そんな考えをあらためてくれるのが「日日是好日」という言葉。
雨の日は、雨を聴く。雪の日は、雪を見る。夏には暑さを、冬には、身の切れるような寒さを味わう。......どんな日も、その日を思う存分味わう。(中略)
そうやって生きれば、人間はたとえ、まわりが「苦境」と呼ぶような事態に遭遇したとしても、その状況を楽しんで生きていけるかもしれないのだ。(「日日是好日「お茶」が教えてくれた15のしあわせ」P.213より引用)
雨が降らなければ飲み水もないし、作物も育たない。植物が元気に育って酸素を作り出すことも......。でも、そんなことを忘れて「不自由さ」ばかりをついつい考えてしまいがちな自分にハッとさせられました。
雨の音を聴いていると心が落ち着いてくるし、夜もぐっすり眠れる気がする。お気に入りのレインブーツを履くのも楽しい。「私って、雨も結構好きなんだなぁ」ということを思い出させてくれます。それに、雨が降るからこそ、晴れたときの清々しさが気持ちよく感じられるものです。春が待ち遠しいのも、冬がきちんと寒いからです。
不自由さの中にこそある本物の自由自由は外に求めるものとばかり思っていましたが、そんなふうに心持ち一つでいくらでも手にできるということも次第にわかってきます。
「雨の日は、雨を聴きなさい。心も体も、ここにいなさい。あなたの五感を使って、一心に味わいなさい。そうすればわかるはずだ。自由になる道は、いつでも今ここにある」
(「日日是好日「お茶」が教えてくれた15のしあわせ」P.213より)
雨は雨、お天気は変えられない。でも、自分の気持ちならいくらでも自由に変えられます。雨を憂うつに思うのも自由ですが、楽しいものと思うのも自由ということです。雨の日には雨の音を聴いて、晴れている日なら空を眺めて......、そんな感覚が自分にある、ということを忘れないことが本物の自由を手にする秘訣なのかもしれません。
過去を悔やんだり、未来を思い煩うこともあるけれど、今日がいい日と毎日思えたら、未来の自分も、未来の自分が振り返ったときに見る過去の自分も笑顔でいられるのではと思います。
「日日是好日「お茶」が教えてくれた15のしあわせ」
著者:森下典子
出版社:新潮文庫
価格:546円
photo by Thinkstock/Getty Images
(杉本真奈美)