相手の真意をくみとれず......
まずパイロットが砂漠に不時着します。実際作者のサン=テグジュペリも夜間飛行中に砂漠で不時着しましたが、そのとき彼は思い出に満たされ孤独ではなかったと言っています。ところがこのパイロットは本当の友だちがいない、孤独な人でした。そんな彼の前に小さな王子さまが現れます。この王子さまは自分で育てたわがままなバラの真意をくみ取れずに、相手の表面的な言葉だけを真に受けてしまい、その関係性に自信をなくして星から逃げてしまいました。
その後、権力があるようにみせかけて実はなにも持っていない王さまなど自己中心的な人々や、役に立つけど意思がない点灯夫と出会いながら、人には言動とは裏腹な弱い部分があることを理解していきます。そして地理学者から「バラははなかい存在だ」と知らされるのです。
相手のこころをくみ取れるように
ついに王子さまは地球にやってきました。そこで出会った毒ヘビに「砂漠は人がいなくてさみしい」と言うと、こんな返事が返ってきます。
人間たちのところだって、さびしいぜ。
[『星の王子さま』P114より引用]
確かにたくさんの人がいても、こころが通い合う存在がいないとさみしいものです。その後、たった1つしかないと思っていたバラが他にもたくさんあることを知った王子さまは、自分のバラがこのことを知ったら傷つくだろうと心配します。やっと王子さまは表面上ではないバラの弱いこころをもくみ取れるようになってきました。
たいせつなものは目に見えない
さらに王子さまはキツネに出会います。「知りたいこともあるし、友だちも見つけたい」と言う王子さまにキツネはこう言います。
≪知る≫というのがどういうことか、わかっているのかな。≪きずな≫でしっかりと結ばれる.....。それが≪知る≫ってことなんだよ。(中略)
友だちがほしければ、≪きずな≫を結ぶことだね。
[『星の王子さま』 P132より引用]
そして時間をかけてお互いきずなを結ぶことに成功し、晴れて友だちになったキツネは王子さまにこんな話をします。
かんじんなことは、目では見えないんだ。(中略)
花のためにあんたがむだにした時間のぶんだけ、花はたいせつなものになったんだ。
[『星の王子さま』P138-139より引用]
自分にとってあのバラがどれだけ大切な存在なのかを知った王子さま。もう相手のこころをくみ取ることも覚え、心を通わす友だちの作り方も覚えました。その証拠にキツネだけでなく、あの友だちのいなかった孤独なパイロットとも友だちになれたのです。そんな経験をたずさえ、王子さまは魂となってバラのいる星へ還って行きました。
このようにお話は終わりますが、その後はいったいどんな展開が待っているのでしょうか。映画の予告動画を見て想像を膨らましながら、劇場公開日である2015年11月21日を楽しみに待ちたいと思います。
映画『リトルプリンス 星の王子さまと私』予告編(字幕版)
[『サン=テグジュペリ「星の王子さま」 2012年12月 (100分 de 名著)』,『人間の土地』]
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