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記事 19件
  • 【14万字・記事16本詰め合わせセット】秋山成勲ヌルヌルの裏側、斎藤vsクレベル消滅、井上直樹……

    2021-09-30 23:59  
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    part92
    ◎「すべらせろ!」と叫んだセコンド山田武士が明かす「桜庭和志vs秋山成勲の真相」
    ◎萩原京平インタビュー「朝倉兄貴、そしてRIZINの舐めた考え方ごとを叩き直してやりますよ」
    ◎【1・4事変】小川直也は“真相”を明かしたのか
    ◎100キロ超級・日本人最後の金メダリスト 石井慧が見た日本柔道“復活”という幻想
    ◎大仁田厚の邪道劇場、コロナ禍のアメリカでも炸裂
    ◎秋山成勲“謝罪”の違和感の正体
    ◎コロナに散った『ワールドプロレスリング』海谷ディレクターを偲ぶ■斎藤文彦INTERVIEWS
    ◎【知りたいんでしょ!?】日本レスリングが東京五輪で強かった理由■保高幸子
    ◎『紙のプロレス』は鬼畜系だったのか〜小山田圭吾と原稿チェック問題〜■松澤チョロ
    ◎CMパンク、AEWでプロレス復帰…「契約書にサインをしたのは登場30分前だ」
    ◎帰ってきた事情通Zの「プロレス 点と線」
    ◎ベラトール参戦!! ヒョードル化した堀口恭司
    ◎大混乱!! 続・パンクラス商標問題■シュウ・ヒラタのMMAマシンガントーク
    ◎バンタム級GP優勝候補・井上直樹の弱点、教えます■セコンド・水垣偉弥
    ◎【RIZIN.30総括】斎藤裕vsクレベル・コイケはなぜ消えたのか■笹原圭一
    ◎武田有弘☓小佐野景浩 「これまでのノアと、これからのノア」



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    秋山成勲、突然の告白……あの桜庭和志戦のセコンドだったJBスポーツ山田武士インタビュー(聞き手/ジャン斉藤)

     秋山成勲が清原和博と自身のYouTubeチャンネルで、いまから15年前の桜庭和志戦の“真実”を明かした。その内容は動画を確認してもらいたいが、突然の告白は当時の事件をあらためて振り返るきっかけをつくることになり、秋山成勲の動画も深くは踏み込んだ内容ではなかったことから、当時から囁かれていた「主催者とグルだったのではないか」「グローブに凶器を仕込んでいたのではないか」という疑惑も再燃させてしまった。やってはいけない反則を行なったとはいえ、しかるべき罰を受け、謝罪を行なった秋山成勲が15年経っても批判を浴びてしまうのは、主催者によるこの事件の調査に対する不信感も理由のひとつに挙げられるだろう。そのため今回登場する山田武士トレーナーも“疑わしい人物”というイメージが強い。

     山田氏は当時の秋山成勲のコーチであり、セコンドも務めていた。あの日、最も間近で秋山成勲と行動をともにしたひとりである。秋山成勲がなぜこのタイミングであのような動画をアップしたのか。その真意は掴みかねるが、こういった機会にあらためて山田氏に当時の話を伺った。

    「正直、15年経ってるからこそ話せることもあります」(山田)

    あのときなぜバックステージ動画が公開されていなかったか。秋山成勲にかけられたクリーム以外の疑惑――たとえばメリケンサック――についても山田氏は洗いざらい語ってくれた。総文字数24000字、試合中に「すべらせろ!」と叫んだ山田武士が語る「桜庭和志vs秋山成勲」。

    ――2014年の川尻達也UFC参戦のときから、川尻さんを支える山田さんにかれこれ10回近く取材していますけど、秋山成勲さんのヌルヌル事件について、じつはちゃんとうかがったことがないんですよね。

    山田 ああ、そうですかね。

    ――なぜかというと、あの試合直後から山田さんはご自身のmixiでいろいろと発信されていたり、他媒体でも取材を受けていたからで、山田さんの言い分を聞くまでもなかったという。ただ、15年経ったいまでも、秋山さんにクリームを塗った“首謀者”だと言われていますよね。

    山田 まだ言われるのかって、ちょっとビックリですよね……。

    ――このインタビューをしたところで、また「本当のことを言ってない!」という反響が出てくる虚しさはあるかもしれないですが、それでもおうかがいしたいと思います。

    山田 はい、よろしくお願いします。じつはあの試合があったとき、ウチの子供が生後半年だったんですよ。ウチの嫁と試合のあった大阪に来ていて……それがもう中学生ですからね。時が流れるのは本当に早いし、その子供が「えっ、そんなことがあったの?」ってネットで調べられる年齢じゃないですか。

    ――「ウチのお父さんはこんな悪いことをしていたの?」と。あの当時のニュース記事ってあまり残ってなくて、疑惑だけがネットを彷徨ってるところはありますね……。

    山田 今回、成勲がどういう思いであの動画をアップしたのかはわからないけど、こういう機会だから、すべて話しますよ。もしかしたら当時もしゃべってるのにメディアの都合でカットされてることがあったのかもしれないですけど……。正直、15年経ってるからこそ話せることもあります。

    ――あの事件直後に関係者で何かしら発信していたのって、山田さんぐらいなんですよね。

    山田 そうなんですよ。成勲がホントに塗ってるとは思ってないからmixiでも、そういった疑惑の声に反論しましたし。

    ――山田さんはmixiで「言いがかりはやめてくれ」と発信をしていて。だからこそ塗ったことが判明したときに大バッシングを浴びましたよね。

    山田 そうなんです。ホントに何も知らなかったし、まさか塗ってると思わず成勲を庇い続けたのにね。運営側も成勲と組んで桜庭さんを陥れようとして「グルだ」とか言われているけど、そもそも桜庭vs秋山というカードが組まれたのは、たしか“桜庭さん推し”だったからですよ。

    ――山田さんにはそういう認識だったんですか。

    山田 あの2006年は桜庭さんや成勲の階級でトーナメントをやっていたじゃないですか。10月の大会で2試合、成勲は準決勝ケスタティス・スミルノヴァス、決勝メルヴィン・マヌーフに勝って優勝しましたけど、桜庭さんは8月のスミルノヴァス戦で、勝ったけども結果的にとんでもない試合だったじゃないですか。

    ――桜庭さんがスミルノヴァスの打撃を食らって半失神状態なのに試合は続行されて。

    山田 桜庭さんは耐えて耐えて、スミルノヴァスがスタミナ切れして一本取ったみたいな。それで10月9日に成勲と桜庭さんの準決勝をやる予定だったんですけど、桜庭さんが体調不良でトーナメントを途中離脱したんですよね。そんな中で成勲が優勝したんですけど、その優勝後のマイクに関して、試合を中継していたテレビ局のTBSか、FEG(HERO'S主催者)スタッフのどちらかが成勲に「リング上から桜庭さんに対戦要求してくれ」と。

    ――そういう指示があったんですか。

    山田 でも、こっちからすると「え?」と。だって、同じトーナメントに桜庭さんは出ていたわけだし、成勲はそのトーナメントで優勝したわけですから。だから、それを言われたときは成勲も明らかにムスっとしたんですよ。「そんなこと言いたくない」っていう表情。だけど、そこは成勲なんで、マイクを渡されたら解説席にいる桜庭さんに向かって「桜庭さん、お疲れさまです。ケガを早く治されて、大晦日やりましょう」とアピールしましたけどね。だから、運営側としてはあの試合は桜庭さんありきで組んだと思いますよ。それにHERO'Sは試合時間を1R10分・2R5分に変更してましたし。

    ――桜庭さんがHERO’Sに移籍したことで、それまで主戦場にしていたPRIDEに合わせて1ラウンド10分、2ラウンド5分の試合時間になったと。谷川さんもこのマッチメークが決まったときに「秋山成勲にプロの厳しさを教えてやってほしい」と言ってましたね。

    山田 だから、桜庭さんありきの大晦日だったんですよ。

    ――ただ、TBSは秋山さん推しだったというところはあるわけですよね? 要は、桜庭さんはPRIDE、つまりはフジテレビのスターで、TBSからすれば自分たちでスターをつくり上げたかったというか。

    山田 まあ、もちろんそれはあったと思いますけど。あとは大晦日だから、それなりのカードが必要になってくるじゃないですか。

    ――大晦日にクライマックスを持ってこないといけないから、日程優先でカードを組まないといけない。だからFEGは秋山さんにマイクアピールの指示をしたし、秋山さんは優勝直後で不満ながらも受け入れたんですね。

    山田 そういうことですね。

    ――そもそも、当時の秋山さんと山田さんはどういう関係性だったんですか?

    山田 まあ、成勲がMMAを始めてすぐの頃から「打撃を教えてほしい」ということでボクのところに来てたんで。週3~4回は一緒に練習してという感じでした。

    ――当時山田さんのチームは「チーム黒船」と呼ばれてましたが、あれはジム名でもなんでもなく、あくまで山田さんが指導している練習メンバーの名称ですよね。

    山田 はい。当時、ボクシングジムでMMAの打撃を受け入れているジムはほとんどなかったんですよ。若干ボクシング側がMMAをバカにするというようなスタンスだったから。でも、ボクはそういう偏見もなかったんで、志のある人間がだんだんつながりの中で集まってきたという。

    ――それが「チーム黒船」だった。ただ、そのメンバーがみんな“仲間”かというと……。

    山田 仲間ではないですね。練習では会うし、たまにマススパーとかをやるぐらいで。でも、一緒に遊びに行くなんてことはたぶんゼロです。

    ――桜庭vs秋山の裏では、PRIDEも大晦日興行を開催していました。山田さんは「チーム黒船」の川尻達也選手や石田光洋選手のセコンドとして、さいたまスーパーアリーナに行くという選択肢もありました。そこで、秋山さんが試合する大阪ドーム(現・京セラドーム)を選んだ理由はなんだったんですか?

    山田 先に決まったのが成勲の試合だったからです。10月の大会で成勲がトーナメントで優勝して、「桜庭さん、大晦日にやりませんか」というアピールをした時点で、もうほぼ試合が決まってるわけじゃないですか。たしか、成勲の試合は10月の時点でもう決まっていたんですよね。で、あの頃のPRIDEってカードが決まるのが遅かったんですよ。結局、石田くんは五味隆典選手、川尻くんがギルバート・メレンデスに決まったんですけど、あれも成勲の試合が決まった全然あとなんで。

    ――川尻選手と石田選手のカードが発表されたのは12月7日のことですね。

    山田 だから、ボクは「チーム黒船」のみんなの試合が重なったときのために、あらかじめルールを決めていたんです。「最初に試合が決まったほうのセコンドに付く」「あとから決まった試合のほうがデカいから、そっちに行くわというのはナシにしましょう」と。だから、川尻くんも石田くんも、ボクが大阪に行くときに超寂しそうにバイバイしましたよ。

    ――「なぜPRIDEではなく秋山成勲に付いたのか怪しい」と言われがちですけど、そういうルールがあったと。

    山田 そう。理由は、先に決まったから。それが黒船のルールだったんで。

    ――そして、試合当日の状況ですが……。

    山田 その日は、ボクはセミファイナルで魔裟斗くんとK-1ルールで戦う鈴木悟のセコンド仕事もあったんですよね。

    ――山田さんは、メインの桜庭vs秋山の前にもセコンドに付いたんですね。

    山田 しかも、2人は逆コーナーだったんですよ。成勲は赤コーナー、悟は青コーナーだったんで。だから、ボクはドームの1塁側と3塁側の控室を行ったり来たりしていて。成勲のバンデージを巻いて、走って移動して悟のほうでアップしてという。そういう感じでバタバタだったんです。

    ――いまだったら運営側が気を利かせて同じ控室にしてそうですけども。

    山田 でも、悟の試合が決まったのが大会3日前ぐらいだったんですよ。もともとは魔裟斗くんとチェ・ヨンス(元世界WBAスーパーフェザー級王者)との試合が決まってたけど、チェ・ヨンスがケガなんかで急に出られなくなったんで。そういう急な事情もあったかもしれないですね。

    ――じゃあ、運営側が気を利かせなかったというよりも、土壇場すぎて変更のしようがなかったという。

    山田 スケジュール的に難しかったというのはあったと思いますね。

    ――セミからメインまでの山田さんの動きをもう少し詳しく教えてもらえますか?

