●フランスでは、職場へ伝える義務はなし
フランスでは、法的にも、従業員が会社に対して自分の病気を公表する必要はないとされています。会社専門医でさえ、従業員が長引く病気をわずらっていたら、自分の医者に容態を説明することをすすめ、無理矢理聞き出すことはしないのだそう。会社専門医に話したとしても、その役割は、従業員の健康状態に合わせて今の仕事が適正かどうかを判断するというもの。もちろん、医療上の秘密として保持されます。
●現実は、同僚に告げる人が多数
ただ、いくら個人主義のフランスとはいえ、大抵の人が自分の病気を同僚に黙っている罪悪感からか職場で話すことになり、2006年のフランスの保健省調べでは、癌になった後も81%の人が2年間職場に残り続け、職場にそのことを告げた人はそのうちの87%を占めていたのだそう。一方、残念なことに差別や拒絶に合い、6%の人が職場を去らなければならなくなったのだとか。
●うれしい安心の復職制度
さて、休養期間を経て職場復帰をする際、フランスでは体への負担を減らすために、働く時間を半分にするなどの対応もできるのだとか。この場合、会社専門医に話せば雇用者と交渉してくれるというシステムもあるようです。フランスでは、職場復帰後のハーフタイム労働(1年間は通常の給与額)は良い解決策として利用する人が多いです。病気になっても復職できる権利がはっきりしている点は、安心につながります。
●療養も仕事も両立できる?
最後に、病気と付き合いながら仕事もこなさねばならない。そんなシチュエーションになったとき、仕事に際してでも、いちばん大切なのは自分自身。長引く病気にかかると、それがあたかも自分の身分証明書であるかのように重たい現実としてのしかかってくる人も多いのが実情です。仕事に打ち込みつつ、回復できるのが理想ですが、迷わず療養した方が結果的にははやい復帰につながるのかもしれません。
なんと、日本の労働基準法には、休職に関する規定がありません(※)。だからこそ、突然の怪我や病気になった「いざ」というときのために、対処法を考えておくのは必要なこと。「いざ」というときの対処法が決まっていれば、いつでも安心していられるはず!
[※高井経営労務事務所]
photo by Thinkstock/Getty Images
text by下野真緒(Mao FRANKIEWICZ SHIMONO)
南仏在住ジャーナリスト/エディター。東京都出身。慶応義塾大学法学部政治学科卒。女性ファッション誌編集部を経てフリーランスエディターに。パリ・南仏へ留学後、フランス南西部に移住。パリ発webmagazine・chocolatmagにて連載コラム「南仏新婚journal」、ELLE maman blog「南仏ママンのpetit palette」、GLAMサイトで「南フランスのいい予感。」ほか「シティリビング」にて海外通信コラムなど執筆中。フランス人のライフスタイルほか、社会問題、時事ネタにも関心深い。