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記事 11件
  • 「RIZINに潰れてほしくないから箱庭のままでいいよ!」■川尻達也クラッシャートーク

    2024-05-14 10:44  
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    川尻達也が振り返るRIZIN46有明!……のはずがPRIDEやDREAMの昔話を含めて2万字クラッシャートーク!(聞き手/ジャン斉藤) ☆Dropkickニコ生で配信されたものを再編集したテキストになります。【1記事から購入できるバックナンバー】・業界再編ならず? UFC集団訴訟は和解へ…■シュウ・ヒラタのMMAマシンガントーク
    ・【RIZIN神戸総括】笹原圭一の関東大会場4連戦やってやるって!
    ・【プレイバック】佐山聡に鉄拳指導された当事者が語る「地獄のシューティング合宿」
    ・ベラトール全面対抗戦実現の舞台裏■RIZIN海外事業部・柏木信吾
    ――今晩の配信のゲストは、お久しぶりの川尻達也さんです!
    川尻 こんばんは!
    ――ツイッターによれば、いまのいままでジムのお掃除をされていたそうで。
    川尻 はい。21時に終わって40分近く掃除してました。
    ――そんなに時間をかけるんですね。
    川尻 めっちゃきれいにしてますよ。毎回消毒もするし、やっぱり汚いジムに人は来ないですよね。
    ――こう言っちゃなんですけど、いまから20年前の2004年頃、ボクが初めて川尻さんを取材したときのジムはかなり汚かったです!(笑)。
    川尻 あー、どこですか? 総合格闘技TOPSかな。あそこは年3回くらいしか掃除してなかったですからね(笑)。
    ――ハハハハハ! そこは経験が活きてるわけですよね。
    川尻 やっぱり女性の会員さんも多いし、汚かったり変な匂いがするところには来づらいじゃないですか。
    ――ちなみに女性会員はどれくらいいるんですか?
    川尻 女性会員は4割くらいじゃないですかね。ほとんどの方は格闘技のことをよく知らないです。「朝倉未来の名前は聞いたことがある」「那須川天心のことはテレビで知ってます」と。知られているのは平本蓮選手ぐらいまでですね。
    ――じゃあ、川尻さんのことなんてご存じないわけですね!
    川尻 全然知らないですよ(笑)。むしろそれが嬉しいです。ボクがジムを開くときに自分の名前で入会するんじゃなくて、格闘技を知らない人でも楽しんでほしいという目標があったんで。入会してから格闘技に興味を持ったりする人もいるし、超ド級の朝倉未来ファンもいますね。未来選手のグッズが出たらすぐに買うし、未来選手がPRしていた水も飲んでます(笑)。
    ――じゃあ「俺は朝倉未来がやっているブレイキングダウンの解説をやってるんだぞ!」と自慢できるじゃないですか。
    川尻 こないだのRIZINの解説席で未来選手と並んだんですよ。モニターに映った未来選手とボクの写真を撮って、その朝倉未来ファンに「いいでしょ」ってLINEしました(笑)。
    ――普通にツーショットを撮ればいいのに。
    川尻 いや、もう怖いじゃないですか(笑)。
    ――何を言ってるんですか(笑)。川尻さんがジムをオープンしたときにお祝いを持って行きたかったんですけども、あまりにも遠いので。近くで取材したついでに寄ろうと考えているうちに、ずいぶん時間が経ってしまいました。
    川尻 もう4年経ちましたよ。
    ――経営は安定してるんですか?
    川尻 まあまあ、ぼちぼち。皆さんのおかげでなんとか生きていけてます。格闘技ジムの経営って、いきなりは大金持ちにはなれないじゃないですか。たとえば、会員がいきなり10倍になったりしない。でも、在庫を抱えるわけでもないし、ちゃんとやれば赤字になることはないなって感じですよね。
    ――でも、元UFCファイターの川尻さんには近々泡銭が入ってくるじゃないですか。
    川尻 あー、UFC集団訴訟のやつですよね。あれ、どうなってんすか。ジャンさんのせいでさ、めちゃくちゃ期待してたんですよ。ヘタしたら何千万円も入ってくるんじゃないかと思って、嫁と「どうする?」って話をしていたんですよ。そうしたら賠償金は思ったより低いんですよね?
    ――ですね。UFC集団訴訟に関してはボクが繰り返し発信していることで、水垣(偉弥)さんからも「ジャンさんのツイートで期待していたら……」と苦情が入ってますね(笑)。
    川尻 いい迷惑ですよ。いくらくらい入るんですか?
    ――うーん、100万円ぐらい入ればいいほうかもしれないですね。
    川尻 ですよねぇ。ジャンさんのツイートからすると、正直3000万とか入るのかなってワクワクしたんですよ
    ――原告側が妥協しちゃっただけでボクは何も悪くないですよ(笑)。川尻さんもUFCでそれなりに試合しているからけっこう入るかもしれないですよ。
    川尻 いやいや、水垣くんに比べたらボクは10分の1ぐらいですよ。
    ――水垣さんはこの話を振ってくる川尻さんに迷惑がってましたよ。
    川尻 水垣くんさ、配信番組に一緒に出たときにこの話を振ってもまったく乗ってこないんですよ。あの男は固いんですよねぇ。
    ――川尻さんや水垣さんの今後の生活ぶりから、賠償金の金額を判断しようと思ってます。
    川尻 お金の話でいえば、ジャンさんに聞きたいことがあったんですよ。
    ――なんですか?
    川尻  Dropkick、儲かってるでしょ? 
    ――は?
    川尻 ぶっちゃけ儲かってるんでしょ!?
    ――どうしたんですか、急に。
    川尻 ボク、Dropkickに出るのは4年ぶりぐらいでしょ? 以前より出演料が増えてるんですよねぇ。
    ――べつに5倍10倍に上がってるわけじゃないですよ(笑)。
    川尻 知りたいのはいま会員は何人いるかってことですよ。
    ――32人ですよ。
    川尻 そんなわけないでしょ!
    ――本当は値段を上げたいくらいですよ。ただシステム上、値上げができなくて。
    川尻 たしかに550円って安すぎません? それでも絶対に儲かってるよ、これ。
    ――ひとつだけ言えることは毎週2~3人取材して、1万字超えのインタビュー原稿を延々とまとめ続けるのは精神的変調をきたしかねないです。かれこれ12年間ホテルで缶詰作業している感じですよ!
    川尻 コメント欄に「こんなに金の話ばかりする川尻達也は新鮮」ってコメントありますね(笑)。
    ――川尻さんはPRIDEに上がったら億万長者になれると思い込んでいた銭ゲバですよ。
    川尻 そうですよ。五味隆典を倒したら、ファイトマネー3000万円になって年間3試合で9000万、スポンサーで1000万、年収1億円になると計算してPRIDEと契約しました。
    ――雑な計算!(笑)。
    川尻 実際はそんなことなかったですよ。若さって恐ろしいですねぇ。
    ――今回のRIZIN46はそんな川尻さんだけしか語れないテーマも内包されていたんじゃないかなと。
    川尻 えっ、どういうことですか? なんでも答えますからDropkickの会員数を教えてくださいよ!
    ――だから32人ですよ! まずRIZIN46のメイン、鈴木千裕vs金原正徳ですけど、川尻さんはどっちの勝利を予想してましたっけ?
    川尻 ボクはさんざん金ちゃんとの古い関係を説いたあとに、鈴木選手の「1ラウンドKO勝ち」でした。今回はほぼ当てました。
    ――まあ、予想って2分の1じゃないですか。鈴木千裕の勝利予想はどこまで確信いていたものだったんですか?
    川尻 いやあ、そこまで自信はなかったですね。どっちも勝つ可能性あるけど……ここで鈴木千裕にすると、また金ちゃんに怒られるじゃないですか。クレベル・コイケ戦のときもそうだったんですよね。で、今回も金ちゃんが勝ったら、またYouTubeの事前番組でネタになるのかなって(笑)。
    ――そんなヨコシマな理由! まあ実力は拮抗していたってことですね。
    川尻 鈴木千裕が時代を作るんであれば、PRIDE武士道で10連勝した五味隆典みたいにどんな状況でも鈴木千裕は勝つだろうなって。もうひとついうと、金ちゃんのインスタを見たら、ケン・ヤマモト先生の治療を受けてたんですよ。
    ――あー、みんながお世話になっているケン・ヤマモト先生の治療を受けていたってことは……という読み!
    川尻 そのあとのストーリーで「できることやろう」みたいに書いてあったので、これはどこかをケガしたのかなと。コンディションに不安があるってことを含めて、鈴木千裕の予想にしましたね。鈴木千裕はもう万全で絶好調だったと思うんで。
    ――じつは金原選手は身体のある部分を痛めていたっていう話を聞きましたね。
    川尻 ああ、やっぱりそうなんですね。ヤマモト先生のところに行くってことは緊急ですからね。
    ――しかも金原選手は年齢も年齢ですしね。
    川尻 41歳ですね。ボクも最後の試合が41歳ですけど、その前にアリ・アブドゥルカリコフとやったじゃないですか。試合後に動画を見たら、あまりにも動きが遅くてビビりましたもんねぇ。「ああ、俺、こんなに遅いんだ。これはもう無理だな」と思いましたね。
    ――自分の動きを見て判断したんですね……。
    川尻 それでやめどきっていうのをずっと考えてて、誰かにぶっ飛ばされてからやめたいじゃないですか。
    ――それがRIZINライト級GP開幕戦のパトリッキー・ピットブル戦だったと。
    川尻 PRIDE、DREAM、RIZINと3つのライト級GPに出ることになるし、そこで優勝できたらまた続けられるし、ぶっ飛ばされたらやめようと思ってましたね。
    ――40代になると身体だけじゃなくて、戦うモチベーションも重要ですよね。
    川尻 自分の41歳のときでいえば、日本一を目指すことにはまだ自信はありましたけど、正直世界一を目指して格闘技に振り切ってやってきたから。そこで日本人ファイターと試合をすることは自分の中で考えられなかったですね、当時は。そしたらさ、フェザー級に朝倉未来選手が出てきて。もう1年ぐらい早く出てきてくれれば、俺も間に合ったかもしれないのに(笑)。
    ――戦う動機を探していた川尻さんは堀口恭司との対戦をぶち上げて、バンタム級のテストマッチをやったり。いまは階級を落とすことがトレンドですけど、川尻さんの意見を聞きたいなと。
    ・弱い奴は階級や練習環境を変えても強くならない

    ・「1.2倍速」で戦えるかどうか

    ・「箱庭と対世界」の議論

    ・DREAMという悪夢

    ・RIZINのみんなにあんな思いをしてもらいたくない

    ・UFCなんかに行きたくなかった

    ・ドーピング上等だった時代・ブレイキングダウンの解説をやる理由

    ・川尻達也vsトムソンの悲劇

    ・ジョビンさんは強くなかった

    ・加藤浩之と青木真也……2万字クラッシャートークは会員ページへ続く

    いま入会すれば読める5月更新記事・笹原圭一のRIZIN46を「バーンといってドーン!!」と語ろう!・RIZINフェザー級王者・鈴木千裕インタビュー「RIZINを舐めるな!」・鈴木千裕vs金原正徳から見えた「スーパータイガーセンタージム」■塩田“GoZo”歩・手塚裕之1万字インタビュー「田舎と米をナメるな!!」・渡辺華奈は「世界」とどうやって戦ってきたのか■上田貴央のコーチ論・K-1参戦、安生洋二の前田日明襲撃……リングス退団後の長井満也・「海外修行で感じた異様な新日本プロレス」■AKIRAインタビュー②・ヒクソン来襲!! 安生道場破り、幻の長州戦真相――中村頼永・後編・ALL TOGETHER不入り/ロッシー小川に「ジャニー問題」はない■事情通Z続々更新予定!!https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/202405
     
  • 笹原圭一のRIZIN46を「バーンといってドーン!!」と語ろう!