    山田 ボクはセミで悟の試合があったから、そのセコンドに付く前にミットを持って成勲と打撃のアップをしたんです。組みのアップのときはボクはもう悟のところに向かってて。で、悟と一緒にボビー・オロゴンvsチェ・ホンマンの試合を観ていたんです。

    ――ボビーvsチェ・ホンマンというのは魔裟斗vs鈴木悟のひとつ前の試合ですね。

    山田 で、悟に「この試合、けっこうすぐ終わるかもしんねえから、早めに行くぞ」とか言ってたら、本当にすぐ終わっちゃったんで。

    ――あの試合は1ラウンド16秒で終わっちゃいました。

    山田 そこから悟の試合だったんですけど、あの悟はローを効かされて2ラウンドで負けて、彼を控室に連れて行って。そうしているうちに、すぐにメインの桜庭vs秋山の煽りVが始まっちゃってたんでね。まあでも、ちょっと長い煽りVだったんで、そのあいだに走って反対側の控室に行って、走ってるあいだに成勲のTシャツに着替えて、で、そこでもう柔道着を着て入場待ちの成勲がいたんで「悪い、遅れた」と合流した感じです。

    ――この件では、グローブに付いていたスポンサーの「EDWIN」のロゴが剥がれていたことも問題として取り上げられました。それがグローブ細工疑惑の発端になるんですが……。

    山田 それは試合前のボクとのアップのときに剥がれてました。成勲に「悟の試合に間に合わなくなるから、先にパンチのアップをやろう」ということでやってたら、汗で剥がれて「EDWIN」のロゴがペラっとなったんですよ。そしたら、成勲がそれを口でくわえてバリッと取ったんですよね。

    ――なるほど。あれはEDWIN製のグローブということじゃなく、もともと主催者は用意したグローブに、大会スポンサーだった「EDWIN」のロゴをくっつけたかたちだったわけですよね。

    山田 そうそう。アイロンの熱か何かでくっつけてあるだけ。

    ――同じ大会では他の選手のグローブもロゴが剥がれかかっていたという報告は記者会見でされています。当時EDWINに直接電話して「あれって剥がれるんですか?」と聞いて「剥がれません」という回答を得た方がいたんですけど。EDWIN製のグローブじゃないし、EDWINも「剥がれます」と不良品扱いはできないんですよね。

    山田 まあ、言えないでしょうね。そこは谷川(貞治/FEG代表)さんも剥がれた際の映像をチェックしてますね。そのときに例の「すべらせろ!」の確認も取れて……。

    ――山田さんが試合中、秋山さんに「すべらせろ!」という指示を送ったことが……桜庭さんの「すべるよ」とシンクロしてしまったという。

    山田 あれは、ボクが立嶋篤史に「ローキックは床をすべるように蹴れ」とアドバイスしてもらったことを参考にしているんですよね。床スレスレで蹴ると、相手の手でキャッチされないから。だから、足を床にすべらせるように蹴れというのをずっと言っていて。だから、その調査の段階で、そのロゴが剥がれたときのアップ映像を谷川さんが見て、そこでもボクがずっと「すべらせろ」と成勲に言っているのを確認してますから。2人でアップしている練習シーンの中で、ボクが「ダメダメ、上から蹴らない、床をすべらせろ」と。その途中でロゴがバリッと剥がれる映像を谷川さんが見ているんで、「すべらせろ」発言に関しては解決しているという。

    ――まあ、実際にクリームですべらせたかったとしても、ストレートに「すべらせろ」なんて……。

    山田 言わないですよ! 絶対にないですけど、もしボクがクリームを塗っているのを知っていて本当にすべらせたいんだったら、よけいに言わないですよ。

    ――そのアップの段階で秋山さんの身体にクリームを塗っていたということはなかったんですか?

    山田 クリームは、時系列でいうとボビーvsチェ・ホンマンの試合の最中に塗ったらしいです。

    ――山田さんはボビーvsチェ・ホンマンのときは鈴木悟選手と一緒でしたよね。現場にいなかった山田さんがどうやってその事実を知ったんですか?

    山田 ボクがどこで知ったかというと、年明けの1月10日に帝国ホテルのミーティングに呼ばれたからなんですよね。

    ――どういうミーティングだったですか?

    山田 あの日は、審判団・代表の磯野(元)さん、和田(良覚・当試合サブレフェリー)さん、久保(豊喜・当時GCMコミュニケーション)社長、そして成勲と、試合でセコンドに付いた門馬(秀貴)が集まっていて。

    ――久保さんは和術慧舟會の方で、競技統括という立場ですね。磯野さんも和術慧舟會でしたし、当時K-1系のMMAイベントの競技周りは和術慧舟會が運営していました。

    山田 ボクには当日の朝に門馬から突然電話がかかってきて「塗っている映像が確認されました。これから首脳陣で集まって会議をするんで、帝国ホテルに何時に来てください」と。こっちからすれば「ど、どういうこと!?」ということで、わけもわからず帝国ホテルまで飛んで行ったわけです。

    ――当日になるまで連絡はなかったんですね。

    山田 で、ボクはほとんど話がわからないまま行ったんですけど、もうその場所には「オーレイ クエンチ ボディローション エキストラ ドライスキン」という例のクリームが置いてあって「現物はこれですよね」と。で、ボクは何もわからないから「どういうことなの?」と聞くんだけど、もう門馬も秋山もシュンとしてるんですよ。「え? これ塗ったの?」と。で、そのときにボビーとチェ・ホンマンの試合の最中に塗ったということを聞いたんです。

    ――審判団がバックステージカメラを確認したところ「2人が塗っていた」ということが公表されていましたが、その2人というのは、その日、秋山さんのセコンドだった門馬さんと山田さんだったんじゃないかという疑惑がかけられていますよね。

    山田 その帝国ホテルで久保社長が言うには、門馬は塗ってはいないけど、セコンドなので確実に現場にはいたと。で、当日はそれ以外にも成勲の周りに取り巻きみたいな人間がもの凄くいっぱいいたんですよ。

    ――その現場にいたのは、秋山さんの昔からの友達というか知り合いというか……。

    山田 そうそう、成勲の連れというかね。

    ――いまはRIZINなんかはバックステージ規制が敷かれて、事前に申請した関係者以外は選手の控室には立ち入ることは厳禁ですけど、昔は選手の練習仲間だったりすれば……。

    山田 全然入れましたから。

    ――選手がチームの仲間と一緒に入場してくる光景はよく見ましたが、規制が厳しい状況があたりまえになっている最近のファンにとっては「2人が塗っていたということは、セコンドの山田と門馬のはずだ」となりますね。

    山田 ああ、なるほどね……。でも、あの試合の入場を確認してくれれば「どんだけ人がいるんだ」となるはずですよ。たぶん7~8人いたんじゃないかな? その中の人間が成勲の身体にクリームを塗っていたんです。

    ――「なぜバックステージ映像を出さないのか」ということに関しては、谷川(貞治・当時のK-1プロデューサー)さんもいろいろと説明していましたけど。

    「映像を公開するという件についてですが、公開することになれば物理的なことをいうと編集したものになるわけじゃないですか。だからといってTBSさんが一大会につき30台以上のカメラで撮影しているビデオをすべて見せるというのは難しい。またそこで隠している映像があるんじゃないかと思われると、キリがなくなってしまいますよね。映像を見せたくないというのではなくて、審判団と桜庭選手にはちゃんと映像を見てもらって、確認しているというのを言いたかったんです」

    ――EDWINのロゴが剥がれたのはスポンサーに対してあんまりよろしくないし、もうひとつはTBSの権利映像という不自由さもある。もっとも大きな理由があるとすれば、そこに映っている選手、そして秋山さんの知り合いは一般人でしょうから、それは公開できないんだろうなと推測してたんですが……。

    山田 そのとおり。で、そこにセコンドに付く門馬がいて「あ~、いい匂い」と言ってたらしいんですよね。その映像が世に出ちゃうと、塗ってなかったとはいえ門馬が現役選手として活動できなくなるから。

    ――一般人も顔出しは厳しいし、モザイクをかけるとますます怪しいですよね……。門馬さんに、秋山さんが反則をやってるという意識はなかったんですかね?

    山田 うーん、どうなんすかねえ。帝国ホテルでは「おまえ、『いい匂い』だなんて後ろで笑っている場合じゃねえぞ!」と久保社長に怒られてましたもん。試合後あんな騒ぎになったじゃないですか。門馬が知ってたなら、教えてくれよって話で。そういうことなので映像は出せなかったんだと思います。でも、そうなるとファンは「何かあるに違いない」となっちゃいますよね。

    ――周辺の人間を守ろうとしようとしたことで、疑惑がさらに深まってしまったという。実際に塗った人間はその場にはいなかったんですか?

    山田 来てないです。あのときボク、久保社長にはっきり言われましたもん。「おまえがチーフなんだから(罪を)かぶれ」って。「おまえはこの業界の人間じゃないから」とも。

    ――「罪をかぶる」というのは、具体的にどういうことですか?

    山田 「おまえが現場にいたことにしろ」という感じでした。だから「は? 俺がかぶるんですか? いや、俺は全然、話がわかってないですよ」と。でも、久保社長いわく「おまえは外様なんだから」と。でも、外様なんだったら、こんな場に呼ばないでくれよという感じですけどね。「ふざけんな!」と思いましたよ。

    ――そこで罪をかぶっていたら、山田さんは大変なことになってましたよね。かぶってなくても映像が公開されなかったことで大変だったんでしょうけど。

    山田 本当っすよ! 何も解決しない。成勲も会見で「山田トレーナーはその場にいなかった」とは言ってるけど、ボクがあれだけ叩かれても全面的に否定しているわけじゃない。なぜなら「じゃあ、誰が塗っていたんだよ」となる……。

    ――ちなみに、秋山さんは会見でこう言ってるんですよね。「自分に付いていた山田トレーナーは、魔裟斗選手と試合をした鈴木選手のところに行っていて、自分でこう言うのもなんですが、自分の周りにはプロの人間がほとんどいません。クリームを塗っているときに、そういうことを言う人間はいませんでした」と。

    山田 いや、門馬はいましたよ。

    ――当時の裁定だと秋山さんは故意ではなかったということだったので、そこは他の人間に延焼しないようにしたわけですね。

    山田 それで映像を出せないことで、こうやってボクがずっと“首謀者”扱いされちゃうんですけど……。でも、もしボクがあの場にいたら、どんな判断を下していたのか。いまのMMAはUFCも含めてセコンド陣は3人までで、ある程度厳選された人間が集まるという感じですけど、あのときは取り巻きがいて、お祭り状態になっていたんでね。そこで「それ、大丈夫なの?」と確認できるかなあ。難しい状況ではあったのかなあ。競技というよりは、その雰囲気が。

    ――まさか堂々と反則行為をするとは思えないですし。

    山田 そうなんですよ。確信犯ならトイレにこもって塗るようなもんじゃないですか。

    ――これはあまり知られてないことですけど、翌年3月に行なわれたHERO’Sの第1試合で何が起きたかというと、メルヴィン・マヌーフvs高橋義生戦でマヌーフが足に塗ってはいけないものを塗布していたということでイエローカードから始まったんですよね。

    山田 え、何を塗ってたんですか?

    ――おそらくすべり止め目的の松ヤニの類だと思うんですけど。なので、レフェリー陣が総出でマヌーフの足裏を拭いているんですけど、ボクは「あれだけの事件があったばかりなのに、選手の異変にリングに上がってから気づくんだ」と驚いて。当時の競技統括はまだまだのレベルだったというか……。

    山田 そうですよねえ。当時は控室にレフェリーが来てチェックするとか、なかったと思うんですよね。ルールミーティグというか、ちょっとルールの説明みたいなのはありましたけど、いまみたいに競技化してどうのこうのというのは……。だって結局、靴も履いて戦ってよかったし、柔道着で試合をするのかどうかは本人の選択だったし。

    ――いまの日本は相当競技統括のレベルは上がってますよね。アメリカのようなコミッションがない中でも、ちゃんとしているというか。

    山田 ホントにそのとおりだと思います。

    ――「FEGと秋山とグルだったんじゃないか」みたいなことも言われてますけど。審判団・代表で試合後の調査も行なった磯野さんは「和術慧舟會は秋山さんと繋がりがあったじゃないですか。いま振り返るとK-1側は、審判団を含めて『ひょっとしたら何かを隠してるかもしれない』という疑念はあったかもしれないですね」と振り返ってますね。

    山田 あのときって、ほぼ慧舟會の選手でHERO’Sをやってたじゃないですか。だから、主催者側も慧舟會を刺激することができなかったんじゃないかなとボクは思うんですよね。だから当時のマスコミもそういったFEGと慧舟會の関係性は取り上げてないはずですし。もう覚えてないんですけど、ボクは「久保社長にこう言われた」ということは当時の取材でも言ってたと思うんですよ。

    ――そのことは当時のインタビューでもお話しされたんですか?

    山田 うーん、言ったような、言ってないような。万が一、言ってたとしても、やっぱり当時のパワーバランスからすると載せることは難しいのかなあと。

    ――こういうと慧舟會が黒幕だと、早とちりする方が出てきちゃいそうですけど、そういう話ではなくて。FEG、慧舟會、秋山成勲は歪な関係性であった。外側にいた桜庭さんからすれば、その三者がみんなで何か企んでいる、この件をもみ消すんじゃないかと見えちゃうでしょうね。山田さんがインタビューやmixiで何か発言することに対して、FEG方面から圧力みたいなのってなかったんですね。

    山田 それは、ボクが外様だったということもあって、ほとんどないですね。

    ――山田さんは帝国ホテルに呼ばれたときも、映像は確認させてもらえなかったんですよね?

