないか。僕はそう考える。つまりは、安倍さんが言うところの、「戦後レジームからの脱却」のひとつなのだ。とはいえ今回の議論が、結果的に国民が安全保障について考える契機になったことは間違いない。 

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  • 田原総一朗 激論してわかった!池上彰さんのタブーを恐れない「解説力」の秘密

    2014-07-18 14:00  
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    先日、僕が司会をつとめるBS朝日の番組、『激論! クロスファイア』が公開収録をおこなった。そこで、津田大介さんと池上彰さんと「激論」した。じつは、僕はその日の朝からワクワクしていた。池上さんとお会いするからだ。津田さんとは何度も討論や対談をしている。だが、池上さんと会うのは初めてなのだ。「激論」の会場は早稲田大学だ。津田さんと僕にとっては母校である。だが、池上さんは慶応出身なので、「アウェイ」の気分だったろう。とはいえ、池上さんとの「初対決」に、僕のほうが緊張していたかもしれない。現在の日本のジャーナリズムでは、池上さんは特異な存在だ、と僕は思っている。あらゆる分野に興味を持ち、そしてしっかり調べ、その本質まで明らかにして、報道する。なによりも、とても努力家だ。池上さんは政治家などに対し、とても聞きづらいことでも遠慮せずに質問を投げかける。テレビ局が嫌がることでも、本音を聞き出すために、ずばずば斬り込んでいく。「タブー」を恐れないところ、そこが僕と似ているかもしれない。 

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  • 田原総一朗 「新成長戦略」を阻む「外と内」の抵抗勢力とは?

    2014-07-08 20:00  
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    6月24日、政府は「新成長戦略」を閣議決定した。いわゆる、アベノミクスの「第三の矢」だ。ここからが正念場といっていいだろう。だが、その内容をよく見ると、そこかしこに「抵抗勢力」の痕跡がある。だから、本当にこの「新成長戦略」をやり遂げれられるのかと、僕は安倍さんに問いたくなるのだ。例えば、新成長戦略の「日本企業の収益を高めるためコーポレートガバナンスの強化」である。具体的には、企業は「社外取締役を1人以上」置くという内容だ。だが、社外取締役が1人では、到底足りないのではないか。欧州では、役員の4分の1以上が社外取締役だ。アメリカに至っては、社外取締役が半数以上と決められている。「新成長戦略」にある「1人以上」というのは、強く反対する経団連に歩み寄った結果であることは明白だ。もうひとつ例をあげよう。農業改革だ。「新成長戦略」では、「農水産物の輸出を平成32年に1兆円、平成42年に5兆円に」と高らかにうたっている。農業を輸出産業にしよう、というのだ。僕は、おおいに賛成だ。だが「規制改革実施計画」を見ると、「全国農業協同組合中央会(JA全中)を頂点とする中央会制度は新たな制度へ移行」と極めてあいまいになっている。本当は農協を解体し、株式会社にしたかった。だが、これもまた全農からの強い反対があったのだ。 

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  • 田原総一朗 「鉄腕アトム」は実現する?東大先端研で未来の「相棒」ロボットに出会った!

    2014-07-03 20:00  
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    先日、東京駒場にある東京大学の先端科学研究センターを訪れた。ロボットクリエイターの高橋智隆さんを取材するためだ。高橋さんは、立命館大学の出身だ。就職活動をして、いくつかの会社から内定をもらったが、希望していたところへの入社はかなわなかった。子どものころからの夢だった、「ロボット」製作をあきらめられなかったのだ。高橋さんは「鉄腕アトム」を見て育ち、ロボットにずっと憧れていたそうだ。そこで高橋さんは、京都大学工学部に入り直す。夢をかなえるための勉強を始めたのである。在学中に2足歩行ロボットを開発した。そして卒業後は、たった1人でロボット製作会社「ロボ・ガレージ」を起業したのだ。高橋さんは、4年前から東大先端研の特任准教授となっている。現在の日本のロボット開発は、産業ロボットや介護ロボットなどが主流だ。これらのロボットは、本来、人間がしていた仕事を担う。しかし高橋さんは、「自分の目指すロボットは違う」と考えた。高橋さんが夢見たロボットは、人間にとっての「相棒」だ。まさに、幼い頃に夢中になった、「鉄腕アトム」なのである。ソフトバンクの孫正義さんが発売したロボットは、これに近いのかもしれない。20日のソフトバンクの株主総会で、孫さんが壇上で紹介した。人の感情を認識できるというロボット「ペッパー」は、さまざまな知識を持ち、人間が困ったときに相談できたり、忘れてしまったことを思い出させてくれる。そういう意味で、人間の「相棒」だといえよう。 

