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インプラントって大丈夫? 【歯や歯医者さん基本のき Vol.5】
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インプラントって大丈夫? 【歯や歯医者さん基本のき Vol.5】

2018-08-06 23:00
    歯や歯医者さんにまつわる疑問に答える、「歯や歯医者さん基本のき」。Vol.5のテーマは、自分の歯に替えて、人工的な歯を埋め込むインプラントについての質問です。引き続き医療法人メディスタイル理事長で、歯科医師の徳永淳二先生にお聞きします。

    Q.インプラントとは何ですか?

    歯のインプラントは「デンタルインプラント」と呼ばれます。歯槽骨に埋め込む金属でできた歯の根っこ、「歯根(しこん)」の部分を言うものです。似たようなものでは、人工関節インプラントもあります。

    歯のインプラントは、天然の歯と同じような感覚でかむことができますが、厳密に言いますとちょっと違います。それは、天然の歯は歯の周りに歯根膜という膜があるのに対して、インプラントは膜がなくダイレクトに歯槽骨につながっているところ。天然の歯はショックを吸収するのですが、インプラントはそれがないのでやや感覚は違ってきます。感覚には個人差が大きいですが、最初違和感がある方でも時間とともに慣れてくることが多いと思います。数本であれば、どこがインプラントだっけという感じになることが多いです。

    Q.インプラントはどういう場合に受けるといいのでしょうか。

    歯を失ったときに、失った歯を補う場合に受けるといいと思います。ただ、インプラントを長持ちさせる上で大事なのは、歯がどうして抜かなければならなかったかです。例えば、歯周病で歯を失った場合についてお話ししますと、インプラントがだめになる原因の第1位はインプラントの歯周病なのです。インプラント周囲炎と言います。歯周病で歯を失ったのに、歯周病の治療をしないままインプラントを入れるのは危険なのです。歯周病で歯を失ったのにもかかわらず、歯周病の治療をせずにインプラントを入れたならば、数年でインプラントの部分が歯周病のように腫れてくるなどの問題を起こしやすいのです。

    また、インプラントは骨に支えられています。歯周病で歯を抜かなければならなかった時は、歯槽骨も失われていますので、インプラントの難易度も上がるのです。ひとくちにインプラント治療といっても、難易度はさまざまですので、リスクなどの説明をよく聞いてから判断すると良いと思います。

    虫歯で歯がだめになったときには、ほかの歯の虫歯やかみ合わせを確認しながら行うとよいでしょう。むし歯で大きな穴が開いていたりすると、隣の歯が傾いたり、反対側の歯が出てきてしまっていたりと周囲の歯が動いてしまっている可能性が高いです。歯が動いていれば、元にもどす歯列矯正治療も必要になることもあります。インプラントは口の機能全体を考えることが重要なのです。インプラントの歯の咬み合わせは天然歯より難しいです。歯の一本ではなく、あごの動き、かみ合わせ、飲み込む力、健康度を総合的に考えていかなければなりません。そのうえでインプラントを受けるといいと思います。

    Q.インプラント以外にはどういう選択肢があるのですか。

    歯を失った場合の治療としては、インプラントのほかにも、入れ歯やブリッジといった治療があります。メリットとデメリットはさまざまで、失った歯の本数にもよりますが、入れ歯は入れてからかんだときの感覚に違いがあります。やわらかい歯茎の上にのせた状態だからです。かんだときの沈み込みがどうしてもありますし、基本的には食事のたびに洗わなければなりません。ブリッジでも一本の歯を2本で支える形になるので、残りの歯に負担がどうしてもかかります。歯根が割れてしまうトラブルにつながる場合もあります。入れ歯の場合でも、残りの歯にひっかけますので、残りの歯に余分な負担をかけてしまいます。そうした条件を考えたとき、最近では、多くの場合、インプラントが第一選択になっています。糖尿病や骨粗鬆症といった全身状態もインプラント治療のリスクになりますので、よく相談すると良いでしょう。

    Q.歯医者さんからインプラントの説明を受ける時に気をつけることは?

    歯医者さんは確かにさまざまなある治療からの選択肢を提示してくれる方が良いですね。気をつけることとしては、メリットばかりではなく、デメリットについてもきちんと説明してくれることはいいと考えています。

    お伝えしましたように、かみ合わせや歯を失った原因を含めて個人差が大きいですので一般的な話だけでなくて、あなたに合った治療を総合的に考えてくれる歯医者さんがよいと思います。たとえインプラントを入れるのが1本や2本であっても、全体のかみ合わせや全身の健康などを説明を受けた上で治療計画をしてくれるところがいいと思います。

    インプラントは良い治療だと思いますが、個人差があって合う、合わないという面はありますから、よく説明を受けていただくことは大切だと思います。その上で、ご自身がどこまで求めるのかということを考えながら担当医と一緒にゴールを決めると良いでしょう。

    Q.インプラントは何でできているのですか?