    山田 確認してないです。

    ――それは、なぜだったんですかね。

    山田 いやー、なんなんですかね? 磯野さん、和田さん、久保社長は見ている側で、成勲と門馬は映っている当人なので。でも、ボクは映像を見てないし、現場にもいないから、「なんなの? 全然話がわからないんだけど」という。

    ――しかも「チーフなんだから」というなら、よけいに映像は見たいですよね。

    山田 見せてほしかったですし、ボクも「見せてくださいよ」と言いましたよ。でも、そのときは「いや、もうみんな見てるから」と。24000字インタビューの記事の続きと、大好評記事16本14万字の詰め合わせセットは、まだまだ続きます! 
  • 武田有弘☓小佐野景浩 「これまでのノアと、これからのノア」

    2021-09-25 18:47  
    130pt

    プロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回はノアを統括するサイバーファイト取締役の武田有弘氏をお迎えしてノアを語ります!




    <1記事から¥100から購入できる連載記事! クリックすると試し読みできます!>

    『ゴング』と東スポの元記者が語るプロレスマスコミ黄金時代/小佐野景浩☓寿浦恵一
    【14000字対談】小橋建太☓小佐野景浩「あの頃の全日本プロレスを語ろう」
    北尾はなぜ大成しなかったのか■柴田惣一☓小佐野景浩 マスコミ大御所第2弾柴田惣一☓小佐野景浩 プロレスマスコミ大御所対談「スクープ合戦はガチンコの闘いだった」全日本プロレスの「うっかり八兵衛」が明かす全日本秘話あの日の全日本プロレス、SWSを語ろう■北原光騎×小佐野景浩嗚呼、阿修羅・原……修羅ごときそのレスラー人生!!
    冬木弘道は「俺はやっぱり死ぬんだな」とニヤリと笑った…


    ──武田さんは新日本プロレス出身で、リデット時代からノアの運営にタッチされています。本日は小佐野さんと「これまでのノアと、これからのノア」について語っていただきたいと思います。
    武田 小佐野さんはノアに関しては詳しいですよね。
    小佐野 そうですね。選手たちのことは旗揚げ前から知っているわけだし。
    ──武田さんと小佐野さんはいつぐらいに知り合ったんですか?
    小佐野 武田さんが全日本プロレスにいた頃かな? 
    武田 そうですね。ボクは95年に新日本さんに入社して、02年に武藤(敬司)さんたちと全日本さんに移って。
    小佐野 私は全日本の担当だったから、新日本方面の方とはそこまで接点が持てなかったんですよね。武田さんのことで覚えてるのは、武藤さんの取材をするために武田さんに電話したら「わかりました。じゃあ、この日はどうでしょう?」ってすぐに日時を挙げてくれた。変な話、それまでの全日本の人たちって取材対応はかなり遅かったんですよ(苦笑)。
    武田 なるほど(笑)。
    小佐野 「あっ、武田さんは頼んだら、すぐやってくれるんだ」って安心した印象がある。
    武田 そこはせっかちな性格なんで。でも、そんな普通のことで驚かれるなんて、すごい会社だったわけですよね、全日本プロレスさんは。
    小佐野 もう20年近く前のことですし、当時のプロレス団体ってそんな感じですよね。
    武田 結局ボクは1年くらいで全日本さんをやめたんじゃないかな。
    小佐野 武藤さんが全日本の社長になったときはいた?
    武田 ……ときまでは、いたかなぁ。どうだろう。この業界の人って「自分は何年入社」とかいろいろ覚えているんですけど、そういう時系列の記憶がまったくなくて。
    小佐野 あの頃は業界もグシャグシャしてたから余計にね。あのとき新日本からは選手だけじゃなくて、武田さんとかフロントの人たちもゴッソリ抜けて全日本に来たでしょ。
    武田 新日本プロレスさんの試合ビデオを制作していたヴァリスの人間も移ったり。
    小佐野 それで武藤さんはレッグロックという会社も作ったりもしてて。
    武田 結局、全日本プロレスさんには全日本プロレスさんのやり方があるんで、武藤さん関連のグッズや芸能方面は別会社がやろうと。関係がややこしかったですね。
    ──当時K-1やPRIDEのブレーンだった柳沢(忠之)さんのローデスジャパンもいろいろと関わってましたよね?
    武田 あー、そうです。柳沢さんは新日本時代からけっこう仕事をやらせてもらってて。その人脈でスカパーさんで放送したり。当時はいまと違ってネット配信なんかはなかったから、CS放送やスカパーのPPVをやるしかなくて。
    小佐野 当時は地上波に頼らない団体運営が試されていた時代だったよね。
    武田 ものすごく大変でしたよね。ボクは新日本さんに戻っちゃいましたけど。
    ──ノアはサイバーエージェント(以下CA)体制となりましたが、体制変更の混乱もなくスムーズにやられてるなっていうイメージがあります。
    武田 じつはCA体制に移る前が最大のピンチだったんですよね。リデット体制になってそれまで整っていなかった社内の体制はうまく整えることができて、支払いなんかは問題なくなっていて。あとは投資していただける会社さえつけば……という段階だったんです。だから、もしCAの話がうまくいかなかったら、ノアは消滅していたんじゃないかなって。その頃と比べると、スムーズに見えるのかもしれないです(笑)。
    小佐野 CA以前のリデット体制でいえば、19年11月の両国大会が勝負所だったんですよね。あのときデイリースポーツの月1連載の記事を書くときに、武田さんに話を聞いたら「とにかく結果を出さなきゃいけない」「時間がない」と繰り返していたことがすごく印象的で。
    武田 あの大会が11月で、そのあとくらいからですかね、CAとそういう交渉が始まったのは。正式に決まったのは、発表間近だったんですよ。
    ──武田さんの「とにかく結果を出さなきゃいけない」という発言は発破をかけるために言ってるんだと捉えてていて。まさか本当に危機的状況だとは思わなかったですね。
    小佐野 まあノアがここまで生き抜いてきたのは、奇跡に近いものがありますよ。
    武田 それこそボクが関わる前から奇跡の連続だったんじゃないですか。
    小佐野 ホントそうですよ。ノアは三沢(光晴)さんがご存命のときもヤバかったわけだから。日本テレビの地上波もなくなっちゃったし、選手のリストラが始まっていたし……。
    武田 リデット体制になるまで、親会社も何回か変わってますよね。そんな中、新日本プロレスさんから選手がやってきて。
    小佐野 鈴木軍で2年間なんとか回してね。
    武田 全日本さんもいろいろあったけど、ノアの激動のせいで目立たないところもあるじゃないですかね。
    小佐野 そうかもしれないね(笑)。
    ──多くのプロレスファンはそこまでノアが深刻だとは捉えてなかったと思うんですね。大会はなんとかやってるから。
    小佐野 体制は変わっていたけど社名は社名であって、団体名とはまた別だからね。
    武田 やっぱりノアという看板の名前が大きかったのかな。どんなにピンチに陥っても、なくならなかったですよね。ボクがノアに関わったのは2019年の3月からで、経営の財務はもうキツイなってのはわかっていましたけど。リデット体制になってから、財務面ではまともにはなったんですよ。
    小佐野 いまだから言えますけど、リデットの前はホントにダメでしたよ。パンフレットの制作代は踏み倒されましたし(苦笑)、遅配はあたりまえで。もう当時の代表に直に話をしないとお金が出てこないっていう状況だったから。ノアとは昔からの繋がりだから、仕事の依頼は断らなかったんですけど。
    武田 その頃と比べたらリデット体制はすごくよくなったんですけど、それでもピンチには変わりなくて。CAに提出する資料を作って、プレゼンもやって、結果を待ってるあいだはドキドキして精神的にキツかったですね。
    小佐野 武田さんがノアに関わるようになって、いろいろと新しいことを打ち出していきましたよね。
    武田 当時のノアは結局やれてないことが多くて。やるべきことをやれば、よくなることはわかってたんですけど。何かをやろうとすると、お金がかかるっていうのがプロレス団体なので、なかなか難しいところでしたよね。何かをやったからといって、いきなりお金がバーっと入るわけでもないし。
    小佐野 やっぱりお金がないと、やれることやれないし。
    武田 結局ノア、全日本プロレス、新日本プロレスの宿命ですけど、ちっちゃく成功すればいいっていうわけでもないじゃないですか。そこが難しいですよね。やっぱり常に大きく、メジャーっぽくやらなきゃいけない。
    小佐野 思ったのは、武田さんは新日本の人間じゃないですか。ノアは全日本系。その選手たちと一緒にやっていくのは大変だったんじゃないですか。
    武田 ちょっと考え方が違うといえば違いますけど、そこまでめちゃくちゃな違いはないっていう安心感はありました。どちらかというと新日本さんが攻めだったら、ノアは守りのような文化はありますけど。いまはとりあえず「大きな成功しよう」と。その方法をちゃんと説明することで理解はしてもらっています。武藤さんが入団したりとか、ぶっ飛んだ攻めがあったりするじゃないですか(笑)。
    小佐野 驚きますよ(笑)。ノアらしからぬ攻めってことですね。
    武田 全日本系という意味では、やっぱり変化はあまり求めないところはあるのかな。なぜ変化させたかというと、変化を恐れているともう経営は成り立たなくて、選手を守れないから。変化することで批判されることは承知の上ですね。
    小佐野 やり方でいえば全日本や昔のノアっぽくはない。新日本っぽいんだけど、それがうまく刺激としてノアに入ってきてる。いまのノアがいいバランスだなと思ったのは、鈴木軍が来たときはノアのファンが引いちゃってたんですよ。
    武田 あー、そこまで見てないんですよね、あの当時のノアは。
    小佐野 結局、それまでのノアは長い試合を丁寧にやる文化だったのが鈴木軍がそれをぶっ壊して、鈴木軍ペースの試合になっちゃったことで、それまでのノアのファンが離れちゃったんです。
    武田 鈴木軍に太刀打ちできるくらいノア側が強ければよかったんでしょうけども。
    小佐野 まさに丸藤(正道)は当時を振り返って「あれはウチらのせいだ。結局全部向こうが持ってっちゃったから」と言っていて。結局、鈴木軍のほうがよっぽどノアのことを考えて戦っていたから。
    ──いまのノアの現場が変化を受け入れたのは、「さすがにもう変わらないとやっていけない」という空気を感じたからですか。
    武田 それも当然ありますし、一番大きかったのはお金がそんなにあるわけじゃないですけど、しっかりとした会社がついていれば、遅配とかお金に関する迷惑をかけなくてもいいことで信頼されるじゃないですか。小佐野さんがおっしゃった「ダメだった」ころは、会社から言われたことやっても、給料が出なかったり遅れたりしたら「ホントに任せていいの?」っていう不安な気持ちがあったと思うんですよ。
    ──生々しい話ですが、お金や生活の安定をさせてくれる人じゃないと選手はついていかない。
    武田 そりゃそうですよ。来月給料が出るかどうかわからない中で「試合をしろ」と言っても集中できないですよ。いいパフォーマンスはできないですよね。
    小佐野 集中しないとケガもしやすいしね。
    武田 たとえば小佐野さんや周りの人にも迷惑をかけてることを選手が知っちゃうと……。いまはとりあえずちゃんと信頼関係があるので、これから団体が大きくなれば選手に還元できる体制にはなっているので。
    ──それくらいノアは追い込まれていた時代があったっていうことなんですね。
    小佐野 これは武田さんが来る前なんだけど、芸能関係の仕事があるじゃないですか。そのお金を全部会社に持っていかれちゃったって選手から聞いたことあった。あとは未払いでどうしようもないから、業者さんにも毎回その場で現金払いという時代もあったみたいで。
    ──プロレス団体ってそこまでいくともう終わりですけど、そこからよみがえるってそうそうないですね。
    武田 そこで終わりとしないのがプロレス経営者なのかなと(笑)。FMWやW★INGとか昔からそうかもしれないけど。
    小佐野 あと周りも多少被害を被っても「ノアは潰しちゃいかん」という意識がずっとあって。
    武田 それもありますね。「ノアだから」って。
    小佐野 それは絶対あると思う。そりゃあ未払いに対しては「ふざけんな」ってなるかもしれないけど、「でもノアだしな……」っていう気持ちもあって。
    ──90年代はメガネスーパーの失敗があったことで「企業プロレス」のイメージは最悪だったんですが、最近は逆に「企業プロレスじゃないとダメだ」という空気にもなってます。
    武田 新日本プロレスさんもユークスが親会社になって、そのあとブシロードであそこまで復活して。企業プロレスじゃないとダメだってことじゃないですけど、たとえば新日本プロレスって90年代中盤にドームツアーをやっていた頃は年商39億円かな。いまのブシロード体制は50億円。この50億円は当時はなかったデジタル売上も追加されているじゃないですか。デジタルに強い親会社がつけば、いままでやれてなかったことがやれたり、獲得できなかった人材を獲得できたりする部分では相性がいいというか。そういう意味では、親会社がつくっていうのは理にかなってるのかなと思います。ただ単にお金を出す親会社がついてるだけなのは、あんまり意味がないと思うんですけど。
    小佐野 結局SWSの場合は企業プロレスというかタニマチプロレスだったから。税金で取られるくらいなら、とか、ちょっとでも宣伝になればいいやくらいの姿勢だったよね。
    武田 それだとビジネス的にシンクロしてなかったのかなと。だからユークスさんやブシロードさんとか、今回のリデットやCAは、お互いにメリットのある団体と親会社のつき方なんじゃないですかね。ノアに関していえば東京ドームをやっていた全盛期は年商20億円くらいあったんです。アナログ売上だけで20億円。
    ──2004年や2005年の頃ですね。
    武田 だからポテンシャルは全然あるんですよ。それに当時のノアが持ってなかったメディアがある。ABEMAもありレッスルユニバースもあり、そういう意味では本当にいいかたちはできていますよね。
    小佐野 2005年頃って、業界の盟主が新日本からノアに移ったって言われたんだけど。そこからの転落が早かったんだよなあ……。
    武田 あのときのノアの東京ドームってYoutubeなんかでも映像が見れますけど、お客様がすごく入ってますよね。その当時のボクは新日本さんに戻ってたんですけど、新日本プロレスはドーム大会にお客様が入ってなかった。三沢さんと杉浦さんのタッグがドーム大会に出たときに、当時ノア所属だったKENTAさんが会場を見て「新日本のドーム、お客さん入ってねぇじゃん」って言ってましたもん(苦笑)。
    小佐野 あの当時の新日本はいつドームから撤退しても、おかしくなかったよねぇ。
    武田 逆にノアの東京ドームは本当に入ってたと思うんですよ。ただ、あの当時のノアって力を持ちすぎていろんな団体と助け合う、束ね合うというか、ちょっと変な方向を目指してしまったように見えたんですよ。
    小佐野 要は「対・新日本」みたいなね。
    武田 そうそう。あの頃の新日本さんはどこからも嫌われてる団体だったから(苦笑)。誰も相手にしてくれなくて、それが結果としてブルーオーシャン的な世界が作れたのかなと。
    小佐野 あのときノアが中心となってグローバル・レスリング連盟(GPWA)っていう組織も作りましたよね。
    武田 そうなるとノアの選手がいろんな団体に出て助けなきゃいけない。で、いろんなところから選手を借りる。そうなると、どのカードをやってもどこかで見た試合だし、そのうちネタは切れますよね。あれでノアが完全にレッドオーシャンになっちゃったのかなと。
    小佐野 交流の弊害ですね。
    武田 そこを新日本さんは独自でやろうと。誰からも嫌われてるから(苦笑)。
    小佐野 あんまり亡くなった人のことは言いたくないけど、当時のノアの現場を仕切っていた仲田龍氏が野望を持ちすぎちゃったんじゃないかな。あの当時「銀行が金を借りてくれとしょうがない」って言ってたもんね。そういうこともあって拡大路線に入ると、他団体の選手を呼ぶことになるし、お金がかかるようになっちゃって。
    武田 ボクがノアに入ってから社員面談をやって「なぜノアがダメになったか教えてくれ」って聞いたら、大多数の人は「東京ドームをやったこと」そして「東京ドームをやめたこと」で。新日本プロレスは東京ドームがガラガラなことが何度もあったのに、それでもやり続けたんですね。それは資本があったから、ユークスのお金があったからで。ノアは新日本プロレスみたい会社の後ろ盾がなかったから、ドームをやり続けることができなくなったんだと思うんですよ。
    ──新日本とノアにはそこに違いがあったんじゃないかと。
    武田 なぜ「東京ドームをやめたこと」がよくなかったかというと、新日本さんにはいろんな資産があって。道場ももちろんそうだし、IWGPというタイトルやG1クライマックスという毎年恒例のシリーズ、そしてイッテンヨン東京ドーム。そういうフォーマットができてるから、人気が落ちてもそのフォーマットを軸に復活できるじゃないですか。そのフォーマット自体が資産なんです。ノアって引き継いだ段階で、東京ドーム大会もやめてしまったし、この時期にはこのシリーズを行うという毎年恒例のシリーズもなかったし、なんのパターンもフォーマットもなくなってたと思うんですよ。何か思いつきます? ノアで。
    ――そう言われると……たしかに。
    小佐野 変な話、最後に残ったのは「三沢光晴」っていう名前だけだから。それだけで、あとは何も残ってなかったね。
    武田 「三沢さんだったら、どう考えるだろう?」という文化頼りになんとかやってきて。新たに来年1月1日に日本武道館をやろうとしたり、今後はいろんなパターンを作ろうと思ってます。<16000字対談はまだまだ続く>
    この続きと、秋山成勲ヌルヌルの裏側、斎藤vsクレベル消滅、井上直樹…などの9月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「14万字・記事16本の詰め合わせセット」はコチラhttps://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2053667この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック! 1記事110円から購入できます!