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  • 田原総一朗 リアリティがない朝日新聞や毎日新聞、それでも存在意義があるこれだけの理由

    2014-06-20 20:00  
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    集団的自衛権の行使容認に向けた議論が、繰り広げられている。政府は、集団的自衛権の行使を容認しなければ、実行できないと考えられる事例など15の具体的な事例を示し、国民の理解を得ようとしている。さて、集団的自衛権に対するメディアの反応はどうだろうか。「読売新聞」「産経新聞」は賛成、一方、「朝日新聞」「毎日新聞」、そして「東京新聞」は反対だ。はっきりと分かれている。僕は、「中立」報道というものは不可能だと思っている。だから、新聞各社が立場を鮮明にして、自由に意見を戦わせているいまの状況は、健全であると見ている。そんななか、月刊誌『WiLL』が、目を引く論文を掲載した。「日本を悪魔化する朝日新聞」。書いたのは「産経新聞」の古森義久さんである。古森さんは、「朝日新聞」の報道は、「外部の要因はすべて無視、脅威や危険はみな自分たち日本側にあるとするのだ」という。すなわち「日本は悪魔だ」という理念のもとに、主張を展開していると指摘しているのだ。たしかに「朝日新聞」の報道は、一貫している。たとえば、「集団的自衛権を行使できるようになる」ことを、「戦争をする」と報じる。「首相の靖国神社参拝」については、「軍国主義賛美」だから「反対だ」と論じている。それでも各社が立場を鮮明にして、報道することは健全なことだ、というのが僕の考えだ。とはいえ、「朝日新聞」「毎日新聞」「東京新聞」のこうした報道姿勢が、日に日にリアリティを失っていることもまた事実である。「集団的自衛権の行使は国際法で認められています。どうして日本だけが勝手に『禁止』だと自国を縛り、行使できる国に変えようとする政治家を悪者扱いするんでしょう。こんなに国民が国を信用していない国は、他にないんじゃないでしょうか」戦争を知らない世代の僕の番組スタッフが、こう言っていた。彼の意見はよくわかる。そして、彼のような人が、いまの「朝日新聞」「毎日新聞」「東京新聞」にリアリティをまったく感じなくなっているのだろう。だが、「けれど」と思うことがある。僕たち戦争を知っている世代は、国家が平気でウソをつくのを目の当たりにしてきた。戦争に負けた瞬間、コロっと態度を変える大人たちを見てきたのだ。そのような経験をしてきた僕たちにとって、「国を信用」するのは非常に難しいことだ。 

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  • 田原総一朗 維新の会分裂で橋下徹は「真の政治家」になれるのか?

    2014-06-19 20:00  
    石原慎太郎さんが、橋下徹さんと袂を分かつこととなった。日本維新の会が結いの党と統一会派を組むことになったためだ。自主憲法制定を提唱する石原さんにとって、自主憲法を認めない結いの党は、受け入れることができないのだ。だが、そもそも橋下さんと石原さんとでは、政策が違い過ぎた。橋下さんはもともと、「脱原発」「憲法改正による首相公選制」といった政策を主張してきた。石原さんとかみ合わうはずがない。何より橋下さんは、「中央集権ではもうダメだ、地方から日本を変えよう」といって、大阪府知事になった人物だ。「都構想」をぶち上げ、道州制を提唱し、府知事になった。だが、府知事では何も変えられない、と考えると、改めて大阪市長になる。橋下さんは、そういう人間だったのだ。だが、石原さんと組み、「中央」を目指したころから、いったい何をしたいのかわからなくなってしまった。このころから、日本維新の会は変質してしまったのだ。橋

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  • 田原総一朗 なぜ冤罪は起きるのか?突っ走る検察に歯止めをかけられない、煽るマスコミの「従軍記者」たち

