北欧といってすぐに思い浮かぶのは、シンプルで洗練されたデザイン家具や食器たち。また福祉の手厚さや、環境への意識の高さなど、人にも地球にもやさしい文化を育んでいる国々という印象がありますよね。今回ご紹介するのは、そんな北欧のちょっと意外な一面。
みなさんは、北欧コーヒーってご存知ですか?
わたしはもっぱらコーヒー党なのにもかかわらず、実はこの本で初めて知ったという有り様。北欧カルチャーの一歩先ゆく奥深さを教えてくれたのは、その名も『コーヒーとパン好きのための北欧ガイド』です。
ページに連なるのは、北欧カフェの日常を切り取った写真の数々。現地では当たり前の光景なのだろうけれど、どこをめくってもため息もののスタイリッシュなカットばかり。だから眺めているだけでも充分楽しめる一冊なのですが、ほどよいテキスト量で綴られるコーヒーやパンにまつわるエピソードも、読みはじめると止まらない......!
コーヒーの聖地・北欧の主流はダイレクトトレードへ
たとえば驚きだったのが、北欧ではコーヒー豆の生産者と直接取引をする「ダイレクトトレード」を掲げるショップが多いということ。まだはっきりとした定義はありませんが、あるカフェではフェアトレードよりも25%以上高い価格をつけるという取り決めをしているんですって。
豆や製法へのこだわりはもちろんだけれど、そのクオリティーに感じるのは、北欧文化とコーヒーとの深い絆。彼らがどれだけコーヒーを愛しているかが、ひしひしと伝わってくる気がしました。追求するのは味だけではなく、コーヒーを取り巻く環境と人々の意識を変えていくこと。北欧が「コーヒーの聖地」といわれるのも納得です。
『コーヒーとパン好きのための北欧ガイド』(スペースシャワーブックス)
著者の森百合子さんによると、北欧コーヒーの特徴のひとつは浅煎り。まずはぜひブラックで。
上質な豆と洗練された焙煎技術があってこその香り高さを味わえるはず。
人のぬくもりと心づかいを感じる北欧ガイドブック
ほかにもご紹介したいエピソードはたくさんあるのですが、そこはぜひ、本を手に取ってお楽しみいただきたいもの。北欧5国(フィンランド、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、アイスランド)のおすすめカフェはもちろん、北欧ならではのベーカリーやデニッシュ、スイーツ事情も盛りだくさん!
主役はコーヒーとパンですが、そこにかかわる人や暮らしの匂いまでが伝わってくる、ぬくもりいっぱいの一冊。本場の味を堪能できる日本のカフェ情報が載っているのも、うれしい心づかいです。
手軽につくれる北欧スイーツやサンドウィッチのレシピも収められているので、気の置けない友人と一緒に北欧風ブランチ、なんていうプチバカンスも楽しめたらステキ。黒パンにニシンやサーモンなどの魚介がのったオープンサンドの写真を眺めていたら、北欧の食文化は案外わたしたち日本人にフィットするような気がして、なんだか親近感が湧いてきます。
知られざる北欧がぎゅっと詰まったガイドブック、心底おすすめです。
[コーヒーとパン好きのための北欧ガイド(スペースシャワーブックス)]
photo by Thinkstock/Getty Images
(山本貴緒)