    2024-05-12 15:08  
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    大会後恒例!RIZIN広報・笹原圭一さんのRIZIN46有明総括11000字です!(聞き手/ジャン斉藤)
    【1記事から購入できるバックナンバー】・【RIZIN神戸総括】笹原圭一の関東大会場4連戦やってやるって!
    ・ジョビンチャンネルでできなかった髙田延彦の「八百長」「搾取」の話
    ・菊地成孔☓佐藤大輔■「ローリング20」におけるRIZINと東京オリンピックの行く末
    ・岡見勇信が語る世界に勝つ方法「中村倫也にGSPの姿が見えた」

    ――笹原さん! 今年初の関東圏の大会となったRIZIN46有明アリーナはめちゃくちゃ面白かったです。
    笹原 いやぁ、RIZINを舐めてもらっちゃ困りますよ。
    ――ワハハハハ、自信満々ですね。
    笹原 いまやRIZINは「退かぬ!媚びぬ!省みぬ!」の聖帝サウザー状態ですよ。誰がきても道なんか譲りませんよ!
    ――笹原さん、10代・20代の若者には通じない南斗聖拳ハラスメントはやめてください! それに5月6日有明アリーナで発表したけど、井上尚弥vsネリの噂を嗅ぎつけて回避してたのに!
    笹原 いやあまぁ気分はサウザーなんですけど、さすがにモンスターには分が悪いかなと(笑)。有明アリーナはたまたま4月29日も空いてたんで、避けたんです。ボクシングとMMAと客層は違うとはいえ、もう同日なら話題性では完全に「ヒデブッ!」みたいな感じになっていたと思います(笑)。
    ――こんなにいい大会だったのに、格闘技ファンがALL TOGETHERできなかったかもしれないですよね(笑)。
    笹原 もし同日回避できなかったら、社長のことだから井上尚弥vsネリに対抗するために「おい、笹原! 向こうがネリならこっちはダリだ!もうこうなったらロクク・ダリvsパッキャオを有明で組むぞ!」とか言い出しかねなかったので4月29日にスライドできて本当によかったです(笑)。
    ――そんなの(モハメッド・)アリ!?……という猪木さんばりのダジャレはともかくですね、大会終了後の榊原さんの総括会見では、ある記者が朝倉未来選手の「チケットが売れていない」というポストを背景抜きにぶつけたことで変な騒ぎになってましたけど。
    笹原 未来選手のポストって、金原正徳選手の朝倉未来vs平本蓮の感想に対してのアンサーですよね。
    ――金原選手の「あの試合が盛り上がって本当に強い人たちの試合がそんなに盛り上がらないなら、日本のMMAは世界からどんどん遅れを取る」という発言に対して「会場のチケット売り切れないなんて日本のMMAは盛り上がってないなあ」とポストしたら、記者が榊原さんに「こんなこと言ってますが!」とご注進が入って(笑)。
    笹原 なんですか、その地獄の伝言ゲームは(笑)。質問時間の制約があったりするのはわかるんですけど、そのうえで「朝倉未来はなぜそんなポストをしたのか」ということまで含めて伝えてほしいところですよね。だって調べればすぐわかることですし。
    ――「MMAの万人規模興行は世界を見渡しても稀である」という注釈つきで質問するべきだったんじゃないかなと。完売するに越したことないけど、「完売していない=不入り!」みたいに騒がれがちな風潮もどうかなって思いますし。
    笹原 そこだけで切り取られて質問されると「売れてない」と思われちゃいますけど、実際はそうではないわけです。そもそも我々は1年間というスパンの中で興行をやってますが、変な話「今回は負けてもいいけど、これが布石となってべつのところで取り返せればいい」という考えもあるんですよね。こういうと「有明アリーナは負けたのか!」と切り取られそうですけど、有明は負けてないです(笑)。
    ――つまり将来の投資も兼ねた大会やマッチメイク、選手起用もあるってことですよね。
    笹原 有明アリーナにあれだけ人が入って、あれだけ熱があるのはやっぱりすごいことだと思いますよ。
    ――かつてのRIZINはオールスターシステムで大規模興行をやってましたけど、いまは分散型でもやりくりできている。それってRIZINのブランド力が高まってるということですし、MMAファンが増えている証なんだなと。
    笹原 ですね。間違いなく底上げはされていますよね。だからこそ、ネガティブな意見も含めていろいろな声が飛び交うこと自体は非常に健全だと思います。
    ――メインの鈴木千裕vs金原正徳の試合はいろいろな雑音を吹き飛ばしたわけですから、やっぱりリング上の説得力はすごいですよね。ゲスト解説の朝倉未来選手もやや唖然地味でしたもんね。
    笹原 未来選手とは試合前にちょっとミーティングしたんですよ。そのときにメインの話をしたら「金原さんが絶対勝ちますよ」と言ってたんですよね。練習で肌を合わせて金原さんの強さを知っているから、そういう予想になるんでしょうけど。
    ――金原選手とロータス世田谷で練習している矢地祐介も試合開始直前のタイミングで「あえて言う❗️始まってみたら意外と力の差があってしっっっかり金原さんが勝つと思う🤔‼️」とポストして。その15分後に「悔しい、、、」と。
    笹原 未来選手同様に金原選手と一緒に練習してその強さを知っているからこそですね。
    ――ヤッチくんはその後にアップしたYouTube感想動画も悔しさ一杯のコメントをしたことで炎上してましたけど、ホントに悔しかったんでしょうけど、最近は「SNSのお祭り男」ですよ(笑)。
    笹原 矢地選手は金原選手の身体が万全じゃなかったことを匂わせていたそうですけど、たしかに金原選手の身体の状態はよくなかったんです。でも、金原選手にとっては戦極以来、15年ぶりのタイトルマッチ。「この試合が最後になってもいい」という覚悟で戦ったんだと思います。
    ――事前予想で今成(正和)さんが鈴木千裕について「こんなに奇跡は続くわけない」というコメントをしてたんですが、よく考えたら金原選手も40代であれだけの強さ、コンディションを維持してるのも奇跡的なんですよね。
    笹原 たしかに、そうですよね。戦極チャンピオンがRIZINでチャンピオンシップに臨んでいるなんて奇跡以外の何物でもない(笑)。
    ――格闘技って本当に奇跡の引っ張り合いで、長年に渡って努力を積み重ねてきた金原選手の奇跡を信じたい人たちもいたんだろうな、と。
    笹原 金原選手は前回のタイトルマッチからの15年間、ずっと不遇だったわけじゃないですけど、報われなかった時間は長いじゃないですか。だから会場の雰囲気はどちらかというと、チャンピオンの千裕選手が何かヒールっぽい感じでしたもんね。15年ぶりに大きな光を浴びるような舞台に立つとなったら、ベルトがどうこうとかじゃなくて、この15年間応援してくれた人に報いたいとなるのは自然ですよね。
    ――だから金原選手はたくさんの関係者が見てくれる首都圏の大会でやりたという意向もあったんでしょうね。
    笹原 でも、そういう悲壮感や思いを平気で裏切るのが格闘技なんですよね。
    ――圧倒的現実、ですねぇ。
    笹原 なのでボクは試合前の金原さんの状況や様子を聞くにつけて、「でもこういうときって..…」って思ってたんですよね。
    ――引退する覚悟や15年間の思いみたいなものが、いとも簡単に裏切られると。
    笹原 まぁ我々はそういうのを散々見てきましたからね。ただそれにしても勝った千裕選手の戦い方は見事でした。本当にクレバーだったと思います。いつもより構えを低くしてタックルに対応できるようにして、一度テイクダウンを防いだあとは、一緒に見ていた柏木さんいわく「もう鈴木千裕は釣りをしてますよね」と。あとは金原選手の出方を待つだけ。先に手を出させて仕留めると。あのベテランの金原選手ですら、鈴木千裕の術中にハマってしまう。
    ――「ドーンといってバーンと倒すだけですよ!!」と言いながら。
    笹原 金原選手が打ち合ったときにボクは運営本部で叫んでましたね。「打ち合うな!!」って(笑)。そこで打ち合ったら、確実にやられるじゃないですか。金原選手もそこはわかってるんですけど、打ち合いをさせちゃう鈴木千裕のゲームの達人ぶりですよ。
    ――「ドーンといってバーンと倒すだけですよ!!」と言いながら(2回目)。
    笹原 じつはすごく緻密に考えてますよね。みんな騙されてますけど。
    ――バカのふりをしてるんですよね。でも、国歌吹奏のときの鈴木千裕のウォーミングアップぶりをみると騙されますよね(笑)。
    笹原 ハハハハハハハ! まさしく“稲妻メンタル”ですよ。
    ――試合後のマイクもすごい元気よく喋ってるけど、ほとんどが宣伝だったからあんな勝ち方したあとなのにじつに冷静なんですよね。
    笹原 千裕選手の対戦候補はたくさんいるから今後も楽しみですよ。ピットブル、クレベル・コイケとの再戦、朝倉未来vs平本蓮の勝者……誰とやっても面白いじゃないですか。千裕選手のビッグファイトを組みたいですよね。・金原正徳には最後までとことん付き合う
    ・“冬の時代”を生き抜いた選手にしかわからないこと
    ・スーチョルvs井上直樹の流れ?
    ・最高だった扇久保博正vs神龍誠の師弟劇場
    ・期待感を表現するのがプロ
    ・ベアナックルというより篠塚辰樹が面白い
    ・RIZINと日銀、オイルマネー……11000字インタビューは会員ページへ続く
    いま入会すれば読める5月更新記事・RIZINフェザー級王者・鈴木千裕インタビュー「RIZINを舐めるな!」・鈴木千裕vs金原正徳から見えた「スーパータイガーセンタージム」■塩田“GoZo”歩・「RIZINに潰れてほしくないから箱庭のままでいいよ!」■川尻達也・手塚裕之1万字インタビュー「田舎と米をナメるな!!」・渡辺華奈は「世界」とどうやって戦ってきたのか■上田貴央のコーチ論・K-1参戦、安生洋二の前田日明襲撃……リングス退団後の長井満也・「海外修行で感じた異様な新日本プロレス」■AKIRAインタビュー②・ヒクソン来襲!! 安生道場破り、幻の長州戦真相――中村頼永・後編・ALL TOGETHER不入り/ロッシー小川に「ジャニー問題」はない■事情通Z続々更新予定!!https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/202405
     
