人間の深層心理に問いかける
第65回のベルリナーレ(ベルリン国際映画祭)に出品された作品。ハリウッドで脚本家として大成功のリック(クリスチャンベール)は欲しいあらゆるものを手に入れることができるけれど、本当の幸せを感じたことがない男性。数々の女性たちと結婚をしたもののうまくいかず、その裏ではどこか父親の存在が心の中にいつもあって、という筋書き。タロットカードでは「カップのナイト」は積極的な姿勢や燃え上がるような恋愛(正位置)、さらに将来を悲観的に見る、熱くなりすぎて周りが見えなくなる(逆位置)などを意味を持つといいます。夢とか、成功とか、幸せとか。何を意味するのか、もしくは意味が果たして元よりあるものなのか。哲学的映画が好きな人向けです。
癒し・人生のリセットがテーマのロードムービー
『ワイルド』
実生活でも2人の子供を持つリーザ・ウィザースプーンの演じる主人公シェリルは、きっと私たちロハス世代と同じ歳ごろの等身大女性。母親を亡くし、自身のヘロイン中毒から夫婦関係は破たんし、精神的に追い詰められた彼女は人生の底辺へと辿りつきます。リュックサックをしょって、本来のワイルド(生き抜く底力)を得るために2,000キロをトレッキングすることに。旅の途中では自然の課す否応のない寒さ・暑さ・さみしさを味わい、のどの渇きや疲れといった「生きた」人間本来の感覚がよみがえってきます。それはまるで、いままで彼女の生きてきた人生での成功や失敗、予期せぬこととも似ているようです。困難の数々に立ち向かう彼女の姿は感動といった言葉では表せない何かを与えてくれ、人生はこんなものなのだというさみしさと、でも立ち向かう勇気を与えてくれる映画だと思います。「人生で何を置き忘れてきてしまったんだろう」という言葉が印象に残りました。
来年にかけて明るい映画もチェック
これから来年にかけてチェックしたい話題の映画も2本紹介します。1本目は、失恋をテーマにした、ミュージカル映画『ザ・ラスト・ファイブ・イヤーズ』。『ピッチ・パーフェクト』で大人気となったアナ・ケンドリックと、ジェレミー・ジョーダン(2人ともトニー賞にノミネート)の素敵な歌声が響き、それぞれのソロパートもいいのですが、デュエットはもっと素敵。本編を見たくなること間違いありません。
2本目は1994年から10年にわたり大人気だったテレビシリーズ『フレンズ』の映画版。2004年まで続いたテレビドラマがおなじみのキャストで再結成。アメリカでは良し悪しに議論がわかれるところですが、フレンズファンはぜひチェックをお忘れなく。
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