日々、生活を送っているとどうしても発生してしまう"ゴミ"。どんなに気をつけて生活していても、ゴミは出てしまいます。
しかし、そのゴミがどうやって処分されているか、なかなか考える機会は少ないもの。そんななか、一本の映画が私にゴミについて考えるきっかけをくれました。ファティ・アキン監督のトルコ北東部のトラブゾン地域のゴミ処理場を巡る騒動を5年にわたって追い続けたドキュメンタリー映画『トラブゾン狂騒曲~小さな村の大きなゴミ騒動~』です。
舞台は、トルコ、トラブゾン地域チャンブルヌ村で銅鉱山の跡地に作られたゴミ処理場。ずさんな計画のもとに作られたゴミ処理場は、ひどい悪臭を放ち、村の人びとの生活を圧迫します。
そのうえ、"想定外"の大量の雨により、ゴミ処理場からあふれ出した汚水がチャンブルヌ村の中心地まで流れ下り、村の土地や川、海を汚染していくのです。人びとはその悪環境に耐えかねて移住する人が続出し、村の人口は3,500人から1,200人にまで減ってしまいます。
一方で、ゴミ処理場に反対し、抵抗運動を続ける村人も多く存在します。村の人びとのことを思い、ゴミ処理場に反対したフセイン・アリオグル市長は「国家の利益を損ねている」として告訴されたりも。そんな状況でも、故郷を愛する人びとは、毅然と戦い続けているのです。
無自覚にものを捨て続ける現代生活が、ある地方の環境を汚し、そこに暮らす人びとの生活を圧迫するというのは、トルコだけで起こっていることではありません。
人びとの生活する以上、ゴミが出てしまうというのは仕方がないことで、ゴミ問題というのは一朝一夕に解決するものではありません。でも、こういったドキュメンタリー映画を観て、ゴミ問題が存在するということを意識し続けるのは、大事なこと。
この映画は、遠くの国で起こっている不運な出来事としてとらえるのではなく、いつ自分たちの故郷に起こってもおかしくないことだと考えながら観て欲しいドキュメンタリー作品でした。
『トラブゾン狂騒曲~小さな村の大きなゴミ騒動~』(98分/ドイツ/2012年)
原題:DER MULL IM GARTEN EDEN
公開:2013年8月17日
配給:ビターズ・エンド
劇場:シアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開
監督:ファティ・アキン
出演:チャンブルヌ村の人々
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(松村知恵美)