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足下にはえている植物、吹いてくる風、降ってくる雪。そんな「日常の世界」は、これからどれだけ生きていったとしても、大きく変わることはない。でも、もしも、そんな普遍的な世界を見る私たちの「目」のほうが変わったら......?
雪は天からの手紙
いったい、どんな世界が見えてくるのでしょうか。
たとえば、降ってくる雪。ただの白い凍えた水分の塊。そう思っていたものを、雪と氷の研究に人生を捧げた物理学者・中谷宇吉郎はこう表現しました。
「雪は天からの手紙だということを知っていましたか?」「ちょうど一通届きました。これを読んでみましょう。」「こちらは風無く空乾き、気温は零下四十度なり。」
(『ドミトリーともきんす』P50より引用)
雪は天からの手紙。そう思うと降って来る粒たちがそれぞれに表情をもっているように見えてきます。
こんなロマンティックな科学者の視点を教えてくれるのは、漫画家・高野文子さんの作品『ドミトリーともきんす』です。この本の中で、架空の学生寮に暮らす物理学者たちが、世界の「ちょっと違った見方」を教えてくれます。
たとえば、植物学者の牧野富太郎は、足元に息づく世界の美しさを語ってくれます。
チューリップの巻いた葉は、降った雨を集める、漏斗の仕事をつとめます。ヤツデの広い大きな葉は、上から下へと順々に、雨を根元に送ります。
(『ドミトリーともきんす』P65より引用)
では私たちが暮らすこの時空についてはどうなのでしょうか。のちにノーベル物理学賞を受賞することになる湯川秀樹はこう語っています。
「可能の世界」には、実現を待っている、無数の事実があります。そのどれが選ばれるべきかを決定する「法則」は、いまのところ、この地上では見つかっておりません。
(『ドミトリーともきんす』P89、90より引用)
私たちが生きているこの時空は、無数の可能性で満ちている。そんな広がりのある世界の見方を物理学者たちは教えてくれます。
sno via Shutterstock
RSSブログ情報:http://www.mylohas.net/2014/12/042027scientist.html