     
  • 【RIZIN.30総括】斎藤裕vsクレベル・コイケはなぜ消えたのか■笹原圭一

    2021-09-23 16:38  
    150pt

    毎大会恒例! 笹原圭一RIZIN広報のインタビュー!!  今回はRIZIN.30を14000字で振り返ります!(聞き手/ジャン斉藤)【1記事¥110から購入できるバックナンバー】・斎藤裕、「ケラモフのダーティファイト」「朝倉未来vsクレベル」を語る

    ・最狂夫婦がRIZINに襲来! 久保優太&サラ「なんなら嫌われたいぐらい」

     

    ・朝倉兄弟とYouTube論■菊地成孔・18年ぶりに帰還! “魔物”が棲む東京ドーム大会総括■RIZIN広報・笹原圭一 
    ――笹原さん!RIZIN.30は面白かったんですが、大会終了後の榊原代表の総括ではクレベル・コイケに相当オカンムリのようでしたけど……いったい何が起きてるんですか?
    笹原 あんなに面白かった大会なのに、まずそこからですか。
    ――ぱんちゃん璃奈大好きマスコミの熊久保さんなら真っ先に「ぱんちゃんはどうでした!?」って聞きがちですけど、ボクはこの手のトラブルが大好物なんです!
    笹原 社長の総評では「3ヵ月前に斎藤裕とのタイトルマッチをオファーしたけど、体重が落とせないと断られた」「ケガをしたのは最近の話」「やる気のない奴にチャンスをあげるほど待っている気もないし、大晦日も可能性は限りなく低いよ」と。これだけ聞くとクレベル選手がRIZINの都合に合わせないから社長が怒っているように聞こえますが……RIZIN.31は10月24日に開催されることを昨日発表しましたけど、なかなか発表ができなかったのはクレベル選手待ちだったんですよ。
    ――でも、クレベル選手は斎藤裕戦のオファーをずいぶん前に断っていたんですよね。
    笹原 どういうことかといえば、6月の東京ドーム大会の朝倉未来戦のあとにクレベル選手には斎藤戦のオファーはしました。そのあともいろいろあったんですが、全部話すと5時間くらいかかるので省きます(笑)。で、結論から言うと、社長の説明どおり「体重が落とせないから無理。でもで11月の頭だったらやれる」という返答があったんです。いまはコロナの影響で会場を抑えるのも大変なんですが、それでも11月頭に空いている会場をなんとか見つけたんです。もちろん斎藤チャンプにも状況を説明して待ってもらっていたんです。
    ――予定を変更してお膳立てしたんですね。
    笹原 そうです。もう空いている会場を見つけるのは無理だろ……って半分諦めていたところで空き会場が見つかった。なので喜び勇んでクレベル側に連絡したんですよ。「11月の会場取れました!これなら試合(タイトルマッチ)できますよね!」って。
    ――それっていつ頃の話ですか?
    笹原 今大会の10日前くらいじゃないですか。ちょうどRIZINガール合宿とか撮影しているときですよ(笑)
    ――ガハハハハハ。
    笹原 そうしたら数日後に「足をケガをしました」という返答が来たんです。
    ――うわっ……。
    笹原 なのですぐに「診断書ください」って連絡したんです。ケガの状況も知りたいし、なんなら格闘家のケガに関するスペシャリストのRIZINドクターにも診断してもらって、少しでも可能性があるのであればその可能性を探ろうとしたんですよ。でも、全治1ヵ月だから11月の大会は無理だと。RIZINドクターに診せるまでもないと。
    ――9月頭の話で全治1ヵ月なら、ギリギリ間に合いそうな感じですけど、難しいと。
    笹原 ケガをしてしまったことは誰にでも起こりうることなので責めるつもりは毛頭ないですが、それで「11月は無理だけど、大晦日はよろしくね」と言われても、そりゃ素直に「ハイ、わかりました」ってなんないですよ。
    ――こういう展開だと、さすがに……それで榊原さんも「大晦日は使うつもりはない」と。
    笹原 おまけに足をケガしてるはずなのに「会場でクレベルが走ってましたよ」とかスタッフからの報告もあったり、あの日も別に運営本部にお詫びにくるわけでもなく……いやこれ、別にウチが偉そうにしていて、頭を下げろとか言ってるんじゃなくて、人としての礼儀の話ですよね。
    ――ケガはしょうがないけど、その後の対応がどうなんだってことですね。
    笹原 あの総評のときボクは別の場所にいたんです。こういった事情を知らないスタッフが「社長がクレベル選手に怒っていますけど、大丈夫ですか!?」って慌てて知らせにきたんですけど。交渉過程を知っているボクからすれば、社長はかなり抑えた言い方をしていると思いましたよ。
    ――これからどうなるんですか?
    笹原  いや、全然わかりませんけど、チャンピオンは準備できていて、体重が落ちないからって断った挑戦者にすぐまたチャンスを与えるつもりはない、という社長の説明どおりだと思いますけどね。
    ――でも、こうなると堀口恭司選手や那須川天心選手、朝倉兄弟のようにRIZIN側が「全力で磨こう!」という気持ちになりたくても、難しいんでしょうね。
    笹原 「選手は俺たちの言うことを絶対に聞け!」とか「ケガを押してでも試合しろ!」とか言うつもりもないし、実際に我々はそんなことしたことないですし。なんかもうちょっと誠実に話をしてほしかったなって感じです。なのでしばらく放っておくしかないんじゃないですか。
    ――そんな無責任な!
    笹原 10月、11月も大会が目白押しだし、RIZINガールも育成しなくちゃいけないし、やることいっぱいあるんですよ!
    ――まあ、いまはUFCやベラトールなんかも交渉がうまくいかないと「はい、この選手は後回し。次の選手」という感じで淡々と進めてますもんね、そうすると10月のメインは斎藤選手の試合になるそうですけど、相手は誰になるんですか?
    笹原 まだ決まってないですね。
    ――なるほど。しかし、斎藤チャンプの周りには嵐が吹き荒れますよね(笑)。「逃げる逃げる」と煽られていた相手が戦ってくれないわけですから。
    笹原 斎藤選手本人は何もしてないのに騒ぎが起きていて、不思議な磁場を持っていますよね。元気玉じゃなくて、みんなの不幸を不幸玉にして集めている感じすらしますね(笑)。
    ――その斎藤選手がリングで挨拶しましたけど、お客さんの反応はよかったですよね。
    笹原 すっごく大きな反応だったんですよ。
    ――ボクは以前からRIZINの斎藤裕評がちょっと低いんじゃないかって不安だったんですよ。
    笹原 試合後に社長とも「斎藤チャンプが登場したときの反応すごかったですね」って話してたんですけど、2人とも「正直、すまんかった」という感じですよ(笑)。
    ――いまのRIZINファンは健介ネタでごまかせないですよ! 最近思うのは格闘技興行って「ヤンキー的世界とプロレス的世界」しか商売にならないと見てて。斎藤選手がその2つにどちらもかぶってないので地味に見えるのかもしれないですけど、ピープルズチャンプの芽生えがあるのかなって。団体側が「スター誕生!」と煽られて登場した選手って応援しづらかったりするんですけど、逆に団体側は最初は推してなかったのに、いろんなトラブルに巻き込まれて、それでも戦っていく選手は感情移入できる。
    笹原 あー、たしかに。斎藤選手には何か応援したくなる自然な物語がありますもんね。
    ――試合中に反則をやられたり、判定結果で批判されたり、相手陣営に取り囲まれたり、逃げてないのに「逃げた」と騒がれたり、チャンピオンなのに第3試合に置かれてみたり(笑)。
    笹原 そうやって並べられると、なんか我々が常に茨の道を歩かせている感じがしますね(笑)。
    ――かつてのWWE的に見ると、悪のオーナーのビンス・マクマホンに酷い仕打ちを受けるベビーフェイスっぽいですね。あ、榊原さんが「悪のオーナー」と言ってるわけじゃありません。
    笹原 いや、言ってますね(笑)。でも、何かトラブルが身に降り掛かっても斎藤選手は東北出身だからなのか、ガマン強くグッとこらえているところもいいのかもしれないですし、なによりチャンピオンという立場が斎藤選手を成長させている感じがしますよね。10月大会の対戦相手はまだどうなるかわからないですけど。堀口恭司も、那須川天心も、朝倉兄弟も不在の大会を、斎藤裕はどうやってRIZINを支えるのかというテーマですね。
    ――入国規制がかかっている外国人選手の招聘はなんとかなりそうなんですか?
    笹原 大晦日に向けて関係各所に働きかけはしていますけど、自民党総裁選の結果によっても動きは変わってきますよね。
    ――総裁選の行方が!(笑)。
    笹原 だって総裁がそのまま首相になるでしょうから、その人が外国人を受け入れるのか、それとも規制するのか、どっちに針を振るかで我々みたいな立場は全然左右されちゃいますよ。社長が先日説明したように、ベラトールとも何かやれればと思っていますから、できるだけ早く入国規制をといてもらいたいと動いてます。
    ――ホントどうにかならないんですかねぇ。カルロス・ゴーンばりに楽器ケースの中に隠れて密入国するスコット・コーカーを想像しちゃいましたけど(笑)。
    笹原 スコットでいえば、今回の堀口選手の件で、社長がアメリカに渡って4日間ずっとスコットと一緒いて、いろんな話をしてきたんですよ。もちろんメインテーマは堀口恭司の話なんですが、じつはそれって今回の渡米で話した内容の一部なんです。で、おもいいっきり要約すると「お互いこの業界にも長くいて、プロモーター業も長い。50歳も超えて俺たちよく頑張っているけど、こんなもんじゃないだろ!もっと面白いことやろうぜ!」という、じつに若々しい話なんです(笑)。
    ――榊原さんとスコットが手を組んで何か大きな仕掛けをやろう!と。
    笹原 社長とスコットが話した中身を聞くと、夢見がちな中学生みたいな話なんです(笑)。で、社長はそれを本当に実現させようと熱を込めて説明してくるわけですよ。 まぁでも実現するのは相当大変そうなんで、ボクは何も聞かなかったことにしていますけど(笑)。
    ――ハハハハハハハハ! 榊原さんとスコットって不思議な関係ですよね。古くからの友人でもあり、プロモーター同士だからどこまでいっても商売敵じゃないですか。
    笹原 そうなんです。お互いがお互いのことをこれまでの歴史も含めてよく知っているから「オマエの苦労はよくわかってるよ」っていう感じなんですけど、一方で「それでもオマエには負けねーけどな」みたいな、関係なんですよ(笑)。
    ――愛憎が入れ乱れていて最高です!
    笹原 でもお互いの信頼関係がなければ、堀口恭司がベルトを巻いたままベラトールに移籍するとか、普通じゃ絶対に無理ですよ。スコットと社長の信頼関係があったからこそできたウルトラCの座組ですよね。このあちもたぶん、アッと驚くようなことが起こると思いますよ。
    ――スポーツに理解のある自民党総裁誕生を期待したいですね。そろそろ本題に入ります!
    笹原 もう1時間近くしゃべってますよ(笑)。
    ――ぱんちゃん選手がRIZINに初参戦、RIZIN初の女子キックが行なわれました。
    笹原 ぱんちゃん選手がなんとか女子キックというジャンルを盛り上げたい、RIZINで爪痕を残したい!! という心意気がものすごく伝わってきましたね。ただRIZINに出て嬉しいというだけじゃなくて、 自分の使命を背負っている姿勢が見えました。勝ったけどKOできなかった、大きなインパクトを残せなかったことも反省していましたし、自分に何か課して戦っているんだなと。 またチャンスを作りたいと思いますし、これでRIZIN女子キックは終わりということではないと思います。
    ――ぱんちゃんみたいな使命感が見える選手が増えてくれば面白いですね。 
    笹原 ボクらが課したんじゃなくて、彼女自身がそれを使命と思い、ある意味勝手に背負っているわけじゃないですか。そんな十字架なんてないほうが楽に決まってますけど、そういう覚悟がなきゃ、革命なんて起こせないですから。あとは格闘技ってやっぱりライバルがいてこそ盛り上がるところはありますし、ぱんちゃんに誰かが乗っかってきて渦ができれば面白いことになるんじゃないかなって思いますね。そういう意味では対戦相手の百花選手も素晴らしかった。自分が何をやるべきかっていうことがわかっていたというか。気持ちが見える選手はまたチャンスを作ってあげたいなって思わせますよね。
    ――女子格闘技はフォトジェニックということもあって、SNSやYouTubeとの相性はいいじゃないですか。それがリングに繋げられれば巨大な熱が……
    笹原 熊久保さんの熱狂の仕方もすごいじゃないですか。N野さんの話によると、「公開練習でも『何か質問ありま…』くらいで食い気味に質問してきたし、大会前インタビューでもマシンガンみたいに質問浴びせてましたよ」って言ってました(笑)。
    ――榊原さんの総括会見も、最初の質問が熊久保さんの「ぱんちゃんはどうでしたか?」だったんですよ! 榊原さんが「熊久保さんは女子キックが好きですねぇ」ってニヤニヤしながら喋り出して、例のクレベルの話に繋がっていくわけですけど(笑)。
    笹原 このジャンルを爆発させようとするなら、絶対に必要な熱量ですからね。でも、ぱんちゃん自身が熊久保さんの気持ち悪いくらいの熱量どう考えているのかは、わかりませんけど(笑)。
    ――第2試合は昇侍vs鈴木千裕。昇侍選手が下馬評をひっくり返す秒殺KOでした。
    笹原 鈴木選手は緊張していたのか印象としては動きが固いなって思いました。初めての舞台で舞い上がっていたところもあったのかもしれないですし、 やっぱり平常心で戦うことって簡単なことではないですよね。一方で昇侍選手はやりましたね。素晴らしかったです! 笹原 昇侍選手にオファーしたとき「相手はキックボクサー」という程度の認識だったみたいなんですね。で、 よくよく調べたらMMA経験もあってメチャクチャ強いんじゃないか!ってことがわかって(笑)。「打ち合うんじゃなくて寝技で攻めたほうがいいんじゃないか?」とか、「でもRIZIN側が望んでるのはそうじゃないだろう!」という葛藤があったらしいんですよね。
    ――昇侍選手のほうがキャリアは上だから、MMAとして臨めば勝機を見出せますよね。
    笹原 だけど「俺がRIZINに呼ばれたのはそうじゃないだろう」と。そこで絶妙なアドバイスをした人間がいたんですよ。
    ――ほほう。
    笹原 「相手はRIZINデビュー戦で絶対にインパクトを残そうとするからガンガン振り回してくる。 おまえはコンパクトに打ち返せ!」。実際に鈴木選手は力任せにガンガン前に出たところを……。そのアドバイスもあって昇侍選手はKOできたんだと思います。
    ――その“諸葛孔明”はいったい誰なんですか? 一緒に練習している朝倉海ですか、それとも分析には定評のある朝倉未来……?RIZIN.30の各試合振り返り、金太郎パンフレット事件、朝倉未来リングに上がらずの舞台裏……などなど14000字インタビューはまだまだ続く!
    この続きと、秋山成勲ヌルヌルの裏側、斎藤vsクレベル消滅、井上直樹…などの9月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「14万字・記事16本の詰め合わせセット」はコチラhttps://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2053667この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック! 1記事110円から購入できます!
     
