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記事 25件
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第十三回

    2015-12-25 07:06  
    102pt
     皆さん、今回が今年最後のメルマガです。百田尚樹チャンネルにご登録していただいた皆さん、半年間、本当にありがとうございました。また日邦レンタカー運営の時からお付き合いくださっている皆さんも、本当にありがとうございました。
     来年もブロマガ、動画ともに頑張っていきますので、何卒よろしくお願いいたします。
     日本は今、本当に激動の時代に突入したと思います。この二、三年の舵取りを誤ると、取り返しのつかない事態に陥ります。いや、大袈裟ではなく二〇一六年は日本にとって「正念場」の年になるかと思います。
     二〇一六年は私も六十歳を迎えます。還暦です。
     もうあまり人生の時間が残っていません。その残された時間に、日本のために何ができるかを真剣に考えています。といっても平凡な男である私には、たいしたことはできません。でも、日本という国に育ててもらった恩返しを、少しでもして死にたいなと思っています。私が死んだ後も、この素晴らしい国で、多くのこどもたちが笑顔でいられるような国であることを願っています。
     
     『カエルの楽園』は、いよいよ最終章に突入です。
     今回は年内最後ということで、出血大サービス、一挙三十六枚(原稿用紙換算)の大増ページです!
     年末年始にゆっくり読んでいただけたらと思います。
     最終章からは物語が恐ろしい形で展開していきます。書いていて辛い、と思うことが何度もありました。でも、この小説は、一種の使命感のようなものに突き動かされて書いています。

     二〇一六年は、私が小説家になって十年目の節目の年です。その年に、こういう作品を書くことができたのは、何かの縁のようなものを感じます。

    『カエルの楽園』が読者の皆さんの心にどんな形で届くのかはわかりません。でも、この作品は私が心血を注いで書いた作品です。最後まで真剣に書ききります。

     

     なお、来年のメルマガは一月八日からスタートします。ニコ生の動画は十一日(21時)からスタートします。
     それでは皆さん、よいお年を!
     来年もよろしく!


    ★【皆さんにお願い】
    この作品の著作権は百田尚樹にあります。したがって、このテキストを作者に無断でネット上にアップしたり、メールで拡散したりする行為は、著作権法違反にあたります。くれぐれもそのような行為はお慎み下さるようお願いいたします。
    ※(著作権を故意に侵害した者は、一〇年以下の懲役または一〇〇〇万円以下の罰金に処せられます)

    『カエルの楽園』第三章

     
       

       1
     翌日、からりと晴れた空の下、元老会議の小島で、ガルディアンは集まったツチガエルたちに言いました。
    「昨日、スチームボートに会って、提案された協定は受け入れられないと伝えた。スチームボートは意外そうだったが、お前たちがそう決めたなら、しかたがないと答えた」
     カエルたちは歓声を上げました。
    「この際だから皆さんにあらためて言っておく」ガルディアンは言いました。「三戒はかつてスチームボートが作ったという誤った考えが一部にあるようだが、それは違う。スチームボートはあくまでも三戒を提案しただけで、それを国の戒めとしたのはナパージュのカエルである。したがって三戒は我らのものである」 
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第十二回

    2015-12-18 07:00  
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    ★【皆さんにお願い】
    この作品の著作権は百田尚樹にあります。したがって、このテキストを作者に無断でネット上にアップしたり、メールで拡散したりする行為は、著作権法違反にあたります。くれぐれもそのような行為はお慎み下さるようお願いいたします。
    ※(著作権を故意に侵害した者は、一〇年以下の懲役または一〇〇〇万円以下の罰金に処せられます)

    『カエルの楽園』第二章

     
       
     次の日、元老会議が行なわれました。
     この日は朝からずっと雨が降っていたこともあって、小島の周囲には大勢のカエルたちが集まっていました。ソクラテスとロベルトもそこにいました。
     会議の冒頭にプロメテウスが発言しました。
    「昨日、南の崖を登ったウシガエルは五匹を数えました。これはハンニバル兄弟が確認しています」
     元老たちの顔には明らかに動揺の色が浮かびました。
    「もはや一刻の猶予もなりません。スチームボートとの協定を結ぶ必要があります」
     いつもならすぐに反対の声を上げる元老たちも黙って聞いています。おそらく、ウシガエルが一挙に五匹も崖の上に姿を現したという事実を深刻に受け止めているからだろうと、ソクラテスは思いました。
    「たしかにスチームボートはわたしたちを利用しようとしているのかもしれません。それは絶対にないとは言えません。しかしわたしたちもまたスチームボートを利用しようとしているのです。すべて自分たちだけが得をする約束事というのは、この世に存在しません。それはあまりにも都合のいい考え方ではないでしょうか。スチームボートが誰かに攻められたならば、わたしたちは彼を助けるために一緒に戦わねばなりません。その代わり、わたしたちがウシガエルから攻められたときは、スチームボートが助けてくれるのです。この恩恵は限りなく大きなものがあります」
     元老たちはみんな考え込んでいます。
    「みんな、騙されるな!」 
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第十一回

    2015-12-11 07:00  
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    ★【皆さんにお願い】
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    ※(著作権を故意に侵害した者は、一〇年以下の懲役または一〇〇〇万円以下の罰金に処せられます)

    『カエルの楽園』第二章

     
       
