環境課題への取り組みで一歩先を行くとされるヨーロッパでは、具体的にどんなことがおこなわれているのでしょうか? 現在ベルギーで暮らすモデル/イラストレーターのAVI(アヴィ)さんに、現地のスーパーマーケットをレポートしてもらいました。
ベルギーのBIOスーパー、いわゆる従来のレジ袋は買えません
AVIさんが暮らすのは、ベルギーの首都ブリュッセルから車で30分くらいの都市。ベルギーにはオーガニックの食材や生活用品を扱うスーパーが数多くあり、今回はよく利用するというOrigin'O(オリジン・オー)について聞きました。
ベルギーのスーパー「Origin'O」「Origin'Oはベルギーにたくさん店舗を持つBIO(オーガニック)スーパー。無農薬野菜や植物性の洗剤などを置いているので、週に3~4回は行きます。食材を無駄にしたくないので、買いものは足りなくなったものを少しずつ小まめに買い足すようにしているんです」(AVIさん)
BIOスーパーに限らず、レジ袋は基本的にどこのスーパーも有料。その有料レジ袋も、プラスチックではなくしっかりした布のエコバッグで再利用できるものが売られていることが多いそうです。
色とりどりの野菜や果物が並ぶBIOスーパー。息子さんが生まれたことでより環境課題や食べ物の安全を考えるように「加えて、BIOスーパーではダンボール箱がテイクフリー。たくさん購入したときは、これに入れて持ち帰ります。野菜は基本的に包装されていないので、野菜を持ち帰るために使うネット状のバッグもコーナーで一緒に売られています。紙袋や日本でよく使用されているいわゆるレジ袋と同じ形状のビニール袋もありますが、これも環境を配慮した自然に還る素材。
Origin'Oのネット状コットンバッグ(3枚入り)は、オーガニックコットン素材で日本円にすると870円くらい。普通のスーパーでも売っていて、オーガニックでない場合は半額くらいです」(AVIさん)
野菜を入れるネットは3枚入り 野菜コーナーに置かれている紙袋そして、どのスーパーでも包装は簡素とAVIさん。
「料理をしたくないときは、スーパーのデリでキッシュやタジンを買って済ませることも。でもそれも、紙のトレーと紙袋で渡されます。お肉や魚はプラスチック容器に入っていることもあるけれど、全体的にプラスチック包装は日本よりぐっと少ない印象です」(AVIさん)
デリはサラダも豊富 キッシュも紙のトレーで渡されるちなみに、ベルギーの現在の物価は?
「お水が1.5リットルで110円。カフェでしっかりランチをするなら1,400円程度。具を選んでもらうサンドウィッチのテイクアウト店もときどき利用しますが、それだと600円くらい。感覚的にはだいたい東京と同じくらいの物価です」(AVIさん)
そう考えると、現在5〜10円でレジ袋を購入可能な日本に比べて、野菜を入れるネット状バッグの価格は高価。 それでも、このバッグを持参している人はかなり多いそう。
野菜は基本的に包装されていないので、スーパーの買い物かごやカートに直接入れるのもためらわれます。そう考えるとこのバッグは日常的に何度も使うもの。ベルギーの人たちにとっては高い買い物ではないのかもしれません。
瓶は購入時にデポジットあり。でもリサイクルすれば返ってきます
AVIさんはヨーロッパの他の国で暮らした後、ベルギーに移住。あわせてすでに5年ほどになるため、ベルギーの生活に改めて驚くことはさほど多くなかったといいます。ですが、それでも戸惑ったのはゴミの分別の細かさ(この話は後日また、あらためて)、そして「瓶の回収日」がなかったことだそう。「空き瓶はどうしたらいいの?」と思っていたところ、スーパーに「ビールの空き瓶回収機」があったそうです。
空き瓶の回収マシーン「自動販売機のような形状のマシーンで、それにビールの空き瓶を入れると引き換えにスーパーで使えるクーポンが発行されます」(AVIさん)
実はベルギーは、瓶ビールを購入する際、会計時に保証金(デポジット)が自動徴収されるシステム。スーパーなど小売店の空き瓶回収機でリサイクルに協力すると、このデポジットがクーポンとして返ってくるという仕組みです。ビール瓶意外にも、購入時にデポジットを徴収されている水などの飲料は、こちらでクーポンに引き換えができるそう。
「私の使っているスーパーのマシーンでは、ワインの瓶は回収されず、ビール瓶とお水の瓶のみで、ワインの瓶は入れても回収されずに出てきてしまいました。瓶の飲み物を購入する際にデポジットを徴収されているかどうか、確認するといいと思います」(AVIさん)
クーポンの額はビール1瓶あたり10セント(約12円)。缶ビールよりも瓶ビールが主流で「箱買い」をする人が多いベルギーでは、リサイクル促進の有効な手段になっているようです。
また、回収機で扱っていない瓶は、街に設置されている瓶の回収ステーションに持っていく必要があるそうです。
ハーブは基本的に鉢。ビーガンミルクと洗剤は選びきれない?
環境負荷の少ない袋に入って販売されている鉢植えのハーブそしてリサイクルシステムが整っているだけでなく、売っているものも環境に配慮されたものが多いとのこと。
「ハーブが基本的に鉢で売られているのには驚きました。BIOスーパーで一鉢350円くらい、普通のスーパーだと130円くらいと購入しやすい値段ですし、そのまま育てればフードロスも減らせて、家計にも優しくていいですよね」(AVIさん)
また、環境に配慮した洗剤は選びきれないほどの種類が棚に並んでいるとのこと。
「私は『vegan』と記載されている植物性の洗剤を選んでいます。日本円で1,200円くらいしますが、容量が大きいのでなかなかなくなりません」(AVIさん)
植物性の洗剤も種類が豊富BIOスーパーはどこも植物性の商品が多く、AVIさんがうれしかったのはビーガンミルクの豊富さ。
「種類が豊富すぎて! ソイミルク、アーモンドミルク、オートミルク、ココナッツミルク、アーモンド&ココナッツ、ソイ&ビタミンE……。しかも加糖、無糖などもあって、ミルクコーナーがスーパーでも広い面積をしめています」(AVIさん)
環境への配慮がそこかしこに見られ、ビーガン製品も豊富なベルギーのBIOスーパー。リサイクルのシステムも、よく使うハーブは鉢で買うなど個人としての消費も、参考にできることが多そうです(しかも種類が豊富で楽しい!)。
ちなみに、ヨーロッパでは「オーガニック」ではなく「BIO」という言葉を使うことが多いそう。またヨーロッパに行けるときがきたら、買いものの際に注意して探してみたいですね。
AVI(アヴィ)さん
モデル・イラストレーター 。2016年よりヨーロッパに拠点を移し、現在も日本と海外を行き来しながら雑誌や広告、ショー、ヨガインストラクターなどマルチに活躍中。ロンドン留学を経てファッションイラストレーターとしてもデビュー。イギリス人の父と日本人の母を持つ、旅好きの関西人。今春、第1子を出産。公式インスタグラム: @avi__official
撮影・取材協力/AVI
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