  • バンタム級GP優勝候補・井上直樹の弱点、教えます■セコンド・水垣偉弥

    2021-09-22 18:04  
    110pt
    北米MMAを知り尽くした男・水垣偉弥が語る井上直樹vs金太郎!(この記事はニコ生配信されたインタビューを構成したものです)


    【1記事から購入できるバックナンバー】・井上尚弥、那須川天心の拳を守る「バンテージ職人」永末ニック貴之インタビュー・【ドーム震撼】井上直樹フリップ事件の真相■水垣偉弥

     
    ・【バンタム級GP】直樹選手の第1希望、第2希望ではなく……■シュウ・ヒラタ

    ・矢地地祐介の関節蹴りがサトシ・ソウザ爆発のトリガーとなった
    ――水垣さんがセコンドに付いた井上直樹選手は金太郎選手との試合でしたが、率直な感想からお願いします!
    水垣 そうですね。2ラウンド中盤までの作りは予定どおりだったかなと。そこから一歩進んでフィニッシュを狙っていこうという作戦だったんですけど。 想像以上に金太郎選手の気合いが入っていたというか(笑)。
    ――金太郎選手はすっごく頑丈でしたねぇ。
    水垣 井上くんはカーフをめっちゃく蹴ってて。試合途中、金太郎選手は蹴られて嫌そうな感じはしてましたけど、試合後に裏で会ったとき足を引きずることなく普通に歩いていたので「マジかっ!?」ってビックリしました(笑)。
    ――えげつない関節蹴りもけっこう入ってましたよね。
    水垣 そうなんですよ。ボクらの前で見栄を張っていたのかもしれないですけど、それにしても……。ボクなんかレガースをつけててもカーフキックを3発もらったら、もうヤバイですよ(笑)。金太郎選手、ぶっ飛んでるなぁと思いました。頑丈さと気合いは凄いですよね。 
    ――堀口選手選手のカーフは踏み込んで蹴りますけど、井上選手とはどう違うんですか。
    水垣 選手によって蹴り方に違いはあって、井上くんのカーフはジャブ的なものですね。
    ――ジャブでもあれだけ蹴られればダメージは蓄積しますよね。
    水垣 あれでも、めっちゃ痛いはずですよ(笑)。3ラウンドになって井上くんが打撃をもらう局面もありましたけども、内容的には完勝だったんじゃないかなと。セコンドのボクと安田(けん/SONIC SQUAD代表)さんは金太郎選手のペースに合わせないで、 普通にテイクダウンを狙おうという話はしてたんですけど。それは試合前から考えてて、2ラウンド終了後のインターバルのときも「組みもある」と言ったんですけど……井上直樹選手の気の強さが……
    ――寝技には行かないと?
    水垣  あんまり皆さんには伝わってないですけど、井上くんはめちゃくちゃ負けず嫌いで、めちゃめちゃ気が強いところがあるので。そこはお姉ちゃんの魅津希選手の試合を見ればわかるんですけど、やっぱり兄弟だなという血筋をあらためて感じましたね。
    ―― 「テイクダウンができなかった」んじゃなくて、気の強さのせいで「狙わなかった」んですね。
    水垣 「行ってもいいんだよ」と、しつこく言っていたし、そういう練習もしてたんですけど。いきなり狙うのはリスクはあるけど、2ラウンド中盤までの戦いで、だいたいの感じは掴めてきてたので、むしろ組みに行こうと。セコンドから見ても、 金太郎選手はテイクダウンディフェンスは強いとは思うんですけど、組みには差はあったと思うんですね。
    ――それに3ラウンドの金太郎選手の間合いの詰め方だと、テイクダウンは狙いやすいですよね。
    水垣 そうなんですよ。2ラウンドの様子から見ると、金太郎選手は3ラウンドは覚悟を決めて前に出てくると思ってたので、 そこは絶対に付き合わないで、サクッとテイクダウンしちゃおうぜ、と。試合後に井上くんに話を聞いたら「……それをやっちゃったら負けたような気がする」と。
    ――井上直樹、カッコイイじゃないですか!
    水垣  セコンドとしては「いやいやいや!」なんですけど(苦笑)。そこはファイターとしては魅力的で、彼の良さでもあるんですけど。トーナメントで戦わないといけない日は決まってるし、それを考えると余計なリスクやダメージは避けたいですよね。でも、本人は「あそこで引くのはイヤだし、楽しくなっちゃった」って言ってました(笑)。
    ――すごいなあ(笑)。マネジメントのシュウ・ヒラタさんのツイートによれば、井上選手は右手をケガしていて、ほとんどの使えなかったんですよね。
    水垣 そうなんですよ(苦笑)。今回の試合を見直していただければわかるんですけど、右はほとんど使ってなかったんです。そんな事情もあってカーフキックを軸にする作戦を立ててたんですよね。
    ――途中で組みを狙うはずが、「楽しくなっちゃった」ことで打撃戦に終始したと。
    水垣 セコンドとしては「それはちょっとやめてくれ!」って感じなんですけどね(笑)。
    ――右も使えないわけですし。
    水垣 前回の試合(石渡伸太郎戦)を決めたフィニッシュブローの右は使えなかったんですが、それ以外の武器が本当に多いので。何か一つ使えなかったぐらいで……という自信が井上くんにあったんだと思います。
    ――相手のパンチをスレスレでかわすディフェンスは凄まじかったですよね。
    水垣 井上くんと練習をするとわかるんですけど、本当にね、パンチが当たらないんですよ……(しみじみと)。3ラウンドに鼻血を出して、金太郎選手がどんどん前に出て、金太郎選手のファンが多いこともあって 会場が沸いて。パンチはかわしてましたけど、この盛り上がりが判定に響くんじゃないか……ってドキドキしてたんですね(笑)。
    ――ジャッジが雰囲気に飲まれちゃうんじゃないか?ってことですね。
    水垣 そうです(笑)。「ジャッジ、見ててよ」って思ってましたね。金太郎選手の根性で、そういう雰囲気が作られてしまったところがあってドキドキしました。
    ――島田裕二さんが競技運営のトップだった時代だったら、そんなノリで金太郎選手に判定がついていたかもしれないですね(笑)。 ボクはPPV観戦で画面で見ていたので、井上選手がパンチをかわしてることはわかってたんですけど。会場だと、ちょっとわかりずらいですよね。
    水垣 距離もホントに近かったんですよ。それはかわすことに自信があるからなんでしょうけど、実際にあの距離でもらわなかったですからね。さすがだなっていうところですかね。 
    ――そんな井上選手に反省点があるとすれば、どこですか。
    水垣 最後にムキになっちゃったところ。そこも良さではあるとは思うんですけど。ボクが井上くんの練習を初めて見るときに言ったのが、相手に合わせすぎて星を落としていることで。 アメリカでやったCFFCの試合でも、全然負ける相手じゃないのにグラップラー相手にがっちりグラップリングの勝負をして負けてしまったり。今回は判定で勝ったんですけど、なんでもできるからこそ相手に合わせて星を落としているので。なんでもできるぶん、器用貧乏じゃないですけど、 なんとなく相手に合わせちゃう。 これから上に行くにあたっては、そういうところが負けにつながる可能性が出てくるので。ファイターとして魅力としても残しつつも、やらないところはやらない戦い方を身につけてほしいなっていう。・井上直樹のさらなる弱点とは?・朝倉海戦の展開予想「先手はこちらが打てる」・RIZINニューリング今後のポイント……まだまだ続く!
    この続きと、秋山成勲ヌルヌルの裏側、斎藤vsクレベル消滅、井上直樹…などの9月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「14万字・記事16本の詰め合わせセット」はコチラhttps://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2053667この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック! 1記事110円から購入できます!
     
