最近フランスでは、時短重視の生活に適した、次世代型マルシェとも言える食品の販売ネットワークを利用する人が増えてきました。それは、「La Ruche qui dit Oui!」(ラ・ルシュ・キ・ディ・ウィ)と言う地産地消型の食品販売ネットワークです。2011年にフランス南西部・トゥールーズで販売を開始し、その後メディアの注目を集めてフランス全国に800以上(2016年1月現在)にものぼる販売拠点を設けました。この販売拠点のことを「Ruche=蜂の巣」と呼び、自分の家からいちばん近いRucheにネットから無料登録をすると、毎週新鮮な食材の買い物がスマートフォンからでもできるというものです。
「Ruche」はマルシェとどこが違う?各Rucheには決まった担当者がおり、その地域から200Km圏内の農家や肉屋、パン職人などが提供する食品を毎週インターネットにアップし、利用者が購入・決済できるようになっています。続いて各Rucheは毎週決まった時間、場所で購入者を受け入れ、事前に購入した商品を直接引き渡すことになります。この際、農家や肉屋も来場し、各々直接商品を引き渡すため、利用者にとっては作り手の顔が見られ、時には意見交換もできるという点が、マルシェと共通しています。
マルシェと異なる点は、ほとんど平日の夜にこのRucheが開かれるため、仕事帰りに寄る人が多いという点。また、事前にネットで買い物を済ませているため、ものの5分で新鮮な商品を全て手にすることができるという点です。こうして利用者は、休日の貴重な時間をマルシェで小一時間過ごさずに済むのです。
「Ruche」の顔に左右される品ぞろえや雰囲気私は今までに通勤に使用する駅の構内、職場近く、家の近く、と3つの「Ruche」を利用しましたが、季節ものの野菜という点では共通しているものの、どのRucheも売られる商品のバリエーションが異なります。それはRucheの取引先の農家などが全て異なるからです。どれだけ魅力のある食品や商品がそのRucheに集まっているかによって、利用者は使うRucheをお好みで変えることも可能なのです。また、それは各拠点の顔でもある担当者の力にかかってくるのです。
パリ3区の「GAITE LYRIQUE(ゲテ・リリック)」でRucheを担当しているLionelさんにお話を伺ったところ、Lionelさんの本職はモード関係の仕事で、Rucheは副業でやっているのだそう。仕事後の空いている時間を利用して、その週に販売する商品を探したり、Rucheの登録者からの質問に丁寧に回答したりしています。
「GAITE LYRIQUE」のオーナー(左)とLionelさん(真ん中)。日本のメディアだというと、事前に「ようこそ」と書いた紙を用意してくれたフレンドリーな人柄
こちらのRucheでは火曜日18時〜20時に受取時間を設けており、万が一商品を取りに来れない人がいたら、Lionelさんが自分の家に持ち帰って冷蔵庫などで保存し、購入者に引き渡してあげることもあるのだとか。私も一度、引き取り日の時間帯にどうしても外せない用事があり、地元のRuche担当者に連絡をしたところ、後日彼女の家まで引き取りにいくことになりました。これはあくまでも担当者の人柄によります。
今回訪れたパリ3区のRucheでは、会場の外に肉屋や花屋のトラックが止めてあり、会場内には野菜やオーガニックの石けん、豆腐、パンなどもありました。
オーガニックのパン屋さん。普段は自分のお店でパンを売っている
左から手づくりのお菓子、オーガニックの豆腐やパスタ、石けんが並ぶ
最近マルシェでは、フランス産でなかったり、新鮮とはいえない野菜が売られてるのも事実。その点Rucheに来れば、地元で取れた新鮮なものだけを取り扱っているという安心感があります。口に入れるものにこだわるフランス人が増えるなか、今後もRucheのパワーはますます拡大していきそうです。
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