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アニエスベーのファッションと映画に共通するもの
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アニエスベーのファッションと映画に共通するもの

2015-10-07 08:00
    つい先日、銀座に路面店「Rue du Jour」をオープンさせたアニエスベー。3フロアーからなる開放的な店内は、カフェも併設され、ゆっくりと買い物を楽しめそうな雰囲気。銀座で立ち寄りたい場所が、ひとつ増えました。

    高級メゾンほど敷居は高くないけれど、シンプルで洗練されたデザインは、いつものスタイルをセンスアップしてくれる。身につけると、動きやすく快適な着心地がクセになる。ファッションブランドとしてのアニエスベーのイメージはそんな感じでしょうか。

    そのファッションデザイナー、アニエスベーが本名、アニエス・トゥルブレの名で初監督をした作品が間もなく公開されます。可愛いポスタービジュアルから想像したのは、おしゃれな映像のポエティックな作品。実際に観てみると、美しくポエティックな作品ではあるのですが、扱うテーマについては、深く考えさせられるものでした。

    秘密と先入観がもたらすもの

    主人公は12歳の少女セリーヌ。父親から虐待を受け、いつか家出をしようと思っていた彼女は、学校の遠足で出かけた海辺でプランを実行します。こっそり集団から抜け出し、スコットランド人の長距離トラックドライバー、ピーターの車内に忍び込むセリーヌ。

    運転中に気づいたピーターは黙って彼女を同乗させ、2人の旅が始まります。カタコトの英語とフランス語で2人が少しずつ心を通わせるなか、ニュースではセリーヌの失踪事件が大きく報道され、旅はある結末に向かうことに。

    秘密の多い映画です。セリーヌをはじめ、ピーターも、セリーヌの父親も、祖母も、弟や妹も、知っているけれど言わないことがある。それはいろんな理由からですが、すべてを把握できる観客側から見ると、「言わないこと」が原因で物語が思わぬ方向に進むことに、モヤモヤしたりショックを受けたりと、気持ちが乱されます。

    この映画で描きたかったことについて、アニエスベーは次のように語っています。

    私は、先入観に反対する映画を撮りたかったのです。人は誤って、罪を犯すことがあると言いたかったのです。人は何が起こったかを知らないのに、適当に、自分自身でお話を作りだしてしまうことがあります。それが時に深刻な結果を引き起こすことを想像もしないで。このようなことに直面した周囲の人々や家族が、 他者をどのように感じているかを描きたかったのです。

    (作品プレス資料 監督インタビューより引用)

    「秘密」と「先入観」がもたらす結果がどうなるのかは、映画を観ていただくとして。映画を離れた日常生活のなかでは、私たちも情報に翻弄される側。先入観で判断して、誰かを悲しませてはいないか。映画は問いかけています。

    センセーショナルな描写もありますが、老若男女を問わず、何かメッセージを受け取れる普遍的な作品に思えます。それは、着る人を選ばず、動きやすさや快適さといった「生活者の視点」をデザインに取り入れる、アニエスベーのファッションに通じるところがあるような気がしました。

    赤と青を中心に、画面を構成する色使いはとてもきれいで、不穏な空気をかきたてるオペラの楽曲の使い方も効果的。そして、イカつい見た目に反して穏やかでどこか悲しげなピーターと、セリフは少ないながらも表情ですべてを語るセリーヌを演じる二人がとてもいいです。

    映画監督として、コンスタントに撮り続けてほしいと強く思いました。

    [私の名前は...]

    監督・脚本・撮影・美術:アニエス・トゥルブレ(アニエスベー)

    出演:ルー=レリア・デュメールリアック、シルヴィー・テステュー、ジャック・ボナフェ、ダグラス・ゴードン、アントニオ・ネグリ

    原題:Je m' appelle Hmmm...

    2015年10月31日(土)、渋谷アップリンク、角川シネマ有楽町ほか、全国順次公開

    (c)Love streams agnes b. Productions

    アニエスベー 松屋銀座店 Rue du Jour】

    住所:東京都中央区銀座 3-7-1 松屋銀座マロニエ通り館

    電話:03-3535-8660

    RSSブログ情報:http://www.mylohas.net/2015/10/049549mynameis.html
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