  • 大混乱!! 続・パンクラス商標問題■シュウ・ヒラタのMMAマシンガントーク

    2021-09-17 12:00  
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    多くのMMAファイターをマネジメントするシュウ・ヒラタ氏が北米MMAシーンを縦横無尽に語りまくるコーナー。今回のテーマは大混乱!!  続・パンクラス商標問題です!!(この記事はニコ生配信されたものを編集したものです)
    【1記事100円から購入できる過去記事】・【仮想通貨詐欺】なぜ私はTDTのスポンサーオファーを断ったのか


    ・【バンタム級GP】直樹選手の第1希望、第2希望ではなく……
    ・修斗はローカルなのか■シュウ・ヒラタのMMAマシンガントーク
    ・【フェザー級転向】佐々木憂流迦の朝倉未来戦はありえるのか


    ――前回PFL 日本進出の話題が出ましたが、軽く詳細をツイートしたところ、話に尾ひれがついてネット上で膨れ上がってるんですよね。いちいち「そういう話じゃないですよ!」と訂正するのも面倒くさいので放っておいてるんですけど(笑)。 
    シュウ あ、けっこうな話題になってるんですか(笑)。
    ――「日本大会をやる」とか「RIZINと手を組むのか」とか「誰々を獲得するらしい」とか。あの回の放送を聞いていた方は、どんな話はわかってたんですけど。 
    シュウ とりあえずPFLはアメリカを主戦場にリーグ戦をやってる団体ですからね。まずは日本で放送したいんだと思いますよ。 そのためには当然日本人選手がいないと「誰が見るんだ?」という話になっちゃいますから。 いまはコロナ禍ですから日本大会開催はリスクがありますし、PFLをやってるのは元K-1のレイ・セフォー。彼は日本市場をよく理解してますからね。
    ――まずは見てもらって知ってもらってから……ということですね。いろいろと期待したいです! 今日の本題に入りますが、以前パンクラスが商標で揉めてるという話をしていただきました。
    世界的な詐欺事件? パンクラス商標騒動を追う■シュウ・ヒラタのMMAマシンガントーク
    https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1990284
    シュウ 前も話しましたが、アメリカでパンクラスのロゴや商標なんかが5種類あるらしいんですけど、そのエリックという人が持っている『ブロウン・ファルコン(Blown Falcon Productions LLC)』とかいうプロダクション会社が商標登録の申請をし始めたんです。これはちょっと複雑な話なんですけど、5つのロゴのうち1つは2019年かなんかに一回権利が切れちゃってたみたいで、その更新手続きをしていないあいだに、うまいことエリック側の申請が入り込んじゃったみたいなんですよね。その1つのロゴを巡って裁判が行なわれているんですが……。
    ――その最中にアメリカで勝手にパンクラスの大会が開かれてるという話は聞いてましたが、今度はなんと無差別級チャンピオンが決定したという(笑)。
    シュウ そうなんですよ(笑)。こちらでは「パンクラス・ハイブリッドレスリング」という訳のわからない団体が立ち上がりまして。4月4日にサンディエゴで旗揚げ戦を行ない、5月23日、そして8月28日も興行をやってるんですよ。 
    ――本家パンクラスのペース並に!
    シュウ 「パンクラス・ハイブリッドレスリング」ルールということで、グローブを付けずに掌底、レガースも履くことができます。つまり全然MMAではないんですね。8月28日の大会を見に行った私の友人いわく「これはプロレスの試合なんじゃないのか」という感想だったんです。
    ―― 要は競技ではないということですね。
    シュウ そういうことです。コミッションが管轄していないアンダーグラウンドなプロレスの大会になっちゃってるわけですよ。たいして宣伝もしてないからおかしいとは思ってたんですよね。 普通はガンガン宣伝してメディアを呼んだりするわけじゃないですか。旗揚げ大会のときにはジョー・マレンコやバス・ルッテンを呼んでセミナーを開催したりして。このセミナーを受けたらパンクラスのインストラクターになれると。そういうビジネス商法もやってたんですけど。 
    ――ああ、そうやって収益を。
    シュウ しかもパンクラス・ハイブリッドレスリング以外に、パンクラス・グラップリング、パンクラス・キックボクシング、パンクラス・ボクシングというディビジョンもできてまして。
    ――知らないあいだに拡大してるわけですか!?(笑)。
    シュウ もちろん大会はまだやってないですけど。そうやって打ち上げてはいるんです。 パンクラス・ボクシングのマッチメーカーはUFCでも活躍したクリス・ライトルが就いたとアナウンスはされましたが、そのあと何も動きはありません(笑)。
    この続きと、秋山成勲ヌルヌルの裏側、斎藤vsクレベル消滅、井上直樹…などの9月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「14万字・記事16本の詰め合わせセット」はコチラhttps://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2053667この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック! 1記事110円から購入できます!
     
  • ベラトール参戦!! ヒョードル化した堀口恭司

    2021-09-14 16:12  
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    この記事は堀口恭司ベラトール参戦を語ったDropkickニコ生配信を編集したものです(語り:ジャン斉藤)【1記事から購入できるバックナンバー】・最狂夫婦がRIZINに襲来! 久保優太&サラ「なんなら嫌われたいぐらい」
    ・【仮想通貨詐欺】なぜ私はTDTのスポンサーオファーを断ったのか■シュウ・ヒラタ
    ・弱火なビッグマウス!井上直樹「金太郎選手は……実績的に……やってもなあって」
    ・「もうやめるはずだったんです」……すれ違いのRIZIN、大塚隆史人生劇場
    堀口恭司のベラトール定期参戦が発表されましたが、その前日にアメリカン・トップチーム(以下ATT)のポッドキャストで堀口選手がフリーエージェント(以下FA)であることを明かしたことが大きなニュースとなっていました。
    これは明らかに不自然な流れではあるんですよね。 RIZIN側の説明によれば、榊原(信行)さんが渡米してベラトールのスコット・コーカーと話をつけてきたのであれば、その発表の前日になぜ堀口恭司がFAを明かすのか? ATTのツイッターアカウントも「どこの団体に行くのか?」みたいなアンケートで煽る必要ないわけですし、 ATTのポッドキャストの「2時間後に決める」というのもジョークですよね。だってベラトールに内定してたわけですから。
    そしてRIZINはチャンピオン契約というオプションもなしに、堀口恭司を朝倉海に挑戦させたのか?という話にもなるじゃないですか。 やっぱり堀口恭司という存在はRIZINの根幹を支える存在であって、簡単に手放せない。マネル・ケイプやイリー・プロハースカ、ハム・ソヒなんかは王者のまま離脱しちゃいましたけど、彼らも素晴らしい格闘家とはいえ、堀口選手とは訳が違うと思うんですよね。
    バンタム級ジャパンGPの優勝者が堀口恭司に挑戦できると榊原さんが明言していなかったのは、すでにFAだったからじゃないか?とも言われがちですけど、仮に堀口恭司とのあいだに契約があっても確約はしづらい話ですよね。挑戦するとなれば、例年のRIZINの日程からすると2022年の4月以降。1年半後のことなんてわからないですからね。 じつは今年までの契約だったかもしれない。
    これは勝手な憶測ですけど、今年までは契約はあったように見えるんですよね。ただ新型コロナの隔離政策で堀口選手が入国来日しづらいし、それなりの対戦相手を海外から招聘できない。という中で、何かしらの理由で試合ができないのであれば、契約を破棄できるオプションがあってもおかしくはない。 
    まあFAまでどういう過程があったのかはわからないですけども、ここからRIZINがすごいなと思ったのは、べラトールに移籍するにしてもRIZINのベルトを持ったまま、ということですね。独占契約前提の団体に移籍する場合は、ベルトを返上するのはスタンダート。修斗やDEEPの王者がRIZINに参戦するのとはケースが異なります。
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  • 帰ってきた事情通Zの「プロレス 点と線」

    2021-09-14 15:39  
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    プロレス格闘技業界のあらゆる情報に精通する事情通Zのコーナーです。【1記事から購入できるバックナンバー】・なぜ私が東京女子プロレスの解説を?■小佐野景浩の「プロレス歴史発見」
    ・【GLEATなU】船木誠勝「2021年のUWF」14000字インタビュー
    ・プロレスラーTAJIRIはなぜコラムを書き続けるのか
    ・静岡プロレスとは何だったのか■インディの帝王・佐野直インタビュー②
    ――Zさん、お久しぶりです!
    事情通Z 久しぶりだねぇ。最近はどんなニュースも新型コロナ絡みになってしまって……どこの団体も客入りは大変ですよ。仮にコロナが収束しても客足は戻らないんじゃないかなあ……。
    ――プロレス団体もコロナで欠場が相次いでますよね。
    Z フリーがけっこう参戦していたり、他団体と交流がある団体はどうしてもレスラーの行き来が激しくなるから感染しやすくなるよね。ちなみにサイバーファイトはサイバーエージェントの職域接種により、レスラーやスタッフがワクチンを打てたみたいだね。
    ――ABEMAの格闘技イベントに関わる関係者もの職域接種で打てたみたいですね。
    Z そこはサイバーエージェントという大企業がついている恩恵だよね。
    ――元気のないプロレス界の中でスターダムは元気そうですけど……。
    Z 他の団体から選手も続々と集まっているよね。ロッシー小川さんは東京スポーツのインタビューで引き抜きを否定し、「(女子プロ界には)アルバイト兼業の団体もあるんですよ。ここはプロレスに専念できるという意味では、やりがいがあるんじゃないですかね」と言っていたけど、全選手専業はスターダムだけなんじゃないかな。
    ――東京女子プロレスやアイスリボンでもなかなか難しい……
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  • CMパンク、AEWでプロレス復帰…「契約書にサインをしたのは登場30分前だ」

    2021-09-14 15:21  
    110pt

    アメリカのインディプロレスの“現在”を伝える連載! アメリカインディープロレス専門通販「フリーバーズ」(https://store.shopping.yahoo.co.jp/freebirds)を営む中山貴博氏が知られざるエピソードを紹介していきます! 今回のテーマは「CMパンク、AEWでプロレス復帰」です!
    <1記事から買えるバックナンバー>・WWEを追い詰める「CMパンクとダニエル・ブライアンのAEW移籍説」
    ・AEWとドミノ・ピザが巻き起こすプロレス流血問題
    ・飲酒酒運転で4度逮捕されても……試合を許されるWWEスーパースター
    ・新日本と提携? 団体売却? WWEを動かす男ニック・カーンとは何者か
    「WWEは、もはや才能あるレスラーが憧れる団体、目指す団体ではなくなってしまった」
    こうWWEを批判するのは、WWE殿堂者のハードコア・レジェンド、ミック・フォーリーだ。
    「私だったら、現在のWWEのクリエイティブに、自分のキャリアを託すことなどできない」
    自身の息子もクリエイティブチームに所属しているにもかかわらず、WWEのクリエイティブを痛烈に非難した。
    それに対し、フォーリーはAEWに関しては高く評価する。
    「AEWは、素晴らしいメンバーを揃えてきて、魅力的なストーリーラインにも事欠かない」
    9月5日(現地時間)、アメリカ・シカゴで行われたAEWの特番「All Out 2021」終了後に、フォーリーが発したSNSでの上記投稿が賛否両論の物議を呼ぶ。
    「WWEとAEWが競争することは、業界全体にとって最善をもたらすことになるだろう」
    フォーリーは発足二年足らずの新興団体AEWが、業界の盟主WWEを脅かす競合団体として台頭してきたことを称賛する。
    実際、2001年3月のWCW崩壊後、20年もの長きにわたり、競合不在の一強独占を築いてきたWWEであるが、ここ最近のAEWは、90年代の“WWF対WCW二団体時代”の再現かと期待を持たせてくれるような勢いである。
    この続きと、秋山成勲ヌルヌルの裏側、斎藤vsクレベル消滅、井上直樹…などの9月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「14万字・記事16本の詰め合わせセット」はコチラhttps://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2053667この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック! 1記事110円から購入できます!
     