  • RIZINフェザー級王者・鈴木千裕インタビュー「RIZINを舐めるな!」

    2024-05-10 16:14  
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    RIZINフェザー級王座を見事に防衛した鈴木千裕11000字インタビューです!(聞き手/松下ミワ)【1記事から購入できるバックナンバー】・「パトリシオと再戦しても勝てます」■鈴木千裕MMAコーチ 塩田“GoZo”歩
    ・RIZIN漢塾 塾長・石渡伸太郎“引退”1万字インタビュー
    ・業界再編ならず? UFC集団訴訟は和解へ…■シュウ・ヒラタのMMAマシンガントーク
    ・MMAでも天才か? 久保優太「斎藤裕選手を乗り越えられる自信はあります」
    ――鈴木選手初の著書『夢を叶える「稲妻メンタル」』ですけど、なんと発売前に重版が決まったそうですね!
    千裕 決まったっすわー! 本当よかったっす!
    ――発売前ということは予約が殺到しているということですから本当に凄いです!
    千裕 テンション上がるっすよね、純粋に。
    ――売れるかどうかドキドキしているところもありました?
    千裕 ありますよお。ボクひとりの作品じゃないんでね。本をつくってくれる人とか皆さんが関わってるんで、売れなかったらみんなが間違ってることになるじゃないですか。
    ――間違いまでは言い切れないですけど(笑)。
    千裕 Amazonのスポーツ・アウトドアの売れ筋ランキングで一瞬だけ1位取ったので。ちょっと順位が落ちてるんですけど、テンション上がるっすね!
    夢を叶える「稲妻メンタル」――そう考えると、やっぱり試合に勝つって大事なことなんですね。
    千裕 勝ったからこそ道が開けますよね。だって、説得力ないですもん。負けたのに「本、買ってください」と言われても「買わねーよ」となるんで。
    ――メンタルを説いてる本だから、そこはよけいに。
    千裕 でも絶対に勝つと思ってましたよ。アントニオ猪木も言いますよね。「出る前に負けること考えるバカいるかよ」って。チャリティーイベントをやった能登のみんなにも勝利を約束してたんで勝ててよかったです。
    ――その金原正徳戦はもの凄い試合でした。金原選手が組みついてきたときにテイクダウンされなかったことが勝敗を分けたという意見が多いようですが、そこは実際どうでした?
    千裕 当然、金原選手がやりたいことはボクを倒してグラウンドに持ち込むことなんで、ファーストコンタクトを防げるというのは勝敗を大きく左右したのかなとは思います。というか、組んできたことで確信に変わるんですよ。「やっぱり組んで倒したいんだな」って。
    ――金原選手が最初に組んでくれたことで、相手のやりたいことが早めに見えたんですね。
    千裕 フィジカルに関しても、組んだときに「いける」と思いましたしね。これだったら組み負けないと確信に変わりました。タックルにも反応できているし、組んでもパワー負けしない。これなら競り合えると思いましたね。
    ――あと鈴木選手の構えが低いのも印象的だったなって。
    千裕 ああ、それは目線の問題ですね。ボクは目線を基準に構えるんですけど、金原選手はボクよりも背が低いんで、その目線に合わせただけです。それに、金原さんも腰が低いんで、そこに合わせたら必然的にそうなっちゃったのかなって。
    ――タックルを警戒して姿勢を低くしたわけでもないんですか?
    千裕 いや、タックルを警戒して姿勢を低くすると、逆に反応が鈍くなるんですよ。低く構えている状態で顔に打撃をもらうと、その瞬間に身体がアップライトになっちゃうんで、相手はテイクダウンに入りやすいんですよね。だから、中間くらいの目線がベストなんです。
    ――それで自然とあの姿勢になったと。序盤にローを連発していたことも作戦だったんですかね?
    千裕 作戦というよりは、向かい合ったときの相手のリアクションでローが蹴れるなと思ったんですよね。インローを蹴って反応がなかったんで「これ、カーフを蹴ってもたぶんカットできないな」と。組みにいきたい選手って前屈みになるんで、前足重心になるんですよ。だから、前足を上げられなくてカットできないんですよね。キックボクサーはうしろに重心が乗ってるんで、前足を蹴られてもカットできるんですけど。
    ――なるほど。タックルにせよ、カーフにせよ、そうやって金原選手がやりたいこと、できないことを瞬時に探っていったわけですか。
    千裕 しかも、ボクはスピードが速いんで「これ、反応できないな」と思ってカーフ蹴ってたら、だんだん相手のリズムが乱れてきたんで。そこで、こっちの戦い方をつくっていこうかなと思いました。
    ――そのリズムですが、鈴木選手の試合のペースがめちゃめちゃ速く感じたんですよ。
    千裕 ああ、それでいうと、もともと金原選手はどっしり構えてるタイプだから、リズムに関しては早くないですし、直立でゆっくりなんですよね。そうやってガードをちょっと下げてオープンスタンスで立ってるんで、逆にボクが速く見えたんですかね。
    ――鈴木選手は1.5倍ぐらいのスピードで戦ってるように見えました。
    千裕 ボクは1ラウンドからフルスロットルでいくと言ってたじゃないですか。馬力全開でエンジンかけてるんで、動きも必然的に速くなりますよね。
    ――フルスロットルというのはパワーもだけど、スピードもってことですね。
    千裕 セーブせずにどんどん前に出るということも含めてですよね。もうガス欠になってもいいと思ってたんで。
    ――24歳の鈴木選手にいきなりフルスロットルでやられると、さすがに金原選手はついてこれてないという読みなんですね。
    千裕 それはもうわかってましたね。キャリア後半を迎えてる選手のエンジンと言えばいいんですかね。それは10代、20代のエンジンと違って、どうしても古びてくるんで。車のパーツみたいに替えられたらいいんですけど、替えれない。人間の場合はメンテナンスし続けるしかないんですけど、その部分では絶対に負けないし、そこで遅れを取ったらボクの負けですよ。
    ――若さで勝負するというのはそういうことですか。
    千裕 やっぱりボクもいろんな先輩方を見てきてますし、人間はどうしても劣化してしまうんですよ。どんなにいい治療を受けても10代のパワーは戻らないんです。
    ――そこからローでリズムを崩して、ボディから連打と。終始、鈴木選手のペースだったんでしょうか?
    千裕 やっぱりテイクダウンだけは怖かったですし、打ち合いでもストレートをもらってたんで、金原さんも金原さんなりのリズムは取れてたんだと思います。だから、そこはお互いに勝負はできていたってことですね。ただ、ボクのほうがあの日、一歩だけ上手だった。勝敗を分けたのはそこだけです。
    ――結果は宣言どおりの1ラウンドKOでした。ただ、事前の下馬評は金原選手有利の声も多かったですよね。
    千裕 そりゃそうっすよ。やっぱり、みんなそう見ますよ。でも、ボクは「未来は自分で変える」と言ったじゃないですか。周りを変えるのはボクだし、結局リング上で戦うのはボクなんで。だから「黙って見てろ」と思ってましたね。煽りVでも「全員うるせえんだよ」とあったじゃないですか。本当にそのとおりの気持ちです。
    ――ちなみに、以前パトリシオ・ピットブル戦についてお話をうかがったときに鈴木選手は「打ち合わざるをえないように仕向けている」と言われてましたよね。まさに、今回の試合もそうだったんですかね。
    千裕 まあでも、総合格闘技って打撃からスタートするじゃないですか。「打ち合いに仕向ける」といっても、よーいドンが打ち合いなんで勝手にそうなるんですよ。よーいドンでタックルが取れたらいいですけど、いきなりタックルは怖いから打ち合いで相手を乱してテイクダウンにいくわけじゃないですか。単発でタックル取れるのはアマチュアまで、もしくはブッチギリで強いレスラーしかできないですよね。
    ――ところで、今回はキックを含めて人生初の防衛戦ですし、震災地の能登を訪問されたりしていろんな方の思いを背負った試合だったと思うんですが、そういうプレッシャーの面はどうだったんですか?・国歌吹奏の件
    ・超RIZIN3も出たい
    ・ベラトールのベルトはいらない
    ・クレベルとの再戦は…
    ・矢地祐介の発言について
    ・朝倉未来選手スミマセン
    ・いまはUFCよりも……11000字インタビューは会員ページへ続く


    いま入会すれば読める5月更新記事・鈴木千裕vs金原正徳から見えた「スーパータイガーセンタージム」■塩田“GoZo”歩・手塚裕之1万字インタビュー「田舎と米をナメるな!!」・渡辺華奈は「世界」とどうやって戦ってきたのか■上田貴央のコーチ論・K-1参戦、安生洋二の前田日明襲撃……リングス退団後の長井満也・「海外修行で感じた異様な新日本プロレス」■AKIRAインタビュー②・ヒクソン来襲!! 安生道場破り、幻の長州戦真相――中村頼永・後編・ALL TOGETHER不入り/ロッシー小川に「ジャニー問題」はない■事情通Z続々更新予定!!https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/202405
     
  • 【プレイバック】ヒクソン来襲!! 安生道場破り、幻の長州戦真相――中村頼永インタビュー後編

    2024-05-10 10:38  
    200pt
    ☆2017年8月に掲載された記事です 大反響だったUSA修斗・中村頼永師父インタビュー前編! シューティング黎明期の知られざるエピソードが続々と披露されたが、後編となる今回はヒクソン来襲編! 渡米した中村師父がグレイシー一族と出会ったことが日本の格闘技界を大きく変えることになる……13000字のロングインタビューでお届けします!(聞き手/ジャン斉藤)【前編はこちら】・「佐山先生に言われたんです。俺の影になってくれと」…中村頼永インタビュー


