きらきらまばゆい夏の光の中にうつし出されるのどかな風景。私も数年前に、東京駅発の夜行列車「サンライズ出雲」に乗って、出雲~松江を旅したときのことを思い出しました。
縁結びれ知られる出雲大社とともに、出雲~松江のいくつかの窯元や、日本三大菓子処に数えられる松江の老舗のお菓子屋さんを巡る旅。
まず、はじめに向かったのは「出雲民藝館」。大きな農家を改装した家屋には出雲地方を含む山陰の染物・織物・器や暮らしの道具が、元木材蔵には農具や民具など仕事の道具が並んでいます。
木材蔵を改装した展示室には農具など仕事の道具が並び、蔵の外では椅子に腰掛けひと休みできます。
「出雲民藝館」に掲げられていた言葉「民芸品の性質」。
「民衆的なもの、実用的なもの、数多く作られるもの、安価を旨とするもの、健康なもの、簡素なもの、協力的なもの、伝統に立つもの」、民芸品の性質を伝える言葉に、本来日本の大衆の暮らしに根付く力強さに感じ入り、日常の生活を見つめ直すきっかけとなりました。
続いて、物資も食料も不足していた戦後まもない昭和22年、地元の青年5人が「なにもないところからなにかできないか」とたちあげた「出西窯」へ。同じ島根県出身の河井寛次郎や多くの技術者たちから指導を受け、自分たちのカラーを確立していったそう。
予約などせずとも自由に見学ができる「出西窯」。
ものが生まれる現場を目にすることで、よりものへの愛着がわいてきます。
窯入れされる前の素地が工房の外で、水分をのぞくため天日に干されていました。
なんとも美しい光景。
出西窯の販売所。平皿、深皿、碗、カップ、土瓶、煎茶器セット、
ピッチャーなどざまざまな器が日本家屋の中にぎっしり。珍しいところでは「饅頭蒸し器」なるものもあります。
中でも深く美しい瑠璃色は「出西ブルー」と呼ばれ、とりわけ支持を集めています。斐伊川がすぐ近くに流れる田園風景の中、見学が自由にできる日本家屋の工房で実用的で美しい器が生み出され、隣接する2階建ての販売所にずらりと並ぶ様は圧巻。販売所では、自分の好きなコーヒーカップでコーヒーが飲めるサービスもあって、これからの暮らしに寄り添う器を吟味することができます。
「出雲民藝館」で求めた小さな器たち。今では毎日の食卓にかかせないほど大活躍。
「これから出西窯へ向かいます」と書かれていた友人からの便り。どんな器を持ち帰ったか、彼女の家に遊びに行ったとき、見せてもらうのが楽しみです。
(甲斐みのり)