ハワイには、珍しい緑色の砂のビーチがあります。
ハワイ島南端「カ・ラエ(サウスポイント)」から約3km、崖の下に広がる小さなビーチが「グリーン・サンド・ビーチ」です。砂の色は、ほんとうに緑色! 緑といっても渋めの色で、よくオリーブグリーンと表現されています。
このビーチの砂が緑色なのは、約4,900年前の火山の噴火で流れたマグマに、緑色のかんらん石(ぺリドット)が多く含まれていたためです。マグマが固まってできた岩山が、波の力で少しずつ侵食され、奇跡的に緑色の砂浜が形成されたのです。
世にも珍しいグリーン・サンド・ビーチへのアクセスは、ちょっと大変。サウスポイントから、道なき道を1時間ほど歩かなくてはなりません。広大な草原に走る無数のわだちがガイドラインになります。さえぎる物がなにもないので、海岸線を見失う心配はないけれど、日差しと風は強烈。日焼け止めと帽子、水は必須です。
どこまでも続く草原と、青い海。広い景色の中で、聞こえてくるのは風と鳥のさえずりだけ。日常の悩みが、なんだかやけに小さく感じます。太陽にジリジリ照らされて、疲れた頃に突然目の前に現れる巨大な岩。そのはるか下に、ぽかりと開けた緑のビーチ。まぶしい日差しをキラキラと反射する緑の砂に、寄せては返す波の音。神秘的な景色に、時がたつのを忘れてしまいます。
このエリアはポリネシアの人々が最初にハワイに上陸したところだと考えられており、ハワイアンにとっては神聖な場所のひとつです。車で送迎してくれるガイドさんもいますが、聖地に4WDで乗り込むのは気が引けます。自分の足で、歩いてたどり着く価値がある、特別な場所なのです。
残念なことに「グリーン・サンド・ビーチは立ち入り禁止になる」というウワサが近ごろ流れています。観光客が増えてしまい、砂の侵食が進んでいるのだとか。緑の砂浜を見るには、今が最後のチャンスかもしれません。
ちなみに、ビーチの砂を持ち帰ることは法律で禁止されおり、違反者には500ドルの罰金が課されます。
(相原光)