    インプラントは、チタンでできています。骨折したときに使われて、身体の中に入れる金属のプレートやボルトもチタンからできています。過去に医学研究でチタンと細胞との結合が強いとわかって以来、1965年にスウェーデンで初めてのインプラント治療が行われ、1982年に世界的に認められる治療として確立されました。チタンは、身体にとって違和感のない金属として実用化されてきたのです。

    なるべく純度の高いチタンを使うのがよいと思います。例えば、研究実績が多いスウェーデンやスイスの有名メーカーの製品は、製造工程や輸送も管理されており安心して使えると思います。慎重に判断していただくとよいと思います。

    Q.インプラントを受ける歯医者を選ぶポイントは?

    CT検査の装置がある医療機関で受けることがよいと思います。骨の形態は個人差が大きく分かりにくいので、インプラントがきちんと埋め込むことができるかを3次元でシュミレーションして確認できるからです。また、インプラントの成功にとって歯周病の治療は重要ですので、歯周病の治療にも真剣に取り組んでいるところで行うことは大切だと思います。年齢が高くなってくると歯周病リスクが上がりますし、歯がすり減ったり動いたりして咬み合わせも変わってきます。インプラントを良好に維持するためには長期間のフォローアップが大切です。末永く付き合えるところがいいと思います。

    Q.インプラントの方法にはいろいろある?

    インプラントは人によってやり方が異なり、方法もさまざまです。歯を埋め込む歯槽骨の骨を増やしてから行うような方法もあります。最近のトピックとしては、歯を抜いてすぐにインプラントを埋め込める方法が確立してきたということです。昔はインプラントを行う前に歯を抜いて、傷が十分に治ってからインプラントを埋めるという方法がとられてきました。最近では、歯を抜くのと同時にインプラントを埋めた方が、骨が多く残る場合があると考えられるようになってきています。そうした手術方法が注目されてきたのです。また、歯を抜いてインプラントを入れるのと同時に、仮歯まで入れる方法も良好な結果が出てきています。歯の抜けた期間がなくなり、歯のそろった状態でいられるので患者さんにとってメリットになると思います。

    インプラントを埋める前に、骨の量を増やさなくてはならない時、親知らずの場所などから自分の骨を取って使う方法(自家骨移植)と、ベータTCPなど人工骨を使う方法(人工骨移植)があります。自家骨とは違い、人工骨はブタやウシ、ヒトなど様々な原料からできている場合があり、治療後のリスクや状態も変わってくると思います。さらに、人工または自己血液由来の成長因子を使うこともありますので、歯医者さんによく説明を受けて納得した上で、骨再生治療を行うとよいと思います。方法によっては、厚生労働省の認可が必要な場合もあります。

    Q.インプラントを行うとどのようなメリットがあるのですか。

    インプラントのメリットは、かみ合わせが安定することです。入れ歯やブリッジとは異なり、強くかむことができます。ほかの方法と比べると、より確実に人工の歯を固定できて、安定させることができること。くいしばったときに違和感が少なく、昔あった天然の歯と近い感覚になると思います。また、入れ歯の下に支えとしてインプラントを使う場合、インプラントは入れ歯を安定させますので、咬む力が強くなります。総入れ歯をインプラントで支えると、お茶やお水を飲んでも総入れ歯は動きません。より快適に食生活を送ることが出来るようになるでしょう。

    Q.インプラントを行える人の条件はありますか。

    歯周病ならば先に治療する必要があります。歯周病治療が良好に終わっても、歯槽骨の骨が少なくなっていてインプラント治療が難しい人がいます。しかし最近では、骨を再生することがほとんどの場合にはできます。全身の健康度なども気にすることが大切です。手術前に血液検査などで、全身の健康状態を把握してから行います。糖尿病や骨粗鬆症といった全身状態もインプラント治療のリスクになりますので、その場合は内科医師と歯科医師が連携して判断すると良いでしょう。事前の検査を十分に行って、安全に手術ができることを確認しながら治療計画を立てることが大事です。

    Q.逆にインプラントのデメリットは?

