治療施設や医師選びは、がんの場合、特に重要です
乳がん治療は、乳腺外科(乳腺・内分泌外科)、あるいは外科で乳腺外来を設けている医療施設が専門です。そこには、乳腺の専門医がいて、乳がん、良性の乳房の病気など、乳腺の病気全般を扱います。
がんの場合、施設や医師選びは重要です。
どのがんでも共通する選び方のポイントは、
そのがんの専門医であるかどうか 治療の選択肢をあげて、選ばせてくれるかどうか 質問に嫌がらずに、答えてくれるかどうか セカンドオピニオンを嫌がらない 相性がいいと感じるかどうか 放射線や腫瘍内科の専門医がいる施設かどうか 病理医や緩和ケア医がいる施設かどうか 通院しやすい施設かどうか治療施設と医師が決まったら、次は、どのような治療法を選択するか、です。
「先生にお任せ」ではいい医療は受けられない!
今、医療では、インフォーム・ド・コンセントと言って、患者や家族が医療者からの説明を聞いて、病状や治療について十分に理解し、どのような医療を選択するかを、医療者と情報共有して、自ら決定していきます。
「先生にお任せします」では、いい治療は受けられません。
そこで、大切な治療法を自ら決定する前に、医師に納得するまで説明を聞いておく必要があります。
治療を決める前に医師に聞いておくべきこと
医師に確認しておくべきポイントはなんでしょうか?
乳がんの場合を例にしてまとめました。
1.診断の内容は?
がんのある位置はどこか。大きさはどの程度か。リンパ節転移や他臓器への転移はあるのか。悪性度は高いか(進行の早いタイプか、緩やかなタイプか)。がんの病期(ステージ)はどこか。
最終診断は、術後の病理検査の結果になりますが、術前検査結果での診断を確かめましょう。
2.その診断はどんな検査結果からわかるの?
その診断は、どんな検査結果に基づくのか――、医師が下した診断の理由は、何かを聞いていますか?
難しいからわからないとあきらめないで。医師は、わかりやすい言葉で、納得するまで説明してくれるはずです。1回でわからなければ、別の日にもう一度時間をとってもらうよう申し出ましょう。
3.現在の標準的な治療はどんなもの?
診断結果に納得できたら、次は治療法について詳しく聞きます。
まず、自分の場合は、「乳がん診療ガイドライン」に沿った標準的な治療法(科学的データに基づいて効果があると証明されている治療)がどのような方法なのかを聞きます。それが現在、もっとも多く行われていて、科学的に効果があるとされている治療方法になります。
4.医師がすすめる治療法は?
次に、主治医がすすめる治療法について聞きます。もしも、標準的治療と異なるときは、その内容と根拠を説明してもらいましょう。
大切なのは、治療開始前に、手術のことだけでなく、術後の治療の可能性についても聞いて、全体を見渡しておくことです。
5.治療法の選択肢はほかにある?
医師がすすめる治療以外に、どんな治療が考えられるかを聞きましょう。
乳がんの病期(ステージ)によっては、選択肢の幅が狭まることもありますが、たとえば「乳房温存手術をすると、その後の治療はどうなるのか?」、逆に「切除術だとその後の治療はどうか?」などです。
6.治療のメリット、デメリットは?
医師がすすめる治療法と、ほかの治療法と比べてメリット、デメリットを比較検討しましょう。
それぞれの治療法にどのような効果があり、どのようなデメリット(副作用)があるかを聞きます。そうすることで、治療を選択する手がかりになり、何が大切か見えてきます。
7.治療を決めるまでどのくらい時間的猶予がある?
乳がん治療では、急がなければならない状態のことは、ほとんどありません。
手術は、どのくらい先まで待てるのかを聞いてみれば、時間的猶予(余裕)がわかります。たいてい告知から3~4か月は問題ありません。
がん治療の場合は、あとで後悔しないように、できるだけ情報を集めて、治療を決定することが大事。早く手術日を決めようとするのは、病院側の都合である場合も少なくありません。
8.長期的な治療の見通しは?
乳がんの治療はほとんどの場合、手術で終了ではありません。術後に、放射線治療、ホルモン療法、化学療法(抗がん剤、分子標的治療)、乳房再建などのいずれか、あるいは全部を組み合わせて行うことがほとんどです。
目前の手術のことだけでなく、術後の見通しや治療期間についても聞いておきましょう。
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乳がん経験者が語る。がんを告知されたら…そのときにすべきこと
増田美加・女性医療ジャーナリスト 予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ http://office-mikamasuda.com/
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