    ――アメリカに渡った中村さんはジークンドーの学校に通ったんですね。
    中村 89年1月にアメリカに渡ったときに私がシューティングの人だと知った向こうの格闘技関係者から「グレイシー柔術という連中は誰にでも挑戦してくるから気をつけろ」と注意されたんですよ。
    ――喧嘩上等のヤバイ奴らだったんですね(笑)。
    中村 「クレイジー柔術?」「そうなんだよ。クレイジーなんだよ」と(笑)。アルティメット(UFC)が始まる4年前のことですよ。
    ――まだバーリトゥードの存在が知られてない時期ですね。
    中村 佐山先生とは「バリツーズ」について話はしたことがあるんですけど。佐山先生が新日本プロレスにいた頃、イワン・ゴメスというブラジル人のバーリトゥードファイターが留学してたじゃないですか。ボクらは「バリツーズ」とはブラジルの格闘技という認識で「なんでもあり」を意味するとは思ってなかった。
    ――グレイシー柔術とはどういう出会いをしたんですか?
    中村 ボクは2つの学校でジークンドーを習ってたんですけど、89年のある日、1つの学校のオーナーが「俺の知り合いにシュートレスリングを教えてくれないか?」って頼まれたんです。向こうではシューティングは射撃を意味するのでボクは普段「シュートレスリング」と呼んで説明していたんですね。その知り合いの人に2〜3時間丁寧にシューティングのグラウンド技術だけを教えていたら、最後にオーナーが「じゃあ2人でスパーリングをやってみて」って言われて。スパーしてみたら寝技がとにかくしつこかったんです。シューティングは当時寝技30秒ルールだったり、膠着したらブレイクで、積極的に速攻で極めないといけないからポジショニングの考えがなかったんですね。
    ――ポジションの概念が広まるのはUFC以降ですね。
    中村 ポジションを取ってバランスを取って、ちょっとずつ崩して極めるのは30秒じゃとても足りないですから。でも、その人はいまでいうガードポジションを取ってジワジワと攻めてくる。「変わったペースで攻めてくるなあ……」と思いながら、ボクは相手の攻めをすべてブロックしてたんですよ。ボクたちも下から極める関節技のトレーニングをたくさんしてたので防御は知ってて。あのスパーはギじゃなくてTシャツでやったので、Tシャツを着た汗まみれのドロドロした戦いはボクのほうがうまかったので、最後は横四方固めをとってから手で肩を掴んで前腕で首を絞めたんですね。それで相手はタップ。
    ――そして、その相手の正体は……。
    中村 じつはその人はホリオンの道場の黒帯のちょい前の人間で。当時のホリオンのところにはヒクソンもホイスもいますからね。
    ――知らないあいだにグレイシーの使い手とやらされていたんですね。
    中村 そのオーナーは「誰と誰をやらせたら面白いか」みたいなことをやらせる人なんですよ。でも、やらせる前にボクのほうの種明かしをさせるのはね(笑)。こっちは相手が何をやるか知らないですから。
    ――グレイシーは当時は未知の格闘技ですもんねぇ。
    中村 一本取ったことで何が起きたかというと、オーナーとダン・イノサント先生(ジークンドー最高師範)が評価してくれまして。アメリカの格闘技界隈でも話題になって、ボクが格闘技雑誌の表紙になっちゃったんですよね(笑)。
    ――日本から凄い格闘家がやってきた!と。
    中村 巻頭特集もされて、アイドルみたいにピンナップになったり、シュートレスリングという技術本も出すことになったんです。向こうは実証すると認めてくれる人種なんですね。そこからボクのシュートレスリングのクラスにいろんな人が来るようになって、アルティメット出場前のホイスも見学に来たんですよ。
    ――メジャーデビューする前のホイス!
    中村 当時はホイス・グレイシーと言われてもピンとこないですから「ああ、この人がグレイシー柔術の人なんだな」って感じで。向こうは「いつか戦うんじゃないか……」って青白い炎を燃やしてたんですよ。フレンドリーじゃないというか、あきらかにバリアを張ってるんです(笑)。
    ――ギラギラしてたんですね(笑)。
    中村 そうこうしてるうちにヒクソンもやってきたんです。
    ――おお!
    中村 ヒクソンはボクと同じ89年にブラジルからアメリカに渡っていて。アメリカの永住権を取るには何人かのサインが必要だったんですね。ボクのクラスに来てる生徒の中にはヒクソンの道場に通ってる子もいて、共通の知人がいたこともあって、イノサント先生がヒクソンの身元引受人の一人になってくれることになったんですよ。ダン・イノサント先生には確固たる地位がありますから。
    ――ヒクソンの身元引受人がイノサント先生。
    中村 その御挨拶でヒクソンがイノサントアカデミーを訪れて、一緒にご飯を食べに行ったんですね。ヒクソンとはそこからの付き合いなんです。当時はまだチョンマゲ頭の冴えない兄ちゃんって感じですよ(笑)。強いんでしょうけど。
    ――その出会いがヒクソンの日本登場に繋がっていくわけですね。
    中村 そうなんです。93年に織田無道さんがシューティングのスポンサーになって賞金を出してくれて第1回オープントーナメントをやるんですけど。それまでシューティングのリングは8角形だったのに6角形になったんです。なぜかというと、織田無道さんのマークが6角形なんですね。
    ――そんな理由が!(笑)。
    ・織田無道トーナメントに出るヒクソン?
    ・骨法を崇拝していた格闘技通信
    ・アントニオ猪木vsヒクソンの幻の賞金マッチ
    ・ヒクソンvs安生洋二道場マッチの裏側
    ・長州力戦でフェイクを持ちかけた新日本……13000字インタビューはまだまだ続く!
    いま入会すれば読める5月更新記事・K-1参戦、安生洋二の前田日明襲撃……リングス退団後の長井満也・「海外修行で感じた異様な新日本プロレス」■AKIRAインタビュー②・ALL TOGETHER不入り/ロッシー小川に「ジャニー問題」はない■事情通Z ・鈴木千裕vs金原正徳から見えた「スーパータイガーセンタージム」■塩田“GoZo”歩 ・手塚裕之1万字インタビュー「田舎と米をナメるな!!」・渡辺華奈は「世界」とどうやって戦ってきたのか■上田貴央のコーチ論続々更新予定!!https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/202405

     
  • ALL TOGETHER不入り/ロッシー小川に「ジャニー問題」はない■事情通Z

    2024-05-09 18:14  
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    プロレス格闘技業界のあらゆる情報に精通する事情通Zのコーナー。今回のテーマはALL TOGETHER不入り/ロッシー小川は「ジャニー問題」はないです!

    【1記事から購入できるバックナンバー】・【燃えるマリーゴールド】ロッシー小川が悪いのか■事情通Zの「プロレス 点と線」


    ・平成のテロリスト・村上和成…格闘家が挑んだ命懸けのプロレス道!!

    ・スターダムに離脱ダメージなし!?/女子プロレス性的写真問題■事情通Z


    ・全日本プロレスで何が起きているのか■事情通Zの「プロレス 点と線」

    ――新日本、ノア、DDT、ドラゴンゲート、スターダムが参加した日本プロレスリング連盟発足記念のALL TOGETHER 日本武道館ですが、かなりの不入りでした……。
    事情通Z カードがかなり弱かったから入らないよねぇ。あとはこのコーナーで何度も言ってるけど、男子プロレス自体のパワーが相当落ちこんでいる。どこの現場は本当に大変だと聞くよね。ロッシー小川さんが「昭和は終わらない」と宣言してマリーゴールドを新たに立ち上げたけど、ある団体には悪い意味で“昭和が終わってない”トラブルも聞こえてくるし。
    ――「ALL TOGETHER がボクシング井上尚弥の東京ドームと同日にやるからだ!」って怒ってる人もいたんですけど、客層は被ってないから影響はまったくないですよね。
    Z ないない。それに日本武道館なんて1年前から予約しないと抑えられないから。仮に井上尚弥の客層と被っていたとしても「じゃあ、やめます」なんてキャンセルしたら会場との信頼関係にヒビが入りますよ。全日本プロレスは日本プロレスリング連盟には加盟しているけど、裏で後楽園ホールがあったから不参加。井上尚弥よりこっちのほうが影響はあったかも。
    ――全日本としては選手派遣をしている場合ではないってことですね。
    Z オールスター戦といっても、いまは団体間の交流があたりまえになってきているから新鮮さに欠けるところは否めない。メイン後の乱入を含めて、今後各団体で起こりえるであろうカードの予告編になってしまったところがある。
    ――ビッグイベントのはずなのに“顔見せ”で終わらせるのは消化不良ですね……。
    Z 最近の新日本プロレスは外国人レスラーの海外流出が相次いでいる。当然外国人レスラーの新規開拓はしていくはずだけど、ビッグネームの招聘は円高問題もあるから相当厳しい。イチから育てるには時間がかかるし、育てたところで集客が見込めるかどうかも怪しい。それでいうと昨年はジュニアのデスペラード選手や高橋ヒロム選手がDDTやノアだったり、他団体に登場したことによる相乗効果が大きかった。その手法をいよいよ今年はヘビー級で大々的にやっていくのかなと。
    ――大金で大物外国人を呼んだり、時間とお金を使って育てるよりは効率的ですね。・ALL TOGETHERをやらなかったら大地獄・鍵を握るABEMAの存在
    ・竹下幸之介のIWGP挑戦は?
    ・ケニー・オメガのロッシー小川に対する発言
    ・マリーゴルードvsスターダムの行方……続きは会員ページへ
    いま入会すれば読める5月更新記事・K-1参戦、安生洋二の前田日明襲撃……リングス退団後の長井満也・「海外修行で感じた異様な新日本プロレス」■AKIRAインタビュー②・鈴木千裕vs金原正徳から見えた「スーパータイガーセンタージム」■塩田“GoZo”歩 ・手塚裕之1万字インタビュー「田舎と米をナメるな!!」・渡辺華奈は「世界」とどうやって戦ってきたのか■上田貴央のコーチ論続々更新予定!!https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/202405
     
  • 【プレイバック】「海外修行で感じた異様な新日本プロレス」■AKIRAインタビュー②

    2024-05-05 22:30  
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    ★2021年2月にDropkickメルマガで掲載された記事を再録します
    野上彰として新日本プロレスでデビューしたAKIRAインタビューシリーズ第2弾(聞き手/ジャン斉藤)前回はコチラ新日本プロレス入門、野上彰だった頃/AKIRAインタビュー


