グルテンは、小麦粉に含まれるたんぱく質が、水分と合わさってこねられることで生まれる成分です。このグルテンへのアレルギー反応が話題になったころから、グルテンフリーの食品が注目され始めたように思います。
そのため、グルテンフリーは体に良いとか、ダイエットになるという認識まで広まってきました。実際、2014年のアメリカ国立研究センターの消費者リサーチ『Le Parisien』によると、4分の3近いアメリカ人が、食卓からグルテンを追い出すことを検討しているといいます。
けれども、同誌が指摘するように、今の時点ではグルテンフリー食が健康に良いという説は、科学的には証明されていないのだそう。
グルテン消費量と糖尿病との関係それどころか、2017年3月9日アメリカ心臓病協会に発表されたハーバード大学の研究報告によれば、グルテンの摂取量が低い人ほど、2型糖尿病にかかるリスクが高いことが、判明したとのこと。
グルテン消費量の高い上位20%の被験者と、一日のグルテン消費量が4グラム以下の被験者を比べたところ、前者の方が、2型糖尿病にかかる率が13%低い
(「American Heart Association News」より翻訳引用)
※20万人近い参加者の、延べ30年に亘る観察データを分析したこの研究によれば、参加者のグルテン消費量は、ほぼ一日12グラム以内。その平均は一日5.8~7.1グラムでした。
グルテンは、小麦やライ麦に含まれますから、食品としては、パンのほか、パスタ、シリアル、ピザなどから体に取り込むことになります。グルテンの少ない食事とは、すなわちこれらの穀類が少ない食事のこと。そのため、グルテン消費量の低い被験者は、体に必要な食物繊維や、ビタミン、ミネラルなどの栄養素の摂取も少なく、研究者たちは、それがこの結果を説明できると考えています。
確かに、セリアック病(グルテンが原因となる病)患者やグルテンにアレルギーを持つ人は、グルテンフリーの食事をする必要があるでしょうが、そうでない限り現状では、ダイエット目的でグルテンを避けるメリットはなく、それどころか長期にわたるグルテンフリー食は、健康を損ねる可能性も......。
「過ぎたるは、及ばざるがごとし」と言いますが、「及ばざるは、過ぎたるがごとし」を証明したこの研究結果。健康な体は、何よりもまずバランスの取れた適量な食事から、という基本を思い出させてくれるようです。
[Le Parisien,American Heart Association]
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