  • 【1記事から購入できる必読記事厳選集】DropkickバックナンバーBEST100

    2021-09-11 07:04  
    2000記事近くの中から必読人気記事をピックアップしました! 
    【仮想通貨詐欺】なぜ私はTDTのスポンサーオファーを断ったのか■シュウ・ヒラタのMMAマシンガントーク
    船木誠勝「2021年のUWF」14000字インタビュー
    静岡プロレスとは何だったのか■インディの帝王・佐野直インタビュー②
    「VADER TIME ベイダータイム 皇帝戦士の真実 」■Dropkick読書会
    RIZIN漢塾 塾長・石渡伸太郎“引退”1万字インタビュー
    【バッティング問題】平本蓮はなぜ皇治と魔裟斗が大嫌いなのか
    【リデットUWF批評】北岡悟「UWFって格闘技をちゃんとやってないとできなくないですか?」

    インディの帝王・佐野直12000字インタビュー

    「もうやめるはずだったんです」……すれ違いのRIZIN、大塚隆史人生劇場

    “修斗伝承者”中村倫也 日本格闘技界の歴史と未来を背負う男

    ボンサイ柔術「朝倉未来
  • 「すべらせろ!」と叫んだセコンド山田武士が明かす「桜庭和志vs秋山成勲の真相」

    2021-09-11 06:13  
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    秋山成勲、突然の告白……あの桜庭和志戦のセコンドだったJBスポーツ山田武士インタビュー(聞き手/ジャン斉藤)【1記事から購入できるバックナンバー】・【必読記事厳選集】DropkickバックナンバーBEST100
    ・レイザーラモン「学生プロレスから見たプロレスが変わった瞬間」・船木誠勝「2021年のUWF」14000字インタビュー
    ・Uのミライを見た女――高岡左千子「私は運気からUWFのスケジュールを組んでいたんです」・『1984年のUWF』はサイテーの本!■「斎藤文彦INTERVIEWS⑬」 

