みなさん、はじめまして。睡眠インストラクターの橋爪明子です。
「睡眠不足は美容の大敵」ということ、女性はみんな気にしていますよね。でも、睡眠は美容だけに必要なものではありません。睡眠を粗末にした生活はあなたの人生さえ左右してしまいます。
実は日本は、世界一睡眠状況が悪い国なのです。睡眠時間や睡眠環境、睡眠の医学的知識や眠りについての考え方で、みなさんが当たり前に思っていることが、世界レベルで言えば、NGのオンパレード! そんな事柄を正してお伝えするのが睡眠インストラクターの役割ですが、どんなに完璧な寝具をそろえ、万全の健康対策をしてもらっても、必ずしも良い睡眠はとれないもの。なぜなら睡眠の良し悪しには、精神的な側面がとても大きいからです。
大事なことは、まず眠りに興味を持って、眠りを愛するようになること。眠りを楽しめること。そのために、私はみなさんに睡眠・眠りについての興味深いお話を提供していきたいと思っています。どうぞ、この連載で、快眠を手にいれてください!
寝坊したい願望は、人間なら当然
お伽噺では、ハンサムな王子のやさしいキスが美女の眠りを醒ますもの。こんな権利を王子一人に与えておくのは不公平とばかり、小人さんたちは抜け駆け! 今、皆さんの眠りを覚ましてくれるものは? 素敵な彼氏のキス? それとも無慈悲な目覚ましの音?
目覚まし時計も 起きるためには目覚まし時計
ねむりのイロハカルタより 切り絵:ナカニシカオリ ©ナカニシカオリ スタジオ・ソムニナ
昨年、日経新聞が行なった目覚まし時計コンテストの審査員をしました。一位を獲得したのは、ナンダクロッキーという時計。時間が来るとガーピーと騒がしい音を出して動き出し、棚から落ちて床を駆け回るというもの。これじゃあ、こちらは寝てはいられない。そんなうるさい奴だけど、何となくかわいいこの形。一位には納得でした。
目覚まし時計コンテスト一位のナンダトロッキー君
他にも、爆撃のような轟音を出すものもあって、母親の怒号と布団剥ぎに準ずる激しさ。それほど、多くの人が起きるのに苦労しているってことなんでしょう。
起きられない自分にイラついている人もいますが、そもそも人間は寝坊したいものなんです。なぜなら、人間の体内時計は一日25時間。地球の24時間より長いので、起きるのは後倒しになりがち。それに睡眠時間は人それぞれ違うので、決められた時間に起きるのは辛いのが当たり前なんです。それでも、王子の口づけなら、お目めがパッチリかもしれませんが......。
目覚まし時計がない時代にいた「起こし屋」
フィレンツェのサンタマリア・デル・フィオーレ大聖堂にある珍しい24時間時計
十九世紀のイギリスにおもしろい話があります。目覚ましに豆を使っていた! というお話です。「ええっ! 豆でどうやって起きるの?」と思うでしょうが、本当に豆なんです。寝室の窓ガラスめがけて、豆を吹き矢のように飛ばし、ガラスに当たった音で目を覚まさせるという方法。昔、イギリスには「起こしや」という職業が実在したのです。豆の他にも金棒でガラスをひっかく方法も(この音では起きるワナ~)あったとか。昔から人は起きることに苦労していたようですね。
それにしても今の日本、目覚ましなしには一日が始まらない。ひょっとしてお財布より目覚ましのほうが大事なのかもしれません......。けれど、起きられない自分を責めないでくださいね。連載でご紹介していく睡眠のメカニズムをきちんと知れば、すっきり起きられるようになれますよ。
【今日のねむまめ】※眠りの豆知識
日本初の目覚まし時計が作られたのは大正時代。時計の博物館を訪ねてみませんか。セイコーミュージアムでは、国産初の貴重な目覚まし時計が。谷中にある大名時計博物館では、江戸時代の時計事情を学べます。時計をアートで感じたいなら、登内時計博物館がおすすめ。
[セイコーミュージアム]
住所:東京都墨田区東向島3-9-7
開館時間:10:00~16:00 (入場受付は15:30まで)
休館日:月曜日、祝日、年末年始 ※5月3、4、5日は開館 ※月曜日が祝日の場合、翌火曜日も休館
入館料:無料
TEL:03-3610-6248
[大名時計博物館]
住所:東京都台東区谷中2-1-27
開館時間:10:00~16:00
休館日:月曜日、夏期7月1日~9月30日、年末年始(12月25日~1月14日)
入館料:大人300円、大学・高校生200円、中学・小学生100円
TEL:03-3821-6913
[登内時計博物館]
住所:長野県伊那市西箕輪1938番地88
開館時間:4月~10月 10:00~17:00(最終入館時間16:30)11月~3月 10:00~16:00(最終入館時間15:30)
休館日:火曜日(祝・祭日の場合は翌日)、12月27日~1月5日
入館料:大人500円、高校生250円、小学生100円
TEL:0265-72-2500
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photo by Thinkstock/Getty Images
(橋爪明子)