そんなときは、自分に対して投げかける「セルフトーク」を変えてみるのがおすすめ。『理想の自分をつくる セルフトーク・マネジメント入門』(鈴木義幸 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)から、人との会話で緊張しなくなる2つのポイントをお届けします。
感情や行動の引き金となる「特別なひとり言」
著者によると、セルフトークとは人間の感情や行動の引き金となる「特別なひとり言」。人は意識するしないにかかわらず、終始、自分自身との対話を内側で繰り広げています。
自分に言葉を投げかけ、問いかけ、そこに答えをつくり出そうとする──それは、まるで「コーチ」と「クライアント(コーチを受ける人)」の一人二役を自分でやっているようなもの。
だからこそ「持てる力」を存分に発揮するためには、自分にとってよい影響を与える言葉を投げかける必要があるのです。
「感情」のセルフトークと「理性」のセルフトーク
セルフトーク・マネジメントでは、セルフトークを2つに分類します。
ひとつは、「感情」を呼び起こし、「反応」としての行動を導く「セルフトークA」。Aはautomatic(自動的)を意味します。
例えば、怒りが「キレる」という形で暴発する場合、その引き金となるのがセルフトークA。「自分はこうであるべきだ」、「他人からこう見られたい」というアイデンティティが揺らぐとき、セルフトークAが生まれやすいと著者はいいます。
もうひとつは「理性」を呼び起こし、「対応」としての行動を導く「セルフトークB」。Bはbear(生む)を意味します。
同じ怒りでも、内なる声が「許せない」という感情から生まれるセルフトークAだと、自動的に「キレる」という反応につながってしまいます。
それを「(相手に)何があったんだろう?」といった理性的なセルフトークBに置き換えられれば、「キレる」ではなく「話を聞く」「諭す」といった対応へと自分を導くことができます。
「私とあなた」ではなく「私たち」をイメージすると緊張しなくなる
著者によると、感情的なセルフトークAが生まれやすいのは、自分のアイデンティティを守ろうとしているときだそう。
特に、自分を守ろうとしているときのセルフトークは、ほぼ確実にネガティブなセルフトークAになりやすい。プレゼンや就職の前に生まれる「失敗したらどうしよう」というセルフトークAは、たいてい「失敗したら私はどうなるんだ」と心配しているわけで、こうなると緊張へまっしぐらです。
(『理想の自分をつくる セルフトーク・マネジメント入門』150~151ページより引用)
これは大勢の人の前で話すような場面にも当てはまります。大勢の人を前にして「私から相手に話しかける」と意識すると、守る対象としての「私」が生まれ、セルフトークAが生まれやすくなってしまうのです。
そのため、緊張しない第一のポイントは、話す「私」と聞く「あなた」を区別せず、「私たち」という全体をイメージすること。
「私たちの中で話し合っているんだ」「私たちがよくなるためにはこうしたい」──そんなセルフトークをつくり出すことができれば、「自分を守る」意識が小さくなり、緊張しにくくなるというわけです。
リンカーンの教えは「話したいことだらけにすること」
そして、人との会話や人前に出るシーンで緊張しない第二のポイントは「話の内容」にあります。
自分の言葉を、すべて自分が言いたいこと(want)にする、これが鉄則です。形式として言わなければいけないこと(must)が入れば入るほどセルフトークAが生まれ、緊張しやすくなります。なぜなら、決まり文句のようなmustを話しているとき、人は自分の頭を精一杯使っていないため、他のことを考えてしまうことが多いからです。(中略)一方、wantを話しているとき、人は自分の頭を精一杯使っており、余分なセルフトークが生まれる余地はありません。
(『理想の自分をつくる セルフトーク・マネジメント入門』152ページより引用)
「wantを語る」大切さについて語るために、著者はデール・カーネギーの『話し方入門』に登場するアメリカ大統領リンカーンのエピソードを引用しています。
ゲティスバーグ演説など、歴史に残るスピーチの名手として知られるリンカーン。その彼が、緊張しないための一番の得策として、「話したいことだらけにすること」と述べていたのだとか。
もしスピーチをすることになったら、「話したくて仕方がない」というレベルまで自分の原稿を近づけること。
そうすればまず緊張しないばかりか、話す内容も自然とあなたらしいものになっていくという著者のアドバイスは、今後折に触れて思い出すことになりそうです。
春から新しい自分へ
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