これらは、カンボジア最北部、ラオスとの国境近くのストゥントレンという地方都市にある工房で女性たちによって手織りされています。繭から糸を紡ぐところからすべて手作業で、使用される道具もほとんどが手作り。複雑な模様の場合には、一枚を織るのに1ヶ月以上を費やすこともあるのだとか。
クメールの伝統を受け継ぐデザインクメール伝統工芸の技術を受け継ぐ、デザイン性の高さが評価され、ユネスコの東南アジアの手工芸品を対象とした賞でこれまで3度の栄光に輝いている「メコンブルー」。しかし、特筆すべきはそのクオリティやデザイン性だけではありません。その取り組みがカンボジア農村部の女性たちに対する支援となっているという点です。
一枚のストールが、カンボジア女性に支援に「メコンブルー」創業者のヌオン・チャンタさんは、難民生活を送ったのちに「国境なき医師団」で看護師として働いた経歴を持つ女性。内戦直後の祖国での復興支援に関わり、エイズで死にゆく女性たちを看取るホスピスを開きますが、その多くが、貧しさから教育が受けられず売春婦として生計をたてざるを得なかった女性たちだったといいます。
読み書きのできない女性は雇用の対象にすらならず、生きる手段がないも同然。行政の支援や保険もありません。そんな現実を目の当たりにしたチャンタさんは
「カンボジアの伝統的なデザインに新たな息吹をふきこみ世界中に伝えたい。読み書きのできない女性に、職人として技術を身につけてもらうことで、尊厳をもたらし、貧困からも解放したい」
(「メコンブルー」HPより引用)
そう考え、最貧困地域のひとつであるストゥントレンにおいて2001年、読み書きのできない女性の自立を支援するためのNPOを立ち上げます。
それが「メコンブルー」のスタート。シルクや織物に関してはまったくの素人だったチャンタさんですが、14年間努力を重ね、500人以上の女性と子どもたちの生活を支える事業にまで成長しました。
クラウドファンディングで世界とつながるそして、現在「メコンブルー」は機織りのサマースクールのためのクラウドファンディングを実施中。サマースクール開校の手助けとなるだけでなく、通常であればストール一枚の金額で、ストール現品のほかにさまざまな特典がつくのもうれしいところ。ストールの裏にあるチャンタさんの思いを知ると、いっそうシルクの輝きが増すようです。
(マイロハス編集部/岸田、写真:鈴木竜一朗(日光堂))