    2014-06-05 20:00  
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    検事の郷原信郎さんは、僕がとても信頼する弁護士のひとりだ。彼は、由良秀之というペンネームで、小説も書いている。『司法記者』という小説だが、検察の内情を描いたものだ。この小説がいまWOWOWで、「トクソウ」という連続ドラマになり、話題になっている。その郷原さんが、僕の番組に出演してくれた。僕は、ロッキード事件やリクルート事件、ライブドア事件などを取材してきた。その取材をとおして、検察、とくに特捜部の怖さを知ったつもりだ。しかし今回、郷原さんに話を聞いて、改めて「正義」という言葉に酔って突っ走る検察の怖さ、そして、それを煽るマスコミの危なさを感じたのだった。たとえば事件を目の前にして、まず検察の上層部が、事件の「ストーリー」を描く。もちろん、捜査にとりかかるために、「仮説」をたてることは必要だ。しかし、その「ストーリー」に、何が何でも合わせようとしてしまうのだ。そのため、しばしば強引な捜査になってしまう。そんな捜査をしていれば、冤罪が生まれるのは当然である。リクルート事件の江副浩正さん、ライブドア事件の堀江貴文さんは冤罪だったと、僕はいまも思っている。そして、厚生労働省の村木厚子さんの冤罪については、みなさんの記憶に新しいことだろう。小沢一郎さんは無罪になったので、冤罪にはならない。だが、検察によって実質的に政治生命を絶たれている。こうした構図は、いったいどうして生まれるのだろうか。特捜部は、政治家を「巨悪」だとし、自分たちが「正義」だと信じている。検事一人ひとりは正義感にあふれた好人物だ。だが、組織になると「正義」を信じて突っ走ってしまう。では、マスコミが検察批判をしないのはなぜか。マスコミこそが、権力の暴走の歯止めになるべきではないのか。僕のこの疑問に対して郷原さんは、「マスコミは、対政治家戦争の従軍記者なんです」と答えた。相手が政治家や大物実業家になると、マスコミは「真実」よりも「勝利」を求めてしまうのだろう。つまり、「政治=巨悪を倒す検察」、そして、それを煽るマスコミという構図なのだ。 
  • 田原総一朗 集団的自衛権問題から考える真の「保守」とは?

    2014-05-29 20:00  
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    5月15日、安倍首相の私的諮問機関、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が開かれ、座長の柳井俊二さんから報告書を受け取った。そして安倍首相は、集団的自衛権の行使容認へ強い意思を示したのである。僕は、集団的自衛権の行使容認について、全面否定するつもりはない。いま、日本を取り巻く世界情勢は大きな変化を迎えている。長い間、「世界の警察」を自任してきたアメリカが、その役割を辞めようとしている。一方、お隣の中国は、経済的に急成長を遂げ、軍事的にも急拡大し、東アジアにおける安全保障上の重大な脅威になっている。僕たちはいま、安全保障について真剣に考えざるを得ない局面にあるのだ。もちろん、国家的な議論を尽くすことが大前提だ。また、集団的自衛権が行使できる条件を明確にすることも不可欠である。そのひとつの答えが、安倍首相がいう、「戦後レジームからの脱却」であろう。ただ僕は、このような時にあって、危機感を覚えることがある。それは、安倍内閣の動きに呼応するかのように、いわゆる「保守」層が「原理主義」化していることである。彼らが目指すのは、次の4つの変化だろう。つまり「憲法の改正」「靖国神社の参拝」「東京裁判否定」「アメリカからの自立」だ。ひと昔前なら過激と受け取られていたのだが、保守系メディアで日常的にこれらの主張を目にするようになった。いまや「タブー」ではなくなったのである。こうした「保守原理主義」層がなぜ増えたのか。ひとつは、先にも述べた世界情勢の大きな変化によるものだろう。しかし、それに加えて、戦争を知らない世代が日本人の大部分を占めるようになったことと大きく関連するように思われて仕方がない。僕のように戦争を知っている世代は、「もう戦争なんてこりごりだ」という強い思いを抱いている。実体験がともなっているから、「戦争を憎む」気持ちも強い。だが、戦争を体験していなければ、「戦争はいけない」と頭でわかっていても、実感がわかないのではないか。繰り返しになるが、僕は集団的自衛権を否定しない。「憲法改正」「靖国参拝」「東京裁判否定」「アメリカからの自立」といった4つの変化についても、頭ごなしに否定するつもりなどない。僕は以前、明治維新以来の日本の近現代史を徹底的に調べた。そこで感じたのは、「東京裁判」はインチキだということだ。たとえば、「平和に対する罪」である。太平洋戦争末期まで存在しなかった罪名を、連合国が勝手に作ったのだ。そして、満州事変までさかのぼってその罪状を適用したのである。 

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