そんなとき、ほんの10分寄り添うだけで子どもがおとなしくなる方法として、マインドフルネスが注目され始めています。
子ども向けマインドフルネス
マインドフルネスは、大人向けに始まった瞑想の方法で、「今、この瞬間の五感」に集中することで、心を無にすることを目的としています。
大人だと若干修練が必要なマインドフルネスですが、子どもにとっては、今この瞬間に注意を向けることはむしろ自然なことです。そのため、アングロサクソン系の国やベルギー、オランダでは、しばらく前から、子ども向けのマインドフルネスも試されています。
とくに、オランダ人テラピスト、Eline Snel(エリーヌ・スネル)氏の書いた子ども向け瞑想の本(2008)は大きな反響を呼び、2012年にDVD付きフランス語版『Calme et attentif comme une grenouille(カエルのように大人しく注意深く)』も出版されました。
(この本では、)家の中でできるリラクゼーションや観察が数多く紹介されていて、エクササイズにより、子供は落ち着きを取り戻し、両親と信頼関係を結べるようになります。
( Le Parisienより翻訳引用)
いずれのエクササイズも
呼吸と五感に集中することで、絶え間なく押し寄せる思考から自分自身を解放する(中略)、一日10分続けることが推奨されています。
(Le Parisienより翻訳引用)
集中力アップで成績も向上
オランダではすでに1500人の子どもたちが学校でマインドフルネスを経験。ベルギーのブリュッセルとワロン地方の学校27校でも、取り入れられています。
経験した教師は、下のような感想を述べています。
クラスはより落ち着いた雰囲気となり、子供たちの集中力もアップしました。また他者に対してより広い理解力を示すようになり、自信をつけたように見えます。小さな子のクラスでは、衝動的な行動や喧嘩が減りました。ストレスと不安が減るためか、精神的に寛ぎ、寝つきも改善されました。
(Le Parisienより翻訳引用)
「Harvard Medical School」が2000年1月発表した研究によれば、生徒の成績向上効果も認められています。
2012年『Journal of Child and Family Studies(子供と家族の研究ジャーナル)』に掲載されたベルギーの研究は、8週間のメディテーションエクササイズで、ハイパーアクティヴィティの問題を持つ子どもの集中力が改善されたと発表しています。
遅ればせながら、フランスでも、AME(教育におけるメディテーション協会)の協力を得て、2014年9月から、いくつかの学校で試験的な導入が始まりました。
まだまだマイナーな動きではありますが、AMEによれば、教師からのフィードバックは肯定的なもので、要望も徐々に増えているそうです。
どんな風にアプローチするの?
上記の本『カエルのように大人しく注意深く』を書いたEline Snel(エリーヌ・スネル)による動画の一部は、Youtubeで見ることができます。
小さな子供向け
小さな子向けの4分くらいの動画では、「カエルみたいに静かに気持ちよくなろう」と呼びかける声に合わせて、身体の力を抜いていきます。そして、すっかりリラックスした身体も、呼吸で動く場所があるのに気が付かせます。
自分の呼吸をしばらく聞かせたあと、その静かな呼吸が、疲れたとき、どこか痛いとき、腹の立ったときに役立つというアドヴァイスが語られます。
短い時間ですが、カエルの話から始まる語りで、小さな子どもでも十分ついていける内容のように思いました。
7歳から12歳の子供向け
7~12歳の子供向け瞑想は、6分半ほどのものです。
サーサーと降る雨の音を、目を閉じて聞くという内容で、雨の音の強弱、リズムの変化、遠くで聞こえる雷の音などに注意を促します。
続いて、その同じ注意深さで、自分の身体のなかの「天気」がどうなっているのか、聞いてみようという内容になっています。
考えてみれば、ゲームやテレビなどの娯楽の少なかったころは、雨の日に家のなかで雨音に耳を傾けることも珍しくありませんでした。台風が近づく日などは、息をひそめるようにして、風と雨戸の鳴る音を聞いていたものです。
テレビやコンピュータ、タブレットの普及により、どんな刺激も視覚を伴うようになったこの頃は、目を閉じて耳を澄ませることが本当に少なくなったと、Youtubeの雨音を聞きながら思いました。
小さな子どもがいれば、家のなかや公園で、5分でいいから目を閉じて、何が聞こえるか集中してみよう! という遊び感覚の習慣を持つのも悪くないかもしれません。
12~17歳向けエクササイズと息子の感想
12~17歳の思春期向け動画は9分弱の長さ。身体をリラックスさせれば心もリラックスする、そうすればいろんなことがスムーズに運ぶという流れで、身体のリラックス方法が語られます。
その方法は、ひとつひとつの部位を強く緊張させてから弛緩させるというもの。たとえば、顔ならまず目と口をぎゅっと締め、それから一気に力を抜くのです。同じように手と腕、続いてお腹、脚、と緊張させてはリラックスさせていきます。
この動画を息子にも試させてみたら、その感想は、「こんなに自分の身体ががちがちだとは知らなかった」というもの。リラックスさせてみて、初めて普段の身体には随分力がこもっているんだと気づいたようです。
思春期にもなれば話は別ですが、小さな子どもの場合は、親が一緒になって、耳を澄ましたり、静かな何もしない時間を共有してやるだけで、ずっと落ち着きが変わってくるように思います。
いうなれば、親子の精神状態は鏡のようなもの。親がイライラしていれば、子どもも情緒不安定になり、子どもに落ち着きがなければ、親の集中力も落ちてしまいます。
だからこそ、親子で静かに内面に耳を澄ます時間を共有すれば、その恩恵は2倍になって返ってくるのではないかと思うのです。
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