歩きながらでもできる瞑想法
「メディテーションを始めたら、じっと座って心を空っぽにしなければ、とプレッシャーを感じてめげてしまう人も。実際そんなことはありませんが、そう思い込んで、あきらめてしまう人も多いんです」とニューヨークのヨガスタジオ216(Yoga 216)の共同設立者で、ストラクチャルヨガセラピストのニコール・カッツさん。そこでおすすめなのが、ウォーキング・メディテーションです。
ウォーキング・メディテーションは、いつも頭をフル回転させているような人におすすめ。心が活発に動いている人は、身体も同じように動いているはずだからです、とカッツさんは言います。「反直感的に思えますが、身体を動かせば頭のなかもすっきりしてきます」と語るのは、マサチューセッツ大学医学部のマインドフルネスセンター長で、マインドフルネスストレス低減法(MSBR)を教えるテッド・マイスナー教授。
「心は一度にひとつの複雑なタスクにしか集中できません。ですので、歩く、というシンプルな行為に全神経を集中させるだけで、心を少し休めることができるんです」。
今までとは違う、心を落ち着かせる方法
ウォーキング・メディテーションといっても何をすればいいのでしょうか? それは、人それぞれ。「ウォーキング・メディテーションの方法はさまざまです。ハイキングや犬の散歩中にちょっと周囲へ気持ちを向けるだけでもいいですし、本格的な瞑想で精神の向上を目指しても構いません」とマイスナー教授。しかし、「無意識でなく、覚醒して意識のある状態」を目指すのが一般的。「心が多少さまようのは問題ありませんが、 “ 今この瞬間を体感する ” ことに意識を向けることがゴールです」。
何から始めていいかわからないという場合は、シンプルに。「簡単なウォーキング・メディテーション法としては、ただ散歩に出かけるだけ!」と、マイスナー教授。「歩く以外は何もせず、周りや心の内に意識を向けて」。
時間がなくても大丈夫。「仕事やミーティングへ向かうとき、コーヒーを飲むときなど、だれでも1日のうち、どこかで歩きます」と語るのは、アプリ『Simple Habit』を立ち上げた、ユンナ・キム氏。このアプリを使えば、1日のなかで最もストレスを感じるときでも、5分間のマインドフルネス瞑想ができます。
もっと本格的な体験をしたい方は、隔離された安全なスペースを確保して。森のなかや静かな道、ヨガマットサイズの小さなスペースでも構いません。携帯電話の電源は切って、気が散るものがないように。ヘッドフォンをつけて、『Headspace』や『Simple Habit』などのアプリを使ってメディテーションを始めて。もしくは、マイスナー教授考案の、頭をすっきりさせる次の方法を試してみてください。
じっと静かに立ち、自分の身体、そしてあらゆる感覚に意識を向けます。 自分の足に意識を向けて、足の下にある床、靴、温度などを感じて。感じたものをできるだけ素直に受け入れ、五感で感じるさまざまな感覚を研ぎ澄まします。何も感じなくても、そのまま身を任せて。 音や匂い、周囲のあらゆるものを全身で感じ取ったら、少しずつ歩き始めます。意識をしっかり保ちながら、片足に体重をのせます。もう片方の足をゆっくり持ち上げ、自然な歩幅で、軽く地面におろします。前足に体重をのせるように、身体を前に移動させます。バランスを取ろうとする身体のちょっとした変化にも目を向けて。この手順(体重移動したら、足を持ち上げ前に進み、1歩ずつ踏みおろす)を繰り返します。動くという体験にじっくりと意識を向けます。(ヨガマットの上など小さなスペースで行う場合は、端にたどり着いたら足をそろえ、じっと立つ感覚を味わって。数回ゆっくり深呼吸したら、歩いてきた方向へ顔を向け、もう一度静かに立ちます。次の1歩に集中する前に、新しい景色を取り込んで。) 自分に合ったペースを探します。マインドフルになるのに、ゆっくり動くのがいいとは限りません。一歩一歩、一息一息を意識しながら探ってみて。 今この瞬間とは関係ないことが頭に浮かんできたら、ただ眺めて去っていくのを待ちます。そして、もう一度周囲や身体の感覚に意識を戻しましょう。周りの木、身体のしびれ、風を感じて。集中できるまでに、何度も意識があちこちに飛んでしまうかも。でも、それもメディテーションの練習です。 今この瞬間に意識を向けてマインドフルになったと感じるまで、歩き続けます。そして、日常の中に、この一連の流れを取り入れていきます。忙しい毎日のちょっとした時間、例えばミーティングに向かって歩くときなどに試してみて。Romy Oltuski/This Walking Meditation Will Help Clear Your Mental Clutter
訳/Seina Ozawa