• このエントリーをはてなブックマークに追加
立ち止まった人生を再び動かすのは、「出会い」という力
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

立ち止まった人生を再び動かすのは、「出会い」という力

2014-03-28 12:30

    自分はいまどうしてここにいるのか。どうやって次に動いたらいいのか。人生に立ち止まって動けなくなってしまう経験は、誰にでも起こりうること。アイルランドのダブリンを舞台にした小さな映画が、そんな気持ちに沈んだとき、背中を押してくれるかもしれません。

    壊れた時計を直すことで、再び動き出した人生

    主人公は、ロンドンで時計職人の仕事を失い、故郷ダブリンに戻ってきた初老の男性フレッド。家も職も失い、車上生活を送ることになる彼がたどり着いたのは、海辺の駐車場。そこで "隣人"としてあらわれた麻薬中毒に苦しむ青年カハルや、街の水泳教室に通う、夫を亡くしたフィンランド人の女性と出会うことで、次第に新しい自分を発見していく、というストーリー。

    ホームレスとなってしまった現実を前に、かたくななくらい規則正しい生活を送るフレッド。朝起きるとまず音楽をかけ、身なりを整えて、小さな鉢植えに水をやる。できる範囲で丁寧に暮らすようすから、彼の真面目な性格と、これ以上落ちたくないと必死に自分を奮い立たせている気持ちがうかがえます。

    登場人物たちはみな、いまの状況から動き出したいと思いながら、どうしていいかわからずに立ち止まっている、いわば壊れてしまった時計のような状態。実際にフレッドが壊れた時計を直すシーンを盛り込みながら、それぞれの人生が再び動き出すようすを描いています。

    世代も生き方もまったく違う3人

    それぞれの過去や背景については、あえて詳しく描いていないのが特徴的。世代もこれまでの生き方もまったく違う3人が「悲しみ」という部分で共鳴して出会った、ということにフォーカスしていることで、観客は余計な情報なしに、彼らの気持ちに寄り添えるような気がしました。ちらりとだけ会話に登場するフレッドの過去など、ちょっと謎めいて気になりましたが、現実に人と知り合うときの手探りな感じが、かえってリアルに思えました。

    監督はドキュメンタリー映画出身、ということで、イギリス、アイルランドでも深刻な若者の問題や失業の問題をテーマに含んでいます。そんな背景からも、決しておとぎ話にはなっていないのですが、これでよかったのかも、と思える終わり方でした。

    女性と出会うことになる街のプール、山の上から見下ろす夜のダブリンの街、浜辺を歩くシーンなど、ところどころに登場するハッとするような美しい映像も印象的です。

    [ダブリンの時計職人]

    監督:ダラ・バーン

    出演:コルム・ミーニー、コリン・モーガン、ミルカ・アフロス

    原題:Parked

    3月29日(土)より新宿K's Cinema 、渋谷アップリンク他全国順次公開

     

    RSSブログ情報:http://www.mylohas.net/2014/03/037083dublin.html
    コメントを書く
    コメントをするにはログインして下さい。