    ――AKIRAさんは新日本プロレスでデビューしたあとも、プロレスラーとして将来の不安はあったそうですね。
    AKIRA やっぱり、身体の線の細さが気になっていたんですね。しばらく自分に自信が持てなかったです。いま思えばデビューしたからって「これでバンバン行けるぜ!」と自信持って戦っているヤツなんかいないんですけど。
    ――でも、あの当時の新日本って入門するのもハードルが高いし、デビューするのも大変で。そこにたどり着いた時点で相当凄いというか。
    AKIRA まあでも、UWF騒動だジャパンプロレスだで人が少なくなっていた時期でしたから。中堅層や若手のホープは軒並みいなくなっちゃってましたからね。
    ――逆にやりやすかった部分もなかったんですか?
    AKIRA うーん、ある程度、分別のある上の人がコントロールしてくれて、何かしらのカリキュラムがあって育ててくれるならよかったんですけど……もう猿山みたいな感じでしたからね(苦笑)。
    ――ハハハハハハハハ!
    AKIRA 2個上の後藤(達俊)さんとかが仕切っちゃうわけだから、もうグチャグチャですよ。
    ――後藤さんは酔っ払うと包丁が投げつけるわけですからね(笑)。デビュー前から巡業にはついて回ってたんですよね?
    AKIRA 新弟子時代からついてました。いつだったか、同じ年に入門した船木(誠勝)選手が巡業中に「どっかでデビューさせてやる」という話があったらしいんですけど。そのときに船木選手はリングシューズを持っていかなかったらしくて怒られたという話がありましたね。
    ――つまり、シューズは最初から用意しておかなくちゃいけないんですね。
    AKIRA ボクも靴を履きながら練習してたり準備はしてましたからね。当時の新人は、なぜかみんな黒パンツに黒シューズでしたけど。
    ――それは「デビューさせるから用意しろ」と言われるんですか?
    AKIRA 「ボチボチだから用意しとけ」という感じです。それも全部特注だったんで。当時、新日本にジャージとかを卸してくださっていたスポーツ屋さん、「スワロースポーツ」というお店なんですけど、みんなそこに頼んでました。いまはお店もたくさんありますけど、当時はレスリングパンツなんかはその「スワロースポーツ」さんが仕切ってまして。あの新日本の白線ジャージを作っているのもそこだけでしたから。
    ――となると「注文=プロになる」という高揚感もありますよね。
    AKIRA いやあ、どうなんですかね。ボクは「よし」というよりも「……大丈夫かな?」という感じだったというか。新弟子で辞めちゃう人だけじゃなく、デビュー後に何試合かやってから辞める人もいると聞きましたんで。
    ――AKIRAさんは誰の付き人だったんですか?
    AKIRA ボクは2年ぐらい坂口征二さんに付かせていただいて、そのあと3年ぐらい藤浪辰爾さんに付いてましたね。
    ――坂口さんはどんな方でした?
    AKIRA 木村健悟さんや藤波さんからはよくお小遣いをもらっていたんですけど、坂口さんはそんなには(苦笑)。
    ――財布が固いイメージがありますね(笑)。
    AKIRA 猪木さんは何かの機会に私物をくれたりすることがあって。お下がりのイッセイミヤケの服を持ってきてくれたりしてましたよ。撮影か何かで1回着たら、もう着ないんでしょうね。合宿所に持ってきて「着ていいぞ」と。
    ――全日本や新日本の付き人は巡業に行くと「洗濯代」と称して、けっこうまとまったお金をもらったりしていたと聞きますね。
    AKIRA 藤波さんのお小遣いはその洗濯代という名目ですけど、坂口さんの場合は本当にきっちり洗濯代の額だったりするわけで(苦笑)。
    ――文字どおりの「洗濯代」! 誰の付き人になるかで懐事情は変わるんですね。
    AKIRA でも、坂口さんはちゃんと面倒は見たがってた人みたいですよ。坂口さんって石原軍団とかに憧れてたりするんで。大好きなんですよ、渡哲也さんとか。巡業バスの中で『西部警察』だったかな? 朝バスに乗ると、みんなまだ眠いから「寝かせてくれ」という感じなのに、『西部警察』を録画したVHSテープを持ち込んで再生して「バキュンバキュン」とか派手な音させて。藤原喜明さんはよくそれにキレてました。
    ――「うるさいぞ」と(笑)。
    AKIRA 藤原さんは後ろほうの席なんですけど、ちょうどスピーカーがあるんですよ。だから、傘の尖ったところでスピーカーを壊そうとしてましたから。というか、壊してましたね(笑)。
    ――ハハハハハハハハ! 藤原さんの破壊ぶりのほうが石原軍団っぽい。
    AKIRA 坂口さんは石原軍団に憧れていたから、たとえば選手たちを盆と正月は家に呼んだりとかね。まあ、ボクは付き合いが悪いんで、一度断っちゃったんですけど。
    ――副社長のお誘いを断れるんですか!
    AKIRA 巡業先で「腹減ってないか? メシでも食いに行こう」と誘われたこともありましたけど、それも断ったことありました。いま考えればとても優しい方だったんですけど、当時は「早く寝かせてくれ」という思いが勝っちゃって「まだ仕事残ってますんで」と。坂口さん、ちょっと寂しそうでしたね。「行きます!」と言っていれば、また違ったレスラー人生だったのかもしれないですけど……そういうところがボクはダメでしたねえ。
    ――その後の面倒見も良くなったり。
    AKIRA そうですね。坂口さんはその場にふさわしいというか、どちらかというと盛り上がる人を連れて行きますね。酒を飲むのがあんまり好きじゃない人は「じゃあ、いいや」と。そこは気遣いをしてくださる方でした。
    ――試合のほうは手応えを感じつつあったんですか?
    AKIRA デビューしてから最初に高揚感があったのは、やっぱり船木&野上組vs安生洋二&中野龍雄組でしたね。
    ――UWF勢が新日本に戻ってきたときの。
    AKIRA 手応えというのは、あの時期ぐらいからですけど。でも、本当にいまと昔ではプロレスの仕組みが全然違うというか。最初の頃はすべてが手探りなんですよね。
    ――いわゆるフリースタイルを超えた勝負というか。
    AKIRA こっちのさじ加減で「もうお客さんが満足しているな。これ以上、お互いに出すものないな」って探りながら着地点を見つけたり。
    ――それ、ホントに難しい試合じゃないですか!
    AKIRA どっちも退かないとなると、試合が永遠と終わらないという。
    ――新日本プロレスの前座が15分一本勝負でドローが多かったのはそういう理由で。
    AKIRA 橋本真也選手との試合では腕ひしぎをかけられたんですけど、「ここで終わるわけにはいかない」ってギブアップしなかったんですよ。そうしたら、最終的に腕ひしぎの腕を離してもらえなくて、ヒジを捻挫してしまったということもあったりしましたね。
    ――すごいなあ……前田日明さんが新日本前座時代を誇りにしてるのは、格闘技を超えた勝負をしてきたからなんでしょうね。
    AKIRA だから緊張感ありましたよ。あの当時、アメリカの有名なスポーツライターが新日本を見にきていて、それを見抜いてました。「前座のヤングボーイたちがそういう試合をやってるから、上の試合が成立するんだ」と。だから上のカードもある程度ショーとして成り立つものが、リアルに写るんだと書いてました。
    ――正直、それはそれで怖いプロレスですよね。
    AKIRA いや、怖いですよ。いつ誰がどうなるかわからないじゃないですか。
    ――後年になって小川直也vs橋本真也の1・4事変なんかがありましたけど、当事者でさえ先の見えない試合は前座では普通にあったということですよね。・ルチャが軽んじられていた時代
    ・ヨーロッパの固いプロレス
    ・イギリスの暗さ
    ・ディック・マードック教室
    ・ビクター・キニョネスが怖くて……会員ページへ続く
    いま入会すれば読める5月更新記事・K-1参戦、安生洋二の前田日明襲撃……リングス退団後の長井満也・鈴木千裕vs金原正徳から見えた「スーパータイガーセンタージム」■塩田“GoZo”歩 ・手塚裕之1万字インタビュー「田舎と米をナメるな!!」・渡辺華奈は「世界」とどうやって戦ってきたのか■上田貴央のコーチ論続々更新予定!!https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/202405
     
