自分にはない特別な「何か」をほかの人が持っていると感じたとき、特別ではない自分は取り残されてしまいそうで「寂しい」という気持ちがわいてくることがあります。また「これがほしい!」と思っていたものを他人が持っていたりして「悔しい」と思ってしまうことも。妬みやひがみなど、世の中にネガティブな感情はたくさん存在しますが、すべてが違う感覚のようでもあり、それでいて、似通っていると感じる部分もあります。このように人間の感情構造は非常に複雑で、だからこそ、とても興味深いテーマです。
ねたみは人間の進化の中で生まれた自然な感情マドリッド・カルロス大学のアントニオ・カブラレス教授によると「ねたみ」は、人類が生き残るために進化の中でDNAに組み込んできたものだそう。
「できるだけ多くのものを手に入れる」ことではなく「他人よりもたくさんのものを得たい」という感情は「たくさんの中からベストのパートナーを見つけ出し、他よりも素晴らしい子孫を残す」という競争原理が働いていたためだといいます。そう、妬みという感情は誰しもが持つ、自然な感情だということです。
(Apothken Umschauより引用)
また、フランクフルトのゲーテ大学で社会学の博士として教壇に立つロルフ・ハウブル教授の「妬みの研究」では、男性に比べて女性の方がはるかに妬みやすく、また同時に、他人の持ち物に敏感で「ないものねだり」の傾向が高いと分析。そしてその背景には、公平さと平等さを求める気持ちが隠されている、と結論づけています。妬みの程度は個人によってまちまちで、それは幼少期の経験に大きな影響を受けるそう。例えば周囲の人からほめてもらったり愛されたりした経験を十分に得られなかった場合、妬みの気持ちが強くなるようです。一方、男性は、嫉妬が「怒り」に代わりやすいそう。男女で感情をたかぶらせるスイッチが違うのが不思議ですね。
またハウブル教授は研究の中で、「ポジティブな妬み」が存在すると言っています。
経営学的見地からすると、例えば「まだ他人が持っていないスマートフォンやPCの新モデルを手に入れたい」などの消費者行動がこれに当たり、新しいものを所有することで社会的にもさらに「妬み」を助長、これが景気に反映します。
(同ページより引用)
しかし、私たちの興味のあるところは、個人レベルでの「妬み」の話。この言葉には、やはりネガティブな意味の方が強いように感じてしまいます。テキサス・クリスチャン大学のサラ・ヒル心理学教授は、妬みを持つと、集中力、注意力、観察力が短期間でグッとあがることを発見しました。しかしながら、やはり長期的にみると、妬みを持っている場合、難しい問題に直面した際に結果を残しにくいという結果がでたのです。
ねたみを客観的に見つめると、自分の望みが見えてくる近年では、妬みとうつ病の相関性も報告されています。やはり、妬みという感情はいい影響を及ぼさないもののようです。
(同ページより引用)
では、どうしたらいいでしょうか。まず、自分の物差しや自分だけの価値感を持つ努力をするといいでしょう。これにより、妬みそのものにがんじがらめにされることなく、また他人から妬まれても強い自分でいることで身を守ることができます。ハウブル博士は言います。
妬みの感情は他人とムリに共有する必要も、隠す必要もない。いちばん大事なのは、自分を客観的にみて個人を分析するクセを付けること。
(同ページより引用)
そう、キーワードは「客観的に見る」です。つまり、悔しいという気持ちを認めた上で、それが一体どこからやってきているのか考える。妬みを持った自分の姿を客観的に想像してみたりする。すると、妬むという行為そのものが目的ではなかったことに気がつくでしょう。具体的に自分はどうしたいのか、妬みの奥底に潜んでいた方向性を照らすヒントになるのではないでしょうか。
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