ライフハッカー[日本版]より転載:
自分で自分をしんらつに批判してしまうことはよくあります。周囲には公平な目を向け、賢明なアドバイスをしている場合などはとくに、その自己批判は事実ではないこともあります。
しかし、心の声は他の人には聞こえません。緊張や不安や恐怖を感じているようなときほど、頭のなかで自分に対して不当にネガティブなことを言ったり、怒ったりしていることもあります。
ある種の独り言は、意味のない暗闇から自分を救い出すことができます。頭のなかの言葉が、大きな結果をもたらすことを意識しましょう。
心理学者のEthan Krossさんの調査によると、最高の自分になるためには、鏡のなかの自分をほめるよりも、もっと効果的な方法があるのだそうです。
一人称を使わない自分が役に立たなかったり、理に適っていないことをしたときに、厳しく自分を批判したり、あら探ししたことがある人は多いのではないでしょうか。しかし、そのような記憶は自分に対する見方を固定してしまいます。驚くことに、実際に口に出した方が、自分に対する見方を変えやすいのです。
そのときは、人称を変えることが大切です。一人称を使わずに、「あなた/君/お前」などの二人称、もしくは三人称や、自分の名前で呼びかけましょう。「おっと、なんであなたはそんなことしちゃうかなあ?」とか、覚悟を決めて「オッケー、君ならできる!」など、知らないうちにこのような言い方を使っている人もいるかもしれません。しかし、これは自分のパフォーマンスを向上させたり、感情や行動をコントロールするのに、意図的に使うととても効果的な方法です。
Krossさんの研究で、多くの人が恐れる「人前で話すこと」を対象にしたものがあります。被験者は、聴衆とビデオカメラのそれぞれの前で「夢の仕事を手に入れるために必要な条件」についてスピーチをしなければなりませんでした。全員、メモは許されず、準備に十分な時間もありませんでした。
二人称や三人称、もしくは自分の名前を使った被験者は、一人称を使った被験者よりも、スピーチの前に落ち着いていていて、パフォーマンスも良かったのです。
「私」という一人称を使わないと、自分に対して精神的に距離を置くことができ、自分を客観視できます。一歩後ろに下がって絵を見るように視野が広がります。いまの自分の精神状態や、緊張したり不安に思ったりしている自分と距離を置くことで、思考にさらに洞察が得られます。頭のなかの批判的な声を黙らせることで、考えるのに必要な余裕が生まれ、視野が広がったのです。
自分を客観視する練習をする不安や心配、心細さを感じる状況はいくらでもあります。自分が評価されることに関することは、とくに恐怖を感じることが多いです。仕事、人前でのパフォーマンス、大事なイベント、昇進や出世、人間関係でも、そのような状況はあります。自分を客観視して、自分にアドバイスをして、より賢く落ち着いていられるようにサポートしましょう。とにかく自分の言うことを聞いた方がいいのはわかっているはずです。
「より賢い自分」の役を自分に与えて、なぜそんなに緊張したり動揺したりしているのか、自分に聞いてみます。自分へのメッセージを書き出してみましょう。本当に自分宛てにメールで送ってもいいです。
Krossさんの研究の2人の被験者を比べてみましょう。自分が不安に思っているイベントが迫っているとしたら、どのように考えるかを書き出してもらったものです。これが1人目の例です。
面接で失敗したら、仕事に就けないかもしれないのが怖い。私はいつも何か失敗する。何を言えばいいのかわからなくなるし、いつもひどく緊張してしまう。緊張のせいで面接がうまくいかなかったことが、さらに私を緊張させて、結局面接がうまくいかないのだ。たとえ仕事に就いたとしても、面接の度に緊張すると思う。
こちらが2人目の例です。
(自分の名前)、あなたならできるよ! ◯◯さんの退職記念パーティーの幹事をうまくできるし、◯◯さんの人気がなくても人を集められるよ。
スピーチもうまくいくよ。◯◯さんのことをよく言ってくれる人も見つかるよ。あなたなら、予算内でパーティーの経費を抑えられる。(自分の名前)、あなたならできるよ! ちゃんとみんなは飲食代を払ってくれるし、退職祝いの記念品のお金も集められる。◯◯さんにとって思い出に残る良い退職記念パーティーになるよ。
違いは何だと思いますか? 「私」を主語にすると気分を変えられず、考え方が固定してしまって、ネガティブなループにはまります。「あなた」を主語にすると、頭のなかの言葉が独り言ではなく会話になり、自分にアドバイスでき、気分を変えたり、感情をコントロールしたりして、成功することができます。
自分が不安になっている要因を突き止めようとして、身動きが取れなくなる、なんてことがないように。「あなたは(不安/心配)だ」と観察しながら、自分にアドバイスしたり、助けになるような言葉をかけてあげます。その場合、次のような表現を使うといいです。
あなたには.........が必要です。あなたは.........ができる。あなたは.........するでしょう。 終わった後も非一人称で振り返る
また、Krossさんと同僚の心理学者たちは、自分の名前を呼んだり、非一人称を使う人は、自分のパフォーマンスに自信を持てるだけでなく、その後の自分に対して、恥じたり落ち込んだりすることが少ないことも発見しました。
したがって、心配なイベントや緊張したパフォーマンスのあとも、自分の名前や非一人称を使って振り返るようにすれば、ネガティブなことや失敗を何度も反芻せずに済み、精神衛生上も害がなく、モチベーションも持ち続けられます。自分を客観視することは、自分のことを言い換えるだけでなく、解釈し直すことができ、経験を描写するだけでなく、思考や認識を改めて見直すのに役立ちます。
スポーツ選手が試合中に独り言をたくさん言うのは、理にかなっているのです。鏡や録画したビデオで自分の姿を見て、視覚的にも精神的にも自分と距離を置き、試合やパフォーマンスの後で自分を分析するのもよくあることです。
アスリートが「君ならできる!」とか「一歩リードしてるよ!」というようなことを言って自分を鼓舞したり、「このショットの時の手首の角度に気をつけて!」と自分にアドバイスをしているのを思い出してみてください。ナイキの有名なモットーは「私はそれをやるだけ」ではなく、「やるしかないだろ」です。
人称という、些細な言葉遣いをひとつ変えるだけで、やる気やいいパフォーマンスを引き出せるのです。
How to Silence Your Irrationally Harsh Inner Critic|99u
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Janet Choi(訳:的野裕子)