イギリスで2008年から放送されている「スーパー・サイズ(肥満)対スーパー・スキニー(超低体重)」。この番組はウィキペディアにも取り上げられるほど話題となっているもの。食事や病気に関して、人々が大きな関心を寄せていることの証だと言えます。
この番組では肥満の人と痩せすぎの人という、超両極端のふたりが登場します。医師の管理のもと、食事管理栄養センターにて5日間(現在の番組では2日間のみ)生活をともにしながら、食事内容を「交換」するというもの。
肥満の人は痩せすぎの人のふだん口にするものを食べ、痩せすぎの人は肥満の人の食事内容をそのままそっくり口にするというルールになっているのです(後のシリーズでは肥満の人はアメリカに渡り、自分よりもさらに大型の人の食事を口にすることに。もしも自分が食生活を自分の意志で改善しない限り、肥満が進行してしまうことを学ぶ、という形式になっています)。
自分の健康を考え、自分自身をいたわる気持ちに肥満の人はあまりの量の少なさに、常に空腹。いっぽう、痩せすぎの人は、突然増えたあまりの量の多さに目もくらみ、すべてを平らげることなどできません。このプロセスを経ることで、ふたりは自分たちがふだん口にする食事の量・食べ方、そして内容そのものに大きな違和感を覚えはじめ、歪んだ食事内容が今の自分を作っているのだと実感します。
この番組で最もフォーカスされるのは、ふたりだけが分かり合える「傷」のようなもの。両極端の状況でも、「健康的な食事では満足できていない」という問題を抱える点では同じ。相手の身になって考えるうち、どうしてそのようなものを食べるのか、あるいはどうしてその量なのか。またどうしてそのような体型に至ったのか。お互いの環境を含めた身の上話、悩みなどを話したり聞くうちに、お互いに優しくなり、自分自身にも徐々に優しくなっていきます。自分の健康というものを本気で考え始め、ときにはふがいなさに涙も流す。心境の変化が手にとって見れるのです。
ふだんあまり意識しないことですが、食事というものが人を幸せにし、人を不幸にもするのだという事実に気づかされる番組です。目に見える「体型」の後ろに、それぞれが事情を抱えているということにも。ダイエットのことばかり考えず、自分にも時に寛容であること。そうすることで、他人に対しても寛容であり続けることができるのではないかと思います。
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