草木におりるつゆに触れると冷たくて、いつの間にか季節が進んでいることにハッとさせられさみしい気持ちになりがちな頃かもしれません。
朝日に照らされて輝く草のたまのような露を見ていると星のしずくだと考えた昔の人の気持ちがよくわかります。
秋の豊かな色気候はおだやかな日も多いから「ちょっとそこまで」の散歩が心地いい季節でもあります。てくてくと歩いてみたくなるのはきもちのいい天気のせいもありますが大きな理由はもう一つ。それは、空の色、わたってきた鳥、名もない野の草、秋の草花、街路樹の葉などが美しい色合いを見せて、四つの季節の中でもたっぷりと色を感じることができる季節だということ。
実際この季節、外を歩くといろいろな色と出会います。
紅葉前線はもう少し先になりますが、木々の中で一番はじめに葉っぱを落とす桜の木はすでに葉を黄色や赤や茶色に。どこからともなくよい香りがしてくる金木犀の花は橙色。
名も知らない野の草や葉の黄色と緑色の葉のグラデーションが美しい。街の池にやってくる秋の渡り鳥の羽の彩りもあざやかに、すとんと落ちる前の夕暮れの空のさまざな色の響宴にため息がでます。
こんな風にふだんの生活の中で、いつもよりたっぷりと様々な色を味わえる今。自分が白いキャンパスになったつもりであちこちを見回し、色に気づく習慣がおすすめです。みずみずしい新鮮な気持ちにいつでもどこでも。色からはたくさんのエネルギーチャージができます。
自然できれいな色に出会うと、人は安らいだり、ウキウキと元気になるから不思議。色は人の心に響いてきます。
自然の色を味わってみる美しい色の食べ物もまた同じ効果があります。
たとえば、人気のあるデパチカのお店のショーウィンドウを見れば色とりどりのサラダや、お惣菜が並ぶお店が人気なのも美しい色の力が働いているなあ、と思います。
食べ物の色、というと添加物のイメージも強いのですが、紅色のサツマイモ、黄色の栗、紫色の菊、など、自然の色だけでも十分美しい食べ物がありますから、食べる色、見る色、両方いただいて、変化の季節を楽しみましょう。
(広田千悦子)