     秋山成勲が清原和博と自身のYouTubeチャンネルで、いまから15年前の桜庭和志戦の“真実”を明かした。その内容は動画を確認してもらいたいが、突然の告白は当時の事件をあらためて振り返るきっかけをつくることになり、秋山成勲の動画も深くは踏み込んだ内容ではなかったことから、当時から囁かれていた「主催者とグルだったのではないか」「グローブに凶器を仕込んでいたのではないか」という疑惑も再燃させてしまった。やってはいけない反則を行なったとはいえ、しかるべき罰を受け、謝罪を行なった秋山成勲が15年経っても批判を浴びてしまうのは、主催者によるこの事件の調査に対する不信感も理由のひとつに挙げられるだろう。そのため今回登場する山田武士トレーナーも“疑わしい人物”というイメージが強い。
     山田氏は当時の秋山成勲のコーチであり、セコンドも務めていた。あの日、最も間近で秋山成勲と行動をともにしたひとりである。秋山成勲がなぜこのタイミングであのような動画をアップしたのか。その真意は掴みかねるが、こういった機会にあらためて山田氏に当時の話を伺った。
    「正直、15年経ってるからこそ話せることもあります」(山田)
    あのときなぜバックステージ動画が公開されていなかったか。秋山成勲にかけられたクリーム以外の疑惑――たとえばメリケンサック――についても山田氏は洗いざらい語ってくれた。総文字数24000字、試合中に「すべらせろ!」と叫んだ山田武士が語る「桜庭和志vs秋山成勲」。
    ――2014年の川尻達也UFC参戦のときから、川尻さんを支える山田さんにかれこれ10回近く取材していますけど、秋山成勲さんのヌルヌル事件について、じつはちゃんとうかがったことがないんですよね。
    山田 ああ、そうですかね。
    ――なぜかというと、あの試合直後から山田さんはご自身のmixiでいろいろと発信されていたり、他媒体でも取材を受けていたからで、山田さんの言い分を聞くまでもなかったという。ただ、15年経ったいまでも、秋山さんにクリームを塗った“首謀者”だと言われていますよね。
    山田 まだ言われるのかって、ちょっとビックリですよね……。
    ――このインタビューをしたところで、また「本当のことを言ってない!」という反響が出てくる虚しさはあるかもしれないですが、それでもおうかがいしたいと思います。
    山田 はい、よろしくお願いします。じつはあの試合があったとき、ウチの子供が生後半年だったんですよ。ウチの嫁と試合のあった大阪に来ていて……それがもう中学生ですからね。時が流れるのは本当に早いし、その子供が「えっ、そんなことがあったの?」ってネットで調べられる年齢じゃないですか。
    ――「ウチのお父さんはこんな悪いことをしていたの?」と。あの当時のニュース記事ってあまり残ってなくて、疑惑だけがネットを彷徨ってるところはありますね……。
    山田 今回、成勲がどういう思いであの動画をアップしたのかはわからないけど、こういう機会だから、すべて話しますよ。もしかしたら当時もしゃべってるのにメディアの都合でカットされてることがあったのかもしれないですけど……。正直、15年経ってるからこそ話せることもあります。
    ――あの事件直後に関係者で何かしら発信していたのって、山田さんぐらいなんですよね。
    山田 そうなんですよ。成勲がホントに塗ってるとは思ってないからmixiでも、そういった疑惑の声に反論しましたし。
    ――山田さんはmixiで「言いがかりはやめてくれ」と発信をしていて。だからこそ塗ったことが判明したときに大バッシングを浴びましたよね。
    山田 そうなんです。ホントに何も知らなかったし、まさか塗ってると思わず成勲を庇い続けたのにね。運営側も成勲と組んで桜庭さんを陥れようとして「グルだ」とか言われているけど、そもそも桜庭vs秋山というカードが組まれたのは、たしか“桜庭さん推し”だったからですよ。
    ――山田さんにはそういう認識だったんですか。
    山田 あの2006年は桜庭さんや成勲の階級でトーナメントをやっていたじゃないですか。10月の大会で2試合、成勲は準決勝ケスタティス・スミルノヴァス、決勝メルヴィン・マヌーフに勝って優勝しましたけど、桜庭さんは8月のスミルノヴァス戦で、勝ったけども結果的にとんでもない試合だったじゃないですか。
    ――桜庭さんがスミルノヴァスの打撃を食らって半失神状態なのに試合は続行されて。
    山田 桜庭さんは耐えて耐えて、スミルノヴァスがスタミナ切れして一本取ったみたいな。それで10月9日に成勲と桜庭さんの準決勝をやる予定だったんですけど、桜庭さんが体調不良でトーナメントを途中離脱したんですよね。そんな中で成勲が優勝したんですけど、その優勝後のマイクに関して、試合を中継していたテレビ局のTBSか、FEG(HERO'S主催者)スタッフのどちらかが成勲に「リング上から桜庭さんに対戦要求してくれ」と。
    ――そういう指示があったんですか。
    山田 でも、こっちからすると「え?」と。だって、同じトーナメントに桜庭さんは出ていたわけだし、成勲はそのトーナメントで優勝したわけですから。だから、それを言われたときは成勲も明らかにムスっとしたんですよ。「そんなこと言いたくない」っていう表情。だけど、そこは成勲なんで、マイクを渡されたら解説席にいる桜庭さんに向かって「桜庭さん、お疲れさまです。ケガを早く治されて、大晦日やりましょう」とアピールしましたけどね。だから、運営側としてはあの試合は桜庭さんありきで組んだと思いますよ。それにHERO'Sは試合時間を1R10分・2R5分に変更してましたし。
    ――桜庭さんがHERO’Sに移籍したことで、それまで主戦場にしていたPRIDEに合わせて1ラウンド10分、2ラウンド5分の試合時間になったと。谷川さんもこのマッチメークが決まったときに「秋山成勲にプロの厳しさを教えてやってほしい」と言ってましたね。
    山田 だから、桜庭さんありきの大晦日だったんですよ。
    ――ただ、TBSは秋山さん推しだったというところはあるわけですよね? 要は、桜庭さんはPRIDE、つまりはフジテレビのスターで、TBSからすれば自分たちでスターをつくり上げたかったというか。
    山田 まあ、もちろんそれはあったと思いますけど。あとは大晦日だから、それなりのカードが必要になってくるじゃないですか。
    ――大晦日にクライマックスを持ってこないといけないから、日程優先でカードを組まないといけない。だからFEGは秋山さんにマイクアピールの指示をしたし、秋山さんは優勝直後で不満ながらも受け入れたんですね。
    山田 そういうことですね。
    ――そもそも、当時の秋山さんと山田さんはどういう関係性だったんですか?
    山田 まあ、成勲がMMAを始めてすぐの頃から「打撃を教えてほしい」ということでボクのところに来てたんで。週3~4回は一緒に練習してという感じでした。
    ――当時山田さんのチームは「チーム黒船」と呼ばれてましたが、あれはジム名でもなんでもなく、あくまで山田さんが指導している練習メンバーの名称ですよね。
    山田 はい。当時、ボクシングジムでMMAの打撃を受け入れているジムはほとんどなかったんですよ。若干ボクシング側がMMAをバカにするというようなスタンスだったから。でも、ボクはそういう偏見もなかったんで、志のある人間がだんだんつながりの中で集まってきたという。
    ――それが「チーム黒船」だった。ただ、そのメンバーがみんな“仲間”かというと……。
    山田 仲間ではないですね。練習では会うし、たまにマススパーとかをやるぐらいで。でも、一緒に遊びに行くなんてことはたぶんゼロです。
    ――桜庭vs秋山の裏では、PRIDEも大晦日興行を開催していました。山田さんは「チーム黒船」の川尻達也選手や石田光洋選手のセコンドとして、さいたまスーパーアリーナに行くという選択肢もありました。そこで、秋山さんが試合する大阪ドーム(現・京セラドーム)を選んだ理由はなんだったんですか?
    山田 先に決まったのが成勲の試合だったからです。10月の大会で成勲がトーナメントで優勝して、「桜庭さん、大晦日にやりませんか」というアピールをした時点で、もうほぼ試合が決まってるわけじゃないですか。たしか、成勲の試合は10月の時点でもう決まっていたんですよね。で、あの頃のPRIDEってカードが決まるのが遅かったんですよ。結局、石田くんは五味隆典選手、川尻くんがギルバート・メレンデスに決まったんですけど、あれも成勲の試合が決まった全然あとなんで。
    ――川尻選手と石田選手のカードが発表されたのは12月7日のことですね。
    山田 だから、ボクは「チーム黒船」のみんなの試合が重なったときのために、あらかじめルールを決めていたんです。「最初に試合が決まったほうのセコンドに付く」「あとから決まった試合のほうがデカいから、そっちに行くわというのはナシにしましょう」と。だから、川尻くんも石田くんも、ボクが大阪に行くときに超寂しそうにバイバイしましたよ。
    ――「なぜPRIDEではなく秋山成勲に付いたのか怪しい」と言われがちですけど、そういうルールがあったと。
    山田 そう。理由は、先に決まったから。それが黒船のルールだったんで。
    ――そして、試合当日の状況ですが……。
    山田 その日は、ボクはセミファイナルで魔裟斗くんとK-1ルールで戦う鈴木悟のセコンド仕事もあったんですよね。
    ――山田さんは、メインの桜庭vs秋山の前にもセコンドに付いたんですね。
    山田 しかも、2人は逆コーナーだったんですよ。成勲は赤コーナー、悟は青コーナーだったんで。だから、ボクはドームの1塁側と3塁側の控室を行ったり来たりしていて。成勲のバンデージを巻いて、走って移動して悟のほうでアップしてという。そういう感じでバタバタだったんです。
    ――いまだったら運営側が気を利かせて同じ控室にしてそうですけども。
    山田 でも、悟の試合が決まったのが大会3日前ぐらいだったんですよ。もともとは魔裟斗くんとチェ・ヨンス(元世界WBAスーパーフェザー級王者)との試合が決まってたけど、チェ・ヨンスがケガなんかで急に出られなくなったんで。そういう急な事情もあったかもしれないですね。
    ――じゃあ、運営側が気を利かせなかったというよりも、土壇場すぎて変更のしようがなかったという。
    山田 スケジュール的に難しかったというのはあったと思いますね。
    ――セミからメインまでの山田さんの動きをもう少し詳しく教えてもらえますか?
    山田 ボクはセミで悟の試合があったから、そのセコンドに付く前にミットを持って成勲と打撃のアップをしたんです。組みのアップのときはボクはもう悟のところに向かってて。で、悟と一緒にボビー・オロゴンvsチェ・ホンマンの試合を観ていたんです。
    ――ボビーvsチェ・ホンマンというのは魔裟斗vs鈴木悟のひとつ前の試合ですね。
    山田 で、悟に「この試合、けっこうすぐ終わるかもしんねえから、早めに行くぞ」とか言ってたら、本当にすぐ終わっちゃったんで。
    ――あの試合は1ラウンド16秒で終わっちゃいました。
    山田 そこから悟の試合だったんですけど、あの悟はローを効かされて2ラウンドで負けて、彼を控室に連れて行って。そうしているうちに、すぐにメインの桜庭vs秋山の煽りVが始まっちゃってたんでね。まあでも、ちょっと長い煽りVだったんで、そのあいだに走って反対側の控室に行って、走ってるあいだに成勲のTシャツに着替えて、で、そこでもう柔道着を着て入場待ちの成勲がいたんで「悪い、遅れた」と合流した感じです。
    ――この件では、グローブに付いていたスポンサーの「EDWIN」のロゴが剥がれていたことも問題として取り上げられました。それがグローブ細工疑惑の発端になるんですが……。
    山田 それは試合前のボクとのアップのときに剥がれてました。成勲に「悟の試合に間に合わなくなるから、先にパンチのアップをやろう」ということでやってたら、汗で剥がれて「EDWIN」のロゴがペラっとなったんですよ。そしたら、成勲がそれを口でくわえてバリッと取ったんですよね。
    ――なるほど。あれはEDWIN製のグローブということじゃなく、もともと主催者は用意したグローブに、大会スポンサーだった「EDWIN」のロゴをくっつけたかたちだったわけですよね。
    山田 そうそう。アイロンの熱か何かでくっつけてあるだけ。
    ――同じ大会では他の選手のグローブもロゴが剥がれかかっていたという報告は記者会見でされています。当時EDWINに直接電話して「あれって剥がれるんですか?」と聞いて「剥がれません」という回答を得た方がいたんですけど。EDWIN製のグローブじゃないし、EDWINも「剥がれます」と不良品扱いはできないんですよね。
    山田 まあ、言えないでしょうね。そこは谷川(貞治/FEG代表)さんも剥がれた際の映像をチェックしてますね。そのときに例の「すべらせろ!」の確認も取れて……。
    ――山田さんが試合中、秋山さんに「すべらせろ!」という指示を送ったことが……桜庭さんの「すべるよ」とシンクロしてしまったという。
    山田 あれは、ボクが立嶋篤史に「ローキックは床をすべるように蹴れ」とアドバイスしてもらったことを参考にしているんですよね。床スレスレで蹴ると、相手の手でキャッチされないから。だから、足を床にすべらせるように蹴れというのをずっと言っていて。だから、その調査の段階で、そのロゴが剥がれたときのアップ映像を谷川さんが見て、そこでもボクがずっと「すべらせろ」と成勲に言っているのを確認してますから。2人でアップしている練習シーンの中で、ボクが「ダメダメ、上から蹴らない、床をすべらせろ」と。その途中でロゴがバリッと剥がれる映像を谷川さんが見ているんで、「すべらせろ」発言に関しては解決しているという。
    ――まあ、実際にクリームですべらせたかったとしても、ストレートに「すべらせろ」なんて……。
    山田 言わないですよ! 絶対にないですけど、もしボクがクリームを塗っているのを知っていて本当にすべらせたいんだったら、よけいに言わないですよ。
    ――そのアップの段階で秋山さんの身体にクリームを塗っていたということはなかったんですか?
    山田 クリームは、時系列でいうとボビーvsチェ・ホンマンの試合の最中に塗ったらしいです。
    ――山田さんはボビーvsチェ・ホンマンのときは鈴木悟選手と一緒でしたよね。現場にいなかった山田さんがどうやってその事実を知ったんですか?
    山田 ボクがどこで知ったかというと、年明けの1月10日に帝国ホテルのミーティングに呼ばれたからなんですよね。
    ――どういうミーティングだったですか?
    山田 あの日は、審判団・代表の磯野(元)さん、和田(良覚・当試合サブレフェリー)さん、久保(豊喜・当時GCMコミュニケーション)社長、そして成勲と、試合でセコンドに付いた門馬(秀貴)が集まっていて。
    ――久保さんは和術慧舟會の方で、競技統括という立場ですね。磯野さんも和術慧舟會でしたし、当時K-1系のMMAイベントの競技周りは和術慧舟會が運営していました。
    山田 ボクには当日の朝に門馬から突然電話がかかってきて「塗っている映像が確認されました。これから首脳陣で集まって会議をするんで、帝国ホテルに何時に来てください」と。こっちからすれば「ど、どういうこと!?」ということで、わけもわからず帝国ホテルまで飛んで行ったわけです。
    ――当日になるまで連絡はなかったんですね。
    山田 で、ボクはほとんど話がわからないまま行ったんですけど、もうその場所には「オーレイ クエンチ ボディローション エキストラ ドライスキン」という例のクリームが置いてあって「現物はこれですよね」と。で、ボクは何もわからないから「どういうことなの?」と聞くんだけど、もう門馬も秋山もシュンとしてるんですよ。「え? これ塗ったの?」と。で、そのときにボビーとチェ・ホンマンの試合の最中に塗ったということを聞いたんです。
    ――審判団がバックステージカメラを確認したところ「2人が塗っていた」ということが公表されていましたが、その2人というのは、その日、秋山さんのセコンドだった門馬さんと山田さんだったんじゃないかという疑惑がかけられていますよね。
    山田 その帝国ホテルで久保社長が言うには、門馬は塗ってはいないけど、セコンドなので確実に現場にはいたと。で、当日はそれ以外にも成勲の周りに取り巻きみたいな人間がもの凄くいっぱいいたんですよ。
    ――その現場にいたのは、秋山さんの昔からの友達というか知り合いというか……。
    山田 そうそう、成勲の連れというかね。
    ――いまはRIZINなんかはバックステージ規制が敷かれて、事前に申請した関係者以外は選手の控室には立ち入ることは厳禁ですけど、昔は選手の練習仲間だったりすれば……。
    山田 全然入れましたから。
    ――選手がチームの仲間と一緒に入場してくる光景はよく見ましたが、規制が厳しい状況があたりまえになっている最近のファンにとっては「2人が塗っていたということは、セコンドの山田と門馬のはずだ」となりますね。
    山田 ああ、なるほどね……。でも、あの試合の入場を確認してくれれば「どんだけ人がいるんだ」となるはずですよ。たぶん7~8人いたんじゃないかな? その中の人間が成勲の身体にクリームを塗っていたんです。
    ――「なぜバックステージ映像を出さないのか」ということに関しては、谷川(貞治・当時のK-1プロデューサー)さんもいろいろと説明していましたけど。
    「映像を公開するという件についてですが、公開することになれば物理的なことをいうと編集したものになるわけじゃないですか。だからといってTBSさんが一大会につき30台以上のカメラで撮影しているビデオをすべて見せるというのは難しい。またそこで隠している映像があるんじゃないかと思われると、キリがなくなってしまいますよね。映像を見せたくないというのではなくて、審判団と桜庭選手にはちゃんと映像を見てもらって、確認しているというのを言いたかったんです」
    ――EDWINのロゴが剥がれたのはスポンサーに対してあんまりよろしくないし、もうひとつはTBSの権利映像という不自由さもある。もっとも大きな理由があるとすれば、そこに映っている選手、そして秋山さんの知り合いは一般人でしょうから、それは公開できないんだろうなと推測してたんですが……。
    山田 そのとおり。で、そこにセコンドに付く門馬がいて「あ~、いい匂い」と言ってたらしいんですよね。その映像が世に出ちゃうと、塗ってなかったとはいえ門馬が現役選手として活動できなくなるから。
    ――一般人も顔出しは厳しいし、モザイクをかけるとますます怪しいですよね……。門馬さんに、秋山さんが反則をやってるという意識はなかったんですかね?
    山田 うーん、どうなんすかねえ。帝国ホテルでは「おまえ、『いい匂い』だなんて後ろで笑っている場合じゃねえぞ!」と久保社長に怒られてましたもん。試合後あんな騒ぎになったじゃないですか。門馬が知ってたなら、教えてくれよって話で。そういうことなので映像は出せなかったんだと思います。でも、そうなるとファンは「何かあるに違いない」となっちゃいますよね。
    ――周辺の人間を守ろうとしようとしたことで、疑惑がさらに深まってしまったという。実際に塗った人間はその場にはいなかったんですか?
    山田 来てないです。あのときボク、久保社長にはっきり言われましたもん。「おまえがチーフなんだから(罪を)かぶれ」って。「おまえはこの業界の人間じゃないから」とも。
    ――「罪をかぶる」というのは、具体的にどういうことですか?
    山田 「おまえが現場にいたことにしろ」という感じでした。だから「は? 俺がかぶるんですか? いや、俺は全然、話がわかってないですよ」と。でも、久保社長いわく「おまえは外様なんだから」と。でも、外様なんだったら、こんな場に呼ばないでくれよという感じですけどね。「ふざけんな!」と思いましたよ。
    ――そこで罪をかぶっていたら、山田さんは大変なことになってましたよね。かぶってなくても映像が公開されなかったことで大変だったんでしょうけど。
    山田 本当っすよ! 何も解決しない。成勲も会見で「山田トレーナーはその場にいなかった」とは言ってるけど、ボクがあれだけ叩かれても全面的に否定しているわけじゃない。なぜなら「じゃあ、誰が塗っていたんだよ」となる……。
    ――ちなみに、秋山さんは会見でこう言ってるんですよね。「自分に付いていた山田トレーナーは、魔裟斗選手と試合をした鈴木選手のところに行っていて、自分でこう言うのもなんですが、自分の周りにはプロの人間がほとんどいません。クリームを塗っているときに、そういうことを言う人間はいませんでした」と。
    山田 いや、門馬はいましたよ。
    ――当時の裁定だと秋山さんは故意ではなかったということだったので、そこは他の人間に延焼しないようにしたわけですね。
    山田 それで映像を出せないことで、こうやってボクがずっと“首謀者”扱いされちゃうんですけど……。でも、もしボクがあの場にいたら、どんな判断を下していたのか。いまのMMAはUFCも含めてセコンド陣は3人までで、ある程度厳選された人間が集まるという感じですけど、あのときは取り巻きがいて、お祭り状態になっていたんでね。そこで「それ、大丈夫なの?」と確認できるかなあ。難しい状況ではあったのかなあ。競技というよりは、その雰囲気が。
    ――まさか堂々と反則行為をするとは思えないですし。
    山田 そうなんですよ。確信犯ならトイレにこもって塗るようなもんじゃないですか。
    ――これはあまり知られてないことですけど、翌年3月に行なわれたHERO’Sの第1試合で何が起きたかというと、メルヴィン・マヌーフvs高橋義生戦でマヌーフが足に塗ってはいけないものを塗布していたということでイエローカードから始まったんですよね。
    山田 え、何を塗ってたんですか?
    ――おそらくすべり止め目的の松ヤニの類だと思うんですけど。なので、レフェリー陣が総出でマヌーフの足裏を拭いているんですけど、ボクは「あれだけの事件があったばかりなのに、選手の異変にリングに上がってから気づくんだ」と驚いて。当時の競技統括はまだまだのレベルだったというか……。
    山田 そうですよねえ。当時は控室にレフェリーが来てチェックするとか、なかったと思うんですよね。ルールミーティグというか、ちょっとルールの説明みたいなのはありましたけど、いまみたいに競技化してどうのこうのというのは……。だって結局、靴も履いて戦ってよかったし、柔道着で試合をするのかどうかは本人の選択だったし。
    ――いまの日本は相当競技統括のレベルは上がってますよね。アメリカのようなコミッションがない中でも、ちゃんとしているというか。
    山田 ホントにそのとおりだと思います。
    ――「FEGと秋山とグルだったんじゃないか」みたいなことも言われてますけど。審判団・代表で試合後の調査も行なった磯野さんは「和術慧舟會は秋山さんと繋がりがあったじゃないですか。いま振り返るとK-1側は、審判団を含めて『ひょっとしたら何かを隠してるかもしれない』という疑念はあったかもしれないですね」と振り返ってますね。
    山田 あのときって、ほぼ慧舟會の選手でHERO’Sをやってたじゃないですか。だから、主催者側も慧舟會を刺激することができなかったんじゃないかなとボクは思うんですよね。だから当時のマスコミもそういったFEGと慧舟會の関係性は取り上げてないはずですし。もう覚えてないんですけど、ボクは「久保社長にこう言われた」ということは当時の取材でも言ってたと思うんですよ。
    ――そのことは当時のインタビューでもお話しされたんですか?
    山田 うーん、言ったような、言ってないような。万が一、言ってたとしても、やっぱり当時のパワーバランスからすると載せることは難しいのかなあと。
    ――こういうと慧舟會が黒幕だと、早とちりする方が出てきちゃいそうですけど、そういう話ではなくて。FEG、慧舟會、秋山成勲は歪な関係性であった。外側にいた桜庭さんからすれば、その三者がみんなで何か企んでいる、この件をもみ消すんじゃないかと見えちゃうでしょうね。山田さんがインタビューやmixiで何か発言することに対して、FEG方面から圧力みたいなのってなかったんですね。
    山田 それは、ボクが外様だったということもあって、ほとんどないですね。
    ――山田さんは帝国ホテルに呼ばれたときも、映像は確認させてもらえなかったんですよね?
    山田 確認してないです。
    ――それは、なぜだったんですかね。
    山田 いやー、なんなんですかね? 磯野さん、和田さん、久保社長は見ている側で、成勲と門馬は映っている当人なので。でも、ボクは映像を見てないし、現場にもいないから、「なんなの? 全然話がわからないんだけど」という。
    ――しかも「チーフなんだから」というなら、よけいに映像は見たいですよね。
    山田 見せてほしかったですし、ボクも「見せてくださいよ」と言いましたよ。でも、そのときは「いや、もうみんな見てるから」と。<24000字インタビューはまだまだ続く>
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