中央に見えるのは、お菓子のショーケース。こちらに並んでいるものが購入できる仕組みに。
ポルトガルに根付く「ポザーダ」とは、城や修道院など歴史的建造物を改修した、国営の宿泊施設のこと。建築当時の美しい趣を残しながら、現代の技術を用いて快適な空間に再生することで、多くの人がそこで過ごすことを目的に遠方から足を運びます。
そんなポザーダの考えを導入して、兵庫県北部の豊岡市にオープンした「豊岡1925」。先週末は、カフェ・レストラン、ショップ、ギャラリー、バー、ホテルが一体となり、国の登録有形文化財に指定される施設で過ごしてきました。
豊岡1925の西側外観。正面玄関のお向かいが豊岡市役所。
カフェ・レストランの個室。家具もアンティーク。
施設名になっている"1925"は、豊岡市街地が壊滅した北但大震災があった年。町じゅうが大きな被害を受けたことで、より強い町を目指し復興建築として1934年に建てられたのが「兵庫縣農工銀行豊岡支店」。ルネッサンススタイルの優美な建物の完成は、震災から立ち上がろうと奮い立つ市民の心強い励ましとなったことでしょう。
銀行が閉鎖してからは、道を挟んですぐ目の前にある豊岡市役所の別館として利用されていました。そうしてこの4月、震災から立ち上がり、現在の豊岡のはじまりとなった年、"1925"を名に冠した施設が完成したのです。
豊岡市には、日本のお菓子の神さま「田道間守命(たじまもりのみこと)」を祀る「中嶋神社」が所在し、全国の菓子業者がこぞって参拝に訪れます。そんなお菓子の聖地といえる町にちなんで、「豊岡1925」のテーマのひとつに「お菓子」が取り入れられました。
2階のギャラリーで、甲斐みのり企画展「お菓子の旅」を、5/6まで開催。
私も個人的に日本のお菓子が大好きで、これまでお菓子関連の本を書いてきたこともあり、5月6日までオープニングイベントとしてギャラリーで催される企画展「お菓子の旅」の監修をおこなうことに。四季ごとのお菓子を求めて旅したときの写真や、包み紙コレクションを展示しています。
私が宿泊したのは、ベッドが2つある4号室。
他の部屋の床はカーペットが敷かれていますが、この部屋だけは昔のままの木の床。
4月19日、施設のオープン時に「ホテル1925」だけはまだ始動していませんでしたが、正式な開業を前に試泊をさせていただきました。たった5部屋だけの客室。それぞれ広さは異なりますが、テレビ・ラジオ・冷蔵庫などが設置されていないことは共通しています。
それから、トイレとシャワールームはあるけれど、浴槽はなし。すぐ隣に夕方16時~20時半まで営業している銭湯があるので、地元の人にまぎれて湯船につかってきました。古い建物にできた、小さなホテル。そっけないほどなにもないけれど、清潔で、心地よくて、静かにぐっすり眠ることができました。
「豊岡1925」南隣の「京極湯」。昔ながらの銭湯で、昭和の時代へ時間旅行できます。
5/6までの「お菓子の旅」開催中は、1階のショップで、甲斐みのりセレクトのお菓子も販売しています。こちらは「クリスタルボンボン」という砂糖菓子。
私たちは普段、すっかり便利なことに馴れ過ぎています。だからこそ束の間、テレビもない、冷蔵庫もない、浴槽もない、ほんの少しの不便さを楽しむことができました。本を読んだり、ゆっくり話しをしたり、買ってきたお茶とお菓子で寛いだり。豊岡市にはミシュランガイドで星2つをとった城崎温泉もあります。
1日は「ホテル1925」で日常から離れたなんにもない時間を、もう1日は城崎温泉でちょっとした贅沢を、楽しんでみてはいかがでしょう。
豊岡1925
カフェ・レストラン:7:00~21:30(ラストオーダー21:00)
お菓子の販売:10:00~21:30
ギャラリー:10:00~21:30
バー:17:00~24:00
ホテル:1泊 シングル8000円~10000円
※4/23現在 専用webがないため、お問い合わせは0796-26-1925まで。
~甲斐みのり企画展「お菓子の旅」~
兵庫県の北側、豊岡市にあるお菓子の神様「田道間守命」を祀る神社中嶋神社。
日本のお菓子のルーツであるその神社で、毎年四月第三日曜に例大祭が行われます。
その前日4/19に開催される「豊岡菓子祭前日祭」より、
企画展「お菓子の旅」が始まります。
甲斐みのり「お菓子の包み紙コレクション」の中から、お菓子とあわせて、
日本各地のかわいらしい包装紙・箱・紙袋を展示公開。
また、甲斐みのりセレクトのお菓子と雑貨の販売もいたしております。
日時:2014年4月19日(土)~5月6日(火)
会場:豊岡1925
住所:兵庫県豊岡市中央町11-22(豊岡市役所前)
TEL:0796-26-1925