  • 鈴木千裕vs金原正徳から見えた「スーパータイガーセンタージム」■塩田“GoZo”歩

    2024-05-04 08:00  
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    金原正徳に快勝した鈴木千裕のセコンド・塩田“GoZo”歩14000字インタビュー!MMAも柔術もなかった時代から鈴木千裕vs金原正徳にたどり着いた大河ドラマを感じてください!(聞き手/ジャン斉藤)【1記事から購入できるバックナンバー】・内柴正人が出るなら出ません……矢野卓見、QUINTET出場辞退騒動を語る
    ・牛久、斎藤裕に勝ったフェザー級・裏最強!! ユータ&ロックは実在した!!
    ・平本蓮と空手をつなぐ日本格闘技のサーガ■剛毅會宗師・岩崎達也インタビュー
    ・DEEPフライ級GP優勝者・福田龍彌インタビュー
    ――鈴木千裕選手の見事な勝利おめでとうございます!
    塩田 ありがとうございます!
    ――鈴木千裕選手の試合は毎回不利と言われがちなんですが、下馬評を覆したことはセコンドとしての喜びもひとしおなのかなと。
    塩田 自分たちの中では「勝てる!」という自信はあったので、そこはホント一安心ですね。
    ――試合後の鈴木千裕選手陣営の話を聞くかぎり、“金原正徳対策”をしっかり練ってきている印象でした。千裕選手はいつも「バーンといってドーンとやるんですよおおお!」という感じですけど(笑)、そこはチームとして取り組んでいるわけですね。
    塩田 そこはRIZINデビュー戦の昇侍戦で負けてからですよね。自分が千裕くんのことを見るようになったのはあの試合からなんですけど……。
    ――千裕選手はクロスポイント吉祥寺所属だけど、パラエストラ八王子でMMAの練習をするようになって、塩田さんがセコンドについて。
    塩田 あの頃の千裕くんは「一気に行きますよ!」みたいなスタイルだったんです。
    ――「バーンといってドーンとやるんですよおおお!」(笑)。
    塩田 でも、負けたことによって変わって……。次の山本空良戦で作戦どおりに勝ったことで、作戦に対する大事さを知ったというか。そこで信頼を得てからは自分が言ったことをしっかりやってくれるし、千裕くんはいろんなところで練習しているので、向こうから「塩田さん、こういうことをやりたいです」と聞いてくるというか。やっぱり千裕くんは頭がいいですよ。格闘技IQが高いです。
    ――解説を聞いていると、じつはものすごく緻密ですよね。
    塩田 気づきもすごいんですよ。たとえば「この試合の動画を見てよ」って言うじゃないですか。そうすると「ここ、こうじゃないですかね」ってすぐに何かに気づくんです。なんていったらいいのかな。動物的勘ですかね。自分は感性って大事だと思ってるんですけど、動物だって獲物を捕獲するために戦略を立てるじゃないですか。戦略と直感をうまくまとめる地力が千裕くんにはあると思いますね。塩田“GoZo”歩 ゼロからの基礎貫徹MMA 動画版・Blu-ray版https://www.bjjchannelshop.com/items/84556385
    ――金原選手を対策するにあたって一番のポイントはどこだったんですか?
    塩田 もともと金原くんはパラエストラ八王子にいて、自分もよく知っているんですけど。打撃に関しては、やっぱり金原くんはすごい独特なリズムで攻めてくるんです。足踏みするような感じですね。こっちが打ち気になったときのタックルもやっぱりうまい。打撃の注意点はその2点。テイクダウンされることも想定していたので、そうなったときのエスケープですよね。金原くんはクレベル(・コイケ)戦で見せたように、頭をつけてのパスや、首を抱えられてからのギロチンの対処はめちゃくちゃうまいんですよね。クレベル相手にあそこまでやったわけですし、トップキープに関しては世界に通じるくらいのレベルがあると思ってるんで、いかにそこまで行かせないか。もう寝技になったら早めに対応しようという練習を繰り返しやってましたね。
    ――金原さんの独特のリズムとはどういうものなんですか?
    塩田 見てもらえればわかると思いますけど、ちょっと足踏みするような感じで、相手にプレッシャーをかけるのがうまいんですよ。それでいて金原くんは逆に相手のリズムを読むのもうまい。そこに自分の変わったリズムをぶつけることで相手に隙を突いて打つことができるんですよね。
    ――相手のリズムを狂わせて主導権を握っていくんですね。
    塩田 たぶん金原くんは相手のリズムをいかに騙すか……っていうところにすごい重点を置いて試合していると思います。
    ――リズムを狂わす選手って他に誰か思いつきますか?
    塩田 うーん……自分ではなかなか思いつかないですねぇ。そこは本当に金原くんのすごさじゃないですけど。こないだのRIZINで勝ったウチの高木(凌)は相手のリズムを読んで待って打つことはやりますよね。千裕くんはどちらかというと自分のリズムに持っていく感じです。
    ――千裕選手はそのリズムに狂わなかったと。
    塩田 波長が逆に合うというのかな。2人でシミュレーションを何回もやったんですけど、リズムは合いましたね。千裕くんはそこでも何か気づきがあったんだと思います。
    ――リズム対策も練っていたんですね。
    塩田 今回に関してはあらゆるポイントを確認して練習してきました。たとえば試合映像をもう一度見てもらえればわかると思うんですけど、右に振り込んだときに金原くんにかい潜られているんですよ。でも、左上半身で反応する練習はすごいしてきたので。
    ――金原選手はカウンターのテイクダウンが得意だけど、空振ったときの返しもちゃんとしていると。
    塩田 そのうえで後ろを見せたりしない。金原くんはバックをつくことがうまいので、いかに四つまで持ち込むかをすごく考えました。
    ――一度ぐらいはテイクダウンされることは想定していたんですよね?
    塩田 想定はしていました。だけど、最初のテイクダウンを切ったときに「タイミングがわかっているな」と思いましたし、千裕くんはやはり四つは強いんですよ。だからって四つの展開で攻める必要はないと言ってはいたんですけど、あそこで切ったことで金原くんの仕掛けをもらわずに済んだというところはあるし、これはもう完全に千裕くんのペースになるなと思いましたね。
    ――あそこからテイクダウンはの仕掛けはなかったですよね。そこからみんなが鈴木千裕の術中にハマるというか、どうしても打ち合ってしまうという。あれはなんなんですかね?(笑)。
    塩田 ハハハハハハ。ただ動画を見返してもらえばわかると思うんですけど、カーフを効かせたりしてるんですよね。千裕くんが成長したところは、昔はいきなりバンバンバンだったじゃないですか。でも、昇侍戦でそれじゃダメだって気付いて、いかに自分のペースにはめ込んで、行けるときに行く。そこは動物的な嗅覚じゃないですけど。
    ――いきなりじゃなくて、ちゃんとカーフを効かせて、ちゃんと距離を測って、行けるときに一気に攻める。
    塩田 はい。カーフに関しては金原くんはサウスポーもやってくるんで、サウスポーだったら蹴りづらいけど、オーソだったら蹴れる。MMAの選手ってどうしてもローのカットはあんまりうまくない選手が多いし、金原くんに関してはキックもうまいんですけど、そこは入るんじゃないかなと思ってましたね。チラしてチラして、ボディヒザ、ノーモーションの右、カーフ、三日月蹴り。いろいろ手札を考えてましたね。そこで金原くんも結局打ち合いに行かざるをえなくなったっていうのはあると思いますけどね。
    ――切れるカードがなくなって……。
    塩田 もしかしたら打ち合いの中でも1回ぐらいは組みに行ってると思うんですけど、千裕くんがそのかたちにすら入らせなかったですよね。
    ――ベテランの金原選手があの短い時間の中で打つ手がなくなった……というのがMMAの恐ろしさですね。なんでもできるゲームなのに。
    塩田 さっきのリズムの話をしてましたけど、やっぱりカーフが決まり始めた時点で千裕くんのリズムになってるんですよね。テイクダウンを防いでカーフも決めて、相手の手札を潰したのがデカいと思いますね。あと千裕くんは昔と違って長い打撃が打てるんですよ。みんなの千裕くんのイメージは振り回してフック!みたいな感じですけど。
    ――最後のラッシュが印象的ですけど、長い打撃で潰してるからこそなんですね。
    塩田 狙えるときはすぐに行けるおもいきりの良さと、長い打撃が使えるところですよね。金原くんも打ち返してるんですけど、千裕くんのほうがリーチが長い分、距離的に外されるというか。向こうがプレッシャーかけて、踏み込まないかぎり千裕くんだけが当たる距離になっちゃうんですよね。
    ――金原選手相手に打撃で勝っちゃうってすごいことですよね。
    塩田 金原くんも打撃は相当強いです。それこそKNOCKOUTで不可思選手とキックルールでやったときもパンチはすげえ当ててますからね。
    ――本職のキックボクサー相手に普通に渡り合ってましたね。
    塩田 だからいろんな面でクレベル戦のときよりレベルアップしているし、すべてにおいてやりとげれば絶対に勝てると確信を持っていけた感じですかね。タイガームエタイに行ったことで組みもすごい強くなってるし、今回はやらなかったけど、テイクダウンすることまで考えてましたから。
    ――逆に!
    塩田 もし展開が五分でうまくいかなかったら、相手はタックルを警戒してないだろうし、ラスト1分だったら狙ってもいいよねって話はしてましたね。
    ――テイクダウン対策もあってか、千裕選手は構えも低かったですよね。
    塩田 そうですね。相手によって構えを変えるのはどうかという意見もあるんですけど、千裕くんはもともと練習からでも低い構えでジャブを打つのが得意なんで。できないことをやったというか、そこは自分の得意なところに落とし込んだというだけの話ですよね。千裕くんはできることの幅が広いんで。
    ――あの構え方は五味(隆典)ちゃんっぽかったですよね。
    塩田 そうですね(笑)。千裕くんはやっぱりいろんなところで練習してるんで、仕入れてくるところはありますね。
    ――千裕選手はいろんな対戦相手が候補に挙がってますが、計量オーバーでアヤがついたクレベルとの再戦が見たくなりますよね。
    塩田 そこは全然「どんと来い!」ですね!
    ――あのときの鈴木千裕とは違う?
    塩田 もう全然違います。本当に違うと思いますよ。あのときはちょっとやっぱり組み技が怖いから、それに対しての打撃をどうする?という話もしてたし、打撃で攻めて組まれたらと……。
    ――迷いがあったわけですね。
    塩田 お互いにちょっと迷いはあったんですよ、正直。だけど、いまだったらべつに迷わず行けますよね。べつに寝技になっても平気だし、テイクダウンも切れるしって。いまの千裕くんだったらクレベルとやっても自信を持って戦えます。アーチュレッタとピットブルも全然行けると思いますね。
    ――頼もしい!(笑)。
    塩田 ちょっと一段階、抜けたと思いますよ。今回の試合だけ見てたら、千裕くんの寝技やレスリングの技術はわからないじゃないですか。だけど、レスリングの練習もずっと続けてるし、千裕くんのタックルめちゃくちゃ速いですからね。寝技もうまくなってる。たとえば萩原(京平)選手をすぐに極めたり力はあったうえで、さらに基本の技術も積み重ねてきてるんで。
    ――単なるストライカーじゃなくて、他の技術も兼ね備えているからこそ打撃が活きてくる。
    塩田 そこは現代MMAのファイターですよね。ショーン・オマリーだったり、マクレガーに匹敵するようなファイターになります。そう思います。――話題になったのはタイトルマッチの国歌吹奏のときに、ずっとシャドーやエビで身体を動かしていて。
    ・金原正徳と微妙な距離感のワケ
    ・30年前は柔術を学べる場所がなかった
    ・現代MMAのセコンド論
    ・「リングス東大」とは何か……“何もなかった”時代の目撃者14000字インタビューはまだまだ続く

    いま入会すれば読める5月更新記事・RIZINフェザー級王者・鈴木千裕インタビュー「RIZINを舐めるな!」・手塚裕之1万字インタビュー「田舎と米をナメるな!!」・渡辺華奈は「世界」とどうやって戦ってきたのか■上田貴央のコーチ論・K-1参戦、安生洋二の前田日明襲撃……リングス退団後の長井満也・「海外修行で感じた異様な新日本プロレス」■AKIRAインタビュー②・ヒクソン来襲!! 安生道場破り、幻の長州戦真相――中村頼永・後編・ALL TOGETHER不入り/ロッシー小川に「ジャニー問題」はない■事情通Z続々更新予定!!https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/202405
     
