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止まらない食欲、見なりを気にしなくなる…。日常に現れる「ストレスサイン」を見逃さないで
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止まらない食欲、見なりを気にしなくなる…。日常に現れる「ストレスサイン」を見逃さないで

2021-08-10 18:00

    ストレスに気づいて、自分で対処できるようになりたい

    Q. 最近、異常なほど甘いものが食べたくて……。これは何かのストレスでしょうか。また、自分のストレスのサインに気づけるようになるにはどうすればいいでしょうか。

    A:甘いものを過度に欲する状態は、ストレスのサインのひとつかもしれません。

    ストレスを感じると、心と体と行動にサインが出るといわれています。甘いものを異常に食べたくなる理由やそのほかのストレスサイン、対処法もあわせてご紹介します。

    ストレスで甘いものを食べたくなる理由

    甘いものにはストレスを緩和する2つの作用があります。

    1つ目は神経伝達物質セロトニンによる精神安定作用です。甘いものに含まれる糖分は血糖値を高め、必須アミノ酸のトリプトファンのセロトニンへの合成を促進します。セロトニンは不安や緊張を和らげ、精神を安定した状態へと導きます。

    2つ目は神経伝達物質エンドルフィンによる多幸感です。糖質の有無に関わらず「甘さ」を感じると、脳内にエンドルフィンが分泌されます。エンドルフィンは多幸感をもたらし、不安や苦痛を軽減してくれます。

    つまり「甘いものが食べたくて仕方ない!」という衝動は、「甘いものでとにかくストレスを軽減したい!」という心や体からのサインである可能性があります(※)。

    ※参考: 磯本知江・黒木由布子・小林愛吏・藤村美希・松岡晶子・島田和子・吉村耕一(2014)糖や甘味が精神的ストレス応答に及ぼす影響 独立行政法人農畜産業振興機構

    身に覚えはない? 日常に現れるストレスのサイン

    このほかにも心・体・行動に現れるストレスのサインをリストアップしてみました。

    心のサイン

    □気分が落ち込む
    □イライラする
    □やる気が出ない
    □好きだったことも面白くない
    □集中力が続かない

    体のサイン

    □眠れない/寝過ぎてしまう
    □食欲がない/食べ過ぎてしまう
    □頭痛・肩こり・腰痛などの痛みを感じる
    □下痢や便秘になる
    □疲れやすい

    行動のサイン

    □お酒や煙草の量が増えた
    □仕事や家事のミスが増えた
    □遅刻・欠勤が増えた
    □ずっと家にこもりきりになっている
    □身だしなみがいい加減になった

    ストレスを感じたときに講じたいセルフケア「コーピング」

    ストレスの対処法(=コーピング)には、大きく分けて「問題焦点型コーピング」と「情動焦点型コーピング」があります。

    問題焦点型コーピング

    ストレスの原因そのものを解消する方法です。例えば、「抱えている仕事が多すぎる」という場合には、同僚に仕事を分担してもらう、上司に相談する……といった方法が解決策に挙げられます。 ストレスを根本から解消できるコーピングですが、問題解決までには時間や労力が必要となり、身体的・精神的な負担が蓄積されてしまうことも。次にご紹介する「情動焦点型コーピング」を活用しながら、無理のないペースで問題焦点型コーピングに取り組むと良いでしょう。

    情動焦点型コーピング

    「つらい」「しんどい」などのネガティブな気持ちを解消したり和らげたりする方法です。例えば、お酒を飲む、カラオケに行く、温泉でリラックスする……などの対処法を指します。 一時的にラクにはなれるものの、ストレスの原因はそのままなので、再びストレスを抱える可能性があります。しかし、ストレスが小さなうちに対処できれば、心や体への負担は軽減されます。気持ちがラクになる方法をいろいろと試して、自分に合ったものを見つけておくとストレスを感じたときにすぐ対処できます。

    コーピングを使うときの注意点

    ストレスを完璧に解消する特効薬はありません。そのため、ひとつの方法にこだわらず、「これはうまくいかなかったから次の方法を試してみよう」とさまざまな手が打てるように準備しておくことが大事です。

    まずは思いつくものをどんどんリストアップしてみましょう。自分がこれまで使ってきた方法でもいいですし、家族や友人などが実践しているコーピングを参考にしても構いません。

    そして、そのなかから次の4点を満たしたものを選んでいくと、いざというとき、本当に使えるコーピングを見つけられるはずです。

    1. 自分の不快感が解消できるか
    2. 他者に不快感を与えないか
    3. コーピングによって別の問題が発生しないか
    4. 実際に実行できる内容か

    例えば、「上司が口うるさい」というストレス下での「甘いものを食べる」という情動焦点型コーピングを上の1~4に照らし合わせてみます。

    1. 自分の不快感が解消できるか
     ⇒「〇」…自分の気持ちはスッキリします。
    2. 他者に不快感を与えないか
     ⇒ 「〇」…他者に不快感を与える心配もありません。
    3. コーピングによって別の問題が発生しないか
     ⇒ 「×」…体にはあまり良くないかもしれません。
    4. 実際に実行できる内容か
     ⇒ 「〇」…コンビニで大好きなスイーツを買えばすぐに実行できます。

    3以外の項目は満たすことができました。甘いものを大量に食べ続けていると体の調子を崩す恐れがありますが、短期的なストレス対策としては効果が期待できる方法といえます。これとは別に長期的にストレスを軽減する対策を見つけておくと、さらにストレスに対処する力を高められるでしょう。

    ストレスのサインを見つけるときにも、コーピングを探すときにも「自分」を見つめる視点は欠かせません。自分の心や体とじっくり向き合う良い機会と考え、楽しみながらストレスに対処してみてくださいね。

    佐藤セイ(さとう・せい)
    臨床心理士、公認心理師。精神科・心療内科、神経内科(もの忘れ外来)、リハビリテーション科、児童相談所、療育施設、刑務所などに勤務。現在はスクールカウンセラーをしながら、ライターとしても活動する。

    image via Shutterstock

    RSSブログ情報:https://www.mylohas.net/2021/08/q-and-a_07.html
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