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更年期の不調に「個人差」があるのはなぜ? 日によって症状も程度も違うのは?
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更年期の不調に「個人差」があるのはなぜ? 日によって症状も程度も違うのは?

2020-11-20 18:00
    自分の体をきちんと知ろう! がテーマの連載「カラダ戦略術」。前回より「女性ホルモンと更年期」の基本についてお届けしていますが、今回は女性ホルモンの「エストロゲン」が女性の不調とどう関わるかについて、女性医療ジャーナリストの増田美加がお伝えします。

    不調や病気が多くなるのはエストロゲンが原因

    更年期の体調を考えるときに重要なのは、やはり女性ホルモン。この女性ホルモンには、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2種類があります。

    エストロゲンは、卵巣から卵が育って、排卵が起こるときに出る女性ホルモンです。そして、排卵後、卵が卵巣から出ていったあとに、黄体という黄色いかたまりができ、そこから出る女性ホルモンをプロゲステロンといいます。

    注目したいのは、エストロゲンです。このエストロゲンは、女性の元気とキレイに大切なホルモン。だからこそ、エストロゲンの不足がさまざまな不調や病気の原因にもなってくるのです。

    女性ホルモンの分泌が乱れると、自律神経もバランスを崩す

    エストロゲンは、そもそも女性らしい体つきをつくるのが大きな役目で、みずみずしい肌を保てるのも、エストロゲンのおかげです。

    エストロゲンが適度に分泌されていないと、肌が乾燥したり、肌荒れになったり、くすみ、しみ、しわの原因にもなります。

    このエストロゲンをコントロールしているのは、脳の視床下部にある「下垂体」というところです。

    下垂体では、体内のホルモン量を察知して、卵巣から分泌するホルモン量を調節する指令を出しています。

    この下垂体がある視床下部には、自律神経をコントロールする中枢があります。そのため、女性ホルモンの分泌のリズムが変動して大きく変化すると、近くにある自律神経の中枢も影響を受けます

    そうして自律神経のバランスが崩れると、倦怠感、頭痛、めまい、吐き気、肩こり、動悸、のぼせなどの自律神経失調症の症状が出やすくなるのです。

    ですから、女性ホルモンの分泌が乱れると、自律神経失調症の症状が起こりやすくなり、また、その逆に自律神経失調症が起こると、女性ホルモンの分泌が乱れやすくなるということもあります。

    エストロゲン不足に、体と心が慌てている

    多くの女性は、40代に入ると卵巣の働きが衰えて、エストロゲンの分泌量が急激に低下していきます。

    これまでおこなわれていた「視床下部→下垂体→卵巣」の連携が大きく崩れてしまうのです。

    脳の視床下部は、血液中に流れ込むホルモン量を常にチェックしていますから、エストロゲンが不足すれば、これに驚いて、情報を伝達する役割の“性腺刺激ホルモン”を懸命に分泌するようになります。

    脳の視床下部は、“性腺刺激ホルモン”を多く分泌することによって、卵巣に「もっとエストロゲンを出しなさい!」と矢のような催促をするのです。

    けれども、どんなに催促されても、更年期になって役割を終えようとしている卵巣は、その命令に応えることができません……。エストロゲンの分泌量もさらに減っていきます。

    こうした状態が続くと、視床下部は「なぜ命令に従わないの!?」と混乱し、慌てます。そして、その混乱は、同じところに中枢を持つ“自律神経”にも飛び火するのです。

    初期は自律神経失調症のような症状から

    自律神経は、体温、発汗、呼吸、消化、脈拍、血圧などを自動的にコントロールして一定に保つ働きをしている神経です。

    たとえば、汗をかいて体温を下げたり、緊張するとドキドキと動悸がするのも自律神経の働きです。

    その自律神経が乱れるため、暑くもないのに大汗をかいたり、ジッとしていてもドキドキが起こるなど、体のあちこちに歪みが生じてきます。

    これが更年期の比較的“初期”に起こりやすい不調の正体です。

    女性ホルモンのバランスが大きく乱れるこのころは、自律神経失調症のような、おもに血管運動神経系や精神神経系の症状である大汗、ドキドキ、息切れ、めまい、ほてり、のぼせ、冷え、イライラ、憂うつ、不眠が現れます。

    閉経すると、皮膚や粘膜の不調があらわれる

    更年期の初期は、症状のほとんどが女性ホルモン(おもにエストロゲン)のアンバランスが背景になって生じる自律神経失調が原因となります。

    体がエストロゲン不足に慣れてくれば、このような自律神経失調症のような症状は、徐々に自然と収まっていきます。

    しかし閉経あたりからは、性交痛や腟炎、尿もれといった別の症状が加わります。これらの不調は、エストロゲンの恩恵を受けていた皮膚や粘膜の老化によって起こってきます。

    症状は、ホルモン補充療法(HRT)や漢方療法、その他の治療法で、症状を緩和することができます。エストロゲンの減少は、体の自然な変化です。治療もできます。大きな不安に感じることはありません。

    最初は急激に減少するので、体の急激な変化に驚くかもしれません。でも慣れてくれば、ちょうどいい感じに、仲良くつき合っていけます。

    更年期の不調があらわれない人がいるのはなぜ?