  • 手塚裕之1万字インタビュー「田舎と米をナメるな!!」

    2024-05-02 10:41  
    200pt
    ONE5連勝5連続フィニッシュの手塚裕之1万字インタビューです!(聞き手/ジャン斉藤)【1記事から購入できるバックナンバー】・ジョビンチャンネルでできなかった髙田延彦の「八百長」「搾取」の話
    ・業界再編ならず? UFC集団訴訟は和解へ…■シュウ・ヒラタのMMAマシンガントーク
    ・女性から見た「女子格闘家の減量」/元シュートボクシング王者・髙橋藍
    ・「自分に負けました」……平本蓮、斎藤裕戦を反省する
    ――最近SNSを騒がしている手塚さんに話を聞きたくて宇都宮までやってきました!
    手塚 騒がしてるんだ(笑)。
    ――栃木の山奥から電波を届かせてますよ!
    手塚 一応、山奥でも電波は届きますからね(笑)。Wi-Fi繋がりますよ!
    ――ハハハハハ! 手塚さんからするとSNSで遊んでる感じですか?
    手塚 まあ、それはありますね(ニヤリ)。
    ――秋山(成勲)さん以外は皇治社長やアオシン(青木真也)も階級は合わないですもんね。
    手塚 でも、青木さんはライト級だからワンチャンはあるじゃないですか。わかんないですけど。
    ――手塚さんはウェルター級ですけど、ONEの計量システムがオリジナルとはいえ減量をほぼしていないのは今時珍しいですよね。
    手塚 みんなからそうやって驚かれるんですけど、逆にみんなあそこまで減量してまでよく試合をやるなと思いますよ。減量したら鶏ガラみたいになって弱くなるじゃないですか。
    ――でも、リカバリーすれば戻りますよね?
    手塚 戻ると言ったって、やっぱり弱くなっちゃいますよ。俺の場合、最初はプロレスラーに憧れたってところがあるのかもしれないですね。大きい奴は強い。でも、山本“KID”徳郁さんのように小さいのに大きい相手を倒す魅力も格闘技にはある。そうやって強くなりたくて格闘技を始めたのに、減量して疲弊してまではやりたくないなって思います。青木さんも減量はしてないんじゃないですか。
    ――青木さんもしてないですね。手塚さんは仮にユニファイドでやるとなってもウエルターですよね。
    手塚 ユニファイドのウエルターだと77キロですよね。パンクラスのときでもちょっと水抜きしただけで。こうやって「減量は女々しい」とか言いまくってるから「じゃあヘビー級でやれよ!」って声が飛んでくるんですけど(笑)。いまのフォルムよりもでかくなっても強くなれるんだったら全然ヘビー級でやってもいいし、いまでも日本人のヘビー級には勝てると思ってます(キッパリ)。
    ――ONEの計量システムと相性がいいとはいえ、中量級で外国人相手に5連勝、5連続フィニッシュはすごいですよ。
    手塚 日本人に言えることはみんなフィジカルが弱いですよね。
    ――「フィジカルが弱い」って、いつか口にしてみたい言葉ですよ(笑)。
    手塚 あと気持ちすかね。外国人だからってビビってますねぇ。大きく見過ぎっていうか、べつにライオンと戦うわけじゃないですよ。腕2本、足2本の人間、日本人と同じですよ。ボクなんか家にクマが出ますからね。クマと比べたら、外国人なんて余裕ですよ!(笑)。
    ――ハハハハハ! 家にクマが出るんですか?
    手塚 クマ、出ますよ。歩いてるときや釣りしているときに目撃します。ウチの庭のトウモロコシがクマに食われたんですよ。
    ――庭にクマが現れる!
    手塚 すげえデカいウンコして帰ってきましたよ(笑)。クマ以外には、シカ、イノシシも出ますね。
    ――常に緊張感がある生活なんですねぇ。
    手塚 野生界で考えたら減量なんてないじゃないですか。食べなかったら餓死しちゃうんだから。
    ――たしかに水抜きしてるクマはいないですね(笑)。
    手塚 そうなんですよ(笑)。「格闘技=減量」が常識になっちゃってるのはよくないなって思いますね。
    ――選手のタイプにもよるんでしょうけど、何がなんでも落とせばいいわけじゃないと。
    手塚 減量して強くなるとか、パフォーマンスを発揮できる人はもちろん減量したらいいです。体脂肪がある人はいくらか絞ったほうがそれはいいんで。ただ、筋量がしっかりあってバキバキのファイターに関しては、わざわざ階級を落とす必要があるのかな?って思っちゃいますよね。
    ――手塚さんからすると、日本人は筋トレ不足な面は感じますか?
    手塚 筋トレをやったら動きが悪くなるとか、筋トレ不要説をいまだに唱える人がいるじゃないですか。あの大谷翔平がめっちゃやってるんですよ。ボールを投げて打つだけ……なんていったら怒られますけど、格闘技はぶつかり合う競技ですからね。いまだに筋トレをやったら動きが悪くなるとかいう人がいるんで。
    ――筋トレ否定する人、格闘技にもいるんですか?
    手塚 よくそういう声を聞きますよ、ネットで。ジョビンがそうじゃないですか。
    ――あー、博覧強記で知られるジョビンさんですか(笑)。
    手塚 彼みたいに身体がもともと頑丈で、なおかつ身体能力がある人は、技術習得の時間に割いたら国内ではトップになると思うんですけど。世界で戦うためにはフィジカルも上げていかないとダメですよ。
    ――まあジョビンさんは世界を経験する前に引退しちゃいましたしねぇ。
    手塚 車に例えたら筋肉ってエンジンなんです。エンジンが大きければ大きいほどパワーは生まれるし、スピードは出るじゃないですか。ドライバーの操縦部分を鍛えることを同時にしないと、車体だけ速くなって扱い切れないので「筋トレはいらない」となっちゃうと思うんですけど。そこまでしっかり考えてトレーニングすることができれば確実に強くなります。あとは指導者が階級を頭ごなしに決めちゃうから、成長段階の10代に減量を強いることは問題だと思いますね。そこには警鐘を鳴らしたいです。
    ――フィジカルで劣るからってことで階級を下げるんじゃなくて、ガンガン身体を鍛えたほうが前向きじゃないかってことですね。
    手塚 そうです。「強くなるために格闘技始めたんじゃないの?」って俺は思っちゃうんで。減量するって相対的に相手が小さくなるだけで自分が強くなってるかといえば微妙じゃないですか。それって己に打ち勝ってるのかなって疑問ですけどね。
    ――川尻さんなんかも徹底的にフィジカルを鍛えたから世界で戦えてましたけど。日本人と外国人の身体の違いも指摘されていますよね。
    手塚 ちゃんとフィジカルトレーニングしていれば、その差は埋められるっていうか。あと俺はよく「筋肉と米は裏切らない」って言ってるんですけど、みんな米のことを軽視しすぎなんですよ!
    ――米もナメるなと(笑)。
    手塚 大谷翔平がめっちゃ米を食うことを知ってます? 高校時代は茶碗大盛り15杯を食うって聞いたんですよ。
    ――茶碗大盛り15杯! 米農家の手塚さんはどれくらい食べるんですか?
    手塚 俺はそこまでじゃないですけど、5杯くらいは食うんじゃないですかね。ラーメンを頼んだとしても、必ずご飯はつけるんで。みんなすぐに糖質制限とか言うじゃないですか。それってガソリンを入れないようなもんですよ。米というガソリンを満タンにしねえと、本気で練習できない。いい練習ができなかったら強くならないじゃないですか。だから毎回ガソリン満タンにして、スピードをマックスで出せるようにしておいて、いい練習して、いいトレーニングできれば確実に脂肪は減ってきますから。タンパク質が大事とかプロテインを売るためのマーケティングですよ。まあ、俺が言っていることは米のマーケティングなんですけど(笑)。
    ――米vsプロテイン!(笑)。
    手塚 実際、プロテインやサプリメントのマーケティングに踊らされすぎだなって思います。アスリートたちもそこがスポンサーについたら発信するじゃないですか。そうやってどんどん広まっちゃうんですよ。
    ――手塚米もどこかの格闘家のスポンサーについて、米の布教を……(笑)。
    手塚 ハハハハハハ。これは仮説というか、聞いたことがある話なんですけど。欧米の食文化が入ってくる前の日本は、女の人が300キロぐらいの米俵を担いでいたとか。でも、明治時代に入って、だんだん欧米の食文化になってから日本人の身体能力が衰えてきたという話があって。それはやっぱり米を軽視してるから日本人が弱くなってんじゃないか……という説をプロテインやサプリのマーケティングにぶつけたいですね(笑)。
    ――手塚さんはプロテインなんかは摂ってないんですよね。
    手塚 摂ってないです。でも、誰かにもらったりすると飲んだりします(笑)。
    ――絶対NGではない(笑)。
    手塚 ただ、あくまでもサプリメントだから補助なんですね。それに頼るってことはしないです。そっちに傾倒しちゃうんじゃなくて、他に自分がやるべきことをしっかりやる中で補助してもらうのはいいんじゃないですか。サプリメントは嫁も好きでけっこう摂るんですよ。
    ――奥さんとは宗教が違うんですね。
    手塚 もしかしたら俺にサプリメントのスポンサーがついたときは、改宗したんだなって思ってください(笑)。でも、サプリメントを摂らなかった俺が発信するんだから「これは本物だ」ってなるじゃないですか。・田舎でも強くなれる
    ・二瓶空手道場の存在
    ・格闘家と数字
    ・「真也、ありがとう!」
    ・秋山さんはこのまま引退したらカッコ悪い……1万字インタビューはまだまだ続く
    いま入会すれば読める5月更新記事・鈴木千裕vs金原正徳から見えた「スーパータイガーセンタージム」■塩田“GoZo”歩・渡辺華奈は「世界」とどうやって戦ってきたのか■上田貴央のコーチ論・K-1参戦、安生洋二の前田日明襲撃……リングス退団後の長井満也【プレイバック】「海外修行で感じた異様な新日本プロレス」■AKIRA②続々更新予定!!https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/202405
     
  • 1記事から購入できる4月記事バックナンバー

    2024-05-01 00:15  
    4月記事バックナンバー・業界再編ならず? UFC集団訴訟は和解へ…■シュウ・ヒラタのMMAマシンガントーク
    ・【金原正徳戦直前】鈴木千裕13000字インタビュー
    ・【鈴木千裕戦!】金原正徳「ボクに勝ったら大したもんだと思う」
    ・ジョビンチャンネルでできなかった髙田延彦の「八百長」「搾取」の話
    ・MMAでも天才か? 久保優太「斎藤裕選手を乗り越えられる自信はあります」
    ・【RIZIN黒魔術】この“次”は堀口恭司vsデメトリアス・ジョンソンだ!