     翌日、再び元老会議が開かれました。
     この日も、何もするべきではないというガルディアンたちの意見と、ウシガエルが登ってこられないように策を練るべきだというプロメテウスの意見とがまっこうからぶつかり、一日かかっても結論は出ませんでした。
     ところが、その日の夜、南の崖の上に、今度はウシガエルが二匹現れたという情報がもたらされました。これまでは一匹だったのが二匹になったということで、カエルたちも恐怖にふるえました。
     にもかかわらず、翌日に開かれた元老会議でも議論は相変わらず平行線のままでした。
     その日の会議の終わりに、プロメテウスは言いました。
    「このままでは何も進みません。そこで、別の案を提案したいと思います。スチームボートに、南の崖を見張ってもらうというのはどうでしょう」 
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第十回

    2015-12-04 07:00  
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    ★【皆さんにお願い】
    この作品の著作権は百田尚樹にあります。したがって、このテキストを作者に無断でネット上にアップしたり、メールで拡散したりする行為は、著作権法違反にあたります。くれぐれもそのような行為はお慎み下さるようお願いいたします。
    ※(著作権を故意に侵害した者は、一〇年以下の懲役または一〇〇〇万円以下の罰金に処せられます)

    『カエルの楽園』第二章


     プロメテウスの言葉は、元老会議を見ていたカエルたちに衝撃を与えました。
     たしかにナパージュのカエルたちは「三戒」を守って、他のカエルを信じて争いはしませんが、ウシガエルの国には「三戒」はありません。ないものを守るはずはありません。
    「たしかに、そうだよな」
     ロベルトがソクラテスに言いました。ソクラテスは心の中で、そんなことは最初からわかっていたことではないかと思いましたが、口にはしませんでした。
     プロメテウスはさらに言いまし
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第二章(1)

    2015-12-02 07:00  
    102pt
    本掲載内容は、2015年11月13日から2015年11月27日の間に配信された「カエルの楽園」第二章(第7回~第9回)を一つの記事にまとめて再録したものです。
    第1話から継続してお読み頂けている皆様は、既読の内容となりますので、予めご了承ください。
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第一章まとめ

    2015-12-01 07:00  
    102pt
    本記事の掲載内容は、2015年10月02日から2015年11月06年の間に配信された「カエルの楽園」第一章(第1回~第6回)を一つの記事にまとめて再録したものです。
    第1回から継続してお読み頂けている皆様は、既読の内容となりますので、予めご了承ください。
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第九回

    2015-11-27 13:30  
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    この作品の著作権は百田尚樹にあります。したがって、このテキストを作者に無断でネット上にアップしたり、メールで拡散したりする行為は、著作権法違反にあたります。くれぐれもそのような行為はお慎み下さるようお願いいたします。
    ※(著作権を故意に侵害した者は、一〇年以下の懲役または一〇〇〇万円以下の罰金に処せられます)

    『カエルの楽園』第二章
          4

     翌日、またもや平和な空気を切り裂くような悲鳴が轟きました。
     それは昨日と同じ南の崖から聞こえてきました。たくさんのカエルたちが南の崖に向かうと、崖のふちに一匹のウシガエルが仁王立ちしているのを目にしました。
     ツチガエルたちは間近に見る巨大で醜悪なウシガエルの姿に悲鳴を上げ、後ずさりました。ソクラテスもまた、その恐ろしい姿にふるえあがりました。
     ウシガエルは無表情のままツチガエルたちをなめるように見つめています。
     南の崖のふちにウシガエルが立っているという信じられない光景を目の前にして、ツチガエルたちはどうしていいかわからないようです。その中にはデイブレイクもいましたが、彼もただ全身をガタガタとふるわせているだけでした。
     ウシガエルもツチガエルも動かないまま、恐ろしい緊張に満ちた時間だけが刻々と過ぎていきました。ウシガエルの吐く臭い息がツチガエルたちにも匂ってきます。
     そのとき、「ハンニバルが来たぞ!」と言う声が聞こえました。 
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第八回

    2015-11-20 07:00  
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    ※(著作権を故意に侵害した者は、一〇年以下の懲役または一〇〇〇万円以下の罰金に処せられます)

    『カエルの楽園』第二章
          2
    「ところで、ウシガエルを見たというツチガエルは本当に勘違いだったんだろうか」

     ソクラテスは言いました。
    「デイブレイクはそう言っていた」
    「でも、あの怯えようは、単なる勘違いだとも思えない」
    「たしかにガタガタ震えていたな。だとすると、真相はどうなんだろう」
    「鍵を握っているのはハンニバルだよ」
     ソクラテスの言葉にロベルトもうなずきました。
    「ハンニバルに話を聞いてみよう」
    「でも、ローラはハンニバルに近づくなと言
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第七回

    2015-11-13 07:00  
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    『カエルの楽園』第二章
          1
     

     ソクラテスとロベルトがナパージュにやってきて数日が過ぎました。
     その間、ナパージュには何ひとつ事件のようなものは起こりませんでした。毎日がのどかで平和な日々でした。
     ソクラテスとロベルトは、別世界にきたような気がしていました。ここに来るまでの過酷な旅を思うと、ナパージュはまさに夢のような楽園です。
     池がいくつもあり、水は美味しく、草木が豊かで、食べ物となる虫はいたるところにいました。何よりもカエルたちをおび
  • ブロマガ配信小説『カエルの楽園』第六回

    2015-11-06 07:00  
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    『カエルの楽園』
          7
     

     「三戒」を作ったのはスチームボートだったというのは衝撃的な事実でした。
     でもそれ以上にソクラテスたちを驚かせたのは、「三戒」の中にある「カエルを信じろ」も「カエルと争うな」も、もともとは「スチームボートを信じろ」「スチームボートと争うな」というものだったことです。長い年月の間に「スチームボート」がいつのまにか「カエル」に変わっていたのです。
     ただ、ナパージュの国が平和でいられるのは「三戒」のお蔭なのか、それともスチ