    更年期の症状は、人によってつらさが違います。出る症状も違いますし、日によって出る症状も変わります。更年期障害に苦しむ人がいる一方、更年期障害にならない人もいます。それはなぜでしょうか。

    以前は、更年期に起こる不調すべてを更年期障害と呼んでいましたが、今は日常に支障があるほどひどい症状を「更年期障害」と呼び、それ以外は「更年期症状」と呼んで区別しています。

    では、なぜ症状や、症状の出方に個人差が大きいのでしょうか。いろいろな要因があり、それらが複雑に絡み合って起こります。更年期に不調を起こす原因は、大きくいうと「卵巣機能や体質の要因」「性格的な要素」「環境的な要因」の3つが考えられます。

    1. 卵巣機能や体質の要因

    更年期の不調は、卵巣機能の低下によるエストロゲンの分泌の減少が直接の原因ですが、卵巣機能が低下する度合いや女性ホルモン分泌の低下の起こり方、女性ホルモン分泌の乱れに対する体の反応も、人それぞれ違います。

    更年期前から生理不順があったり、自律神経失調症の症状が起こりやすかったりする人ほど、更年期症状が出やすい傾向があるといわれています。

    また、不規則な生活や過労、睡眠不足なども、ホルモンや自律神経の乱れに拍車をかけ、影響します。

    2. 性格的な要素、不調をどうとらえるか

    ストレスは誰にでもありますが、それをどのように受け止めるかといった性格の違いも、更年期の症状の出やすさに関係します。

    クヨクヨするタイプの人は、少しの体の変調がとても気になり、落ち込んで、そのことがさらに大きなストレスになります。また、誰かに頼りたい依存タイプの人は、更年期のつらさを家族や周囲に理解してもらえないと、不安や孤独を感じ、気分がますます落ち込みます。

    逆に、何に対しても真面目で頑張る人は、更年期の不調で、これまで通りにできない自分がもどかしくて、自分を責めたりもして、症状を重く感じさせます。

    そのほか、閉経を女性でなくなる……と否定的に考えている人も、症状に過剰に反応して悪化させることがあります。

    3. 環境的な要因、ストレスの度合い

    更年期は、自分の老後の準備に加えて、夫との関係、子どもの心配、親の介護の問題など、自分だけでは解決できないさまざまな問題が起こる時期と重なります。

    仕事を続けてきた人は、仕事の責任も重くなって、プレッシャーを感じる人もいるでしょう。また、仕事上の人間関係が大きなストレスのひとつになることもあります。

    人生の更年期という時期に増えるさまざまなストレスが、エストロゲン分泌の低下に拍車をかけて、自律神経のバランスを崩していくことも少なくありません。

    症状は日によって変化し一定しません

    更年期の症状のもうひとつの大きな特徴は、症状が一定せず、また同じ症状でも日によって強さが違うことです。

    たとえば、下腹部の張りが続いたかと思えば、次は頭痛に、そのうちだるさや、疲れを感じ、いつの間にか、だるさや疲れは消えて、耳鳴り、めまいが気になるなど、不調が次々とあらわれ、ひとつでなく複数重なったりすることもあって、一定しません。

    そのため、その都度、あちこちの診療科で検査をしますが、結局、最後に更年期の不調と気づくこともあります。

    症状が強いのは、あなたのせいではありません

    このように更年期が起こる症状は、さまざまな要素が複雑に絡み合って起こります。

    「更年期の症状が出る、出ないは、気持ちの問題」「ヒマな人に起こる」という人がいますがそんなことはありません。もちろん、同じ症状でも深刻に受け止める人、軽く受け止める人がいるのは事実です。

    けれども、気の持ちようで症状が出なくなるほど、更年期の不調は単純ではありません。心や体に不調が現れたら、家族や周囲の人に話し、理解してもらいながら、適切な治療を受けることが大切です。

    今、更年期外来や閉経外来、女性外来など、おもに婦人科で、更年期の心と体を総合的に診る医師も増えています。こうしたクリニックを積極的に受診してください。

    次回は、女性ホルモンの低下による更年期の不調の種類と対策について、具体的に紹介します。

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    増田美加・女性医療ジャーナリスト
    予防医療の視点から女性のヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための 患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。NPO法人みんなの漢方理事長。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク副理事長。NPO法人女性医療ネットワーク理事。NPO法人日本医学ジャーナリスト協会会員。公式ホームページ

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