    ・【燃えるマリーゴールド】ロッシー小川が悪いのか■事情通Zの「プロレス 点と線」・朝倉海vs井上直樹、もし戦わば……■水垣偉弥
    ・【プレイバック】「佐山先生に言われたんです。俺の影になってくれと」…中村頼永インタビュー
    ・映画『アイアンクロー』…“呪い”はいまだ消えていない
    ・寡黙な足関十段の過去とは? 今成正和インタビュー
    ・令和の女子プロ! 小佐
  • 渡辺華奈は「世界」とどうやって戦ってきたのか■上田貴央のコーチ論

    2024-05-01 00:00  
    200pt
    渡辺華奈、久保優太などを指導する上田貴央氏インタビュー! コーチ、経営論の13000字です!(聞き手/ジャン斉藤)【1記事から購入できるバックナンバー】・MMAでも天才か? 久保優太「斎藤裕選手を乗り越えられる自信はあります」
    ・朝倉海vs井上直樹、もし戦わば……■水垣偉弥
    ・【RIZIN神戸総括】笹原圭一の関東大会場4連戦やってやるって!
    ・鶴屋浩 ロマンと執念の「THE BLACKBELT JAPAN」
    ――上田さんはコーチとして渡辺華奈選手や久保優太選手をサポートしてますけど、渡辺選手のPFLデビュー戦は対戦相手のシェイナ・ヤングが計量オーバーしたことで舞台裏は大変だったみたいですね。
    上田 いろいろありましたねぇ……(苦笑)。
    ――計量オーバーはどれくらいのタイミングで聞いたんですか? 
    上田 渡辺は午前10時頃に計量クリアしたんですけど、そのあとですね。10時から12時の2時間のあいだにクリアすればOKだったんですけど、11時に電話がかかってきて。「このタイミングで電話って、もうアレの話に決まってるじゃん」と思ったら、案の定「相手、落ちないから」と。でも、まだ計量時間終了まで1時間もあるんですよ!
    ――12時すぎてから連絡が来るならまだしも!
    上田 だから「え? リミットまで落とさないんですか?」と聞いたら「もうやらないです」と。早々に諦めることって日本だとなかなかないじゃないですか。それに渡辺側の選択肢は「試合をするか・しないかのどちらかだけだ」と。つまり、キャッチウエイトを拒否したら渡辺の棄権になる。
    ――ホントにどうかしてますよ、そのシステム。
    上田 渡辺が棄権を選ぶなら代替選手は計量クリアしてるから、その選手が渡辺の代わりに出るからと言われて。こっちからすると「その代替選手が計量オーバーした選手の代わりじゃないのかよ」って感じなんですけど、それはコミッションが認めた話だからということで、ボクらはふたつから選ばざるをえない状況でした。
    ――計量オーバーでも何キロまでOKという基準はあったんですかね?
    上田 いや「何キロまで」というのは基本ないです。そういう場合って、コミッションがその場その場で独自に判断するんですよね。だから、SNSでも「なんでルールブック読んでないんだ」みたいな批判が飛んできたんですけど、そんなことはどこにも書いてないんですよ。どうするかはその場のコミッションの判断だし、その結果、今回は途中で水抜きを放棄した1.2キロオーバーでもOKという。
    ――ルールが違反者を味方するなんて……。
    上田 ちなみに、今回はフライ級で57キロ契約だったんですけど、ヤング選手は前日夜の時点で63キロ以上あったみたいなんですよね。途中で水抜きを放棄してリカバリーされたら当日は絶対に64キロまで増えてくる。渡辺が計量後に戻すのはいつも2キロぐらいなんで、間違いなく5キロ差はあるなと。
    ――実質的に1階級差の試合ですよね。相手選手には何かしらペナルティもあるわけですよね?
    上田 ファイトマネーの数パーセントをボクらが受け取れるのと、ヤング選手は今リーグのレギュラーシーズンでのポイントがマイナス1ポイントになるだけです。PFLってファイトマネーが高いイメージありますけど、実際に罰金の額を聞いたときにもそんなに高くなかったんですよ。
    ――PFLは優勝賞金が高いことで有名ですけど、ファイトマネーが高いのは一部のファイターだけですね。
    上田 渡辺自身もよく「PFLでファイトマネー上がったでしょ?」と言われますけど、じつはまったく上がってないです。まあ、ベラトールがPFLに買収されたときに契約を切られた選手もいるから、こうやって試合ができるだけでありがたいことなんですけどね。
    ――罰金が入ってくるにせよ、なかなか納得はいかないですね。
    上田 ボクらは「お金なんかいらないから」と最後まで言ったんですよ。裏ではずっと「金はいいからリカバリー制限つけさせてくれ」とか言い続けたんですけど、何もボクらの意向は通りませんでした。で、もうひとつのペナルティというか、ヤング選手はマイナス1ポイントになったんですけど、これって渡辺個人にとってはなんの意味もないですよね。リーグに参戦している全員が得するだけで。
    ――それだったら渡辺選手がプラス1ポイントとかにしてほしいところですよ。
    上田 戦う我々だけは、ただただ計量オーバーの重い相手と無理してやらなきゃいけないという。だから不満はありましたよ。でも、ほかに選択肢もないし、聞けば聞くほど「これ試合を黙って受けるしかないじゃん」という。
    ――だからこそ、本当に勝ってよかったです!
    上田 本当ですよ。始まってみたらテクニック差がだいぶあったので「これ全然大丈夫だな」と。あとは一本獲れるかどうかでしたけど、相手もディフェンスに全振りしてくるんで。たぶん、ヤング選手は打撃なら渡辺に勝てると思っていたんでしょうけど、序盤で渡辺がけっこうパンチを当てて血の海になっていたじゃないですか。相手も「これ、打撃でも先手が取れないな」と慌てたはずですよ。もちろん寝技ではこっちが上を取られることはないですからね。
    ――渡辺選手ってあらためて打撃も凄く成長してますよね。
    上田 でも、渡辺ってどんだけ打撃を当てても「打撃は下手」という印象が強すぎて褒められないですよねえ(苦笑)。
    ――結果は判定決着で渡辺選手は3ポイント獲得。現状は同点5位という順位ですけど、同点の場合の順位決めってどういうルールなんですか?
    上田 ああ、それも詳しく送ってもらったんですよ。同点の場合はまず直接対決の勝者が上。あとはフィニッシュの数、勝率が高いほう、勝った試合の総時間数が短いほう、負けた試合の総時間数が長いほう、判定勝ちのジャッジのスコア……と、いろいろ続く感じですね。
    ――細かい!(笑)。そういう条件の中で何かしら順位がつくという。
    上田 ただ、ボクはそのルールに対しても思うところがあって。ボクは、MMAは早くフィニッシュすることに価値があるとは思ってないんですよね。なので、いままでボクがずっと渡辺に指導してきたことが100パーセント活かせるわけではないなと。時間をフルで使って判定で勝つことも強さだし、長期戦での強さも必要だと思うし。だから、短期決戦はちょっと価値観が違うなあ、と。
    ――それって、単純に寝技が得意な選手に不利なシステムでもありますね。
    上田 まあだけど、ボクらがやることはフィニッシュを取るかどうかだけなんで。同ポイントになったときに、3番目や4番目の勝ち基準のために動くことはないですよね。
    ――次の試合でプレイオフに進めるかどうかが決まるんですよね。
    上田 次はフィニッシュが取れれば確実に勝ち抜けられます。ほかの選手が全員1ラウンドでフィニッシュしないかぎり、1ラウンドじゃなくても渡辺がフィニッシュを取れればおそらく勝ち抜けられると思います。
    ――次のマッチメイクはどうなりそうですか?
    上田 そこは団体側も1戦目が終わった時点でのポイントを見て、どうすれば興行が面白くなるかというのを判断しながら決めるみたいですね。つまり、消化試合が起こらないようにするという意図で「この選手はこうすれば点数が入って、まだ可能性あるよね」みたいなのを判断しながら組むみたいです。……と言いながら、じつはもう裏では相手は決まっていて、あとは発表を待つだけなんですけどね。変更もあるかもしれないので、まだちょっと言えないんですけど(ベラトール女子フライ級王者リズ・カモーシェとのリマッチが決定)。
    ――そうなんですね。しかも、優勝すれば賞金100万ドルですからね。
    上田 まあ、100万ドルはオマケですよ。お金がもらえなくても、彼女はやります。無人島でも、ファイトマネーなしでも。それぐらい世界最強と戦いたいし、チャンピオンになりたい。きれいごとじゃなくて、彼女ははじめからそう言ってます
    ――プレイオフ参戦や優勝はもちろんですけど、この先にUFCも充分に狙えますし。
    上田 だから無理して失敗して黒星をつけるぐらいだったら、無理をしないというのもひとつの選択なのかもしれないです。だけど、渡辺にとってはこのリーグで優勝するしかUFCのタイトルマッチを最速でやる道はないんですよね。リーグ戦はここからあと3戦だから、全部勝てば16勝2敗。しかも直近5連勝でPFLチャンピオンとなると、たぶんUFCに行けたら1戦目からいい選手と試合させてもらえる可能性が高いと思います。さらに2戦目でタイトルマッチとか。マイケル・チャンドラみたいなルートでいける可能性もありますよね。あと5年かければコツコツとUFCを目指すこともできるけど、渡辺にはもうそんな時間もないので。
    ――UFCを目指す意味でも、ベラトールやPFLを経由していろいろ経験できているのは大きいですね。
    上田 平良達郎くんもいますけど、最近では一番安定的に北米で試合してるひとりじゃないかなと思いますね。まあ、こうやって海外で戦えてるのはたまたまかもしれないですけど、北米に行っても勝てるという積み上げ方をしてきたという意味では、そこは自信を持って言えますからね。だって……めちゃくちゃ練習しましたもん。
    ――唸るように言いましたね(笑)。
    上田 ホントに。みんな柔道の力で勝ててると思ってるかもしれないけど、誰か同じレベルの柔道家を連れてきても、絶対に同じことはできないと思います。もう吐き気がするくらい練習してますから(笑)。
    ――外国人相手にここまで結果を出している女子ファイターは見当たらないですし、とくに打撃は本当に変わりました。
    上田 柔道からMMAに転向した人間がいきなり打撃からやっちゃうと、この戦績はつくれないとボクは思っているんですよ。最初から打撃専門家のところでやらせたほうが強いかといったら、それは絶対にNOかなと。まずはグラウンドコントロール、パウンドの打ち方、サブミッションを全種類できるようにというのが最初でした。それが全部クリアできて11~12勝までいってから、次のステージとしてレスリングと打撃に着手したんで。だから、いまはほとんど死角はないと思いますよ。
    ――ベラトール参戦以降はレスリングのタックルを使えるようになったのも凄く大きいですよね。・世界と戦うためにはまず「寝技」
    ・チャーリー柏木さんの存在の大きさ
    ・PFLで優勝してUFCへのアピール
    ・久保優太との関係
    ・プロ育成は儲からない
    ・格闘技で数千万円も溶かしている!?……13000字インタビュー会員ページへ