    インプラントについては、消耗品であると考えることが大切だと思います。永久に保たれるものではなく、トラブルを起こす可能性はあるのです。ですから、定期的に検診をする必要があります。例えば、歯周病になると、インプラントはだめになる可能性があります。また、高齢になったときに、認知症や介護状態でフォローアップが難しくなることがあります。天然の歯よりも丈夫であるために、唇や舌をかんでしまうようなトラブルを起こすことがあったり、菌がつきやすくなったりすることがあるのです。多くの人に、認知症や介護状態になるリスクがありますが、予想はできません。実際の介護の現場では、インプラントを経験している人が増えてきています。対策が議論されているところです。

    Q.インプラントの治療はどれくらい期間がかかりますか。来院に必要な回数は?

    インプラントは、骨を再生する必要があったりなかったりして、人により治療期間はさまざまです。全身の健康状態によっても変わります。治療期間は短くて2カ月、長くて6カ月くらいになります。担当の歯医者さんと一緒に治療方法や必要な期間を文書で確認することが大切だと思います。来院の回数も人それぞれ。検査を受けて、検査結果の説明を受けて、手術についての同意書作成し、事前準備として他の歯科治療をするなどします。虫歯や歯周病の治療、歯列矯正治療などを行う必要があればその分、来院して治療を受ける必要があります。手術を受けてからは次の日くらいに結果を確認して、1週間後に糸を取ります。その後、仮歯を調整するなど人によって来院していただくことになります。最低でも7~8回のフォローアップが必要だと思います。そのように手術の後も含めて歯医者さんと付き合っていくと考えた方がいいでしょう。

    Q.インプラントの治療には腫れや痛みがありますか。

    手術の際には、腫れや痛みのほか、怖くないかを気にする人が多いですが、手術の際には局所麻酔を行いますから、痛みを感じることはありません。セデーションと呼ばれる眠る麻酔を使うこともあります。これは比較的安全な全身麻酔で、胃カメラの時に使われることも多い全身麻酔です。目覚めた時に、「あれ?もう終わったのですか?」となると気分が楽ですよね。手術について骨の再生が必要なければ、腫れや痛みは少なくなると思います。骨の再生が伴うと、手術後の腫れや痛みが出やすくなると考えるといいと思います。

    Q.インプラントにかかる費用は?

    インプラントは自費治療になります。かかる治療費は、医院によって変わってきます。手術する歯の本数、骨の再生治療、使う材料などの条件により治療費用は大きく変わってきます。例えば、インプラントと歯の間に入れる「アバットメント」と呼ばれる材料はジルコニアと呼ばれる素材で作られる白いものもあり、歯肉がきれいに見えますが、費用は増えてきます。

    いずれにしても高額な治療費になると思いますので、選択肢がいくつかある時は、治療費と得られる効果を考えながら選びたいですよね。歯医者さんで手術についての同意書を作成するときに、治療方法や治療費の説明が書いてあると思いますので、よく確認してみて下さい。

    Q.インプラントを受けた後の生活で気をつけることは?完了後の歯医者さんはどうすれば?

    インプラントの治療を受けた後は、歯は安定しますから、普段通りの生活を送ることができます。食事に支障もありません。より快適に美味しくいただけるようになっていることでしょう。インプラントを受けた方は、定期的に歯医者さんに受診するようにしていただくと良いです。インプラントをしても消耗品と考えて、メンテナンスしていくことが大切です。

    日本歯周病学会では、インプラント治療後3年以上で、インプラント周囲炎になった人は9.7%と報告されています。海外の研究結果をみても、10%前後はインプラント周囲炎を発症していると推測されます。その一方で、10年以上維持している人はフォローアップをきちんと行っている人が多いようです。治療方法によっても左右されますし、全身の健康状態によっても維持される期間は異なってきますが、専門的なフォローアップを受けることは非常に効果的だと判断できます。インプラント治療を行うならば、お口の中全体と全身の健康状態も含めて、末永くメンテナンスを行うと心に決めてから行うと良いと思います。

    編集/STELLA MEDIX Ltd.

    徳永淳二(とくなが・じゅんじ)先生
    歯科医師。医療法人メディスタイル理事長。 「美しく健康な生活を医学の力でサポートします」のコンセプトの下で、美容皮膚科と形成外科、歯科の診療を同じクリニックで提供。東京医科歯科大学を卒業後、勤務医などを経て、スウェーデンのイエテボリ大学にてDr.ウィドマークに師事し、神奈川県逗子市にて開業。逗子メディスタイルクリニック

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